南アルプスは山梨・静岡・長野3県にまたがっています。
環境影響評価も都道府県単位に行われます。それゆえ、準備書に記載された各種の図も、県境でばっさち切られてしまっています。
しかし境界線を引いたのは人間の勝手な都合。
当たり前ながら動物の行動も植物の分布も、風景も水の流れも、県境とは関係なくつながっています(まあ、山の尾根なら水の流れは途切れてますが)。
したがって見づらい!!
南アルプス全体としては、どのような工事になるのかという全貌さえ、容易につかめません。
というわけで、甲府盆地南西隅から天竜川の岸まで、1枚の図につなぎ合わせてみました。
地図が巨大になったので、別途掲載します。
こちらのリンクをご覧ください。
トンネルは長大トンネル3本と短いもの2本とで計5本。
作業用トンネルは計13本。
現時点で計画されている残土処分場は8ヵ所。
穴だらけ、残土だらけであります。
この先、1週間くらいかけて準備書全体に目を通していくつもりです。問題点が多々出てきそうですが、その結果は後ほどご報告します。
とりあえず、方法書段階での懸念事項(私の考えたもの、方法書に寄せられた一般市民や自治体からの意見)を挙げておきます。
きちんと調査・予測・評価がなされているでしょうか?
(1)掘ってよい場所かどうかの議論が皆無
●原生的な空間という認識が欠如
南アルプススーパー林道の通る北沢峠以南のおよそ110㎞にわたる稜線には、道路やトンネルはもとより送電線、地下水路といった人工的な構造物は一切横切っていない。植生のうえでも、太平洋側で最大級の自然林が残されている。原生的な空間の広がりとしては、太平洋側で最大である。推進者側には、こうした原生的な空間が存在することの価値が完全に欠落している。また斜坑が設けられる大井川源流の静岡市二軒小屋は、発電所・登山小屋関係者を除くと無人地帯であり、森林伐採と水力発電所建設を除くと、これまで大規模な改変が行われていない場所である。改変の是非については慎重に判断されるべきであるが、何の議論も経ずに斜坑を設けることが前提となっている。
●政策の不一致
2010年の同時期に南アルプスの自然環境についての審議が環境省と国土交通省にて行われた。審議の結果、環境省は周辺よりも優れた環境を有すると判断して国立公園区域の大規模拡張を決定した。いっぽう国土交通省は、審議を放棄して時間短縮効果のみの視点からリニアの南アルプスルートを決定した。同じ場所の環境について、正反対の判断を下したことになる。
●計画段階での環境配慮の恣意的な無視
→詳細はこちら
●周辺自治体は南アルプスをユネスコ・エコパークおよび世界自然遺産へ登録しようと活動を行っているが、あからさまに登録申請地域の環境を悪化させる本計画との整合性が全くとれていない。
●原生的な空間という認識が欠如
南アルプススーパー林道の通る北沢峠以南のおよそ110㎞にわたる稜線には、道路やトンネルはもとより送電線、地下水路といった人工的な構造物は一切横切っていない。植生のうえでも、太平洋側で最大級の自然林が残されている。原生的な空間の広がりとしては、太平洋側で最大である。推進者側には、こうした原生的な空間が存在することの価値が完全に欠落している。また斜坑が設けられる大井川源流の静岡市二軒小屋は、発電所・登山小屋関係者を除くと無人地帯であり、森林伐採と水力発電所建設を除くと、これまで大規模な改変が行われていない場所である。改変の是非については慎重に判断されるべきであるが、何の議論も経ずに斜坑を設けることが前提となっている。
●政策の不一致
2010年の同時期に南アルプスの自然環境についての審議が環境省と国土交通省にて行われた。審議の結果、環境省は周辺よりも優れた環境を有すると判断して国立公園区域の大規模拡張を決定した。いっぽう国土交通省は、審議を放棄して時間短縮効果のみの視点からリニアの南アルプスルートを決定した。同じ場所の環境について、正反対の判断を下したことになる。
●計画段階での環境配慮の恣意的な無視
→詳細はこちら
●周辺自治体は南アルプスをユネスコ・エコパークおよび世界自然遺産へ登録しようと活動を行っているが、あからさまに登録申請地域の環境を悪化させる本計画との整合性が全くとれていない。
(2)自然・環境破壊
●膨大な残土が発生するが、事実上処分方法がない。
南アルプスのど真ん中の静岡市二軒小屋に360万立方メートルの残土が発生する。ここでは環境に配慮した処分(現地埋め立て)は不可能である。域外への搬出は、長距離に渡る道路工事とダンプ公害を前提とし、これも困難である。
●大型車両の頻繁な通行
震動・騒音・粉塵の発生による動植物への悪影響や小動物の轢死を招く。
●水循環の破壊
岩盤内の地下水流動は一度破壊されたら復元は物理的に不可能である。とはいえトンネル工事は「掘って見なければ分からない」ものであり、影響の予測も困難である。さらに地下水とつながる河川水量への影響も予測不可能。トンネルの構造上、大井川流域での湧水は全て早川側へ流出する。
●工事現場までの輸送路建設による大きな自然破壊。
工事現場は市街地から遠く離れた山奥であり、円滑な輸送のためには道路整備が不可欠。急峻な山岳地域での道路工事では、直接的な植生破壊、生態系の寸断、河川の荒廃、土砂崩れの誘発、外来動植物の伝播がつきもの。
●水質汚染
一帯は大井川や小渋川の源流域であり、非常に水質が良好な場所であるが、工事により長期間にわたって水の濁りがとれなくなる。有害な物質を含む残土が発生する可能性もある。冬季も車両の通行が行われる場合、融雪剤がまかれ、水質汚染につながるおそれがある。
●ルート上に十谷温泉、小渋温泉が存在するが、温泉枯渇のおそれがある。
●車両の頻繁な通行、大量の資材搬入にともない外来動植物が大量に進入する。
●工事は谷底で行われるが、間接的に高山帯の生態系へ及ぼす影響が予測不可能。
●工事期間は10年以上と長く、静かな山峡の地という雰囲気がぶち壊される。景観が乱されるとともに、大鹿村や早川町は鉱山都市へと一変する。
●人工物がほとんど存在せず、日常生活から途絶したエリアであり、通常の環境基準を守るだけでは不十分である。
●膨大な残土が発生するが、事実上処分方法がない。
南アルプスのど真ん中の静岡市二軒小屋に360万立方メートルの残土が発生する。ここでは環境に配慮した処分(現地埋め立て)は不可能である。域外への搬出は、長距離に渡る道路工事とダンプ公害を前提とし、これも困難である。
●大型車両の頻繁な通行
震動・騒音・粉塵の発生による動植物への悪影響や小動物の轢死を招く。
●水循環の破壊
岩盤内の地下水流動は一度破壊されたら復元は物理的に不可能である。とはいえトンネル工事は「掘って見なければ分からない」ものであり、影響の予測も困難である。さらに地下水とつながる河川水量への影響も予測不可能。トンネルの構造上、大井川流域での湧水は全て早川側へ流出する。
●工事現場までの輸送路建設による大きな自然破壊。
工事現場は市街地から遠く離れた山奥であり、円滑な輸送のためには道路整備が不可欠。急峻な山岳地域での道路工事では、直接的な植生破壊、生態系の寸断、河川の荒廃、土砂崩れの誘発、外来動植物の伝播がつきもの。
●水質汚染
一帯は大井川や小渋川の源流域であり、非常に水質が良好な場所であるが、工事により長期間にわたって水の濁りがとれなくなる。有害な物質を含む残土が発生する可能性もある。冬季も車両の通行が行われる場合、融雪剤がまかれ、水質汚染につながるおそれがある。
●ルート上に十谷温泉、小渋温泉が存在するが、温泉枯渇のおそれがある。
●車両の頻繁な通行、大量の資材搬入にともない外来動植物が大量に進入する。
●工事は谷底で行われるが、間接的に高山帯の生態系へ及ぼす影響が予測不可能。
●工事期間は10年以上と長く、静かな山峡の地という雰囲気がぶち壊される。景観が乱されるとともに、大鹿村や早川町は鉱山都市へと一変する。
●人工物がほとんど存在せず、日常生活から途絶したエリアであり、通常の環境基準を守るだけでは不十分である。
(3)環境影響評価(アセスメント)の問題。
●環境影響評価開始以前から着工時期が公言されている
すでに2014年度着工と計画されている。いっぽう2013年9月に準備書が公表されると、環境影響評価手続きが終了するのは早くとも2014年夏頃である。2014年度着工を可能にするためには、わずか半年で正確な軌道の位置や設計、用地買収、保安林解除、農地転用など様々な手続きを終わらせねばならない。その点を考慮すると、環境影響評価の結果とは関係なく、既に事業内容は決定済みと考えざるを得ない。
●事業内容が明かされない段階でアセス開始①
具体的な事業内容および調査箇所等が明らかにされるのは準備書段階である。準備諸段階ではじめて調査方法・場所に不備が見つかったとしても、その点について再調査を求めることは事実上不可能であり、環境影響評価の体をなさない。
●事業内容が明かされない段階でアセス開始②
また方法書段階では、事業実施地域は幅3㎞の帯で示されただけである。いっぽう、現地調査地域は「改変箇所から600m以内」だという。3㎞幅からどのように改変箇所を選定するのか、その過程が全く明らかにされない。本来は簡易な調査を経て改変箇所を選定し、現地調査を行わねばならない。
●日程的に、現地調査がまともにおこなえるはずがない。
南アルプスの山岳部を含む240㎞の区間を、2012年度の1年間だけで調査するなど、どのように考えても不可能である。
●今後の走行実験結果が反映されない
山梨実験線で12両での走行実験が行われるのは2013年9月から、終了するのは着工後の2016年度である。いっぽう環境影響評価準備書の提出が予定されているのは2013年9月18日である。これでは実測値を準備書に反映することは不可能である。つまり今後の走行実験結果についての自治体、住民等の意見を受け付けることも不可能であり、この点でも環境影響評価の体をなさない。
●アセス内容が無意味となる可能性
前述の通り、着工後に走行実験結果が出されるので、その結果を受けて構造等の変更がなされる可能性がある。その際は法律の規定により、特に大きく事業内容を変えない限り、環境影響評価をやり直す必要はない。
●東京-名古屋間の15%にあたる42.8㎞は、山梨実験線として、法律や条例に基づく環境アセスメントを行わずに建設された。
●環境影響評価開始以前から着工時期が公言されている
すでに2014年度着工と計画されている。いっぽう2013年9月に準備書が公表されると、環境影響評価手続きが終了するのは早くとも2014年夏頃である。2014年度着工を可能にするためには、わずか半年で正確な軌道の位置や設計、用地買収、保安林解除、農地転用など様々な手続きを終わらせねばならない。その点を考慮すると、環境影響評価の結果とは関係なく、既に事業内容は決定済みと考えざるを得ない。
●事業内容が明かされない段階でアセス開始①
具体的な事業内容および調査箇所等が明らかにされるのは準備書段階である。準備諸段階ではじめて調査方法・場所に不備が見つかったとしても、その点について再調査を求めることは事実上不可能であり、環境影響評価の体をなさない。
●事業内容が明かされない段階でアセス開始②
また方法書段階では、事業実施地域は幅3㎞の帯で示されただけである。いっぽう、現地調査地域は「改変箇所から600m以内」だという。3㎞幅からどのように改変箇所を選定するのか、その過程が全く明らかにされない。本来は簡易な調査を経て改変箇所を選定し、現地調査を行わねばならない。
●日程的に、現地調査がまともにおこなえるはずがない。
南アルプスの山岳部を含む240㎞の区間を、2012年度の1年間だけで調査するなど、どのように考えても不可能である。
●今後の走行実験結果が反映されない
山梨実験線で12両での走行実験が行われるのは2013年9月から、終了するのは着工後の2016年度である。いっぽう環境影響評価準備書の提出が予定されているのは2013年9月18日である。これでは実測値を準備書に反映することは不可能である。つまり今後の走行実験結果についての自治体、住民等の意見を受け付けることも不可能であり、この点でも環境影響評価の体をなさない。
●アセス内容が無意味となる可能性
前述の通り、着工後に走行実験結果が出されるので、その結果を受けて構造等の変更がなされる可能性がある。その際は法律の規定により、特に大きく事業内容を変えない限り、環境影響評価をやり直す必要はない。
●東京-名古屋間の15%にあたる42.8㎞は、山梨実験線として、法律や条例に基づく環境アセスメントを行わずに建設された。
(4)「東海地震対策」としてわざわざ危険な場所を通るけど説明がない
●建設目的と災害リスクとの関係が不明
「東海地震に備えて二重系統化が必要」と主張しているが、南アルプスルートでは東海地震および南海トラフ巨大地震の想定震源域北縁を通り、揺れによるガイドウェイの損傷や土砂崩れ、トンネル内壁の崩落などの恐れがある。つまり東海道新幹線との同時被災という可能性がある。
●南アルプスの隆起速度
南アルプスの隆起速度は「年間4㎜前後、100年間40㎝で日本最大級」というのが地質・地形学者の常識的ともいえる共通認識であるが、JR東海では「突出した値でない」という認識であり、大きな違いがある。長期的に見た場合のトンネル維持コストや安全性に影響が出るのではないか。
●土砂災害の常習地域
南アルプス長大トンネルの坑口となる早川は糸魚川-静岡構造線に、小渋川の谷は中央構造線に接し、地質条件は非常に悪く土砂災害に対して脆弱である。実際、過去の東海地震や大雨の際に大規模な土砂災害が発生している。小規模な土砂崩れは日常茶飯事である。また、緊急時の通路となる林道も度々寸断される。緊急時の通路が頻繁に使用できなくなるのも問題である。
●無事に緊急停止できるのか
以上のように、災害リスクが非常に高い地域である。超伝導リニアは時速500㎞から停止するまでに90秒の時間と6㎞以上の距離を要するが、その間に衝突事故を起こしたら大惨事となりかねない。
●緊急時の乗客救助が困難
南アルプスを横断する約52㎞の区間は、救助拠点となる駅および市街地から遠く離れている。そのうえトンネルに達する林道の近傍は土砂災害に対して脆弱であり、東海地震が起きたら孤立する可能性が高い。気象も不安定であり、夏場を除けばヘリによる救助も容易ではない。
●一帯は大部分が無人地帯であり、あえて災害対策を行う必要のない場所である。そのような場所で災害対策工事を大規模におこなうことは本来不要なことであって、無秩序な自然破壊である。
●建設目的と災害リスクとの関係が不明
「東海地震に備えて二重系統化が必要」と主張しているが、南アルプスルートでは東海地震および南海トラフ巨大地震の想定震源域北縁を通り、揺れによるガイドウェイの損傷や土砂崩れ、トンネル内壁の崩落などの恐れがある。つまり東海道新幹線との同時被災という可能性がある。
●南アルプスの隆起速度
南アルプスの隆起速度は「年間4㎜前後、100年間40㎝で日本最大級」というのが地質・地形学者の常識的ともいえる共通認識であるが、JR東海では「突出した値でない」という認識であり、大きな違いがある。長期的に見た場合のトンネル維持コストや安全性に影響が出るのではないか。
●土砂災害の常習地域
南アルプス長大トンネルの坑口となる早川は糸魚川-静岡構造線に、小渋川の谷は中央構造線に接し、地質条件は非常に悪く土砂災害に対して脆弱である。実際、過去の東海地震や大雨の際に大規模な土砂災害が発生している。小規模な土砂崩れは日常茶飯事である。また、緊急時の通路となる林道も度々寸断される。緊急時の通路が頻繁に使用できなくなるのも問題である。
●無事に緊急停止できるのか
以上のように、災害リスクが非常に高い地域である。超伝導リニアは時速500㎞から停止するまでに90秒の時間と6㎞以上の距離を要するが、その間に衝突事故を起こしたら大惨事となりかねない。
●緊急時の乗客救助が困難
南アルプスを横断する約52㎞の区間は、救助拠点となる駅および市街地から遠く離れている。そのうえトンネルに達する林道の近傍は土砂災害に対して脆弱であり、東海地震が起きたら孤立する可能性が高い。気象も不安定であり、夏場を除けばヘリによる救助も容易ではない。
●一帯は大部分が無人地帯であり、あえて災害対策を行う必要のない場所である。そのような場所で災害対策工事を大規模におこなうことは本来不要なことであって、無秩序な自然破壊である。