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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?

JR東海は質問に答えていないのである

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JR東海 大井川水資源検討委員会資料より 



6月6日に、静岡県からJR東海に対して「中間意見書」が出され、7月12日に、JR東海から「回答案」が出されました。どちらも県庁ホームページで公開されています。

回答案に対する県の反応は次の通り。
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7月18日静岡新聞 朝刊 


で、JR東海の社長さんは「いきなり否定はあり得ない」とおっしゃっていたようです。

けれど、今までとほとんど変わっていないのだから、それは仕方ないんじゃないのかなと思います。

例えばこの部分。

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JR東海回答案よりコピー 

左欄が県側意見で、右側がJR東海側回答です。JR東海が計画しているポンプアップ&導水路案の最大の欠点。すなわち湧水放流地点より上流側(特に西俣川)における詳細な予測と、万が一流量減少が起きた場合の生態系に対する丁寧な対応を要望しています。

ところが回答がかみ合ってません。

意見書では、「トンネル湧水を放流する地点より上流」への対応を迫っているのに、回答案は「万一…流量減少の傾向がみられた場合などには…トンネル湧水を西俣川へ流す」と答えています。ちぐはぐで回答になっていません。 
もしかすると、県側の言う「放流地点」を導水路出口のことと考え、それに対し、導水路出口より上流の「西俣非常口から流す」と回答すれば十分と判断したのかもしれない。けれど、それでもちぐはぐであることには変わりない。 

また、回答案では「渇水期の河川流量は、0.78㎥/秒と予測しており…」と記述してありますが、環境影響評価書に書かれた数字とは違っています。評価書では、工事中の予測値が0.78㎥/秒で、完成後は0.62㎥/秒になるとしていました。誤植かもしれません。
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これは環境影響評価書(2014/4)より 

別欄にはこんなことを書いてありますけど、「検討・実施していく」「ご協力を得ながら進めていく」となっており、これでは環境影響準備書段階から進歩がありません。結局、具体的にどうやるのかは不明です。
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JR東海回答案よりコピー 




さて、西俣での環境保全措置が困難さは、ポンプアップ案では対応できない可能性が高いという点にあります。

渇水期流量が現状1.18㎥/秒からトンネル完成後0.62㎥/秒に、0.56㎥/秒分が減ると予測したのは取水堰上流地点です。

ここは、塩見岳から流れてきた「中俣」と、悪沢岳から反時計回りに流れてきた「小西俣」との合流点直下です。

中俣、小西俣とも流域面積はほぼ同じなので、流量も同じ程度と考えられます。0.6㎥/秒ぐらいずつ、という具合でしょうか(平成30年度事後調査によると小西俣渇水期流量は0.039㎥/秒であった)。

ふたつの川のうち、中俣のほうはトンネルから離れているので、工事の影響は受けにくいでしょう。ですから、減少量0.56㎥/秒は、小西俣で起こるとの試算結果の反映である可能性が高い。

図示するとこんな具合です。
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国土地理院ホームページ 電子国土Webより複製・加筆 
JR東海は地図中の斜坑(西俣非常口)からポンプアップした湧水を放流するとしているが、小西俣の流量が減った場合には無意味である。 

小西俣の渇水期流量はゼロに近くなると試算されていたのかもしれません。しかし、詳しいデータが出されていないので何とも言いがたいところです。

そこでもう一度知事意見を見ると、「季節ごとに(特に渇水期)流量と減少量予測の数値や影響範囲等を調査し…」書いてあるのですが、この点についてJR東海の見解は示されていません。 

仮に、小西俣のトンネル交差地点で流量が減るとします。そこは西俣非常口から6㎞ほど上流で、標高は1900m以上、トンネルからの標高差は約800mとなり、ポンプアップは絶望的かと思われます。

質問には答えず、詳しい試算結果は不明で、そのうえ現在の唯一の対策であるポンプアップは役に立たない可能性がありますから、この回答案を受け入れてはダメでしょう。

そもそも日本地図を見渡して、標高2000m級の高地を流れて魚類を養っているような河川は多くありません。北アルプスと南アルプスのそれぞれ一部だけだと思います。西俣の環境は国内に代替性がないという点を、JR東海は把握しているのでしょうか。

ツッコミどころはまだまだありますが、長くなるので続きは次回。


雨畑ダムの堆砂除去を優先すべき

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昨日30日の静岡新聞は、山梨県早川町にある雨畑ダムの堆砂問題について、特集記事が組まれていました。

埋まるダム、迫る危機 山梨・雨畑川、静岡新聞社ルポ

住民意識調査の概要もあります。

動画もあります。吊り橋が埋まりかけています。

ダムの総貯水量に対する堆砂の割合(堆砂率)は93%で、その量は1274万立米にもなります。しかし土砂は既に湖面よりもずっと高い地点にまで積み重なっているので、実際にはさらに多いのかもしれません。

専門的なことは分かりませんが、ここまで土砂に埋まってしまうと、ダム上流側の水害だけでなく下流側にも被害を及ぼしかねないような気がします。東海地震/南海トラフ大地震に耐えられるのでしょうか。

地元の方々も立ち上がり、先日は静岡県の川勝知事が堆砂問題で協力する意向を表明しました。

早いうちに、土砂の本格的な除去作業が行われることを願います。


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ところで早川町内には、リニアの南アルプストンネルや第四南巨摩トンネルおよび切土工事により329万立米の発生土が掘り出される見込みです。これは町内あちこちに仮置きされ、「活用」されることになります。とくに早川芦安連絡道路は、盛土部分にリニアからの発生土を大量に「有効活用」することにより建設コスト削減が図られるそうです(別資料によると120万立米)。町内では別の道路整備にも10万立米を使うそうです。

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何度もこのブログで指摘してますが、これら道路整備に雨畑ダムの堆砂を使うことは検討しなかったのでしょうか? 

残る200万立米近い発生土の行き先は未定のままです。山梨県駅の整備に使う構想もあるようですが、リニア発生土の使い道の検討など後回しにして、、今はダム堆砂の搬出を最優先すべきだと思います。

もしかすると、JR東海としてもトンネルの掘削順序等の再考を迫られるかもしれません。
南巨摩第四トンネルの青崖東非常口からは、東隣の富士川町側に予定されている保守施設等への分岐路まで掘る工事契約となっている。このため、早川町内の路線距離に比して過大な土砂が掘り出されることになった。

仮にダム堆砂除去でリニア工事が停滞するような事態になっても、某県の赤シャツ知事は不平を口にしないで頂きたい。




変な記事が多すぎる

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またまた、リニア静岡工区を記事が出てきました。

リニアを巡るJR東海と静岡県の“混迷”、解決のカギは「河川法」か 

これもまた、違和感を抱く記事でありました。




ちょっと通常の取水について考えてみます。

取水を行うのだとしたら、河川管理者の許可が必要となります。
このとき、申請書に記載すべき事項は次の通りになるそうです。
(河川法第23条、第24条、第26条、施行規則第11条)

【水利使用の許可の申請書に記載すべき事項】
河川の名称 
水利使用の目的 
取水口、注水口又は放水口の位置 
取水量等 
取水の方法 
・工作物及び土地の占用
・土地の掘削等についての情報
水利使用の機関並びに工期 

【申請書に添付しなければならないもの】
水利使用に係る事業計画の概要
使用水量の算出根拠
河川流量と申請取水量、関係河川使用者の取水量との関係
・水利使用による影響及び対策の概要(治水、関係河川使用者の河川使用、竹木の流送、舟・いかだの通航、漁業、史跡・名勝・天然記念物 等)
・工作物の新改築等の場合における工事計画に係る図書
・関係河川使用者の同意書
・土地等に関する権限を取得する見込みが十分であることを示す書類
・他の行政庁の許認可処分又は見込み
・その他参考となるべき図書
福井県のホームページには、ひな形としてまとめられているのでそちらもご参照ください。

河川管理者はこれらの内容を審査することになります。概要についてはこちらをご覧ください。
国土交通省 水利使用許可の判断基準
https://www.mlit.go.jp/river/riyou/main/suiriken/kyoka/index.html

これらの記載事項に問題がない場合には、その他の関係河川使用者に通知がなされ、協議がなされることとなります。
(河川法第23条、第38条~42条)

イメージ 1許可されると、事業者はそれを掲示することになります。これは静岡市の藁科川にあったものです。 

リニア・南アルプストンネルの工事で予想される流量減少の場合、  を付した事項は不明です。仮に、利水目的でこれらが欠落した申請書を提出した場合には、突き返されるだけではないでしょうか。

だから、例えば、流量減少の試算根拠だとか、流量の減少する範囲だとか、通常の取水では自明であって当然の事項を明らかにするために、長々と協議が続けられているともいえます。

これはあくまで利水への影響という面であって、生態系保全についてはさらに多岐にわたる情報が必要となります。

JR東海が「ふつう」からずれた対応を続けているから、協議が長引いていると思うのですが、引用記事の執筆者様は、もしかしたら、通常の河川水占用許可に必要となる情報について調べておられないのかもしれません。

また、引用記事の末尾で執筆者は、
大井川水系の管理者を静岡県から国交省に戻す。その上で河川管理者の国交省がJR東海に建設許可を出す。これで中央新幹線は着工できる。 

と書いてますけど、これは間違っているんじゃないのかなあ。

国土交通省が認可した民間事業について、その事業者が都道府県もしくは他の行政機関による許認可を受けられずにいる場合に、その許認可権を国土交通省に移行させるようなことが横行するのであれば、それはかなりヤバいと思うのであります。

そもそも事業内容に難があることをなぜ疑問視しない?




読売新聞静岡版のおかしな記事

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ここ一月あまり、リニア関連記事検証コーナーのようになってしまってますが、またも8月8日読売新聞朝刊に気になる記事がありました。
(静岡県版だけに掲載された記事かもしれません。)


「完全な対策 限界ある」 検討委・名大教授

 JR東海が設置した大井川水資源検討委員会の委員として、リニアの建設が大井川の水量や環境に与える影響を議論した戸田祐嗣・名古屋大学教授(河川工学)に話を聞いた。

 静岡工区のトンネルで生じた湧水については大井川の減水分を導水路トンネルで戻すという結論が出た。
 工事の影響を把握できるようなモニタリング(継続監視)計画を立て、工事を進めながら戻す量を判断していく想定だったが、最近になって県はトンネルの湧水を全て大井川に戻すようにJR東海に強く要求するようになった。
 大井川が流域の住民にとって非常に重要であることは理解できるが、県はその後も詳細計画を求めるなど、徐々に交渉のハードルを上げているように映る。
 地形や地質が複雑な南アルプスの工事は実際に進めた上でないと分からない部分もあり、現段階で網羅的に完全な対策を明らかにするのには限界がある。 

2014年8月に環境影響評価手続きが終了しました。しかし大井川で流量減少が予想されたことに対して、JR東海は具体的な環境保全措置を評価書に記述しないままでした。

2014年12月、JR東海は「大井川水資源検討委員会」を自主的に設置し、環境保全措置の手法を議論し始めます。議事概要によれば、JR東海からの提案を、JR東海が招集した有識者が検討してゆくという方式であったようです。静岡県・静岡市がオブザーバーとして出席してますが、発言資格があったかどうかは分かりません。翌2015年11月の大4回委員会で、導水路案を基本とするとの結論が出たようです。県民に正式に公表されたのは2017年1月17日です。その妥当性についてはまだ議論が続いています。

記事には「静岡工区のトンネルで生じた湧水については大井川の減水分を導水路トンネルで戻すという結論が出た。」とあります。経緯を知らなければ、導水路案で決着したかのように思ってしまうかもしれませんが、あくまでJR東海の設置した委員会としての結論が導水路案になったということであって、地元自治体や利水者および県民の合意が得られているわけではありません

読者に誤解をもたらす表現だと感じました。

「最近になって県はトンネルの湧水を全て大井川に戻すようにJR東海に強く要求するようになった。」

これも誤解されています。

こちらは環境影響評価準備書に対する県知事意見と事業者見解です(評価書より複製)。
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県知事意見が事業者に提出されたのは2014年3月25日です。はっきりと「トンネルにおいて本県境界内に発生した湧水は、工事中及び供用後において、水質および水温等に問題が無いことを確認した上で、全て現位置付近へ戻すこと。」と書いてあります。全量を戻すことは導水路案の出てくる前から要求しています

県はその後も詳細計画を求めるなど、徐々に交渉のハードルを上げているように映る
⇒事業者側が詳細な計画を提示してこないのだから、事業計画を詰めてゆくのは当然じゃないのでしょうか・・・?

この先生のコメントは、どうも先月の週刊新潮のフェイク記事によく似ているのですが、なにか関係あるのでしょうか?

⇒7月20日 当ブログの記事
デイリー新潮  これはフェイクニュースだろう

くだらない記事が多すぎるのである。

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わけのわからない記事があまりにも多いのである。



JR東海と静岡県のリニア中央新幹線未着工問題、国が調整に乗り出す

静岡県がJR東海に対し、大井川水系の減水問題解決を理由にリニア中央新幹線の工事を認めない問題について、国土交通省が調整役として動き出した。8月9日、国土交通省、静岡県、JR東海が連名で合意文書を発表した。2027年度の開業目標に対し、ようやく最後の難関が突破されようとしている。 

●問題は流量減少だけではない。特に発生土期置き場の安全性・自然破壊は、むしろ流量減少がクローズアップされるより前から懸念されていた。静岡新聞の過去記事を並べてあるのでご覧いただきたい。https://minamialpstunnel.web.fc2.com/oldnews/Shizuoka-news.html
●三者合意に具体的進展はない。国土交通省ホームページ 

JR東海は全国新幹線鉄道整備法にもとづいて着工へ準備してきた。その中で環境影響評価の手続きも済ませている。2011年に「計画段階環境配慮書」を公表、「環境影響評価方法書」を公告。2013年に環境影響評価準備書の公告。2014年に環境影響評価書を国土交通大臣に提出し、環境大臣、国土交通大臣の意見を経て、最終的な「環境影響評価書」を公告し、工事実施計画の許可を得た。

●大臣意見ではボロクソな評価であった。環境大臣意見の前文より――
・河川の生態系に不可逆的な影響を与える可能性が高い。
・これほどのエネルギー需要が増加することは看過できない。
・本事業の実施に伴う環境影響は枚挙に遑が無い。

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少なくとも「環境に優しい」事業という見立てではない。

JR東海だけでなく、多くの鉄道トンネル工事に関して、各河川の影響と水利については工事実施中に実際の影響を調査し、必要な対策を講じるという考え方だ。しかし、静岡県はそれを良しとしなかった。「環境影響評価方法書」と「環境影響評価準備書」の公告時点で、静岡県知事は「大井川水系のトンネル湧水をすべて大井川へ戻すべき」と要望していた。
ここから両者の考え方にずれが生じる。JR東海は「減量分を戻す」。静岡県は「湧水すべてを戻せ」となった。大井川水系のダムは渇水期間が長い。「これ以上水を減らすな」「渇水がなかった頃に戻したい」という気持ちはわかる。しかし、南アルプスの伏流水は大井川の分だけでなく、地下水に浸潤する分もある。湧水のすべてを大井川に戻した場合、地下水の枯渇、大井川の増水による環境影響も考慮する必要がある。

●文章がおかしい
○静岡県知事は「大井川水系のトンネル湧水をすべて大井川へ戻すべき」と要望していた。
ここから両者の考え方にずれが生じる。JR東海は「減量分を戻す」。静岡県は「湧水すべてを戻せ」となった。
静岡県側の要求は変わってないじゃん。
南アルプスの伏流水は大井川の分だけでなく、地下水に浸潤する分もある。湧水のすべてを大井川に戻した場合、地下水の枯渇、大井川の増水による環境影響も考慮する必要がある。
⇒????
多くの鉄道トンネル工事に関して、各河川の影響と水利については工事実施中に実際の影響を調査し、必要な対策を講じるという考え方だ。
⇒ルート再検討も工法の変更もせずに、地下水を抜く前提のNATM工法で、一級河川と交差するトンネルを掘削した事例がどれだけあるのか教えてほしい。

そこでJR東海は2014年に「大井川水資源検討委員会」を設置。学識経験者や技術者による環境保全措置の検討を実施している。一方、静岡県も2018年に「南アルプス自然環境有識者会議」「大井川利水関係協議会」を設立。JR東海に対して「大井川水系の水資源の確保及び水質の保全等に関する意見・質問書」を提出した。これに対し、JR東海は「原則として、全量を大井川に流す」と回答した。
●JR東海が2014年に大井川水資源検討委員会を設置したのは、静岡県との協議がもつれたためではない。
JR東海は評価書(2014/423)に具体的な環境保全措置を記述していなかったため、国土交通大臣意見(2014/7/18)において、”大井川”と名指しして環境保全措置の検討を命じられた。本来は評価書補正作業として対応すべきであるが、同社はそれを先送りして補正作業を終えた(2014/8/29)。事業認可後になって、大臣意見で指示された専門家会議として、大井川水資源検討委員会を設置したのである(12/19)。

それでもまだ静岡県は納得しない。今度は湧水全量を戻す具体的な方法の説明を求めた。あわせて水資源の変化と建設残土による生態系破壊の予測と対策も求めている。JR東海側としてみれば、これらの手続きは着工後の調査と合わせて正しく予測して着実に実行したい。しかし静岡県側は着工前に示せという。これ以降、JR東海がどれだけ言葉を尽くしても、両者の話が噛み合わない。
●発生土置き場の問題は今に始まったことではない。 
千枚崩れで「岩屑なだれ」が複数回起きていたと指摘されたことについて執筆者はどう評価しているのか?
●量と場所を特定せずに河川流量を減らすことが許されるという法的根拠を知りたい。

JR東海としては環境アセスの手続きも済み、過去の鉄道トンネルと同等の科学的調査と「工事中および完成後の対処法」で十分という認識だった。しかし、静岡県はそれでは不十分という認識だ。その認識のずれを国土交通省が埋める形になる。 
●大臣意見でさえ、それでは不十分としているのだけど。

国土交通省の役割は、まず両者の意見・要求から「着工前にすべきこと」「着工後にすべきこと」を整理する。その後、JR東海に対しては具体的な説明を促し、静岡県に対しては、JR東海の回答を保証して着工を促す。
●どこに書いてあるの?
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南アルプストンネルは史上まれに見る大工事となる。工期の見積はあっても、実際にトンネルを掘ってみないことには、2027年の開業目標が達成できるかどうかわからない。予想外の出水、有害物質の露出などで工期が遅れるかもしれない。逆に、見込んでいたアクシデントが起こらず、工期が早まる場合もある。もっとも、こうした工期の変動は着手してからわかる。着手前の足踏みは想定外だろう。中央新幹線を前提に、沿線のさまざまなプロジェクトも動き出している。早期解決、早期着工を望む。
●何も起こらなかった場合、JR東海が先に掘るとしている長さ12kmの導水路トンネルはどうなるの? 壮大なムダになるんですけど。
自然保護地域で実際にトンネルを掘ってみないことには、2027年の開業目標が達成できるかどうかわからない。⇒一応、自然保護地域なのだから、無責任な立場で、そういう発想を安易にすべきではない。

●ジャーナリストならば、鉄道ファンではなく中立的な立場で書いてほしい






「現代ビジネス」 間違いだらけのリニア記事

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昨日(15日)配信されたリニア関係の記事もひどい内容であったので、またファクトチェックおよび疑問提起。

現代ビジネス JR東海・静岡「リニア問題」第2ラウンドへ…国交省参戦の行方
8/15(木) 11:00配信


⇒まず、何が第1ラウンドだったのか?

中央新幹線が静岡県を通過する約11kmの区間が南アルプスのトンネルであり、トンネル掘削による湧水によって大井川水系の水量が減る。だからトンネルから出た水をすべて大井川に戻してほしい。静岡県としては水利問題がもっとも重要だ。年々流量が減少している大井川の水をこれ以上減らすわけにはいかない。こういう理屈だ。 

⇒そもそも河川法では利水目的以外での流量減少を想定しておらず、流量が減る前提のトンネル工事は許可できない。本来であれば河川法上許されない工事を認めさせようとしているところに根本的なムリがある。(国会答弁より)
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 JR東海としても、自社の利益のために悠久の自然を破壊するつもりはなく、なるべく悪影響を与えないように配慮していく方針だ。「全国新幹線鉄道整備法」に準拠して環境影響評価を実施し、その結果を国に届けた上で、2014年に国から中央新幹線品川~名古屋間の建設許可を得ている。

⇒誤解されているようであるが、環境影響評価は環境影響評価法に基づく制度である。新幹線建設は、同法では「第一種事業」に区分される。第一種事業とは、事業の実施による環境への影響が特に大きいとされており、事業者の意識とは無関係に、同法に基づき環境影響評価手続きを経なければ事業認可は受けられない。JR東海が環境に配慮して環境影響評価を行うことになったわけではない。

⇒そもそも、JR東海が「悠久の自然を破壊するつもりはない」と本気で考えているのであれば、壮大な環境破壊を避けて通れないリニア中央新幹線計画を実行に移しているはずが無かろう。それにしても、なんでJR東海を慮るの?

 JR東海はこの環境影響評価書を作成する手続きのなかで、沿線地域には十分な説明をしたという認識だ。それゆえに東京都・山梨県・長野県・岐阜県・愛知県では着工できている。

⇒JR東海の認識は「十分な説明をした」といっても、それで地元自治体や住民が納得・合意したか、合意の上で着工できたのか、というのは全くの別問題である。長野県阿智村が「社会環境アセス」を実施した背景や、同県大鹿村での起工式をめぐる騒動について、執筆者は把握されているのであろうか。大鹿村の騒動は、まさしく「説明不十分」が引き起こしたものであり、いまだ工事車両通行、発生土処分をめぐる問題などとして尾を引いている。

⇒なお東京-名古屋のうち、ポツポツと飛び地的に工事が始められたので、用地取得・各種手続が終了していない区間では工事は始まっていない。山梨県の第四南巨摩トンネル東工区~実験線西端(28㎞くらい)も手付かずである(しかも差止め訴訟発生)。静岡工区10㎞を特筆して問題視するのは変だと思う。

 静岡県としては、2013年に作成された環境影響評価準備書において、トンネル湧水のすべてを大井川に戻してほしい、また、県が整備する環境監視体制に参加することと意見している。JR東海からは独自予測に基づいて、「大井川の流量は毎秒2トン減少する」と回答。静岡県中央新幹線環境保全連絡会議が設置された。そして「湧水全量を戻す」という回答がないまま、環境影響評価書が作成された。

⇒ものすごく間違っている。 
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・記事にある事項を時系列に並べるとこうなる。
2013年9月18日JR東海は環境影響評価準備書を作成。ここで「大井川の流量は毎秒2トン減少する」という予測結果を載せた。
2014年3月25日 準備書に対する静岡県知事意見を送付。湧水全量を戻すよう要求。
2014年4月22日 静岡県は中央新幹線環境保全連絡会議を設置
2014年4月23日 JR東海は評価書を作成。準備書への知事意見に対する事業者見解では、湧水を全量戻すという明確な記述はなかった。
2014年8月29日 JR東海は補正評価書を作成。

JR東海は2017年の環境影響評価事後調査報告書において、導水路トンネルで毎秒1.3トンを常時大井川に戻し、毎秒0.7トンについては必要に応じて戻すと記した。「全量戻し」を求めている静岡県はこれを不服とし、「南アルプス自然環境有識者会議」「大井川利水関係協議会」を設置。2018年9月に「大井川水系の水資源の確保及び水質の保全等に関する意見・質問書」をJR東海へ提出。JR東海はここで「湧水全量を大井川に戻す」と回答した。

 しかし、静岡県は「湧水全量を戻す具体的な方法」と「南アルプスの生態系環境保全の方法」について、JR東海にさらなる回答を求めている。JR東海から納得できる回答がなければ静岡県区間の着工を認めない考えだ。 

⇒具体的なデータを提示してこなかったから、深い議論ができないのである。例えば、渇水期における予測地点の追加、広範囲にわたる詳細な予測結果、湧水放流地点より上流側への対策など、最初から求められてきたのにいまだ出してこない事項もある。

8月4日のブログに書いた文章をご覧いただきたい。


 トンネル工事は自然を相手にするだけに、予測不可能な事態はある。それをすべて、科学的に納得させよ、といっても無理がある。着工しなければ分からないことを、着工前に示せという静岡県側の態度は、過度な要求だ。

⇒予測不可能な事項が多いのであれば、事業者側としては可能な限り予測の容易な事業内容に改めるべきである。それが環境影響評価というものである。事業内容の修正が全く不可能な事業というのは概して環境に悪い。

 背振山周辺は福岡都市圏の水源となっているため、水資源の周辺環境を維持しつつ建設された。事前調査による湧水量予測はトンネル完成後の実測値にかなり近く、また予想外の事態にもきちんと対処している。その内容は、土木学会のウェブサイトで公開されている、鉄道・運輸機構の担当者による論文「周辺水環境を考慮したトンネルの設計施工 -九州新幹線,筑紫トンネル-」に詳しい

⇒筑紫トンネル建設工事の報告書には次のような記述がある(斜線部分)。
本トンネルルートの平面線形は、起点方にR=6,000m,終点方にR=9,000mの曲線区間を採用したS字形をしている。これは、平面的に曲線を用いることで、各ダムやダムへ流入する河川への影響範囲から極力離れたルートを選定したためである。
…比較した結果、直線ルートは、河内ダムに最も接近し、ダムに流入する河川付近の直下を通過するため、影響が懸念される。また、山神ダムにつちえも、平面的な隔離はあるものの、流入河川の直下を通過することとなる。…   31ページ目より

トンネルのルートをどこにもってくれば河川への影響を最小化できるか検討していたという。しかしJR東海はルート選定にあたり、大井川への影響を回避すべくどのような検討を行ってきたのか明らかにしていない。ここが根本的に違うのである。

環境保全措置は、回避⇒最小化⇒代償という順序で検討するのが基本とされる。大井川・水問題の場合、
1.河川流量に与える影響の回避
2.河川流量に与える影響を最小化する方法
3.影響が避けられない場合にとるべき対応

という順序で考えるべきである。これをミティゲーションという。1.については、工法やルートの再検討などである。場合によっては事業予定地の大幅変更や事業中止も選択肢に入れなければならない。ところが、JR東海は1.や2.についての検討はせず、いきなり3.を出してきた。つまりトンネル配置計画等の再検討はせず、湧水を導水路で戻す(=排除する)方策だけを提案してきたのである。だから話がおかしくなっているのである。

 トンネル工事の残土問題については、長野県下條村が8月6日に「リニア中央新幹線関連工事対策協議会」の初会合が参考になる。
  この協議会は、今後の中央新幹線工事で発生する残土処理地区の埋め立てで生じる課題や、埋め立て後の用地利用計画について、JR東海などと情報共有し対応を目的に設けられた。JR東海は協議会への連絡を密にし、スケジュールも協議会で検討する。地元に十分納得していただけた段階で工事を進めたい考えだ。
 
⇒これは静岡工区を念頭に置いた記述だろうか、それとも沿線全体を対象としているのだろうか。そこがはっきりしない記述である。仮に前者であれば、県や静岡市の設置した体制に不満があるということなのだろうか。

なお似たような協議会は沿線あちこちに設置されている。個人的にリンク集を造ってあるので参考にどうぞ。https://minamialpstunnel.web.fc2.com/hasseidookiba.html



準備書発表前に地権者と水面下交渉?

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パソコンの中を整理していたら気になる資料が出てきた。


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南アルプスの静岡県側に広大な土地を所有する特殊東海製紙の「2012年3月期決算説明会」とある。

JR東海が、発生土を大井川上流域に置き去りにする意向であることが明らかにされたのは、2013年9月の環境影響評価準備書である。2011年9月の方法書段階では、どれだけの土砂が出て、どう処分する意向であるか、全く不明だった(画像中の「200万㎥新聞報道」というのは2012年2月頃の県による試算)。

2012年では何も分からなかったはずである。

それなのに、準備書が発表される前から地権者側は、発生土を同社の土地内で処分する意向であることを知っていたことになる。そのほか林道整備とか、作業員宿舎を観光事業に転用するなど最近になって決まったことが、この時点で固まっていたようである。

JR東海から打診を受けていたとしか考えられないのだけど、アセスの手続き上、これはヘンじゃないのか?

なぜかスルーされる「発生土南アルプス山中大量置き去り計画」

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ここ二ヶ月余りのあいだ、「静岡VSJR東海」転じて「大井川の水問題が解決されれば着工できる」といった報道が相次いでいます。今月に入ってからは「国交省が調整に動いたから事態の打開が期待される」というニュアンスの記事も増えました。

ところで、一連の報道がほぼ無視しているのが360~370万立米に及ぶ発生土の問題です。

仮に河川法上の各種許可を得たとしても、発生土置き場を確保しなければトンネルを掘ることは物理的に不可能です。それなのに、なぜか完全に無視されているのであります。というか、河川法上の許可に必要な関連法令として、森林法に基づく林地開発許可が必要になるんじゃないのな?

現在、JR東海は大井川沿いの燕沢平坦地と、その他6地点に置き去りにするとしています。燕沢以外は小規模ですから、ほぼ全てを燕沢に集約するつもりなのでしょう。

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「中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価書【静岡県】平成26年8月」に基づく事後調査報告書(導水路トンネル等に係る調査及び影響検討結果)
より複製 

このブログで何度も繰り返した通り、燕沢平坦地は周囲を崩壊地に囲まれた河原という特異な土地です。

いくつかの文献や資料に基づくと、西側にそびえる千枚岳(2880m)の東面が大崩壊し、大井川を埋め立て、その堆積物を川の流れが削り込んでいった土地であるといえます。こうした大崩壊は少なくとも4度は起きているそうです。崩れた跡は「千枚崩れ」と呼ばれています。
https://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/tokai-news/CK2018123102000088.html

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黄色の点線で囲ったのが燕沢平坦地
Google Earthより複製・加筆 

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国土地理院ホームページ 電子国土Webより複製・加筆 
黄色の線は現在の林道。JR東海によると、発生土を積み上げた後は橙色の線のように盛土上へ付け替えるらしい。 


確かに、植林される前に撮影された画像では、小型の河岸段丘のような地形が確認できます(ブログ作者は実際の写真で実体視/当時の空中写真は静岡県立図書館で閲覧可能)。つい最近まで川が削っていた土地のようです。



そのほか、発生土置き場とは川を挟んで対岸の斜面も、表層が崩壊しています。3つ並んでいる崩壊地のうち最大のものの比高は600mに達します。

さらに個人的にヤバそうと思ったのは発生土置き場背後の崩壊地。新旧の画像を比較すると、40年足らずの間に確実に巨大化しています。
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現状では、谷底の幅は250mぐらいあるので、土砂崩れが堆積してもさほど問題はないでしょう。「自然現象」として放置されるだけかもしれません。

しかしJR東海は、発生土を積み上げて川幅を50mにまでせばめる計画です。すると土砂崩れが起きた際に、盛土とあいまって川を塞ぐリスクは現状よりも増します。河道閉塞は大規模土石流につながりかねません。

また、発生土置き場対岸の斜面は、表層が崩壊しているだけでなく、それよりもっと深い部分から斜面がずれ動く「地すべり」であると判定されています。

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地すべり分布図 赤石岳 より複製・加筆
黄色く塗った部分が地すべりとみなされている範囲

現行の盛土案だと、永久に流路が右岸(西側)よりに固定されることになり、洪水のたびに地すべり先端を削り続けることが予想されますが、大丈夫なのでしょうか。いまのところJR東海は、この地すべりについて言及していません。

◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ところで森林法では、「地域森林計画の対象民有林」で面積1ha以上の改変行為を行う際には、都道府県知事の許可が必要になると定めています。
林地開発許可制度(林野庁のページ)
http://www.rinya.maff.go.jp/j/tisan/tisan/con_4.html
静岡県内の地域森林計画対象区域
http://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-610/tiikishinrinkeikaku.html

これによるとJR東海が発生土置き場とすべく目論んでいる燕沢平坦地も、地域森林計画の対象となっていることが分かります。また、JR東海の公開した資料から換算すると、発生土置き場の面積は約14万㎡(14ha)に相当します。

したがって、燕沢平坦地を発生土置き場として使用するためには、静岡県知事の許可が必要になります。

以下、林野庁のホームページから引用。
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今の計画では、「水害の防止」を除き、基準は満たせないのではないかという気がします

無人地帯であることから、発電施設を除くと人命・財産への心配は少ないと思われますが、広い範囲の環境をメチャクチャにするリスクはあるといえます。

大井川の流量問題は環境影響評価手続きの延長として扱われているうえ、影響が多方面の利水関係者に及ぶことから、県中央新幹線環境保全連絡会議での主要テーマとなり、クローズアップされやすい問題であったと思われます。

これに対し発生土置き場は、どちらかというと安全面が問題となっており、そのため環境影響評価手続きの枠内では深く扱われていません。このために注目を浴びにくかったのかもしれません。

リニア計画を追っかけていらっしゃる「鉄道ジャーナリスト」の方々には、これからは発生土置き場とその周辺環境についてご注目していただきたいと思います。

評価書を書き直してくださいな

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2014年にJR東海が作成した環境影響評価書には次のような記述がありました。

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ンネルの工事中は、湧水をポンプでくみ上げるため河川流量は減らない、という見解です。


ところがこのたび、この内容がひっくり返る出来事がありました。

2015年3月13日、JR東海は南アルプストンネル山梨工区施工業者の入札を開始し、8月27日に業者が決定しました。このときの工区設定は、早川橋梁から7.7㎞区間となっていました。早川橋梁から7.7㎞というと、静岡県側に1㎞ほど入った地点となります。
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「中央新幹線南アルプストンネル新設(山梨工区)工事における環境保全について」より引用 


なぜ静岡県部分つまり大井川流域の地下を山梨側から掘るのか不明のまま、山梨工区では掘削工事が始まりました。

今月20日に静岡県庁において、国交省担当者も出席した協議が開かれました。会議を傍聴された方によりますと、大井川流域の地下を山梨側から掘る理由についてようやく説明があったそうです。

なんでも、県境と7.7㎞地点との間には活断層とみられる畑薙山断層が南北に延びており、これを突破するにあたり、技術的な理由で下方つまり山梨側から掘削しなければならないのだそうです(詳細は不明)。

実は静岡市の委託調査によると、トンネル掘削時には畑薙山断層に沿って大幅な水位低下が起こると予想されています。トンネル内への大量出水を意味するのかもしれません。
しかし山梨側から掘削するのであれば、ここでの湧水はトンネル貫通まで静岡県側に戻すことはできません。静岡県側が反発するのも当然です。

静岡新聞 
「湧水全回復、一定期間困難」 意見交換でJR認識、県は反発 
(2019/8/21 07:23)
https://www.at-s.com/news/article/politics/shizuoka/671598.html


そして冒頭に書かれた評価書の記述は間違っていることになります。

間違った情報が書かれているのですから、まずは評価書を修正してもらわなければ困ります。

国は評価書を審査して事業認可しました、転じて、このままでは国土交通省は間違った図書に基づき事業認可したことにもなります。


◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 


JR東海は、シミュレーションを行った時点、つまり準備書を発表する前には、トンネルのどの部分で出水が起こりやすいか予測していたはずです。

ならば、そうしたデータを準備書に記載し、関係者との協議を経たうえで、環境保全措置として適切な工事順序を定め、評価書を作成することが可能であったはずです。なぜ重要な情報を伏せたまま評価書を作成し、5年も経ってから覆したのでしょうか。

事業を遅らせているのはほかでもない。事業者本人です。

大言壮語を書いて事業認可を受けたのか?

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鉄道の建設及び改良の事業に係る環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針、環境の保全のための措置に関する指針等を定める省令
という、長ったらしい名前のルールがあります。

法対象事業の鉄道建設や改良における環境影響評価の手続きは、これに基づいて進めることになっています。

気になる部分をコピペ

(環境影響評価の項目に係る評価の手法)
第二十六条 事業者は、対象鉄道建設等事業に係る環境影響評価の評価の手法を選定するに当たっては、次に掲げる事項に留意しなければならない。
一 調査及び予測の結果並びに第二十九条第一項の規定による検討を行った場合においてはその結果を踏まえ、対象鉄道建設等事業の実施により当該選定項目に係る環境要素に及ぶおそれがある影響が、事業者により実行可能な範囲内でできる限り回避され、又は低減されており、必要に応じその他の方法により環境の保全についての配慮が適正になされているかどうかを評価する手法であること。
二 前号に掲げる手法は、評価の根拠及び評価に関する検討の経緯を明らかにできるようにするものであること。

(後略) 

下線部に注目してください。環境への影響が、事業者により実行可能な範囲内で、できる限り回避・低減されているかどうかを評価しなければならない、とされています。

リニア中央新幹線の事業主体であるJR東海も、このルールに従って環境影響評価手続きを進めてきたはずです。そして大井川の流量に対する評価は次のように結びました。

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赤く囲ったように、「トンネルの工事を開始し、先進坑が隣接工区と貫通するまでの間は、トンネル内に湧出した水を汲み上げて非常口から河川に戻すことから、河川流量は減少しない。」と結論付けたのです。

評価書に書いてある以上、工事中に河川流量を減少させないことは事業者(JR東海)にとって実行可能であるはずです。この評価書に基づき事業認可を受けた以上、この記述を守る義務があります。

しかし、今頃になってこんなことを言い出すのなら、評価書の記述は何だったのだ?という話になります。環境影響評価手続き終了後に新事実が判明したのでしょうか。それとも大言壮語、つまりもとより実行不可能なことを書いて事業認可を受けようとしたのでしょうか。 

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JR東海は、なるべく早いうちに環境影響評価書を修正すべきです。







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