現在、静岡市役所において、中央新幹線建設事業に関して市民の声を募集しています。静岡市長の鶴の一声で、「南アルプスを守るために市民の皆様の議論が必要」として、急きょ設けられたものです。
10月2日締め切りとなっております。リニアと南アルプスとの関係について、「なんかおかしくない?」「こうやって守るべき」というご意見をお持ちの方、ぜひ意見を出してみましょう。
ところで、先月26日に補正評価書が公示されてから2週間以上、ずっと静岡版評価書の内容を検証しているのですが、それにしてもひどい。細かく見てゆくと何十もの問題点が見つかるのですが、主だったものをあげてみます。
【間違い】
●評価書資料編で現地確認されたとする重要な植物種73種が、評価書本編では確認されていないことになっており、環境影響評価の対象となっていない。なお、該当種は全て南アルプス国立公園内指定種というもので、評価書の補正過程で追加されたものであり、全体の補正が間に合っていなかったという壮大な凡ミス(?)とみられる。
●評価書資料編で現地確認されたとする重要な植物種73種が、評価書本編では確認されていないことになっており、環境影響評価の対象となっていない。なお、該当種は全て南アルプス国立公園内指定種というもので、評価書の補正過程で追加されたものであり、全体の補正が間に合っていなかったという壮大な凡ミス(?)とみられる。
【ムチャクチャな論理展開】
●生態系の項目において、異なる気候条件や地形条件のもとに成立し、特徴の大きくことなる数種類の森林について、すべてひとまとめにしたうえで、その中から工事予定地と関係のない森林を予測対象にし、改変しないから影響がないという意味不明な論理展開をしている。
●生態系の項目において、異なる気候条件や地形条件のもとに成立し、特徴の大きくことなる数種類の森林について、すべてひとまとめにしたうえで、その中から工事予定地と関係のない森林を予測対象にし、改変しないから影響がないという意味不明な論理展開をしている。
●南アルプス聖岳や光岳へ向かう登山者は、登山口と、登山拠点である宿泊施設や駐車場との間をつなぐ林道上を歩いて移動している。この林道を、大量の工事用車両が通行する計画である。このため、登山客への影響が懸念されるが、どういうわけかヘリクツをごねて調査対象としていない。
●長さ3㎞の工事用トンネルを2本掘り、その中に工事用車両を通すため、騒音が減少し、車両を視認しにくくなるため、猛禽類への影響が緩和されるとし、環境保全措置に位置付けている。長さ3㎞のトンネルを掘るには2~3年の間、地上を大量のダンプカーが通ることになるが、その影響については何も言及していない。そもそも、この工事用トンネルが環境破壊の原因である。
●植物の重要種選定基準が、同じ大井川源流域の隣接した場所なのに、どういうわけか調査場所によって異なる。
【予測・評価内容について検証ができない】
●河川流量が大幅に減少すると大騒ぎになっているが、そもそも実際の川にどれだけの流量があるのか記載されておらず、予測値の妥当性を問うことができない。
●河川流量が大幅に減少すると大騒ぎになっているが、そもそも実際の川にどれだけの流量があるのか記載されておらず、予測値の妥当性を問うことができない。
●工事のアクセス道路となる総延長40㎞近い林道について、改修工事による影響を予測するために動植物の調査をおこない、重要種とされる数十種類について、いずれも影響はないと結論付けている。しかしどこで確認されたのか全くわからず、本当に工事による影響はないのか検証しようがない。
【不自然な調査結果】
●水質予測のために、豊水期と低水期に河川流量を測定しているが、なぜか低水期のほうが流量が多かった地点がある。そのデータについて、検証をすることなく予測の前提としているため、意味不明な予測結果が出ている。
●水質予測のために、豊水期と低水期に河川流量を測定しているが、なぜか低水期のほうが流量が多かった地点がある。そのデータについて、検証をすることなく予測の前提としているため、意味不明な予測結果が出ている。
●これまで静岡県内および南アルプスでは分布の確認されていない植物が数種現地確認されている。本物だったら保全対象種とすべきであるが、同定の信頼性についての検証をおこなっていない。
●騒音の測定地点のうち一か所が川の堰堤近傍であったため、調査結果に川の音が大きく現れていた。こうした自然由来の音は暗騒音としてノイズ扱いされ、本来は調査地点を変えなければならないが、なぜかこれをそのまま試算の前提に使っている。そのため、「もともとうるさい場所だったので工事用車両の通行による影響は小さい」という妙な結論が導き出されている。
【おかしな環境保全措置】
●工事従事者への教育・講習
⇒教育されるべきはこんな評価書をつくったJR東海のほう‼
⇒教育されるべきはこんな評価書をつくったJR東海のほう‼
●大井川の水がトンネルを通じて東隣の早川方面へ2㎥/s減少するとの予測に対し、トンネル内へ湧きだした水をくみ上げて対応するとしている。しかしこれを実行すると、現在大井川から早川へ導水している発電所の出力を上回るエネルギーが必要となるので、くみ上げるだけムダである。
●同じく、大井川の水が2㎥/s減少した場合、井戸を掘ってまかなうという案も館合えているらしい。2㎥/sもの水を井戸でまかなえば、その分、井戸周辺で川の水が減ってしまう。つまり、水の消える場所が変わるだけで、環境保全措置としての意味がない。
●河川流量を減少させないための対策として、「適切な構造及び工法の採用」「地下水等の監視」とがあげられ、いずれも効果の不確実性はないとしている。しかし山梨実験線でのトンネル工事において、河川流量を減少させる可能性を予測しておきながら、それを回避することができなかったとしており、施された環境保全措置は功を奏さなかったはずである。
●総延長40㎞近い林道を、毎日400往復前後の大型車両が通行するため、小動物がひかれてしまうおそれがある、もとより個体数の少ないサンショウウオ類等にとっては個体群の存続にかかわる一大事である。これについての対策として、「運転手の努力にまかせる」というトンデモ案が出されている。ちっぽけなカエルやサンショウウオを運転席から見つけ、直前でブレーキをかけるなんてできるわけない。
●外来植物の侵入対策として、工事用車両のタイヤを洗浄するとしている。しかしこれだけでは、積荷に付着して侵入するケースに対応できず効果が弱い。もっと有効な案を考えるよう、準備書段階でも指摘されているのに対応していない。
【国土交通大臣意見を無視】
●JR東海のあげた発生土置場のうち、特に規模の大きな2か所については、国土交通大臣意見で求められた選定要件を全く満たしていない。
●JR東海のあげた発生土置場のうち、特に規模の大きな2か所については、国土交通大臣意見で求められた選定要件を全く満たしていない。
面倒だからいちいち評価書を複製しませんが、こんな具合でヘンな記述がたくさんあるのです。こりゃ、マズいですよ。
何がマズいって、自然環境に取り返しのつかない悪影響を及ぼすだけじゃなく、そういう行為を進める事業者(=JR東海)が、自ら工事を行おうとしている場所が環境保全上特に重要な場所であるという認識、そして自らがおこなう行為がとてつもない環境破壊を引き起こすという認識、どちらも持ち合わせていないってことです。
本当に真剣に南アルプスの自然環境が重要なものだと認識し、それでもなおリニアの工事が必要なものだとして十二分な事前調査と学習を行い、万全の環境対策をとるというのなら、こんな論理破綻したアホな評価書なんて作らないはずですから。