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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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リニア認可は環境影響評価法第33条に違法しているのでは?

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10月17日、JR東海の推進するリニア中央新幹線計画の事業認可が太田国土交通大臣より出されました。これによってJR東海は、建設に向けて事業用地の取得や測量、土地開発規制の解除手続きなどを開始することができるわけです。
 
この認可が、今後の日本の環境行政における重要な変換点になると思われるのですが、そのことに言及した新聞等は見当たりませんね…、

これは、今後の環境影響評価制度の根幹にかかわる大問題になります。おそらく、十数年後の法律書などで、特異な例として取り扱われるに違いありません。
 
そもそも環境影響評価制度は、事業認可審査とどのような関係にあるのでしょうか。そこから考えてみましょう。
 

 
時速200キロ以上で走行する鉄道を建設する場合、その手続きには全国新幹線鉄道整備法という法律が適用されます。通常の鉄道事業法に、いろいろな特例などを追加するような性格の法律です。この法律には、認可手続きの際に、環境面からの審査を行うことを定めた規定はありません。

その代わりに、環境影響評価法第33条には、次のように書かれています。
 
第33条   対象事業に係る免許等を行う者は、当該免許等の審査に際し、評価書の記載事項及び第二十四条(注 国土交通大臣意見)の書面に基づいて、当該対象事業につき、環境の保全についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査しなければならない。
 
(一・二は略)
 
三   免許等を行い又は行わない基準を法律の規定で定めていない免許等
 当該免許等を行う者は、対象事業の実施による利益に関する審査と前項の規定による環境の保全に関する審査の結果を併せて判断するものとし、当該判断に基づき、当該免許等を拒否する処分を行い、又は当該免許等に必要な条件を付することができるものとする。
 
 
この第33条の規定により、新幹線鉄道の認可の審査の際には、環境影響評価書の記載事項に基づいて、環境保全について適切な配慮がなされるかとうか審査しなければならないことになっています。これは私kabochadaisukiの思い込みと疑われても困りますので、裁判所判事の見解を引用してみましょう。
 
「評価書における環境影響評価の判断の過程に看過し難い過誤等があり、被告(国土交通大臣)の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告の上記判断は不合理であり、裁量権の逸脱があるものとして違法と解すべき」
(大阪地判平成18年3月30日 西大阪高速鉄道西大阪延伸線工事の事業認可取り消しを求める裁判にて)
 
また、沖縄県新石垣空港の設置許可の取り消しを求める訴訟における判決(住民側敗訴)文で、裁判所は、環境影響評価法第33条1項の審査に基づく許認可等処分が違法になる場合を列挙しています。(東京地方裁判所 平成23年6月9日)
 
これ、非常に重要だと思うので、別紙から抜き出してみます
 
(ア)環境配慮という絶対的考慮要素を書いた場合
 
(イ)判断過程において考慮すべきでない事項を考慮し、考慮すべき事項を考慮せず、又は考慮要素の認識や評価を誤って許認可等処分した場合
⇒許認可等権者は科学的かる客観的な見地からひょうかしなければならない
 
(ウ)恣意的な環境影響評価手続きに対し抑止効果を欠いた処分がされた場合
 
(エ)第三者的視点による補完機能を欠く処分がされた場合
⇒第23条に基づく環境大臣意見を勘案しているか
 
(オ)事後のフォローアップ機能を欠く処分がされた場合
 
(カ)評価書の記載事項の判断過程に誤りがある場合に(たとえ記載内容に誤りがなくても)これを是正せずに許認可等処分がされた場合
 
(キ)評価書の記載内容に誤りがあるのにこれを是正せずに許認可等処分がされた場合 
 
⇒リニアの評価書に最も関わってくると思うのでコピペ 
イメージ 1
 
(ク)環境影響評価の手続き違反を看過して処分がされた場合
 
(ケ)合理的理由を示すことなく24条意見(注 担当大臣意見)に対応しなかった場合 
 
このたびのリニア中央新幹線環境影響評価書は、私の見た範囲では、下線を引いた3項目に該当するように思われます。特に、(ケ)については確実にあてはまるでしょう。つまり、この東京地方裁判所の見解に照合すると、太田国土交通大臣のリニア事業認可は違法になるのかもしれません。
 
ざっと3項目の例を挙げておきます。いずれも静岡県編評価書です。
 
(イ)の例
 国土交通大臣の意見において、静岡県を含む巨摩山地から伊那山地までの山岳トンネル区間については、精度の高い予測を行うよう求められており、それに対し、三次元水収支解析を実施したと見解を述べている(表13-1(24))。
 その結果である「表8-2-4-5河川流量の予測結果」において、工事着手前の現況流量は解析値として示されている。しかし現実の河川における実際の流量が示されていないため、この解析値の妥当性を検討することができない。 たとえば「地点番号06大井川(田代ダム下流)」において、工事着手前の解析流量が表8-2-4-5-において9.03㎥/sと試算されているが、本評価書の記載内容からでは、現実の同地点において、実際にこの流量があるか否かの確認ができない。よって工事期間中および完成後の流量の予測値についても、妥当性を検証することができない。「表6-3-1(13)静岡県知事からの意見と事業者の見解」右欄に掲載されている渇水期流量についても同様である。また、静岡県知事から求められた「河川流量減少に関する定量的な判断ができるように定量的な判断基準について示すこと(表6-3-1(13)のカ)」という意見にも答えることができていない。
 すなわち、工事および山岳トンネルの存在による水資源への影響に係る予測結果について、その妥当性を検証するための情報が評価書内に掲載されていないため、「(2)予測及び評価」については全体として論拠を欠く。 したがって8-2-4-18ページにおける「水資源に係る環境影響の低減が図られている」とする評価結果には根拠がない。
 根拠がないのであるから、評価書の記載事項からでは、予測結果や環境保全措置の妥当性は審査できないはずである。それにもかかわらず事業認可をした国土交通大臣の行為は違法ではないか?
 
(キ)の例
 以下の73種の植物種については、資料編の「表9-1-1-2 高等植物確認種一覧」においては現地で確認されていると記載されているのにも関わらず、本編の「表8-4-2-8 高等植物に係る重要な種確認一覧」においては現地で確認されていないことになっている。これでは「8-4-2 植物」全般の記載内容は大幅に誤っていると言わざるを得ない。
ヒメスギラン、ヒモカズラ、ヤマハナワラビ、クモノスシダ、ウサギシダ、ミヤマウラボシ、シナノナデシコ、レイジンソウ、ホソバトリカブト、ミヤマハンショウヅル、ミヤマカラマツ、シナノオトギリ、オサバグサ、ミヤマハタザオ、ミヤマタネツケバナ、ミヤママンネングサ、トガスグリ、ダイモンジソウ、クロクモソウ、シモツケソウ、モリイチゴ、イワキンバイ、ミネザクラ、イワシモツケ、イワオウギ、ウスバスミレ、ヒメアカバナ、ゴゼンタチバナ、ヤマイワカガミ、イワカガミ、ウメガサソウ、シャクジョウソウ、ギンリョウソウ、コバノイチヤクソウ、ベニバナイチヤクソウ、ジンヨウイチヤクソウ、サラサドウダン、ウスギヨウラク、ウラジロヨウラク、アズマシャクナゲ、ミツバツツジ、サツキ、トウゴクミツバツツジ、リンドウ、ツルアリドオシ、トモエシオガマ、クガイソウ、イワタバコ、キンレイカ、ヤマホタルブクロ、タニギキョウ、タカネコンギク、カニコウモリ、ミネウスユキソウ、マルバダケブキ、カイタカラコウ、アカイシコウゾリナ、ツバメオモト、イワギボウシ、コオニユリ、クルマユリ、クルマバツクバネソウ、タマガワホトトギス、エンレイソウ、シロバナエンレイソウ、ミヤマヌカボ、コイチヨウラン、エゾスズラン、オニノヤガラ、ミヤマウズラ、ミヤマモジズリ、タカネフタバラン、コケイラン
⇒詳細(9/1のブログ記事)http://blogs.yahoo.co.jp/jigiua8eurao4/13168551.html
つまり植物の項目は全面的に誤っているのにもかかわらず、是正を要求することなく事業認可したのであるから、東京地裁の見解に照らし合わせれば明白な違法行為である。
 
(ケ)の例
 静岡県内の発生土置場については、準備書の段階で示されている。その選定過程について準備書では、「過去に伐採された場所や人工林等から選定した」としており、その記述がそのまま評価書おより補正評価書でも用いられていた。
いっぽう評価書に対する国土交通大臣意見においては、発生土置場について「自然植生、湿地、希少な動植物の生息・生育地、まとまった緑地等、動植物の重要な生息・生育地や自然度の高い区域、土砂の流出があった場合に近傍河川の汚濁のおそれがある区域を回避すること」「レクリエーション等の場から見えない場所を選定すること」という要件を述べている。しかし事業者は、準備書段階で示した地点に対し、この要件からの検証を行っていない。すなわち、評価書において大臣意見を無視しているのにもかかわらず事業認可したのであるから、違法性が問われるべきである。
 
 
 
問題点はまだままだたくさんあるので、この東京地裁の見解に照らし合わせれば大量に疑惑が出現すると思います。
 
 
 

リニア中央新幹線計画においては、このように問題だらけの環境影響評価書を、是正することもなく事業認可しました。評価書の記載事項が誤っていても事業者(JR東海)が「きちんと対応すると言っている」(17日の太田大臣記者会見)という理由があれば事業認可できるならば、何でもかんでもやりたい放題になってしまいます。カネと時間をかけて、真面目にアセスをおこなおうとする事業者は出なくなってしまうことでしょう。そもそも大臣の一存で法律の解釈変更をしていいのでしょうか? 
 
かような理由で、日本の環境行政史上に残る大問題だといえます。
 
この点は国会の場で正してもらわないと、本当に困りますよ。

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