「リニア中央新幹線は東海地震で東海道新幹線が寸断されたときのために是非とも必要である」
相も変わらず、新聞やネット上で見かける論理です。
一般の人々だけでなく、JR東海が建設の大きな理由として掲げているし、国交省中央新幹線小委員会の答申にも掲げられているし、ネット上でも「リニア建設すべし」の根拠としても掲げられています。
なんでみんな、信じ込んじゃうんだろう
ちょっと考えを巡らせば、あちこちに矛盾が潜んでいるように思われるのですが…。
なお東海地震というのは駿河湾を震源として起こるM8クラスの地震のことを想定した呼び名です。しかし実際には東南海地震と連動する可能性が高いらしいし、四国沖の南海地震とも連動する可能性もあるので、今回はひっくるめて何回トラフ大地震と呼びます。
①そもそも南海トラフ大地震を念頭において計画された路線ではない。
全国新幹線鉄道整備法に基づく基本計画路線として、東京~甲府~名古屋~奈良~大阪という中央新幹線の基本計画が出されたのは1973年(昭和43年)であり、東海地震のことなど全く考えていない(静岡県御前崎への原発建設を平気で認めていた時代である)。
東海地震の防災対策強化地域を貫いていることに対して、何ら疑問がもたれていないのはその表れ。
たとえば幕末の安政東海地震において、駿河湾奥や甲府盆地でも深度7に見舞われ、震源域が駿河湾奥から南アルプス南部に達していることがわかってきたのは昭和40年代後半以降である。しかし基本計画路線はその後の地震研究結果など全く
②いつ起こるかわからない大地震のために、いつ完成するか分からない迂回路を建設するのは何だかおかしい。
リニア中央新幹線の着工は来年度の2014年、東京~名古屋間が開業するのは2027年と計画されている。しかしこの計画では、あと1年半程度で環境影響評価がまるく収まり、用地買収が終了することになっているが、それは難しいと思う。
リニア中央新幹線の着工は来年度の2014年、東京~名古屋間が開業するのは2027年と計画されている。しかしこの計画では、あと1年半程度で環境影響評価がまるく収まり、用地買収が終了することになっているが、それは難しいと思う。
いくらトンネルばかりとはいえ50㎞程度は地上区間があるし、東京や名古屋郊外では数十ヶ所の縦穴や斜坑の用地を確保する必要がある。残土処分場も必要である。大都市部での用地確保は非常に困難なはずである。
南アルプスなど、工事そのものが困難なうえ、環境保全上の制約も非常に多いはずである。
したがって、開業は数年単位で遅れる可能性が高い。
いっぽう南海トラフの大地震は、歴史時代においては百数十年の間隔で発生している。最短の間隔は90年(1854安政-1944年昭和)である。地質学的スケールからみれば文字記録のある期間などほんのわずかだけれども、この数字を適用できるとすれば、次の南海トラフ地震が2030年代に発生する可能性もありうる。つまり、迂回路としてのリニアが、次の南海トラフ大地震に間に合わうかどうかは、誰にも分からないのである。
それに、東海道新幹線沿線には、神奈川県西部地震、首都圏直下地震、富士川河口断層帯などの地震リスクもある。「次の南海トラフ大地震までの間に、東海道新幹線を長期不通に追い込むような大地震は起こらない」という保証はどこにもない。
リニアの建設中に東海道新幹線が長期不通になったらどうするのだろう?
③名古屋以西での災害リスクを軽視している?
南海トラフ大地震発生時に、名古屋以西の東海道新幹線は無事であるという保証はないし、近畿地方内陸の活断層による地震リスクもある。それなのに名古屋-大阪間の完成は今から30年以上も先の2045年度を計画している。
④リニア計画を認めた国土交通省中央新幹線小委員会において、南海トラフ大地震についての審議は一度も行われていない。
●南海トラフ大地震が発生したら東海道新幹線にどのような被害が予想され、復旧までどのくらいの期間を要するか。
●震災時・復興の過程で必要となる輸送力は、人口減少も考慮してどのくらいになるのか。
●これらを踏まえたうえで迂回路が必要と判断されるのか。
●地震対策の迂回路としてリニア方式は本当に安全・有効なのか。
●JR東海の主張するルートで対策となるのか。
●リニア中央新幹線を建設する以外に対策はないのか。
●リニア中央新幹線の建設中に大震災に見舞われた場合の対応。
●南海トラフ大地震が発生したら東海道新幹線にどのような被害が予想され、復旧までどのくらいの期間を要するか。
●震災時・復興の過程で必要となる輸送力は、人口減少も考慮してどのくらいになるのか。
●これらを踏まえたうえで迂回路が必要と判断されるのか。
●地震対策の迂回路としてリニア方式は本当に安全・有効なのか。
●JR東海の主張するルートで対策となるのか。
●リニア中央新幹線を建設する以外に対策はないのか。
●リニア中央新幹線の建設中に大震災に見舞われた場合の対応。
以上のように基本的なことを一度も審議せずに「東海地震対策として有効」と認めることはできないはずである。
それゆえ、「震災時の迂回路」というのは後付けの理由のように見えてしまうのである。
⑤南アルプスを通ること自体が災害リスクの増大につながる。
長くなるので過去記事をご覧ください。
●そもそも南アルプスルートは東海地震の防災対策強化地域を貫く。
●長大トンネルが本当に安全なのか検証されていない
●長大トンネルが本当に安全なのか検証されていない
→http://park.geocities.jp/jigiua8eurao4/SouthAlps/anzensei/probrem-anzensei.html
●南アルプスの長大トンネルでは救助が困難であり、かえって災害リスクとなりかねない。
→http://blogs.yahoo.co.jp/jigiua8eurao4/archive/2013/03/11
●南アルプスの長大トンネルでは救助が困難であり、かえって災害リスクとなりかねない。
→http://blogs.yahoo.co.jp/jigiua8eurao4/archive/2013/03/11
少なくとも公式の場では、この南海トラフ大地震に対する議論が、リニア計画が具体化される過程で行われた形跡は一度もありません。
それなのに、何ゆえ「迂回路としてのリニア中央新幹線が必要」論が力を持っているのか、私にはよく分かりません。