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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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南アルプス標高2000m残土捨て場ってこんなイメージかな?

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最近、やたらと忙しくて久しぶりの更新です。
 
イメージ 1
 
とーとつですが、手前の河原から、矢印の先にある稜線まで大量の土砂を運び上げるという話を聞いたらどう思われますか?

普通の感覚なら、耳を疑うと思います。何考えているんだ?と、疑問に思うに違いありません。
 
こんなことを「日本を代表する技術者達が考えている」と聞いたらどう思われますでしょうか?
 
 
◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 

静岡県北部の南アルプス山中では、こんなことをJR東海という一流企業が「国家的プロジェクト」と称して実行しようとしています。
 
最初にお断りしておきますが、この写真、南アルプスではありません。静岡市街地郊外の安倍川河川敷から、東側の山並みを撮影したものです。
 
JR東海が南アルプスを横断するリニアの長大トンネルを建設するに当たり、南アルプス山中の扇沢という、大井川の谷底から400~500mも高い、急峻な谷側の源流(標高約2000m地点)に、大量の建設残土を積み上げようという計画を立てています。正確な量は不明ですが、おそらく東京ドーム2杯程度にななるかと思います。
イメージ 2
 
 
言葉や地図でムチャクチャさを何度も繰り返し指摘しましたが、どうも実感としては伝わりにくいと思い、何とか分かりやすく伝える方法はないものかと逡巡しておりました。できれば現地の写真があればいいのですが、かといって現地にまで様子を見に行くには、最低でも二泊三日程度は必要なので、簡単に行くこともできません。
 
というわけで、市街地から近いところに似たような地形-比高400~500m程度の急な谷川の上側に平坦地がある-はないものかと地形図とにらめっこし、「なんとなく似ているな」と思ったのが冒頭の写真の場所です。静岡市民以外の方々には地理的概念が把握しづらいと思いますが、なにとぞご容赦ください。JR東海のムボウさを感じ取っていただければ、それで十分であります。
 
こちらが地形図。静岡市街地から北へ約10㎞、静岡市民ならおなじみの竜爪山から安倍川に至る一帯です。写真で右下に写っている大きな橋は安倍川にかかる竜西橋といいます。
イメージ 3
国土地理院地形図閲覧サービス「うぉっちず」より複製・加筆
 
地図中、「しゃくし沢」と記したのが検証対象の沢です。写真左下の建物そばに「しゃくし沢橋」という橋がかかっていたので名称は「しゃくし沢」だと思うのですが、地元のロッククライマーの間では「沢口沢」とよばれているようです。どっちなんだろう?
 
この「しゃくし沢」、安倍川との合流点付近の標高は120m程度で、下流部は緩やかな勾配ですが、合流点より水平距離にして800mほどさかのぼった標高200m付近から急に勾配を増し(このあたりにワサビ田がある)、標高450m付近より上は平均勾配60度以上の急勾配となり、標高610m付近より上流側は再び緩やかとなっています。
 
地形図にある急勾配の部分は、実際には岩の露出した崖となっており、ロッククライミングが行われているそうです。写真中で矢印の下に写りこんでいる灰褐色のものが、その岩肌でしょう(何度か様子を見に行ってみましたが、ワサビ田=私有地なのでそこで引き返し、結局、詳細は不明)
 
えー、本題に戻りますと、この沢の標高200m付近から610m付近まで、水平距離は約750mですので、勾配は28度程度となります。
 
改めて写真をご覧ください。写真中に記入した矢印の先が「平均勾配28度、比高410mの谷川の上」にあたるわけです。
 
 

この勾配、南アルプスで発生土置場候補地にあげられている扇沢とほぼ同じです。
扇沢の場合、水平距離850mで標高差は400mですので、平均勾配は25~26度と試算されます。
イメージ 5
国土地理院地形図閲覧サービス「うぉっちず」より複製・加筆
 
2枚の地形図は、右下の拡大ボタンを押すと同じ縮尺で示されます。見比べてみてください。
 
 
あらためて写真を見直します。前述の通り、撮影した安倍川河原は標高120m。写真中の矢印で記した白っぽいのは、くだんの崖です。なのでこの部分は標高550~600m付近。その上の稜線が標高610mほどになります。
イメージ 4
 
ですから、扇沢の上に発生土を運び上げるっていうのは、この写真で置き換えると、手前の河原から稜線上まで東京ドーム2杯分の土砂を運び上げるようなものといえるのではないのでしょうか?
 
理論的にどうこう言う以前に、発想としておかしくありません? 崩れるんじゃないのか?って考えるのが常識だと思うのですが。
 
こちら、右下の白い建物の裏手100mほどのところで撮影した沢の内部。直径1~2mの石がゴロゴロしていて、上流の急勾配部分から土石流として流れ下ってきたのに違いありません。つまり源流部で崩壊が起きた場合、30度近い勾配があれば、2㎞くらいの距離なら簡単に届くわけです。
 
イメージ 6
 
南アルプス扇沢の場合、発生土置場から大井川本流までは1㎞もありません。この「しゃくし沢」よりもっと短いので、発生土が崩れた場合は簡単に大井川を閉塞してしまうでしょう。そうしたらもっと巨大な土石流を引き起こすおそれがあります。
 
 
 

この時期、涼を求めて安倍奥・玉川・井川方面へ川遊びや渓流釣りに出かける方も多いかと思います。その際、安倍川沿いの県道から竜爪山を見上げて、「南アルプスでは、JR東海が河原からあの稜線上に残土を運ぶようなことをするつもりなんだ」って連想していただければ幸いです。

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