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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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大井川流域の全世帯の水使用の状況を調べねばならない?

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水資源に影響を及ぼすおそれのある工事を計画している際には、工事をする前に次のような事項を調べろということになっているらしい。

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環境影響評価書資料編より 

山梨実験線建設時には、実際に川が枯れる事態を招き、補償を行うこととなった。実験線の場合、詳しい数字は分からないけれども、おそらく水枯れの影響を受けたのは、一カ所につき多くて数十人という単位であったと思う。だからこそ事前調査を行うことも、給水車とか井戸掘りで対応が可能であったはず。

そのほか整備新幹線や高速道路など、あちこちのトンネル工事で類似の事態を目似ているが、それでも一カ所につき、影響を与えることになった人数は同じようなものであると思う。

リニアの長大トンネルでも、すでに”起工式”の行われた場所は、みたところ、影響を受ける人口が少ないか、構造的にトンネル湧水を水源に戻せそうなところである。中央アルプストンネルの東西両側、南アルプストンネルの山梨側と長野側、山梨の第四南巨摩トンネル西工区、岐阜の日吉トンネル。

けれども南アルプストンネルの場合、大河川(大井川)の源流域を幅10㎞にわたり完全にくぐり抜けるという特殊な構造であるから、水枯れは下流域全域に及ぶことになる。こんなおかしな構造のトンネルは、日本国内に先例はない。

というわけで影響を与えるスケールが全く違う。

上水道だけでざっと60万人である。
http://www.oigawakoiki.or.jp/profile.htm(静岡県大井川広域水道企業団)

60万人分の水道の状況なんて事前チェックできるのだろうか? 


上の通知を忠実に解釈すれば、事業者であるJR東海は、工場、田畑、店舗、学校、病院、発電…あらゆる施設の水使用の状況を調べておく必要があることになるし、井戸の分布状況なども把握しておく必要もあるみたいだ


工事の難しさ云々以前に、そもそも南アルプストンネル本体工事に着手することは可能なのだろうか? 



それから首都圏大深度トンネルの相模野台地でも同様の問題がありそうである。座間市の水源(地下水)への影響が懸念されているところであるが、JR東海が環境影響評価の対象地域外に設定したため、影響有無の予測さえ行われていない。受水人口は約13万人である。
(座間市のホームページより水資源についてJR東海とのやりとり)


疑問がまたひとつ増えた。 




導水路で水を戻しても全体の2/3しか戻ってこないから、未来永劫、ポンプを動かし続けねばならない。かつて北海道にて千歳川放水路が計画された際、掘削によりラムサール条約登録のウトナイ湖が枯渇するおそれがあるとされ、事業主体の北海道開発局が苦し紛れに出してきた対策案がポンプくみ上げであった。非現実的であるとしてボツになったのだが、JR東海の案は同じ発想である。 

ナゾだらけの早川芦安連絡道路 ~2027年名古屋開業はムリであろう~

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3/14 一部追加記入

山梨県が早川町に出される329万㎥の発生土の大半を処分し、合わせて道路建設も可能な”一石二鳥”として事業計画を決定した早川芦安連絡道路。南アルプスの山深くに位置する早川町と甲府盆地とを直結する道路であり、交通不便な同町にとっては長年の悲願だったそうで、目的自体はまことに結構なのですが、どうも調べると疑問に感ずるところが多々あります。

この計画は、早川町最北端と甲府盆地側の南アルプス市芦安地区とを結ぶ全長4980mの道路を建設するというもので、うち3750mがトンネルとなっています。

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添付画像1 早川芦安連絡道路とリニア南アルプストンネルとの位置関係 


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添付画像2と3 山梨県資料より 

疑問①新設する道路に盛土構造が適切なのか? 
山梨県は、早川芦安連絡道路の盛土部分と、駐車場造成には合わせて160万立米を充てると見込んでいます。詳細な数字は不明ですが、当時の報道によると、駐車場に100万立米を用いるということなので、道路は60万立米程度を見込んでいるものと思われます。
(山梨日日新聞2014/2/16 芦安山岳館HPより)

けれども、最近の山梨県議会の様子では、どうやらそんなにたくさん使えるかどうか、アヤシクなってきたようなのです。

(山梨県議会 こごし議員のブログ)
http://kogoshitomoko.seesaa.net/ 

なんでも残土が盛土に使えるかどうか調べる前に、盛土化可能という前提で事業計画を決定したらしい。で、調べてみたら盛土にするには不適当な箇所があると判明したということです。

しかも、そんな計画の進め方だから、いまだに建設費の全容が分からないというおまけまで付いているそうな。

なんのこっちゃ?


②そもそも道路建設にリニア残土が必要なのか? 
総延長4980mの早川芦安連絡道路計画
のうち、3750mがトンネルで、地上区間は1230mです。トンネルを掘れば、当然残土が増えることになります。

設計図から推測すると、トンネル断面積は56㎡程度と見受けられます。するとトンネルの長さは3750mなので、計算上、発生土量は30~35万立米ぐらいとみられます。
56㎡×3750m×1.5=315,000㎥  

このほか斜面を切り崩すこともあるだろうから、便宜上35万立米としておきます。なおリニア工事に伴う早川町への発生土量は329万立米なので、1割増すことになりますね。

当然、リニアを着工する前に、早川芦安連絡道路からの残土35万立米を処分しなければなりません。一般的には、事業内で盛土に転用することになるでしょう。

仮に地上区間1230mのうち半分を盛土にすると仮定します。この場合、35万立米もあれば、道路幅を8m・盛土勾配30°としても、計算上、平均高さを約15mにすることが可能です。地図を見たところ、地上区間のほとんどは山腹に取り付けられるので、盛土構造になりそうなのは橋の取り付け部分だけでしょう。

道路盛土ならこれでも余るぐらいじゃないかと思うのですが、さらにリニア残土60万立米をも使う必要があるのでしょうか?

仮に地上区間の半分を95万立米の盛土にするなら、道路幅8mに対し盛土底面幅は63m、平均高さ27.4mと、ありえないような規模になってしまう・・・。

それにどうしても早急な道路整備のために盛土材料が必要だというのなら、中部横断道からの残土を使えばいいのではないでしょうか。 現在、中部横断道から掘り出された残土が、富士川沿いや早川沿いに大量に積み上げられているのですが…?


③自然保護上の規制
早川芦安連絡道路は、ユネスコエコパーク登録地域の中でも、環境保全のレベルが3段階のうち真ん中の緩衝地域に計画されています。経済活動を全面否定するものではないものの、その内容はアウトドア活動や学習・研究などに限られています。つまり既存の施設を活用することがメインであり、新たな開発は自粛せねばなりません。

当のJR東海も、さすがにそのあたりは承知していて、環境影響評価書では「緩衝地域はトンネルで通過する」としています。

ところが山梨県の計画だと、緩衝地域内に大規模な盛土を行うことになります。山梨県行政はJR東海よりも環境保全意識が低いと言わざるをえません。これは許されるものではないでしょう。地元のために道路が必要なら、緩衝地域外に設けるべきだと思います。

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添付画像4 南アルプスユネスコエコパークと早川芦安連絡道路
静岡市市役所ホームページより 複製・加筆 
 
さらに、道路の地上区間は緩衝地域であるだけでなく南アルプス巨摩自然公園の第3種特別地域にも指定されています。そのため工作物の設計には細かな規定が定められているようです。そこに、改変区域が大きくなる盛土構造で道路を造るのは条例のうえでもムリなのでは・・・?


④2027年名古屋開業が不可能となるスケジュール 
とりあえず発生土を道路造成で使えると仮定しても、スケジュールについての疑問が残ります。

早川町内に出てくる発生土は329万立米ですから、早川芦安連絡道路に転用できるのは18%となります。次の駐車場造成では100万立米だから約30%です。

言い換えれば、道路を造り終えた時点でリニア早川町内工区は18%しか掘れないし、駐車場を造成し終えた時点でも48%までしか掘れない。

添付画像1にあるように、早川芦安道路の当初事業計画は、平成26年(2014年)度着工、31年(2019年)度完成でした。しかし現状では、どうみても今年中の着工はムリでしょう。仮に来年度に着工して順調に工事が進んだとしても、完成は平成35年(2023年)頃となります。2023年になっても、リニア早川町内工区は18%しか掘れていないのです。

そこから1~2年かけて、突貫工事で100万立米を掘り出し駐車場造成地に運び終えたとしても、まだ半分以上(52%)が残っています。この時期(2025年頃)、JR東海の工事工程表では、すでにガイドウェイ設置や電気工事を終えて試運転を開始している見込みなのでした。

実際には、早川芦安連絡道路の工事に取り掛かる前に、リニアの工事現場と早川芦安連絡道路とをつなぐ林道の拡幅整備が必要ですので、さらに着工は遅れることになります。また、近傍の中部横断自動車道のように、トンネルからの残土に基準値越えの重金属等が検出されるような事態となったら、工事は大幅に遅れることとなりますし、盛土として容易に使えなくなってしまいます。

2027年名古屋開業は不可能なのでは?

河川法施行令第16条の4「何人も河川を損傷してはならない」

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JR東海の主張は、

「大井川の水が2㎥/sトンネルに吸い込まれるおそれがあるとしているが、トンネルから地上に向けて延々12㎞の排水トンネルを設けるので、下流の水利用には影響が出ない」

というものである。

ところで、この行為が河川法でどう扱われるのか、さっぱり分からないのである。

常識的に考えて、川の水を減らす行為とはすなわち、川の水を使うことである。

河川法によると、水を使うために川から水を引き込む場合は、下流で全量を元に戻す場合でも多くの許可や手続を必要とする。

例えば大井川に堰を築いて2㎥/sを取水し、12㎞下流で川に落として発電するようなような計画の場合、以下のようなところが関係してくるようである。

第23条(流水の占用の許可)
第23条の2(流水の占用の登録)
第23条の3(登録の実施)
第24条(土地の占用の許可)
第26条(工作物の新築等の許可)
第22条(流水占用料等の徴収等)
第35条(関係行政機関の長との協議)
第36条(関係地方公共団体の長の意見の聴取)
第38条(水利使用の申請があつた場合の通知)
第39条(関係河川使用者の意見の申出)
第40条(申出をした関係河川使用者がある場合の水利使用の許可の要件)
第41条(水利使用の許可等に係る損失の補償)
第42条(損失の補償の協議等)
第53条(渇水時における水利使用の調整)
第53条の2(渇水時における水利使用の特例)

もっと他にも該当する部分があるかもしれない。ちなみに2㎥/sを取水することは「特定水利使用(河川法施行令第2条第3号)」に該当し、国の許可を得ねばならない。 

ところが国土交通省の見解では、リニアのトンネル工事で川の水が減っても、水を使う目的で流量を減らすわけではないから、第23条の「流水の占用」には該当しないという。

けれどもそれだと、法律で定められている23条以下の種々の手続き、河川管理者による把握、他の河川使用者との調整、補償、渇水時対応などは、河川法的には不問にされてしまうであろう。

なんだかおかしいと思うのだ。

例えば新たに取水の許可を申請した場合、先に取水している側から、「そんなに取られるとウチが困る」と異議が出されれば、協議を通じて適正な取水量や損失補償を決めなければならない。

あるいは過大な取水計画が申請された場合、河川管理者が「そんな取水量だと河川環境が著しく悪化する」と判断した場合は、適正な量に改めさせねばならない。

公共物である河川水を使用するのだから、そのぶん使用料を納めねばならない。

少雨で川の水が減った場合、それぞれ水門を調整して取水量を減らさねばならない。

これが河川法の大筋である。

けれどもリニアの場合、そんな配慮は法的に無用となってしまうのではなかろうか。

「渇水であろうと何だろうとトンネルに川の水を引き込みます。一定区間の水が永久に減ります。受け入れなさい。」といった調子である。そればかりか「水を減らすが渇水時の調整は水利用者間で話し合ってくれ。」となってしまう。

河川環境や河川使用者に対する配慮は希薄である。


ちなみに河川法施行令第16条の4には、「何人も河川を損傷してはならない」と定められている。

今のリニア計画は、明らかに大井川を、物理的にも、環境面でも、水利権の上でもぶっ壊すのだから、工事を許可してはならないと思うのだ。

無人地帯で環境保全のための迂回トンネルを造るなら大鹿村だってつくるべきじゃないのか?

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南アルプスの静岡市側に計画されている工事用道路トンネルについての疑問です。
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添付図表1 南アルプスの工事関係図
図中央の緑点線が工事用道路トンネル 

この工事用道路トンネルとは、大井川最上流部の西俣(川の名前)の斜坑(非常口)と、燕沢発生土置場とを結ぼうというものです。環境影響評価書公表時から発生土置場の位置が変更されたため、工事用道路トンネルの位置も変更されました。

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添付図表2 工事用道路トンネルの概要
平成28年度 静岡県版事後調査報告書より 
位置関係については次の図も参照していただきたい 
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添付図表3 工事用道路トンネルの入り詳細
国土地理院ホームページ 電子国土Webより複製・加筆  

幅約10m、断面積約50㎡、長さ約4000mという計画で、けっこう大規模なトンネルとなります。これを3年程度で完成させるとのこと。静岡市街地郊外に、新東名高速道路の建設に際し、住宅地を迂回するために建設された道路トンネルがありますが、JR東海が計画しているものは、断面積がこれよりも一回り大きくなるのでしょう。

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添付図表4 新東名高速道路の工事用道路トンネル
静岡市街地北側にある北トンネル。住宅地を迂回するためにつくられたもの。なおJR東海が計画しているこ工事用道路トンネルは、これよりも一回り断面積が大きくなると思われる。

さて環境影響評価書では、工事用道路トンネルは環境保全の一環として建設するとされていました。
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添付図表5 環境保全措置としての工事用道路トンネル
静岡県版 環境影響評価書より  

今般の事後調査報告書によれば、同じ理屈で、さらに周辺の登山施設(二軒小屋ロッヂ)への影響も低減できるとしています。改めて環境保全措置としての位置づけを継承するものなのでしょう。しかし、疑問なのであります。

●工事用トンネルの建設工事用車両の影響は? 
リニア本線の工事用車両の往来を専用トンネル内で行うことにより、地上への影響を低減できるという理屈であります。かし工事用道路トンネルの建設それ自体で、かなりの数の車両が通行するはずですよね・・・?? 

JR東海の試算では、一月に4000台以上の車両が通行することになるとされています。数字の意味がよく分からりませんが、単純に一月の作業日数を28日として割れば、一日平均143台となります。トンネルは二方向から掘るでしょうから、片側の坑口で、それぞれ70台程度の車両の出入りがあるのでしょうか?

ところで現在、長野・静岡県経で三遠南信自動車道というものが建設中です。その環境影響評価書が公開されているのですが、同じくらいの断面積のトンネル建設がメインの事業であるものの、工事用車両の通行台数は最大で往復60台/日としています。

それと比較すると、リニアの工事用道路トンネル建設の場合でも、通常の道路建設と同等の工事車両が必要になりそうに思えます。

工事用道路トンネルを建設しない場合、より多くの車両が地上を通行することになります。その状況よりは確かにマシなのでしょうが、これで果たしてワシ・タカ類への影響を低減できるのでしょうか。

さらに作業工程上も不審です。

JR東海は、このトンネル建設に3年をかけるとしています。それから本線トンネルに続く斜坑(非常口)を掘るとすれば、斜坑掘削開始は早くとも2021~22年頃となり、2027年名古屋開業には間に合わなくなります。

となれば、斜坑の掘削は工事用道路トンネル建設に並行して進める必要が出てきます。斜坑の断面積は工事用道路トンネルと同程度であるから、車両の通行台数は2倍となってしまいます。

次の添付図表6をご覧ください。

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添付図表6 工事用道路建設時における発生土運搬車両の流れ


二軒小屋ロッヂの前は、工事用道路北口・西俣非常口と燕沢発生土置場とを行き来する車両が通行することになります。さらに千石非常口と燕沢平坦地との間は、4つの坑口とを行き来する車両が集中することとなります。本坑に着手する前から、大量の車両が通行することとなります。しかし、この部分での通行台数は明らかにされていないので、影響の程度を推し量ることさえできません。 


●河川流量への影響が予測されていない 
このトンネルは西俣に注ぐ悪沢という河川と交差します。北坑口が標高約1550m、南坑口は1400mぐらいとみられるから、勾配から判断して、悪沢での土被りは40m程度しかないとみられます。これは山梨実験線で水枯れを引き起こした箇所よりも小さく、流量の減少が懸念されるところです。

もしも悪沢の水をトンネルに引き込んでしまった場合、悪沢下流部の河川環境に影響を及ぼすだけでなく、西俣に注ぐべき水が、トンネルを伝って南坑口へ流れ去ることにもなります。

環境影響評価書では、西俣は本坑・先進坑・斜坑の掘削によって大幅に流量が減ると予測されています。その減ると予測される区間に合流する悪沢の流量が工事用道路トンネルによって減れば、西俣の流量もさらに減ってしまうでしょう。生態系だけでなく、この部分に存在する東京電力田代ダムにも影響を及ぼすことになります。

ところが事後調査報告書では、工事用道路トンネルの建設による河川流量への影響を取り扱っていないのです。

これは不審といういとで、先に県知事に提出された静岡市市長意見でも、工事用道路トンネル頭上の沢について、きちんと調査するよう求められています。


●残土が増える 
断面積が50㎡、長さ4000mとすれば、残土の量はおおよそ30万立米に達します。ただでさえ大量の残土処分で大きな環境破壊や土砂災害の懸念が生じているところへ、さらに残土を増やす。

ダンプの通行による環境負荷は、通行さえ終われば収拾がつきますが、残土は永久に消えることが無い。万が一、重金属でも出てくれば処分に四苦八苦してしまう。
環境負荷が、予期される保全措置を上回っているように思えるのですが・・・?




そんなこんなで、環境保全措置としては「なんだかおかしな話だよなあ~」と思うのであります。

”環境保全措置”などとデタラメなことなど言わず、素直に「工事に必要な道路だから環境負荷もやむを得ない」としておいたほうが、まだ筋が通っています。

そもそも、環境保全のためとして二軒小屋ロッヂ付近を迂回するトンネルをつくる必要性と財力があるのなら、こんな山奥よりも、大鹿村中心部など生活環境に深刻な影響を及ぼしかねない場所こそ、迂回トンネルを設けるべきでしょう。


大井川・水を戻すことより水を減らさない方法を考えてくれ

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もう間もなく「大井川導水路案・工事用道路トンネル計画」についての静岡県知事意見が出されると思いますが、何度も繰り返しているように、この導水路案は
①出口より上流の環境保全に役立たない
②余計な環境破壊を増やす
③利水対策としても不十分

という欠点があります。

こんな案に固執するのではなく、まずは河川への影響を少なくする術を考えるべきでしょう。


現在のトンネル配置計画を見ていただきたいのですが、南アルプスに計画されているトンネル群は、どういうわけか南アルプスの中でも相対的に標高の低い部分に集中しています。また、小河内岳や悪沢岳付近での土被りを1400m程度に抑えたところ、大井川での土被りが400m程度にまで小さくなってしまっています。

それは事業者の施工上の都合であって、周辺環境つまり河川への影響回避を考えたものではありません。
(この点、極力谷を避けて地下深く建設された結果、谷筋でも土被りが1000m以上、最大2500mとなったスイスのゴッタルドベーストンネルとは異なる

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添付図表1 南アルプスの位置 
二軒小屋付近を拡大 
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添付図表3 二軒小屋付近のトンネル配置計画 
国土地理院ホームページ 電子国土Webより複製・加筆 

トンネルと河川との位置関係について見てみます。

本坑および先進坑を東から見てゆくと、大井川の源流の一つである西俣の真下となる部分が1㎞以上に及ぶし、その先でもしばらく西俣に沿って掘り進めた上、もう一度西俣をくぐり抜けることになっています。

千石非常口(二軒小屋ロッヂの南)は、小さな土被り(たぶん100m未満)で大井川本流をくぐり抜けたうえ、約2㎞にわたって西俣のすぐ下を掘り進める構図となります。

西俣に注ぐ主要な支流である蛇抜沢には本坑・先進坑に加え西俣斜坑の計3本が交差し、同じく主要な支流の悪沢では、本坑・先進坑に加え、工事用道路トンネルと導水路トンネルと計4本が交差することになります。

また、この南アルプストンネルは、長野県側では小河内沢という川に約4㎞にわたって沿う構図となります。しかも緩く蛇行している小河内沢をと3回も交差し、しかも土被りが100m未満となる箇所があります。
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添付図表3 長野県大鹿村内 小河内沢とトンネルとの位置関係 


ところで土木工学の分野で使われている「高橋の式」なる経験則というものがあるそうです、それによると、トンネルを掘った際に地下水に影響を及ぼす範囲の断面形状は、トンネルを頂点として上に開いた放物線で示されるとのこと。そして深ければ深いほど影響は広く弱く、浅ければ浅いほど影響は狭く強くなるものらしい。

したがってトンネルはできるだけ川から離し、交差部分ではできるだけ深くるような配置にしたほうが、頭上の河川への影響は小さくできるはずだと思います。

しかし現在のトンネル配置計画を眺めると、延々川に沿っていたり、浅い土被りで川と交差させたり、ひとつの川に3~4本のトンネルを集中させたりしているのですから、わざわざ湧水量を増やしているかのようにさえ見受けられます。少なくとも河川への影響を考えて決定されたとは考えにくくいのです。

ところで環境影響評価書への国土交通大臣意見では、次のようなことが書かれていました。

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添付図表4 評価書に対する国土交通大臣意見とJR東海による見解
環境影響評価書より複製  

河川流量への影響を最小限に抑えるため、「水系の回避も含めて検討すべき」というものです。

国土交通大臣意見(実質は環境大臣意見)をよく読むと、「河川流量の減少及びこれにより生ずる河川の生態系や水生生物への影響は、重大なものとなるおそれがあり、また、事後的な対応措置は困難である」と書かれています。このような事態を避けるために、「水系を回避又は適切な工法及び環境保全措置を講じること」としています。

ところがJR東海は、「水系の回避」は(少なくとも表向き)検討せず、工法について再検討したわけでもありません
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添付図表5 第2回大井川水資源対策検討委員会資料
JR東海ホームページより複製 

自ら招いた専門家の推薦を得たとして、「導水路で下流に水を流せば下流の利水への影響は及ばない」という理屈で、延々12㎞もの導水路トンネルを掘る案を正式な案として今年1月に静岡県に提出し、間もなく県知事意見が出されようとしているところです。

JR東海の導水路案では、導水路出口より上流へは役立たないという致命的な欠陥があります。このため上流の水力発電所への影響を回避できず、利水対策として不十分なのです。構造上、ポンプアップしようと、西俣非常口より上流への対策には役立たない。それは大井川水系で最も河川環境の良好な西俣最上流部を見殺しにするような案でもあり、環境保全措置として適切とは言えない。

さらに長野県側にいたっては「監視体制をとる」以上の対策は考案していないので、万一流量を減少させた場合は、現時点ではどうしようもない。

◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 

こうしたムリな保全措置に終始しているのは、そもそも先に見たように、大井川地下の浅いところに、あたかも水を抜くためのような位置関係でトンネルを集結させているためです。

トンネル配置計画は見直すべきでしょう。 

しかし最善の回避方法である「水系の回避」を検討せず、不十分な導水路案に固執するのはなぜか?

大臣意見にさえ十分な検討をしていないのはなぜか?

このあたりにリニア計画の本質的なムリが見え隠れしているように思えます。

リニア 昨年秋の異常拙速・南アトンネル起工式&財政投融資はアメリカ様のためだったりして

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昨日、今年1月にJR東海が静岡県に対して提出した環境調査結果(大井川の導水路計画や工事用道路トンネル位置変更)に対する静岡県知事意見が出されました。

しかし静岡県庁のホームページにはいまだに掲載されず、どんな内容なのか確かめようがありません。流域自治体や水利権者は、独自の動きを活発化させているようです。


ところで全く話が変わりますが、南アルプス長野県側の大鹿村の工事について調べていて、妙なことに気付きました。

大鹿村では昨年10月から11月にかけての2ヵ月間、異常にバタバタとしたペースで話が進み、と言う間に着工に同意となりました。

時系列に書くと次の通り。


9月7日   JR東海は、長野県大鹿村での工事説明会を行う。南アルプストンネルの準備工事は秋から、本体工事は年明けから始めたいと説明。

9月13日(?) JR東海は「大鹿村内発生土仮置き場における環境の調査及び影響検討の結果について」を公表

9月15日 長野県庁にて平成28年度第5回技術委員会が開かれ、大鹿村内発生土置場について議論。

10月3日 長野県大鹿村はJR東海に要望書を提出。村長と村議会とが合意を表したうえで工事に取り掛かるべき、トンネル工事着手前に発生土処分地を決定させるべきなど8項目。

10月14日 JR東海は長野県大鹿村で工事説明会を開催。これが最後の説明会とし、「住民の理解は得られた」との考えを強調するが、住民からは「納得できない」という声。また同月3日に大鹿村から提出された意見書に対し、「基本的には村の意見を尊重する」と口頭で回答したことを明らかにした。

10月17日 JR東海は3日に大鹿村から提出された意見書に対する 「工事用車両通行等に関する確認書(案)」を大鹿村に提出。

10月18日 大鹿村は、前日にJR東海の示した確認書に対する修正案を返信。

10月19日 大鹿村村議会は非公開の全員協議会(8名)を開き、議長を除く7名のうち4名が賛成を示しことから条件付きで確認書を承認。JR東海と大鹿村は確認書を締結。

10月21日 大鹿村は工事に合意。
同日 第6回長野県環境影響評価技術委員会は「大鹿村内発生土仮置き場における環境の調査及び影響検討の結果について」についての県知事意見(助言)の案を提示。

10月24日 JR東海は「中央新幹線南アルプストンネル新設(長野工区)工事における環境保全について」を公表。 

11月1日 大鹿村にて南アルプストンネル長野工区の起工式が催される。

11月9日(?) 長野県は 「大鹿村内発生土仮置き場における環境の調査及び影響検討の結果について」をJR東海に送付。

11月10日 第8回長野県環境影響評価技術委員会で「中央新幹線南アルプストンネル新設(長野工区)工事における環境保全について」について議論される。

大鹿村は、大量の工事用車両が村内を通行することなどから、建設工事による環境破壊が強く懸念されています。他の市町村と比べ、情報公開も積極的に行われてきたという印象があります。

ところがその大鹿村がこの9月以降、モーレツな勢いで建設容認に動いたのでした。傍から見ていても拙速という感じで、10/17にJR東海から工事用車両通行等に関する確認書(案)が提出されてから、わずか4日後には着工合意にまで突き進んでいます。

この間、村民が確認書案と村からの絵hん等を目にする機会はほとんどなかったでしょう。そればかりか、発生土仮置場に対する県知事からの意見が出てくるよりも前に着工合意に達してしまったので、ここまでくると拙速というより不自然さを感じます。

これは11月1日の起工式に合わせていたのではないか?
あるいは、この後11月15日に閣議決定された独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法の改正(JR東海への3兆円財政投融資のため)に向けてのパフォーマンスじゃないか?

と思っていましたが、調べてみると何だかアメリカに向けたメッセージの影がちらつく。

以下、11月の出来事になります。

11月6日 読売新聞に葛西敬之JR東海名誉会長の寄稿「高速鉄道の未来 リニアが生む飛躍と活力」 が掲載される。 

11月7日 名古屋市中区で立坑の起工式。 

11月8日 来日中の米オバマ政権のアンソニー・フォックス運輸長官は、石井国土交通大臣と共に山梨県内のリニア実験線に試乗。
http://toyokeizai.net/articles/-/92595 

同日 米東海岸のリニア新幹線構想について、アメリカ連邦鉄道局(FRA)が初めて補助金拠出を認める。
http://newsphere.jp/business/20151111-1/ 

11月15日 リニア中央新幹線の整備を促進するために行う、財政投融資資金の貸付けに関し必要な事項等を定めるため、「独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法施行令及び国土交通省組織令の一部を改正する政令」を閣議決定。 
http://www.mlit.go.jp/report/press/tetsudo03_hh_000077.html 


11月16日 首相官邸にて安倍総理、トム・ダシュル米民主党上院院内総務、葛西敬之JR東海名誉会長らが3者会談。(11/15朝刊 読売新聞の首相動静より)   
同日 JR東海は同月18日に、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構に3兆円の借り入れを申請することを決めたと発表。

11月17日 安倍首相が訪米、トランプ次期大統領(当時)と会談。 
同日 JR東海の葛西名誉会長が京都市内で開かれた会合においてアメリカ東海岸リニア構想について意義を強調。 

11月18日 改正された独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法が施行される。

11月24日 JR東海は独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構から29日に5000億円を借り入れる契約を結んだと発表。

今年2月に入り、日米首脳会談にてトランプ政権に対し、リニアを積極PRしてきたのはご承知の通り。この前後、アメリカでのインフラ整備に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)GPIFから多額の投資を行うのではないか、という話がちょっとした騒動になりました。

また、次の動きも怪しい。
9月9日 午後6:39 安倍首相は東京・築地のスッポン料理店にて葛西敬之JR東海名誉会長、北村内閣情報官と会食。 (読売新聞9/10朝刊 首相動静より)

こののち、異常なスピードで物事が進むこととなったわけで・・・。





いやまあ、ハッキリしたことが言えるわけじゃないのですが、森友学園騒動を連想してしまうような拙速振りであり、何か裏があるんじゃないかと思って時系列に並べてみたら、こんな具合だったというわけです。

以下は作者の想像ですが、どうも、

安倍首相が(11月中旬に決まると目された)米次期大統領を訪問する際、手土産にリニアをPRすることが決まり、

それに向けてアメリカ政府にリニア計画の順調振りをPRする必要があり、

そのためにJR東海が資金的にも順調であることを示す必要があり、

よって財政投融資を首相訪米までに実現する必要があり、

そのためには最難関の南アルプストンネル(大鹿村)と大深度地下トンネル(名古屋)が着工済みである必要があり、

そのために11月初頭には大鹿村で南アルプストンネル起工式を終えている必要があり、

そのために、大鹿村での異常な拙速に陥ったのではないか?

そんな想像をめぐらしています。

大井川の環境維持を求める静岡県知事意見

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4月に入り、南アルプスでのリニア計画に関していくつか動きがありました。

ひとつは静岡県知事からの意見提出、山梨県が早川芦安連絡道路の事業計画が具体化したという報道、そして登山愛好者がJR東海に対してトンネル建設反対署名を届けたというニュースです。


とりあえず今回は静岡県知事からの意見書について考えてみます。

静岡県知事からJR東海に対して意見書が出されたのは4月3日です。
(静岡新聞)

(静岡県庁)

意見書の正式な名称は
「中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価書【静岡県】平成26年8月」に基づく事後調査報告書(導水路トンネル等に係る調査及び影響検討結果)に関する意見について 
となっています。実に長い。

さて、事業者のJR東海が誠実に対応するのであれば、今後数年は静岡工区での着工はできないのではないかと思われます。

いくつかポイントを並べてみます。

●ヤマトイワナなどの保全措置 
こちらがヤマトイワナをはじめとする水生生物・河川生態系の保全措置についての県知事意見になります(一部)。
イメージ 3

ヤマトイワナ…大井川源流域に細々と生息しているらしい渓流魚です。「らしい」と書いたのは、ブログ作者が実際に釣り上げたわけではなく、文献等による聞きかじりのためです。渓流釣りブーム、電源開発による渓流の分断・流量減少・河床荒廃で生息数が減少したところに、放流されたニッコウイワナによって駆逐されたり交雑されたりした結果、生息数が激減し、静岡県版レッドリストでは絶滅危惧ⅠBに指定されています。現在では源流域に点々としか生息していないらしい。
「IA類ほどではないが、近い将来における絶滅の危険性が高い種 」 
 
今までJR東海は、「当社による調査では、ヤマトイワナらしき雑種の魚は見つかっているが、ヤマトイワナと断言できるものは見つかっていない。聞きとり調査では相当上流部には生息しているらしい。」という見解を続けています。つまり「リニア建設による影響を受ける範囲には生息していない」という姿勢

しかし環境影響評価書においては、ヤマトイワナの生息しているような「相当上流部」にまで流量減少が及ぶ可能性があると、当のJR東海が試算しているのです。
イメージ 2
「相当上流部」において流量が減少するとの予測結果を推察した図
ここはヤマトイワナの生息域として禁漁区に指定されている。 
詳しくは2/8のブログ記事を参照していただきたい。

ですから、やはり何らかの対策を事前に考案しておかねばなりません。現時点では、トンネル工事による河川流量の減少はどこまで及ぶのか分からないのだから、対策を示さぬままに掘ってみたところ生息域で流量減少が起きてしまった!なんて事態に陥ったら、取り返しがつかないのです。

まずは、西俣を含む大井川流域の広い範囲において、在来魚のヤマトイワナと放流魚のニッコウイワナがどこにどれだけ生息しているのか、エサとなる昆虫の分布状況や生息環境はどうなっているのかを把握せねならないでしょう。そうしなければ対策のとりようがない。

果たして何年かかるのだろう・・・?


●水利用者との基本協定締結を期限を定めて要求 
県知事意見が出されるのに先立つ3月13日、大井川流域の11の水利用者がJR東海に対して、河川環境の現状維持について定めた協定を4月末までに結ぶよう要求しています。

県知事意見えは、改めてこの事項について念を押しています。

11の水利用者には、農業用に取水する土地改良区、発電用に取水する電力会社や製紙会社、上水道として取水する企業団などが含まれており、リニア建設による影響のあり方は一応ではなく、単に導水路を建設すれば全体の利害を調整できるものではありません。

どうするのだろう?

●導水路出口より上流への放流は可能なのか? 
導水路案の最大の問題点とは、出口より上流側には水を戻せないという点です。意見書では導水路出口より上流にあるふたつの非常口へポンプで汲み上げて戻すこと、としていますが、果たしてJR東海が受け入れるかどうかは疑わしいところ。

導水路で自然流下しない分を大井川に放流するにはポンプで汲み上げねばなりません。現在の導水路案で自然流下するのは1.3㎥/sだけです。残る0.7㎥/sを導水路まで汲み上げると、最大揚程は200mほどとなります。

これを二軒小屋ロッヂ南の非常口(千石非常口)まで汲み上げる場合、その高低差は400mとなります。(分水嶺直下のトンネル標高は970m、千石非常口の標高は1400m)
標高約1550mの西俣非常口に放流する場合、汲み上げるべき高低差は実に550~600mとなる。

これだけくみ上げると電気代もバカにならないでしょう。JR北海道の経営圧迫の一因として青函トンネルの維持費があげられますが、その青函トンネルの維持費が高くなっている大きな要因はポンプの電気代。

JR東海の導水路案を審議した今年2月9日の審議会では、出席委員から、「大井川広域水道企業団で使用しているポンプ(汲み上げ高低差130m、揚水量1200㎥/h(=0.33㎥/s)の能力)で0.7㎥/sをくみ上げると電気代だけでも約2億円」という指摘がなされています。
http://www.pref.shizuoka.jp/kankyou/ka-050/assess/rinia/kaigi.html

また、話を難しくするのは水力発電所との位置関係。

イメージ 1
非常口と発電用取水堰との位置関係 
大井川水資源対策検討委員会資料をJR東海ホームページより引用・加筆
北側の非常口が西俣非常口、南側の非常口が千石非常口。

西俣非常口から放流した場合、その先には東京電力田代ダムが待ち構えています。

千石非常口から放流した場合、その先には中部電力木賊堰堤が待ち構えています。

つまり放流したそばから取水堰から吸い込まれていってしまう

それを防ぐためには、JR東海と電力会社との間で、放流量と取水量について綿密な取り決めをしてもらわねばなりません。しかし現時点で放流量の予測なんてできないのに、事前協定など結べるのでしょうか。

●モニタリング地点の追加を要求 
工事用道路トンネルの位置が変更され、複数の沢をくぐり抜ける構造となりました。また、導水路トンネルも多くの沢をくぐり抜ける構造となっています。どちらも交差する沢の水を抜いてしまうおそれがあります。

ところが、現在までにJR東海が示した監視体制は、本線トンネルを対象にしたものであるため、新たなトンネル計画には対応できないものとなっています。これでは困る。

というわけで、工事用道路トンネル・導水路トンネルと交差する沢の監視を充実するよう意見が出されました。

ところが「監視を充実・・・」といっても、そこは南アルプスに刻まれた深い谷。登山道などありません。どうやって調査するのだろう?


別に静岡県知事意見はとりわけ厳しいものではないと思います。いずれもふつうの事業者なら、環境影響評価の段階で済ませておく、あるいは基本方針を示しておくべき事項じゃないでしょうか。

また、どうも長野県側にまで影響を与えそうな気がします。

静岡県知事意見では、再三にわたり、「静岡県区間でのトンネル湧水全てを大井川に戻すこと」と述べています。

ところで、南アルプストンネルを掘るにあたり、JR東海は、長野県大鹿村側には3つの斜坑(非常口)を設けるとしています。昨年11月1日にバタバタと大急ぎで起工式を強行したのは、このうち小渋川非常口になります。なお現在のところ保安林解除手続きが終了しておらず、まだ掘削工事開始の見通しは立っていません。南アルプスの稜線に向かって掘るのは除山非常口になります。

JR東海が長野県向けに作成した資料を掲載します。
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地図の右隅に注目していただきたいのですが、長野県側での「今回の実施範囲」は、静岡県側に1㎞弱入り込んでいます。静岡県側ということは大井川流域になります。工区全体が静岡側に向かって登り勾配となっていますので、大井川流域地下で発生した湧水は、大鹿村へと流れていってしまうことになります。

これは静岡知事意見に反します。

また、除山非常口予定地は保安林に指定されています。工事をするためには保安林指定を解除せねばなりませんが、その許可を得るためには、事業を完結させるだけの各種権利を取得していることが条件とされています。したがって除山非常口から掘っていった先端の静岡県部分については、静岡県側からの了承を得る必要があるはずです。

静岡県側からの了承を得るためには、先のヤマトイワナの保全措置などを含め、環境保全に対する大井川流域全体の合意を得ねばなりません。ところが、今のJR東海の計画では、近いうちの合意取り付けは不可能でしょう(そもそも大井川下流域での住民向け説明会すら行っていない)。

というわけで、当面の間、大鹿村除山非常口からの着工は困難ではないでしょうか。


今の計画では、河川に影響を与えずにトンネルを掘ることは困難だと思います。川の下に何本ものトンネルを掘るという配置計画そのものに無理があると思うのです。合わせて発生土の処分も困難であるし、付帯工事も過大すぎる。

早川芦安連絡道路~山梨県はユネスコエコパーク緩衝地域内に残土処分場を設けるのか?~

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山梨県側に計画されている早川芦安連絡道路についての疑問点である。

山梨県の説明では、早川芦安連絡道路の盛土部分にリニア発生土120万立米を用いるという。そのためにJR東海が盛土工事67億円を出すことも決まったと報じられいる。
(4月1日山梨日日新聞)

ところが本当にリニア発生土を使う必要があるのか疑わしいのである。

この道路整備は険しい山岳地域に全長約5㎞の道路を造ろうというもので、そのうち3.75㎞はトンネルである。地上区間は1.2㎞程度である。地上区間の大半は橋、山腹取り付け構造となるだろうから、一見すると盛土構造が必要そうな部分は見受けられない。
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添付図表1 早川芦安連絡道路とリニアとの位置関係 


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添付図表2と3 山梨県による早川芦安連絡道路の説明 
山梨県庁ホームページより 

さらに、新設トンネルからも相当量の発生土が生じる。図面から判断すると、おそらく30~35万立米となる。仮に新設トンネル両側に15万立米ずつ出すとすれば、早川町側にはリニア発生土と合わせて135万立米もの量が掘り出されることとなる(新設トンネル東側へ掘り出した分は、早川芦安連絡道路完成後に搬出されるリニア残土と合わせて駐車場造成に使うらしい)。

135万立米もの発生土をどこに使うのだろう? 

ちょっと試算。

早川芦安連絡道路の地上区間のうち、ムリヤリにでも盛土できそうなのは、カッパ滝とある谷川(カッパ谷と仮称)を超す部分だけである。早川の谷は深すぎるから、橋で一跨ぎするだろうし、芦安側は山腹にヘアピンカーブで道路を取り付けるので、盛土構造になりそうな部分はない。

カッパ谷に橋を架ける代わりに、発生土で埋めたてて築堤状にすることを考えてみる。
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添付図表4 盛土に必要な量の試算 

地形図から判断し、便宜上
築堤部分の幅を150m
谷底の幅を50m
埋立高さ50m
谷の両側斜面の勾配を45°
盛土の勾配を30°
築堤上面の道路幅を8m

この条件の場合、必要な土の量は約40万立米となる。

つまり道路整備に盛土を使うといっても、最大でも40万立米程度しか必要としないはずである。カッパ谷の南側約250mぐらいでも、少し盛土出来そうにみえるけど、そこではせいぜい5万立米程度であろう。

山梨県が発表している135万立米とは、あまりにも過大な量ではなかろうか? 


ところで現在、リニア計画に伴い長野県豊丘村本山地区で、盛土量130万立米の発生土置場が計画されている。
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添付図表5 豊丘村発生土置場計画
JR東海ホームページ 「豊丘村内発生土置き場(本山)における環境の調査及び影響検討の結果について」より 

最大盛土高さ50m、面積8万㎡とある。

冒頭の新聞記事によると、早川芦安連絡道路の盛土区間の延長は400mだという
たった400mの道路整備で、8万㎡の残土処分場に相当する盛土構造となるらしい

やはり、あまりにも不自然な計画である。道路建設に必要最低限な量を大幅に上回る発生土を運び込むなら、それは道路盛土を名乗った、単なる残土処分場なのでは?

◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ところで、早川芦安連絡道路の建設予定地はユネスコエコパーク緩衝地域に指定されている。緩衝地域では、ユネスコエコパークの地域区分のうち、環境保全水準が3段階で中レベルとなる。

イメージ 5
添付図表6 ユネスコエコパーク審査基準 


かたやリニアの建設予定地は移行地域であり、環境保全レベルは3段階で一番低いレベルとなっている。

つまり山梨県が、わざわざ環境保全レベルの低いほうから高い方へと、発生土を運び込むこととなっているわけである。当のJR東海は、環境影響評価手続きでは、「リニア建設において登録地域内での地上改変は移行地域内だけである」と再三繰り返してきたけれども、山梨県が緩衝地域での改変を買って出るというのは、何とも奇妙な話である。
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添付図表7 早川町側でのユネスコエコパーク登録地域 
静岡市ホームページより複製・加筆 


◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 

緩衝地域で大規模な改変行為を行うのであれば、十分なの環境配慮が必要となるはずである。また、一帯は保安林にも指定されているようである。保安林で改変行うには、保安林指定の解除が必要であるが、その際、改変面積が必要最低限であること証明することが必要とされる。

大規模盛土構造というのは、ふつうの橋に比べて明らかに改変面積が大きくなる。だから環境に配慮しているとは言い難いし、改変面積が必要最低限であるとも言い難い。この点について、どうやって説明するのだろう?

ちなみに、リニア計画における残土処分の一環であるにもかかわらず、環境影響評価やそれに類いする調査や情報公開が全く行われていない。

最近、早川町の発生土置場が、工事着手から半年足らずで一杯に至ったために追加盛土を行うという報道がなされた。JR東海が無計画極まりない姿勢をさらしだしたわけだけど、早川芦安連絡道路で残土処分を行えるという、山梨県行政の無計画ぶりが背景にあったんじゃなかろうか?

◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ユネスコエコパーク登録地域内で、地元のために道路が必要であるなら、環境破壊が最小になるような構造にしてつくるべきだと思う。JR東海がカネを出すからといって、行政が説明責任を果さぬままに残土処分とみまごう道路整備をおこなうのは、間違っているんじゃなかろうか?


静岡県知事意見に対するJR東海の見解 ~ホントに工事をするつもりがあるのか?~

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昨日、長野県大鹿村において、南アルプストンネルの掘削工事が始まったと報道されました。

南アルプストンネルの大鹿村側には除山、釜沢、大蔵の3地点に非常口(斜坑)が計画されていますが、今回は除山になります。本来(?)は大蔵斜坑での工事が最初になる計画だったようですが、ずさんな計画により保安林解除が遅れに遅れ、いまだ始められる状況にないのだとか。

今般の除山斜坑についても、直前まで村役場にも工事開始が伝えられていなかったとかなんとか、相変わらずドタバタと根回しもなく進めているようです。
http://shuzaikoara.blog39.fc2.com/blog-entry-550.html

しかし、どうも不自然。

次のリンク先に、昨日撮影された写真が掲載されていますが・・・
http://tozansyarinia.seesaa.net/article/449394709.html

トンネル工事”開始”のはずなのに、必要となるコンクリートプラントや汚水処理装置らしきものは見当たりません。建設資材も見当たらない。それに大型の重機も入っておらず、ぱっと見たところではクレーン車2台、小型ショベルカー2台、高所作業車1台ぐらい。

これで掘削工事を行うのはムリじゃないでしょうか?

ちなみに朝日新聞(長野版)の記事では、JR東海より提供されたという写真が掲載されています。ショベルカー1台だけで掘っている写真が掲載されています。

どうもパフォーマンスにしか見えない。。。



ところで同日、事後調査報告書(導水路案、工事用道路トンネル等)についての静岡県知事意見(4月3日)に対するJR東海の見解が県に報告され、即日、県庁ホームページにおいて掲載されました。
(PDFファイル)
http://www.pref.shizuoka.jp/kankyou/ka-050/assess/going/12301/documents/jrtokaianswer.pdf

(静岡新聞 4/28朝刊より)

JR東海は27日、リニア中央新幹線工事の事後調査報告書に関する知事意見への回答書を県に提出した。減少が予想される大井川の流量について、全量回復を早期表明するようにとの求めに対し、同社側の回答は「影響の程度をできる限り低減していく」との表現にとどまった。下流利水者11団体との協定締結については、すでに準備を進めているとした。

 同社は工事前後で大井川の流量が毎秒2トン減少すると予測。対策として、本線トンネルと大井川をつなぐ導水路トンネルを設置し、本線トンネル内に湧き出た水を大井川に戻すとしている。川勝平太知事は回答について、「従来の説明の繰り返しで、特段の進展は見られない」と指摘し、引き続き、全量回復の表明を強く求めるとした。

 知事意見では、下流利水者と28日までに、流量減少対策に関する基本協定を締結することも要請していた。同社は締結時期の明記は避けたが、すでに利水者側と協議に入っていることを明かし、「誠実に対応している」とした。川勝知事は「早急に締結されるよう、県として調整に努める」とコメントした。

以上、引用終わり

知事意見では全般的事項2項目と個別的事項21項目を挙げているのですが、JR東海はこのうち3項目にしか見解を示しておりません

イメージ 2        イメージ 1

左が知事意見 右がJR東海の見解  

どちらもPDFファイルだけど、知事意見は8ページでJR東海見解は2ページだけ。

しかも内容は「これまで協議を続けてきました。今後も評価書に従って適切に対応します」といったことだけであって、全く答えになっていない。そのうえ「工事実施前の環境影響評価手続きは完結しております」という一文が書き添えてあります。

なんだそりゃ? 

環境影響評価手続きで取り扱われていない内容が非常にたくさんあって、このまま工事を開始されたら取り返しがつかなくなるおそれがあるから、改めて意見が出されたはずなのに、おかしな見解です。

”暖簾に腕押し”としか言いようがないのですが、こんな回答を見ると、本当に工事を行うつもりがあるのか疑ってしまいます。。。

静岡県内ではこんな様子なので、工事を始めるのはまだまだずぅっっっと先になるでしょう。どんなに大鹿村で急いだところで、住民の方の反発・不審を買うだけであって、南アルプス全体としての工事が進むものでもない

何をやりたいのだろう?


南アルプス河川流量調査は何のためだったのか?

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リニア計画にともない、静岡県を流れる大井川などの河川流量や、トンネル周辺での地下水位に悪影響を及ぼすことが懸念されています。

環境への影響を回避するのであれば、早期に問題点を見つけ出して対策を練っておくのが基本。後々になって考え出したところで、根本的な解決策を生み出すのは不可能に近い。

それではいつごろから懸念が共有されてきたのでしょう・・・?

大井川の問題もさることながら、今回、南アルプス山梨県側の巨摩山地を中心に考えたいと思います。ここは手続き上の問題が凝縮されているように見えるのです。


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南アルプスの東側を占める山梨県の巨摩山地。

リニア中央新幹線はここを第一~第四南巨摩トンネルで貫きますが、途中で大柳川などいくつかの河川をくぐり抜けます。また上水道の水源地帯でもあります。したがって周囲の水環境に大きな影響を及ぼすおそれがある。

それにも関わらず、環境影響評価ではマトモに扱われてきませんでした。データを持ち合わせていなかったわけではなく、それどころかアセス開始以前にデータを取得していたのに、なぜかアセスではその事実を伏せていたようです。

そういう不審な話です。

以下、時系列で出来事を並べます。紫色が全国新幹線鉄道整備法(以下:全幹法)に基づく事項、赤色が環境影響評価法(以下:アセス法)に基づく事項です。


2000年(平成12年)
運輸省より鉄道総研、JR東海、鉄建機構に対し、東京-名古屋間の地形・地質等の調査を指示。(全幹法第5条)
この指示はそれまでにも何度か出されている。

2006年(平成18年)
1月1日
大井川上流に位置する東京電力田代ダムの水利権更新。同ダムから年間を通じて環境維持放流がなされることとなった。それまで静岡・山梨両県、国、地元自治体、電力会社による大井川水利流量調整協議会による協議が続けられてきた。

同年”豊水期”以降
鉄道総研、JR東海、鉄建機構のいずれかが巨摩山地一帯と大井川流域において河川流量調査を実施運輸大臣指示による地質・地形調査の一環だという。ただしその事実が公表されたのはずっと先のこと

2008年(平成20年)
国土交通大臣に地形・地質調査報告書が提出される。 

2010年(平成22年) 
2月24日
前原国土交通大臣から交通政策審議会へ諮問。鉄道部会中央新幹線小委員会が発足。審議を開始
7月2日
第5回中央新幹線小委員会。静岡県の川勝平太県知事が出席。県として南アルプスの地質調査や河川法上の認可に協力する意向であると発言。大井川の環境保全については特に言及せず。
 
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第5回中央新幹線小委員会 静岡県提出資料 
http://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/tetsudo01_sg_000074.html 

10月20日
第9回中央新幹線小委員会。当時候補に挙げられていたA,B,Cの3ルート案について環境面からの審議。水環境については、著名な湧水、河川類型についての情報を並べただけであり、河川流量や利水についての検討はなされていない。
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第9回中央新幹線小委員会配布資料より複製 

12月15日
中央新幹線小委員会が中間取りまとめ案を公表。南アルプスルートが妥当とする内容

2011年(平成23年) 
5月20日
大畠国土交通大臣はJR東海を中央新幹線(東京-名古屋市間)の営業・建設主体に指名。(全幹法第6条)
同年5月26日
中央新幹線の整備計画が決定。(全幹法第7条)
5月27日
大畠国土交通大臣はJR東海に中央新幹線(東京-名古屋市間)の建設を指示。 (全幹法第8条) 
6月7日
JR東海は計画段階環境配慮書を公表(長野県を除く)。ただし環境影響評価法に基づくものではなく、JR東海による自主配慮という取り扱い。また、この時点では、南アルプス一帯で既に流量調査に着手していたことは明らかにされていない。
9月27日
JR東海は環境影響評価方法書を公表(アセス法第5条)。この時点でも、南アルプス一帯で既に流量調査に着手していたことは明らかにされていない。

2013年(平成25年) 
9月18日
環境影響評価準備書が公表される(アセス法第14・15条)。大井川において流量が大幅に減少するという試算結果が公表される。ただし、この時点でも既に流量調査が開始されていたことは明らかでない。また巨摩山地一帯での試算結果は全く掲載されていない。

2014年(平成26年) 
1月18日
巨摩山地に位置する山梨県富士川町は準備書に対する町長意見を県知事に提出(アセス法第20条第2項)。意見書の中で、町内の南川、大柳川および上水道水源地帯についての準備書での記述が不十分であるとして、さらなる調査を要望。

3月20日
山梨県知事意見がJR東海に送付される(アセス法第20条第1項)。この中で南川、大柳川について、トンネル工事に伴う流量への影響予測を行い評価書に記載するよう求めている。また、富士川町内の温泉についても「予測を実施する旨を評価書に記載すること」と要望している。
4月23日
JR東海は環境影響評価書を国土交通大臣に送付(アセス法第22条)。山梨県知事意見で求められた南川、大柳川に関する事項については「準備書に書いてある通り」とする内容であり、実質的に無回答。
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山梨県編 環境影響評価書「山梨県知事の環境の保全の見地からの意見及びそれについての事業者見解」より複製・加筆  
7月18日
環境影響評価書に対する国土交通大臣意見がJR東海に送付される(アセス法第24条)。トンネル工事実施までに巨摩山地一帯における水収支解析を行うよう求めている。

8月26日
JR東海は国土交通省に対して事業認可の申請を行う(全幹法第9条)。
8月29日
JR東海は環境影響評価書を公告(アセス法第27条)。 大井川流域において、平成18年時点で河川流量を観測していたことが初めて明らかになる。
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静岡県版 補正評価書より複製 
建設指示の出される前の平成18年から一部で流量調査を開始しており、平成19年以降は、登山道すらない山奥(魚無沢、瀬戸沢など)での調査も実施している。 
 
10月17日
太田国土交通大臣は中央新幹線整備事業を認可(全幹法第9条)

2015年(平成27年) 
12月24日
JR東海は山梨県巨摩山地における水収支解析結果を公表。ここで初めて、平成18年時点で流量観測を行っていたことが明らかになる
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「巨摩山地における水収支解析」より複製 


2016年(平成28年) 
1月30日
JR東海は第四南巨摩トンネル西工区新設工事の公募競争見積方式について公示。
7月21日
JR東海は第四南巨摩トンネル西工区新設工事について、西松建設・青木あすなろ建設・岩田地崎建設からなる企業共同体(JV)と契約を結んだと発表。



要するに、

【疑問1】
国は早い段階で、南アルプスのトンネル工事においては、河川流量についてのデータが必要と判断して、全国新幹線鉄道整備法に基づき、事業主体になるであろう諸機関(国鉄、JR総連、鉄建機構、JR東海)に対して、調査を命じていた。

それにもかかわらず、南アルプスルートを選定した際、河川流量の調査が既に開始されていたことは明らかにされなかった。また、国が南アルプスルートを選定した際、その時点で入手していた南アルプス各地の河川流量データをどのように考慮したのか定かでない。

ルート選定段階で、国として南アルプスの河川流量とトンネル工事遂行との間に何らかの関係があると予見していることを公の場で明らかにしていれば、関係する市町村等が意見を提出し、適切なルートないしトンネル構造での計画決定をすることが可能であったかもしれない。

【疑問2】
山梨県知事意見では、巨摩山地についてトンネル工事による河川流量等への影響予測結果を評価書に記載するよう要望していた。しかしJR東海は試算結果を評価書に記載せぬまま評価書を作成。国土交通大臣意見では、改めて巨摩山地について試算を工事実施前までに行うことを指導。結局、事業認可から1年2ヵ月を経て結果が公表された。

県知事意見は無視したが、一応、国土交通大臣意見には従っている。しかし流量についてのデータは平成18年から取得していたはずだから、準備書ないし評価書において試算結果を記載することは可能であったはずである(大井川の河川流量試算結果は準備書に記載)。つまり、通常のアセス手続き内で巨摩山地の流量予測を検討することが可能であったのに、なぜかJR東海は避けていたこととなる。

【疑問3】
国土交通省はJR東海から平成20年に地形・地質調査報告書を受け取っているのだから、JR東海が早い段階から南アルプス一帯で河川流量のデータを所有していることは把握していたはずである。それならば、評価書の補正作業において、巨摩山地一帯での水収支解析を行わせることも可能だと判断できたはずである。つまり事業認可後にまで試算結果開示を遅らせる理由は希薄ではなかったのか。

【疑問4】

静岡県知事は、ルートが決まる前の平成22年5月の段階で、大井川での河川法上の許認可に協力する旨の発言をしている。関係者の間では、すでに南アルプスルートを選定することが共有されていたこととなる。それならば、その段階およびアセスの早期段階で南アルプス一帯での河川環境について検討することは可能であったはずである。

また、大井川の下をくぐり抜けることを承知しておきながら、大井川の流量保全について全く言及しなかったのは不自然である。




河川流量調査とは、河川環境を保全するためには全く使われてこなかったと思います。これが適切な環境影響評価であったのか・・・?



なぜ巨摩山地での水資源予測は事業認可後まで先送りOKだったのか?

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前回のブログの続きです。

リニア計画における水資源問題というと、大井川の問題がクローズアップされており、ブログ作者も静岡県在住ということで頻繁に取り上げています。けれどもこれまでの手続きという点では、山梨県の巨摩山地一帯のほうが、問題があるんじゃないかと思います。

【要旨】
評価書に対する国土交通大臣意見では、巨摩山地における水資源への影響予測をトンネル工事実施前に行うことを求めた。しかし地元では、影響予測の結果は評価書に記載するよう求めていたのであったのだから、そんなに遅らせることは不自然である。

国土交通省はJR東海から平成20年に地形・地質調査報告書を受け取っているのだから、JR東海が早い段階から南アルプス一帯で河川流量のデータを所有していることは把握していたはずである。南アルプストンネルについては、このデータをもとに試算がなされ、準備書に結果が公表された。

巨摩山地のデータも、同じ期間に取得して国に報告しているのである。それならば、評価書の補正作業において、巨摩山地一帯での水収支解析を行わせることも可能だと判断できた可能性がある。つまり早い段階での試算結果公表を望む地元の声を無視したうえ、事業認可後にまで試算結果開示を遅らせる理由は希薄ではなかったのか。  

この意見書についてもう少し考えてみたいと思います。
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国土交通大臣意見と事業者の見解 補正評価書より  

事業の許認可を与える者(この場合国土交通大臣)は、「対象事業に係る免許等を行う者は、当該免許等の審査に際し、評価書の記載事項及び第二十四条の書面に基づいて、当該対象事業につき、環境の保全についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査しなければならない」と定められています(環境影響評価法第33条)。第二十四条の書面とは、リニア事業の場合は、評価書に対する国土交通大臣意見になります。

事業、つまりトンネル建設等によって巨摩山地一帯の河川流量や地下水位等に大きな悪影響を及ぼしかねない懸念があることは、準備書に対する県知事意見の段階で表明されました(さらに遡れば富士川町長意見による)。そして県知事からはそれを評価書に記載するよう要望されていました。
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準備書に対する山梨県知事意見 
巨摩山地に関わる部分を複製 

ところがJR東海は、評価書においては全く答えなかった。

環境省はその評価書についての審査を行った結果、「事業着手までに試算すること」という環境大臣意見が国土交通大臣に出されることとなります。

そして国土交通大臣意見では、その文面がそのまま踏襲されることとなりました(冒頭)。

ここに大きな疑問というか、疑念があります。

元々、山梨県知事意見では「結果を評価書に記載すること」としていたのに、なぜか国が審査した後の国土交通大臣意見では、「トンネル工事実施前に」というように、情報公開をギリギリまで遅らせてよいこととしたのです。

なぜ、結果公表を着工直前にまで先送りさせることが許されたのか?

「トンネル工事実施前に」という表現は、環境大臣意見で先に用いられています。すると環境省が猶予を与えたかのように見えるけど、ちょっと事情が違うかもしれない。

環境省が評価書の審査を行ったのは2014年の5月頃です。

法律上、環境省は、評価書の文面について審査を行っていることとなっています。その評価書記載事項だけでは、巨摩山地での水環境のデータがどれだけ集まっているか定かでありません。アセス開始が2011年秋であったから、この時点ではまだ2年半程度しか経っていないので、評価書の文面だけだと、この程度のデータ蓄積では試算に使えないと判断した可能性があると思います。

だから環境省の立場としては、試算を行うために必要なデータが揃うまで観測を続けさせること、つまり「工事着工までに」という、猶予を与えるかのような意見になってしまったということは、考えられなくもないと思います。

ところが国土交通省の場合は事情が異なります。

河川流量の調査は旧運輸大臣の指示に基づいたものだそうです(静岡市における準備書説明会でのJR東海の説明)。そして、その結果は国土交通省に提出されているのですから、国土交通省としては、調査内容を全て把握しているはずです。

つまり国土交通省は、少なくとも2006年以降のデータ蓄積があることを知っていることになります。

ここで大井川のデータに目を向けます。
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静岡県版 環境影響評価準備書資料編より複製   

大井川では、28の調査地点のうち4地点では2006年から調査が続けられており、12地点は2007年から続けられています。アセスの始まった2011年以降に改めて調査を開始した地点は9地点でした。

この結果をもとにしてトンネル工事に伴う河川流量への影響を試算し、2013年9月の環境影響評価準備書に掲載することとなりました。その結果、本流においては年間平均で2㎥/sもの流量減少が予測され、大騒ぎとなりました。なお準備書では、大井川だけでなく、同じく南アルプストンネル近傍となる山梨県側の内河内川、長野県側の小渋川水系についての予測結果も掲載されました。

つまり南アルプスにおいては、2006/2007年から2012年にかけての6~7年のデータ収集で流量予測ができたこととなります。

この事情は補正後の評価書、つまり環境省審査後になって明らかにされたことなので、環境省としては知らないことかもしれない。けれども国土交通省は知っていた可能性が高い。

さて巨摩山地でも、大部分の地域は2006年からデータが集められていました。また、水収支解析に必要となるであろう地質データについては、準備書に記載されていましたから、その時点で取得していたと思われます。
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したがって評価書どころか、その前段階の準備書を作成した時点で、試算を行うための準備は整っていた可能性があります。そして国土交通省はそのことを把握していたはずです。ここが環境省とは違う。

ではなぜ、予測結果の公表を補正評価書ではなく、「着工まで」と、かなり時間的猶予を与えてしまったのでしょうか?


冒頭に示したように、環境影響評価法第33条では、事業の認可にあたって、環境の保全についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査しなければならないとしています。

けれども一連の流れでは、巨摩山地一帯の水環境について、適正な環境配慮を行えるための情報を公開させる前に、「適切に配慮すればよろしい」とのお墨付きを与えて事業認可したようにも受け取れます。シロウト考えですが、法律の主旨から逸脱しているように思えてしまいます。

巨摩山地での水環境への影響予測とは、もともとは地元の懸念に端を発しているのだから、国土交通省としては地元の懸念より、リニア整備――JR東海の事情?――を優先したともとれます。

・・・はやりの言葉で言えば、「特例」ってヤツでしょうか?





どこに何をつくるのか分からぬまま事業認可 ~改変面積の半分はアセス抜き?

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4月28日に開かれた”ストップ・リニア訴訟”の第4回口頭弁論の様子が報告されているのですが、
http://shuzaikoara.blog39.fc2.com/blog-entry-551.html

その場で裁判長が、被告となっている国土交通省に対し、
「どういう施設がどういう場所にできるかは、原告適格の問題にも絡むし、どういう被害が起こるかの前提でもある。そもそも、どういう場所にどういう施設を造るものとして事業認可されたのか? それが国から明らかにするのはどうでしょう?」
と投げかけたそうです。

これが非常に気になりました。

実際、リニア中央新幹線の環境影響評価においては、多くの施設について具体的計画に乏しいまま手続きが終了しています。

事業者であるJR東海は、法に基づく環境影響評価手続きの第一段階である方法書においては、「詳しい説明は準備書で示す」としながら、準備書段階では「評価書で示す」とした。しかし評価書でも具体的内容に乏しいまま事業認可を受け、結局は「着工前の説明で行う」としてしまった。結局、事業計画に住民や地元行政の意向を反映させることができたのかどうか、疑問が残るまま”着工”を迎えつつあります。



どれだけ明らかになって、明らかにされなかったのかを考えるべく、ちょっと検証。

地上での改変区域に限って、環境影響評価の対象となった改変面積を簡単に見積もってみます。

●軌道31.6㎞
 用地幅22mを掛けると69.52万㎡となる。
●6駅
 岐阜のみ6万㎡他は3.5万㎡。計23.5万㎡
●車両基地2地点
 神奈川と岐阜。合計115万㎡
●変電施設
 大都市部0.5万㎡その他3万㎡。計22万㎡
●保守基地等
 合計18.4万㎡
●坑口の施工ヤード(約1万㎡)
 非常口(都市部)⇒16地点 計約16万㎡
 非常口(山岳部)⇒29地点 計約29万㎡
 トンネル坑口⇒43のトンネルに計86か所 約70万㎡と推定

ここまで合計で345万㎡。その他、静岡県内での宿舎や燕沢発生土置場候補地(図面から14万㎡と推定)を含むと、400万㎡近くになるのでしょう。



いっぽうで、事業認可後に計画が具体化ないし明らかにされてきたのは次のようなものです。つまり法に基づく環境評価がなされなかったもの。いくつかパターンがあります。

A 環境影響評価の段階では位置を定めることが困難として、事業認可までの環境影響評価の対象にされなかったもの。つまり通常の手続きは踏んでいない。

●発生土置場
 5000万立米程度。平均20mの厚さで積み上げても250万㎡の用地が必要である。砂防施設等も必要になる。ちなみに長野県豊丘村の本山地区発生土置場候補地では、130万立米を処分する敷地面積は8万㎡で、平均盛土高さ約16mとなっている。

●発生土仮置場
 現時点で明らかになったのは大鹿村3地点の計3.37万㎡、早川町の2地点計1.93万㎡⇒合計5.3万㎡
●大井川の導水路

B リニア中央新幹線を実現するために不可欠な施設であるが、環境影響評価の対象とならなかったもの
●早川芦安連絡道路
 山梨県南アルプス市と早川町:3740mのトンネル新設など延長4980mの道路整備。大規模盛土を伴う。
●豊丘村佐原地区の電気関係施設
 詳細が不明であるが8~9万㎡という情報あり
●恵那市の電気関係施設
 詳細は不明であるが11~12万㎡という情報あり
●送電線
 詳細は不明であるが山梨県内47㎞、長野県伊那山地11㎞。
●県道松川インター大鹿線改良工事
 長野県中川村:トンネル新設2本計2079m、道路拡幅220m

C 扱いがよく分からないもの。少なくとも現段階では、法に基づく環境影響評価は行なわれていない。
●ガイドウェイ製造施設(長野県高森町:7.7万㎡)
●相模原市の既存変電所移転(現変電所の面積は約1.8万㎡)

非常に大雑把ですが、こうした関連施設に伴う改変面積だって300万㎡以上となるでしょう。さらに今後、住居・各種施設・農地等の移転、河川・道路の付け替えだって必要になってくる。

いずれもJR東海リニア計画に不可欠であり、多かれ少なかれ、建設費用を何らかの形でJR東海が出しています。だからリニア建設事業の一環じゃないかと、はた目には見える。

改変面積の半分近くは法に基づく環境影響評価がなされていない? 


半分しか調査していないとみられるのに、国土交通省はどうやって「環境の保全についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査(環境影響評価法第33条)」したというのでしょうか?


国が定めた、環境影響評価の内容についてのマニュアル「鉄道の建設及び改良の事業に係る環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針、環境の保全のための措置に関する指針等を定める省令」というものがあります。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H10/H10F03901000035.html

バカみたいに長ったらしい名称ですので「技術指針」とでも呼んでおきます。

技術指針によると、”標準的手法”として、環境影響評価の対象となるモノは、「鉄道施設」としています。鉄道施設という言葉の正確な意味が分からないのですが、鉄道事業法施行規則第9条では鉄道線路、停車場、車庫及び車両検査修繕施設、運転保安設備、変電所等設備、電路設備としています。

JR東海のおこなった環境影響評価から漏れた諸施設は、この6種類からは外れているがために、法に基づく環境影響評価が不要と判断したのかもしれませんし、現在はそのような運用がなされているのかもしれません。

けれども、どれ一つが欠けても、リニアは完成しないのも事実。しかも関連施設とはいえ、実際に改変される規模は、本体工事に匹敵する。仮に本体工事での環境保全が適切であったとしても、残り半分が杜撰では、なんの意味もない。こうした構図の大型事業は、あまり前例がないのではないでしょうか?

こうした関連施設の取り扱いについて、裁判の争点になるんじゃないかと思うのであります。

地震防災対策強化地域にルートを設けて東海/南海トラフ地震対策?

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ここのところ、静岡新聞で東海地震についての特集記事がデカデカと掲載されています。

今の日本、総理大臣の横暴に起因して加計学園、共謀罪、皇室典範と、大問題が噴出しているのに、紙面からはそんな気配が感じられず、何だか違和感を覚えてしまう。もちろん東海地震だって忘れてはならないテーマでしょうけど、もともと紙面の限られた地方紙ゆえ、地震特集を一面に持ってこられるとその分政治のニュースが削られてしまうのであります。

それはともかく。

一連の東海地震特集は、大規模地震対策特別措置法に基づく警戒宣言について書かれたものです。今回はその話。

大規模地震対策特別措置法の目的は次のように定められています。

第一条 この法律は、大規模な地震による災害から国民の生命、身体及び財産を保護するため、地震防災対策強化地域の指定、地震観測体制の整備その他地震防災体制の整備に関する事項及び地震防災応急対策その他地震防災に関する事項について特別の措置を定めることにより、地震防災対策の強化を図り、もつて社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを目的とする。 

そして第三条により、「大規模な地震が発生した場合に著しい地震災害が生ずるおそれがあるため、地震防災に関する対策を強化する必要がある地域を地震防災対策強化地域として指定」することになっています。

現在のところ、この法律が対象としているのは東海地震のみ。つまり東海地震対策の法律だということができます。地震防災対策強化地域は次の通り。

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そして地震防災対策強化地域においては、病院、学校、鉄道事業者など、多くの人が集まる施設の管理・運営者は地震防災応急計画を定めることになっています(第七条)。

またよく知られるように、東海地震については予知できる可能性があるとして、地震の発生が予測された場合に総理大臣が警戒宣言を発令することを定めています。地震防災応急計画では、警戒宣言等が発令された場合の対応も定めておく必要があるようです。

強化地域内に線路を所有するJR東海の作成したものは次の通り。

このうち、東海道新幹線についてはこのようになっています。
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(警戒宣言発令時でも名古屋-新大阪では運行を継続するらしい。けれども次の想定震度分布をみると、名古屋駅付近は震度6弱前後である。すると名古屋駅への進入は取りやめねばならぬはずである。矛盾しているのではなかろうか?)

震度6弱以上の揺れが想定される地域への進入を禁止し、同地域を走行中の列車は停止させるとあります。つまり警戒宣言が発令されれば東海道新幹線は東京-新大阪を直通することはできなくなります。

東海地震で想定されている震度分布は次の通り。
 

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気象庁ホームページより複製 


さてここで疑問。

リニア中央新幹線の建設の意義は「東海地震等の災害に備えて交通を二重系統化する」ことにあるとしています。

上述の「東海旅客鉄等株式会社防災業務計画」は、計画されているリニア中央新幹線にも適用されるのでしょうか? 

リニア中央新幹線は、東海地震の地震防災対策強化地域を横切り、山梨県から長野県にかけてと、名古屋市付近のルート沿いでは震度6弱相当の揺れが想定されています。甲府盆地南部では一部に深度6強と想定されている地域も通過します

今のままでは、警戒宣言が発令されたらリニア中央新幹線も運休せねばならない、ということになりそうに思えます。

もしも運転を取りやめることを前提とするのなら、そこには何かしら危険があると認識しているわけですから、建設の意義に掲げた「二重系統化」やらルート選定の過程が果たして妥当だったのか疑問が湧きます。

なおJR東日本の対応では、地震防災対策強化地域を対象として列車の進入・運行を禁止するとしています。したがってリニア中央新幹線と並行するJR中央本線は、山梨県内から諏訪湖にかけての運転が取りやめになるのでしょう。

JR東日本作成「防災業務計画」(東海地震については後半部分に掲載) 
JR東日本も、警戒宣言発令時には「列車の運行には危険がある」と判断しているのだと思います。



ところで昨年来、この大規模地震対策特別措置法を、東海地震だけでなく南海トラフ大地震に拡大して適用しようではないか、という議論がなされています(冒頭の静岡新聞の取り組みはこれを反映したもの)。
(朝日新聞 2016/6/29)
静岡新聞長期連載企画 沈黙の駿河湾 東海地震説40年
http://www.at-s.com/news/featured/social/chinmoku/

南海トラフ地震を対象とした場合を考えます。

南海トラフ大地震の想定震度は、東日本大震災以降の見直しにより、大きく変わりました。現在の最悪の想定ケースの場合、新幹線の運行を停止せねばならない震度6弱以上の想定範囲は、東海地震に比べると格段に広がっています。
(以下の想定震度図は内閣府中央防災会議のホームページより複製)

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これに、現在想定されているリニアの東京-大阪間間のルートを記入すると次の通り。

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一見してお気付きになると思われますが、山梨県から大阪までは、ほぼ全てが想定震度6弱以上になっているのです。しかも濃尾平野から伊勢平野にかけては震度6強!

 現在のJR東海の防災業務計画をそのまま適用すれば、リニアは全区間で運休せねばならない?



はたして政府が掲げた「東海地震に備えて二重系統化」という建設目的は、政府の防災対策と合致しているのでしょうか?



”東海地震対策”になるのか? ―行政はゆがめられていないのか?

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何度も繰り返しているけど、リニア中央新幹線は、東海地震等への備えとして、東京-名古屋-大阪の交通を二重系統化することに整備目的があるらしい。

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東海道新幹線は、その沿線の大部分が、東海地震を想定した法律”大規模地震対策特別措置法”により指定された”地震防災対策強化地域”を通っている。この範囲内では、東海地震により震度6弱以上の強い揺れが起き、大きな被害がでるおそれがあることから、様々な事前対策を講じておく必要があるとされている。

また東海地震は予知を行える可能性があるとして、警戒宣言等が発令された際の対策を定めておくことも決められている。これは科学的・社会的に予知が可能か否かは別問題として、そういうルールが定められている、ということでご理解いただきたい。

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よく分からないのが、リニア中央新幹線の整備目的と、この地震防災対策強化地域との整合性である。

地図を見ても明らかな通り、リニアのルートも大半が地震防災対策強化地域内である。

また最近になり、大規模地震対策特別措置法の対象を南海トラフ全体に拡張する方針で議論が進められている。実現されれば、近畿地方南部のほとんどは地震防災対策強化地域に指定されることになるだろう。

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かたや基本計画としての中央新幹線は、名古屋以西では三重~奈良~大阪とつなぐこととなっている。すると東海道新幹線よりも南海トラフ地震の震源域に近いところを通過することとなるから、東京~名古屋~大阪の大部分が地震防災対策強化地域に含まれることになるに違いない。

すると矛盾が生じるのである。

現時点でJR東海は、警戒宣言が発令された場合には、東海道新幹線について地震防災対策強化地域への列車の進入を停止するとしている(厳密に言えば震度6弱以上の揺れの想定される区間)。

この方針をそのまま将来のリニア中央新幹線にも踏襲するのであれば、もしも東海地震警戒宣言が発令された場合、リニアは東京-名古屋で運休することとなる。

そして”南海トラフ地震警戒宣言”なるものが発令された場合について、杓子定規に考えれば、東京-大阪の全区間で運休せざるを得なくなるはずである。奈良経由であろうが京都経由であろうが、名古屋~大阪の大部分で震度6弱以上の揺れが想定されているからである。

ちなみに愛知県から三重県にかけてでは、液状化リスクが高いうえ津波浸水も想定されている。
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もしも警戒宣言発令時にリニアを運休させるのであれば、そこには運休せざるを得ない理由がある、すなわち大きな事故や被害の起きる可能性を想定しているのだから、JR東海が自ら掲げた「二重系統化」を否定することとなってしまう。 


ところで先日(6/2)、「大地震が発生して東海道新幹線のトンネル付近で土砂が崩れた」という想定で避難訓練が行われた。
下り新幹線が熱海-三島間を走行中に県内を震源とする大規模地震が発生し、トンネル出口で崩落した土砂上を通過して緊急停車したとの想定。乗客役は誘導係の指示のもと、避難はしごで列車から降り三島駅までの約1キロを歩いた。高齢者など歩行困難な乗客は保守用車で送り届けた。…

三島駅まで1㎞を歩いて逃げられる想定らしい。

けれど、リニアの南アルプストンネルならどうするんだ?
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かつて、静岡県の審議会でこんな質疑がおこなわれていたのだけど、これでは周辺自治体にとっては余計な災害リスクを抱えることに他ならないのである。地震発生時の混乱した状況下で、おそらく道路も寸断されるだろうに、どうやって救助しに行くんだ?

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

”加計学園疑惑”で、文部科学省の元事務次官だった前川氏が述べておられるように、リニア計画においても行政手続きがゆがめられているんじゃないか?と思うことが多々ある。その一端が、この”東海地震対策として必要”という主張である。

実際に避難や救助が困難であるだろうし、法制度上のうえでも矛盾があるように見えてしかたがない。

この主張は、ことあるごとに繰り返されているし、それを根拠にリニア計画は”国土強靭化計画”なるものに組み入れられ、そのうえ財政投で3兆円を融資することまで決まってしまった。

しかしその割には

●東海地震発生時に東海道新幹線にどのような被害が生じると想定しているのか?
●リニアがどう地震対策として役立つのか?
●東海地震発生時にリニアのルートはどうなるのか?

といった、しごく基本的なことが全く示されていない。本当に役立つのかどうか分からないのに、何も検証せずに国策として進めることを決定しちゃったのだから、そこには行政のゆがみがあるんじゃないか?と勘ぐってしまうのである。

もっとも財政投融資の決定は国会審議を経ているのだけど。。。



南アルプス静岡県側での施工業者公募開始  ~いつ誰が工事計画を受け入れたんですか?

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日本経済新聞にこのような記事が出ていたと教えてもらった。

リニアの工事、静岡でも見積もり公募 全都県で着工へ
2017/6/7 19:26

2027年開業を目指すリニア中央新幹線の工区について、静岡県でも建設工事の見積もりの公募を7日始めた。今秋まで同県内の約9キロメートルの工区について公募し、工事費用や建設技術など提案内容を検討したうえで決める。今回の公募開始により品川―名古屋間では東京都や静岡県など沿線の全都県でリニア工事が動き出すことになる。

 このほど発生土の管理や河川などの環境保全について、地権者との協議がまとまった。静岡県内の工事は品川―名古屋間のリニア工事で最難関工区の1つとされる南アルプストンネルの一部。地表からの深さが1000メートルを超える場所を掘り進める工事となる。同トンネルについてはすでに山梨県側、長野県側で工事が始まっている。

 7日の定例会見で柘植康英社長はリニア工事の進捗状況について「当初の予定とのズレは部分的にはあるが、工期に影響が出るとは考えていない」と説明。静岡県は品川―名古屋間のリニア沿線の都県で唯一、中間駅ができない。柘植社長は「リニアが大阪まで延伸した後は東海道新幹線にも余裕ができる。静岡や浜松への停車が増える可能性がある」とした。

こちらがJR東海の広報。




  


先日(5/30)の静岡新聞で、南アルプス静岡県側の地権者である特種製紙が、年内にも工事内容についてJR東海と合意する見通しである、という報道がなされていたけど、いきなりこんな話になるとは、寝耳に水である。
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というのも、県、市、大井川流域の市・町との協議が、(表向きは)全く進んでいないはずだからである。

今年1月17日に、JR東海が導水路新設案や工事用道路の計画変更案についての調査結果を静岡県に提出した。これら計画は環境影響評価手続きでは触れておらず、言わば、事業認可後に後出しジャンケン的に出してきたようなものである。法に基づく環境影響評価手続きではないため、国(環境省)は公的には関知していないと思う。

これとは別に、3月13日には大井川の流量減少問題について、上水道、土地改良区、電力会社など計11の水利用団体はJR東海に対し、流量減少対策の内容を明記した協定を4月末までに申し入れており、また同月31日には大井川流域の10市町がJR東海に対し大井川の流量と水質の現状維持を申し入れている。

さてJR東海作成の調査結果に対しては、4月3日に静岡県知事から意見書が出された。

●トンネル湧水の全量を大井川に戻すこと
●導水路出口より上流での流量を維持させること
●導水路上流域における河川生態系の保全措置の考案すること
●流量維持について大井川流域の市・町との協定を締結すること

など多数の項目からなっており――


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件が提出した意見書 静岡県庁ホームページより

それに対するJR東海の見解は、ほぼゼロ回答であった。県知事からは「従来の説明の繰り返しで、特段の進展は見られない」とされており、その後の進展はゼロのはずである。

(4/28静岡新聞)

大井川流量「全量回復」明記せず JR東海、静岡県に回答書
(2017/4/28 08:04)
http://www.at-s.com/news/article/economy/shizuoka/353861.html?news=345543
 JR東海は27日、リニア中央新幹線工事の事後調査報告書に関する知事意見への回答書を県に提出した。減少が予想される大井川の流量について、全量回復を早期表明するようにとの求めに対し、同社側の回答は「影響の程度をできる限り低減していく」との表現にとどまった。下流利水者11団体との協定締結については、すでに準備を進めているとした。
  同社は工事前後で大井川の流量が毎秒2トン減少すると予測。対策として、本線トンネルと大井川をつなぐ導水路トンネルを設置し、本線トンネル内に湧き出た水を大井川に戻すとしている。川勝平太知事は回答について、「従来の説明の繰り返しで、特段の進展は見られない」と指摘し、引き続き、全量回復の表明を強く求めるとした。
  知事意見では、下流利水者と28日までに、流量減少対策に関する基本協定を締結することも要請していた。同社は締結時期の明記は避けたが、すでに利水者側と協議に入っていることを明かし、「誠実に対応している」とした。川勝知事は「早急に締結されるよう、県として調整に努める」とコメントした。
 

これがJR東海の見解
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ぜんぜん、答えになっていないのであった。

ご覧の通り、木で鼻をくくったような、まるで加計学園問題に対する文部科学省の答弁のような書きぶりである。これでは、具体的にどういう工事をおこなうのか、本当に環境が保全されるのか、見定めることは困難である。



というわけで、JR東海の案に地元が了承しそうな状況ですらないし、そもそも意思を(公的に)表明する/確認する場すら与えられていないのである。

それなのに、市や県の頭を飛び越えて、施工業者の募集が始まってしまった。

環境保全方針や地質調査等も未定であるから、はた目には河川法や森林法の許可など出せないように見えるし、静岡市の定めている”静岡市南アルプスユネスコエコパークにおける林道の管理に関する条例”や、南アルプスユネスコエコパーク制度と、どうやって整合性を図ってゆくのかも分からない。

昨年7月20日には、地元井川漁協や渓流魚の保護・育成を行っているグループから、レッドリスト掲載種であるヤマトイワナの保全を求める意見書が出されているが、それに対してJR東海はどう対応したというのだろう? 少なくとも新聞等では、具体的な保全措置を含む回答を確認できていないが?

それに事業認可直後の説明会(2014年11月)以降、静岡市民や大井川流域の住民に対する説明もゼロである。



徹頭徹尾、地元軽視を貫く会社だぁと改めて感じたところである。

トンネル工事は水抜きが前提なのか?

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共謀罪やら加計学園疑惑をめぐる報道を見ていると、腹が立ってしょうがない。

初代人も官房長官も、○○の一つ覚えのように、どうでもいい答弁を延々繰り返したり、ヤンキー先生がまさしくヤンキーのごとく「チクった奴はタダじゃおかねぇ」とすごんでみせたり(?)。。。

国民もナメられたものだよぁ・・・

それでも内閣支持率がさほど変わらぬのだから仕方がない。

正論とか良識といった言葉が通用しない世になったものだと痛感し、「リニア新幹線の諸問題」などマジメに考えるのもバカらしくなったのであります。


というわけで久しぶりの更新。

先日、北陸新幹線の高丘トンネル(長野県中野市)にある周辺で、建物が傾くとか井戸が涸れるといった被害が相次いだ、との報道がありました。

北陸新幹線が開業してから2年経ちますが、今頃・・・?・・・と思って記事をよく読むと、
被害はトンネル工事の行われた2001~2007年に発生
●建設主体の独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が、市内の家屋95戸189棟に対して補償
●補償は2015年までに全て完了
●同市の高社山トンネル工事でも、2001~2002年にかけて井戸や湧き水が枯れるなどの被害が出ていた

ということだそうです。つまり、10年前に生じていた問題が、今頃になって広く知れ渡ることとなったらしい。

(6/2 信濃毎日新聞)
トンネル工事で建物ゆがみ 北陸新幹線 中野・安源寺地区
http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20170602/KT170601ATI090020000.php

(同 社説)
新幹線工事 被害情報の公開求める
http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20170603/KT170602ETI090006000.php

(6/1 産経新聞)
北陸新幹線のトンネル工事で周辺住宅180棟超にゆがみや傾き
http://www.sankei.com/affairs/news/170601/afr1706010026-n1.html

(6/13 信濃毎日新聞)
補償家屋は最終的に95戸189棟 中野の北陸新幹線トンネル工事


ところで、被害発生からなぜ10年以上も明らかにされてこなかったのでしょう・・・?

信濃毎日新聞によれば、この件についての情報公開は次のようなものだったそうです。
●機構も中野市も、被害が発生したこと自体を住民に通知していなかった
●機構は国土交通省や県への報告もしていなかった。
●中野市も県への報告をしていなかった

これってまずいんじゃないのでしょうか?

これじゃあ、例え何かのトラブルが生じたとしても、トンネル工事との関係を知らず/考えずに迷惑を受け入れてしまったり、あるいは自己負担で対応していたケースがあったかもしれない。

現時点では、”補償を終えた”という話になっているようだけれど、補償が終わるまでの手続きは、どうも適切だったとは思えないのであります。

ちなみにこの件に関しての情報は、同機構のホームページには何も掲載されていませんが、同機構か掲げた「基本理念・行動指針」から逸脱してるんじゃないのかな・・・?
http://www.jrtt.go.jp/01Organization/Summary/Summary-kihon.html

この高丘トンネルについて、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が土木学会で講演した際の資料がネット上で公開されています。(PDFファイル)
http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00035/2009/64-06/64-06-0318.pdf#search=%27%E9%AB%98%E4%B8%98%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB%27

シロウトゆえ、土木のことはよく分かりませんが、このようなことが書かれています。
「坑外より水抜きボーリング(L=130m)を実施した結果、当該箇所付近の観測井戸において3m程度の水位低下が確認され、地下水位はインバート付近で安定した。」

ここでいう当該箇所とは、トンネル頭上にある送電鉄塔を指すようですが、そのあたりでは、どうも地下水位を下げることを前提とした工事が行われていたらしい。

また、南半分の工事を請け負ったのは戸田建設だそうです。「掘削断面積 A75~109m2、NATM、上半先進ショートベンチカット工法」とあります。

NATM工法はドリルついた重機で岩を砕いて穴を掘ってからコンクリートを吹きつけて補強してゆくという工法なので、シールド工法と異なり水が出てくると工事を進められないから、事前に周囲の地下水を抜くのが前提らしい。

冒頭に記した産経新聞記事によると、被害を受けた神社の宮司さんは、
「父親の代の事前説明では『全く問題は生じない』とのことだった」と話した。
 機構は「トンネル工事で建物に影響が及ぶのは珍しいことではない。補償の詳細は住民のプライバシーもあり、明らかにできない」としている。

とのこと。

地下水位を下げるというのに、地上へ全く問題はもたらさない、ということがいえるのでしょうか? どうも、事前説明も不適切だったんじゃないかという疑念もぬぐえない。

ちなみに、土木学会資料のほうには、末尾のほうに、「本坑掘削による鉄塔(ブログ作者注:送電鉄塔のこと)の変位量は最大で2.4㎜という結果となり、若干の沈下は見られるものの、トンネル掘削による鉄塔への影響はほぼ阻止できたといえる。
・・・
入念な対策工の検討、計測体制および慎重な施工によって、本トンネル最後の再重要保安物件である116号鉄塔の影響範囲を無事突破し、平成20年11月28日に高丘トンネルの全開通を迎えることができた

とあります。

しかし一連の報道によれば、建物被害が生じたのはトンネル工事の最中だったということですから、この報告資料に書かれている表現についても疑問が生じます。鉄塔以外の一般家屋は重要ではなかった、ということなのでしょうか?



リニア計画においても、トンネル土被りのごく小さな部分が多数あります。縦断面図によると、神奈川県西部、山梨県巨摩山地、長野県伊那山地、岐阜県内には、土被りが50mに満たない区間が多数あります。それから南アルプスの場合だと、作業用の斜坑が小さな土被りで川と交差する。

飯田市付近の一部をのぞくとNATM工法で工事をおこなう計画らしい。

ということは、おそらくは水抜き工事が徹底的に行われるに違いない。

水を抜くのを前提とした工事なのに、水環境に影響を及ぼさないというのは矛盾しているように思えるし、頭上に住まわれている方は、地盤沈下が起きることを想定しておくべきじゃないかと思うのであります。

いつ、どこで南アルプスを差し出したのだろう?

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全国的にはほとんど知られていないのでしょうか、こんどの日曜日は静岡県知事選挙の投票日です。

現職の川勝平太氏と新人の溝口紀子氏の一騎打ち、となっています。

そのお二人に、県内の市民団体がリニア中央新幹線の南アルプストンネル工事計画について公開質疑を行いました。


フェイスブックに結果が掲載されています。

(6/13 静岡新聞朝刊)

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寸評については、私よりも先に、山梨のブロガーさんが上手にまとめておられるので、そちらをご覧いただきたいと思います。⇒無責任です(´∀`;)


私が気になったのは現職の川勝知事の基本的なお考え。

何でも、

多軸型の国土形成や東京・大阪間の交通のリダンダンシー確保等の国家的レベルの効果の みならず、県内の東海道新幹線駅における停車本数の増や空港新駅設置の可能性など、静岡県民の利便性の向上や地域の活性化が期待される。 

というわけで、現行のリニア計画には賛成であるとのこと。



出てきました。

空港新駅設置構想。 



ちょっと調べてみたのだけど、空港新駅設置構想自体は、川勝知事の持論でもなんでもないらしい。

静岡空港を現在の島田市南部に設ける案が決定したのは昭和62年12月のこと。

それから2年たった平成元年12月16日の静岡新聞には、「静岡空港は190ha 県が基本計画発表 区域地図も」と題した記事が載ります。そこに当時の島田市長のインタビューがあるのですが、その中に「地元対策、周辺整備にかかわる土地利用、新幹線新駅の問題など、対応策についてじっくり検討したい」という記載があります。

また平成3年11月29日の静岡新聞には、「静岡空港の採択決定 6時空整「予定事業に組み入れ 平成12年開港目標」と題した記事が載ります。静岡空港が国の計画に組み込まれたらしい。その際、当時の斎藤滋与史知事は、空港新駅について次のように言及しています。
・・・このほか新幹線新駅の誘致について初めから計画高層の中に入れて協力を願う方がよい。まだ運輸省サイドと話し合ったわけではないが、将来性のある空港として技術関係の方々も関心を持っているようだ」とJRに積極的に要望していく考えを示した。

そして平成5年8月には、県が取得する用地を決定するとともに、空港新駅の設置場所について2案を示しています。

つまり静岡空港を島田にもってくることが決まった段階で、既に空港新駅構想というものも胎動していたらしい。

ところが、このあと空港新駅の話題はとんと見当たらなくなり、県知事も石川嘉延氏変わる。平成19年にはJR東海がリニア中央新幹線構想を発表。

そして平成21年2月15日。静岡新聞にこんな記事が載ります。

 石川嘉延知事は24日の県議会2月定例会本会議で、静岡空港直下への新幹線新駅設置構想につちえ、「私はあきらめていない。これから大いに、JR東海に対して本県の主張をどんどん言うべき時だと思う」と強調した。田島秀雄氏(自民、熱海市)の一般質問に答えた。
 石川知事は「(新駅の)問題について発言するのは、十年近く公式には封印してきた」とし、新駅問題が静岡空港批判に利用され、建設の支障になると考えたことが理由だったと説明した。開港が6月4日に迫ったことをうけて「封印を解除した」と強調。「おおいに県民世論を盛り上げ、JR東海の考え方を変えさせなければいけないのではないか」と述べた。
 また、今後、リニア新幹線が現実化すると、現在の東海道新幹線のダイヤにゆとりができるとし、「空港新駅設置もダイヤ上の難点はなくなる」との見方を示した。 

ふむふむ。現在の川勝知事のお考えとほぼ同じであります。で、はじめてリニアという言葉が出てきた。

ただ、この段階でリニアのルートは不明です。

JR東海が「南アルプスを通したい」と国に公式の場で表明したのは平成23年5月10日の第3回中央新幹線小委員会のことです。

その後、第5回中央新幹線小委員会の場に我らが川勝知事が登場。静岡県側が用意したプレゼン資料はこんなもの。

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ここで初めて、南アルプスルートについての静岡県側の意向が表明されたのですが、なんだか知らなけど、南アルプスでの事業には積極的に協力したかったらしい。そして当然のように空港新駅設置を強く要望。

この二つをセットに考えると、どうしても南アルプストンネル工事は静岡空港新駅との交換条件、に見えてしまいます。

これは非常にまずかったのでは?  

ところで、県議会のほうではどんなふうに議論されているかをちょっと調べてみたのですが、この平成23年5月前後に開かれた会議では、空港新駅なんぞ全く話題にあがっていない。

2、3の議員が、「南アルプスでの工事にあたり、アクセス道路の整備は観光に役立つのではないか」といった意見を出している程度です。このあたりの状況を踏まえると、どうも川勝知事(かその周辺)が、ここぞとばかりにワンマンプレーで十数年前の構想を引きずり出してきたんじゃないか、という気がしてならない。

で、結局は実現しそうになく、南アルプスの環境破壊は目前に迫る・・・。




改めて、空港新駅設置構想の経緯を眺めてみると、どうも、実現性の薄い構想に固執するがあまり、結局はJR東海の都合に振り回され、南アルプスや大井川の環境破壊だけという貧乏クジを引くことになったような気がしてなりません。

それゆえに、現在の川勝知事の御認識は甘すぎるんじゃないのかなあ~と思うのであります。









環境への影響が読み取れぬアセスで事業認可

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リニア計画の取り消しを求めた訴訟では、原告側から
地域の意見がくみ入れられないアセス手続きは違法だ! 
という主張がされているようです。
http://shuzaikoara.blog39.fc2.com/blog-entry-558.html


環境影響評価手続きとは、地元と協議を重ねつつ環境保全策を練ってゆく、という主旨の手続きであるのに、それができないような内容であるにも関わらず事業認可したことはまかりならん、というわけであります。


ブログ作者としては、違法性については分かりませんが、これにより2027年開業なんてのは絶対に無理であろうと思います。

リニア中央新幹線を早く整備すべきだ、または期待をもって見ている方々は、ぜひこの点に注目してほしい。これはビジネスとして重大なリスクではないかと思うのであります。

環境影響評価(アセス)の概念には、大きく分けて2段階あって、第一段階は、計画が定まっていない段階で複数案を検討しながら立地場所や導入すべきシステム等を決めてゆくもので、戦略的環境アセスメントと呼ばれています。この場合、事業をやらない、という案も検討されるべきとされています。
http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&ecoword=%C0%EF%CE%AC%C5%AA%B4%C4%B6%AD%A5%A2%A5%BB%A5%B9%A5%E1%A5%F3%A5%C8 


第二段階は、事業を行うことを決め場所等を絞り込んだ段階で、具体的な環境保全のための手法を考えてゆくというもので、事業アセスメントと呼ばれています。
http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=1044

なお日本の場合、基本的には事業アセスが法で定められた手続きとなりますが、2011年の法改正により計画段階環境配慮書の作成が義務付けられることにより、戦略アセスに準じた手続きがなされることとなりました。 

リニア中央新幹線整備事業のアセス手続きがデタラメになっている原因は、計画の早期段階で事業アセスの手法を用いたことにあると思います。

良心的な事業者である場合は、早期段階でアセスを開始し、情報交換を積極的に行うことで、住民や地元自治体の要望を取り入れて、なるべく環境に配慮した事業内容にもってゆくということができるといわれています。つまり、みんなで話し合って事業の方向性を決めてゆこう、というわけです。だから一般論としては、計画が未熟でアセスを開始することは正論、とされているようです。
原科幸彦(2011)「環境アセスメントとは何か:岩波新書」p.133より 

しかし、もとより話し合うつもりのない事業者、あるいは融通の利かない性格の事業であった場合は、単に情報隠しに終わってしまうのではないでしょうか。リニア計画の場合、その傾向が如実に表れ、問題が多発しているのだと思います。

つまり、どこに何を造るのか白紙の状態で法に基づくアセスを開始したため、具体的な調査・予測、環境保全措置を示すことができず、「適切に対応する」といった漠然とした方針を提示するだけであった。そしてそれで事業認可を受けた。

そして着工直前になって環境保全措置を提案してきても、すでにアセス手続きは法的に終了しているため、本来行われるべき審議を経ずに工事に取り掛かることが可能となっているわけです。



具体的な問題、というか疑念の例として、大井川の河川流量について概略を述べます。

静岡県を流れる大井川について、トンネル工事に伴い河川流量が源流域の広範囲で大幅に減少するという試算結果が準備書に掲載された。それなのに準備書には具体的な環境保全措置が掲載されていなかった(2013/9)。

このため静岡県知事よりJR東海に、具体的な環境保全措置を評価書に記載するよう求める意見書が出された(2014/3)。

しかし評価書(2014/4)においても具体的対策は示されず、そのまま事業認可となった(2014/10)。

事業認可から2年余りを経て、JR東海は「導水路案」を静岡県に提出した(2017/1)。

しかし導水路からの自然流下だけでは全湧水量を回復させることが不可能なうえ、導水路出口より上流部への対策とはならない。また水質保全の保証もされていない。したがって環境保全としては不確実性があるため、改めて県知事より河川環境維持について確約を求める意見書が出された(2017/4/3)。合わせて利水者団体等からも環境保全についての協定締結の要求が出されている(2017/3/13と31)

しかしJR東海は「環境影響評価手続きは既に終了している」という見解を示し、それ以上の有効な保全措置を出さなかった(2017/4/17)。

その後、JR東海は南アルプストンネル静岡工区の施工業者の募集を開始した(2017/6/7)。

結局、大井川の環境が保全について、確たる取り決めも具体的措置も決まらぬまま、一方的に工事を開始することが可能となった 


大井川だけでなく長野県南木曽町や山梨県富士川町などにおける水資源保護についても同様ないざこざが起きています。

このほか、発生土置場を決めずに、あるいは発生土処分に伴う環境への影響を十分に考慮せずにトンネル工事を開始するようなケースもあちこちで問題となっています。

うがった見方をすれば、内容に変更の余地がない事業を、あたかもアセス手続きに則っているように(環境に配慮しているかのように)見せかけるために、情報公開を渋り続けているのかもしれません。すなわち事業計画・環境対策なんてものは最初から決まっていて、それへの批判を避けるべく、本来出すべきタイミングでの情報公開を避けたのではないか・・・?



要するにJR東海の姿勢ってのは、
「リニア事業は融通が利かないからアンタたちの言い分を聞きようがないのです。だから我慢してくだされ」
ってことにあると思います。

万事がこんなやり方であるから、地元としては、例え行政の意向としてリニア事業を推進させたくとも、軽々しく工事を受け入れることはできないと思います。というわけで2027年名古屋開業も不可能でしょう。っていうか、既に当初計画より遅れているのに、この状況で2027年開業に合わせて工事を進めるのなら、環境負荷につちえの各種試算前提がみ~んなデタラメになってしまう。

これを裁判所がどう判断するかも注目したいと思います。

せめて現状把握できるだけのデータは取得してほしい

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6月29日に、平成28年度の事後調査報告書が作成・公表されました。
(JR東海ホームページ)

(静岡県庁ホームページ)
これは、平成26年に作成された環境影響評価書に記載された事後調査計画、つまり事業認可後の調査計画に基づき行われるもので、昨年度に続いて2回目となります。

静岡県版に限って言えば、内容はほぼ河川流量のモニタリング結果となっています。

で、相変わらず疑問の残る内容となっています。。。

◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 

河川の流量は、当然ながら降水量によって左右されます。だから河川流量のことを知るためには、降水量との関係を知らなければなりません。雨が降って即座に川の流量が増えるのか、それとも時間差があるのか。あるいは長期の渇水となった際に河川流量はどのくらいまで減るのか。

また標高の高い場所ですから、冬季は雨ではなく雪となって積もるだろうけど、それは流量の増減にどうかかわるのか。

河川流量を知るために、その場所の降水量を知ること。

これは河川を調査するうえでの基本中の基本です。例えば河川から取水するための許可を得る際には、河川流量だけでなく降水量や気温を把握しなければならないと定められています。
河川法施行規則第11条第2項二(流水の占用の許可等の申請)など

というわけで、静岡県内でのリニア計画に置いても、「大井川水系の複数の箇所で雨量を観測すること」が求められています(2014年3月 準備書への県知事意見)。

そしてJR東海も努力するようなことを返答としています。

イメージ 2
環境影響評価書 静岡県知事からの意見と事業者の見解6-3-14ページより複製

この意見については、同年12月の事後調査計画書への県知事意見でも、繰り返されています。

けれども、このほどの事後調査報告書では、降水量については何も書かれていません。今回だけでなく平成27年度版報告書でも触れていない。

これじゃイカンだろうなあ、と思うのであります。。。

南アルプス山岳部の降水量はどうなっているのか?

たぶん、電力会社や国土交通省は、ある程度のデータを持っていると思います。特に国交省は千枚岳付近に雨量計を設置してリアルタイムでデータを取得しているのだから、それを整理することぐらいは可能のはずなんですけど。

◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 

それから、小支流における流量調査結果にも疑問があります。

険しい山奥を流れる谷側については、年2回の調査となっています。これじゃあ調査間隔が半年に及んでしまうので、仮に工事中に流量が減っても兆候をを捕えることができないだろうし、現状を把握するにも不十分です。
(事後調査計画書に対し、これじゃダメだ!と意見書を出したのですが、当然スルー)。

で、このほどの報告書を見てみると案の定、妙な結果となっております。

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結果をみると、ほとんどの地点で豊水期(8月上旬)の流量よりも低水期(11月上旬)のほうが流量が多くなっています

なんのこっちゃ?

気象庁のホームページで調べてみると、昨年の南アルプス一帯はカラ梅雨気味だったらしい。逆に秋の降水量は平年並みだったようです。そのために、低水期のほうが流量が多いという逆転する結果になっていたのでしょう。

晩秋にも流量が増すこともある、ってことを知るという点では、それなりに意味のあるデータだったといえます。

けれども、そもそもモニタリングの目的は現状の平均的な流量を把握することに主眼がありますから、イレギュラーかもしれない値しか得られないというのは好ましくないでしょう

もう少し言えば、この値がイレギュラーなのか常態を表しているのかも、年2回だけのデータでは判断しようがない

せめて月に1度程度の頻度じゃないと、現状把握には遠いと思うんですけどねぇ。


◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 


これらはいずれも険しい山岳地域で、一部には標高2000m前後の地点も含まれています(場所については報告書本文をご覧ください)。ゆえに、調査が非常に困難な場所のようです。それに表の下にあるように、県道沿いでアクセスが良好な場所でも、「ダム放流で近づけなかった」というトラブルが起きていたらしい。

調査が困難ということは、それはそれで理解できます。

けれど、調査が困難な場所、ってことは、調査を開始する前から明らかです。そういう場所であることを承知の上で工事を行う以上は、JR東海としてきちんと現状把握する手法を考えるべきでしょう

それが責任というものだと思います。

隣の県から水を抜く?

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先日、中央アルプストンネルの計画されている長野県南木曽町において、同県が設けた水資源対策についての審議会が現地視察を行ったという報道がありました。

(7/6 信濃毎日新聞より一部転載)
JR東海のリニア中央新幹線中央アルプストンネル(延長23・3キロ)建設を巡り、掘削工事が木曽郡南木曽町妻籠の水道水源に与える影響を審査する県環境審議会の専門委員会が5日、現地を視察した。その後、町役場で2回目の会合を開き、「町、JRの双方から出ているデータでは、トンネル工事によって水源の渇水が起きるかどうかを判断できない」として資料の追加提出を求めた。
http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20170706/KT170705ATI090024000.php 


この妻籠地区の水源となっている地区については、長野県水環境保全条例により、水資源に影響を与えかねない行為を制限することとなっています。

(長野県庁のHP)
http://www.pref.nagano.lg.jp/mizutaiki/suidousuigen.html
長野県水環境保全条例に基づき、知事が指定した水道水源保全地区内において、次の行為をしようとする場合には、知事に協議し、その同意を得る必要があります。
・ゴルフ場の建設
・廃棄物最終処分場の設置
・土石類の採取その他の土地の形質の変更で、変更に係る土地の面積が1haを越えるもの


ところで水資源を大事にしなければならない地区でありながら、JR東海はどうもおかしな進め方をしているように思えるのです。

◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 

個人的に見て主な不審点は3つ。

①妻籠地区の環境保全計画が決まる前に着工を宣言 
中央アルプストンネルは長野・岐阜県境をまたいでいます。行政区分でいうと、東から飯田市、阿智村、南木曽町が長野県側で、西坑口に近い部分が岐阜県中津川市となっています。

複数工区に分けて工事契約がなされており、南木曽町は長野県に属するのですが、そのうち妻籠地区の地下は、岐阜県中津川市の山口地区から掘る計画となっています。
イメージ 1

さてJR東海は、工事を開始する前には、地元向けに環境保全の内容について報告すると公約しています。

岐阜県中津川市山口工区については、JR東海が今年5月31日に『中央新幹線 中央アルプストンネル(山口)工事における環境保全について 平成29年5月』という書類を公表しています。

この書類におかしな点があります。

タイトルは『中央新幹線 中央アルプストンネル(山口)工事における環境保全について 平成29年5月』となっています。


以下にコピーして貼り付けてありますが、赤線部分には「環境影響評価書【岐阜県】に基づいて・・・」と書いてありますよね。つまり、この書類は岐阜県版の環境影響評価書に基づいて作成されたわけです。

しかし青い線を引いた工事場所の項目には「岐阜県中津川市地内及び長野県木曽郡南木曽町地内」となっています。
イメージ 2


ならば、「長野県木曽郡南木曽町地内」の環境保全計画はどうなっているのでしょうか?

煩瑣になるため掲載は省きますけど、水資源モニタリング計画では、南木曽町側の監視地点を●で示してあります。けれども、そこで行われる調査方法や調査結果については、やはり岐阜県版の環境影響評価書に基づくとしか書いていません(4-11ページ)。

つまり、長野県側にまで工事を行うと宣言しているものの、この書類では長野県側での環境保全については触れていないこととなります。


②一方的に着工を宣言 
冒頭記事でお分かりの通り、妻籠地区で工事を行うには、県知事の許可が必要です。
それなのに、事実上の着工宣言というべき書類が岐阜県中津川市に送付されてしまった。
http://www.city.nakatsugawa.gifu.jp/news/047411.php

実際には、妻籠地区での工事許可を得る目途はたっていません。また、当然のこと地元の合意も得ていません。

おそらくJR東海の言い分としては、妻籠地区にまでトンネル工事が進むのは当分先のことであり、それまでに許可を得ればよいと考えているのでしょう。

けれども常識的には順序が逆じゃないのかな?

③環境影響評価書との整合性 
評価書は県単位で作成されており、そこには、トンネルの工区設定も県単位でおこなうかのような表現がなされていました。
イメージ 3
環境影響評価書での「工事計画」
当時は矢印の方向に掘削を行うとしていた。矢印は県境(=分水嶺)で途切れている。 

しかし評価書策定後に行われた地元協議や工事入札において、妻籠地区での掘削は岐阜県側から行うことを表明。

ならば、実行可能な環境保全措置についても再検討されるべきではないでしょうか。
⇒具体的に考えると、例えば、水が枯渇した場合に代替水源をどうするか、という話につながる。流域界をくぐり抜けた工区を設定すると、工事中にポンプアップで表流水を補うという手法が使えなくなる。妻籠地区の水を抜いてしまった場合、湧水は岐阜県側に流出する。けれども妻籠地区まで貫通させるまでは、ポンプで汲み上げることすらできない。 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 


ところで、静岡県の大井川でも同じ状況となっています。

南アルプストンネル山梨工区についての書類『南アルプストンネル新設(山梨工区)工事における環境保全について 平成27年12月』では、工事場所は南巨摩群早川町新倉地内」となっているものの、添付された図によると、「今回の実施範囲」は県境をくぐり抜けて静岡県側にかかっています。縦断面図等から判断すると、静岡県側つまり大井川流域に1.2㎞ほどかかっているとみられます。
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「南アルプストンネル新設(山梨工区)工事における環境保全について」より複製・加筆。中央アルプストンネルのように、「静岡県まで工事を行う」旨の文章表現はない。 

同じく南アルプストンネル長野工区についての書類『中央新幹線南アルプストンネル新設(長野工区)工事における環境保全について 平成28年10月』では、工事場所は「長野県下伊那郡大鹿村大河原地内」となっています。けれども下の方の図によると、やはり今回の実施範囲は県境をくぐり抜けて静岡県側にかかっています。

静岡県側つまり大井川流域にかかっている部分は約0.7㎞程度とみられます。

静岡県内での本坑・先進坑は約11㎞ですが。そのうち2㎞程度つまり2割弱は、既に「着工」していることになるようです
イメージ 4
妻籠地区と同様に、山梨県側での”環境保全について”でも長野県側での”環境保全について”でも、大井川流域での保全については触れていません。

静岡県知事は、「大井川流域での湧水はすべて大井川に戻すこと」をJR東海に求めています。

けれどすでに無視されています

これでいいのかな?
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