山梨・長野・静岡の10市町村により、南アルプスをユネスコ生物圏保存地区(通称:エコパーク)に登録しようという運動がなされています。さる19日、登録への第一手続きとして、申請書の素案を文部科学省内に設置されている日本ユネスコ国内委員会に提出したのだそうです。
静岡新聞の記事
東京新聞の記事
エコパークというのは、ごく端的に説明しますと、自然環境の自足性と生物資源の持続的な利用能力を高めることが重要であることが国際的に認識されるようになってきて、それを実現するための国際的な自然保護地域のことをさすのだそうです。
日本では長野県の志賀高原、白山、紀伊半島の大台ケ原、屋久島、の4地域が1980年に登録録され、2012年7月に、貴重な照葉樹林を残した宮崎県綾地域が登録されることとなりました。綾地域の登録は、国内では31年ぶりということになります。順調に行けば、南アルプスの登録は2014年夏になるとのこと。
ところで南アルプスにおいては、世界自然遺産登録を目指した運動も行われています。世界遺産登録のためには、単に優れた自然環境が残されているだけでなく、それを保護するため制度が整っていなければなりませんが、エコパークの場合は既存の法的保護制度と保全管理計画とで申請可能だということです。南アルプスを世界遺産登録するためには国立公園拡張が不可欠ですが、環境省による拡張がいつになるのかさっぱり見通しがつかないので、とりあえず第一目標をエコパークに変更したのでしょうか?
エコパークに登録すると住民や自然環境保全にどのようなメリットがあるのか、実現すると生活や自然環境にどのような影響が予見されるのか、国内外の事例はどうなっているのか、そうしたことを広く説明する必要があると思うのですが、全く伝わってきません。いつの間にか世界文化遺産登録まっしぐらとなった富士山同様、ナゾの多い計画といった雰囲気があります。
とはいえ、既登録地から不満が出ているわけでもなく、世界遺産登録のなされた屋久島のように膨大な観光客が押し寄せたり、あるいは白神山地のように住民の利用をも拒むような状況となるようなこともなっておらず(ちなみに大井川水系寸又川上流域はこのような規制下だけども、一般人が簡単に近づける場所ではない)、新たな法的規制がかかるわけでもなく、基本的にデメリットになりそうなこともないと思うので、悪いことではないと思います。もっとも関係市町村のホンネは地域のブランド化にあるようですが。
さて、その南アルプスではリニア中央新幹線の長大トンネルの建設が計画されています。一部の周辺市町村においては、エコパークもリニアもどちらも歓迎する声も聞こえてきます。
リニアの建設工事は10年以上におよび、残土運搬路や処分地のことも含めると、直接的な改変を受ける範囲は非常に広くなります。今後十数年間は、事実上、南アルプスの主産業が鉱山開発になるようなものです。これでは明らかに時速可能な利用とはいえません。
「自然環境の持続性および時速可能な的な利用」を図るエコパークと、単純に壊して通るだけのリニア計画とは、まったく相反するものですが、なぜかどの方面からも、両計画を並行して進めることの矛盾を指摘する声は聞こえてきません。
以前この点について長々と書いたことがあり、左欄外の「世界自然遺産登録って本気?」のところに保存しています。また、別途長々とまとめてありますので、よろしかったらご覧になってみてくだい。
4月15日、国会にてリニア中央新幹線についての質疑が行われていたそうです。
動画がYouTubeにアップされていましたので、ご紹介します。
【質問者】共産党 佐々木憲昭議員
主な質問内容
・国の審査が不十分ではないか
・何のためにつくるのか
・大地震時の安全性は確保されているのか
・国民の支持を得ているといえるのか
【回答者】太田昭宏国土交通大臣、国土交通省鉄道局長
「科学的に安全である」「科学的に安全性を確保する」の繰り返し…
リニアのことが国会で話題に上がるのは、建設指示後ではおそらく初めてのことではないかと思います。
継続した審議をお願いしたいと思います。