どうもこのリニア計画というもの、複数の行政機関(など)がこれまでに考案してきた環境保全目標に、いろいろと反しているように思われるのであります。国立公園拡張計画とか、ユネスコエコパークとか。その中でも妙だと思うのがエネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法) というもの。
先日も触れましたこの法律、いろいろな事業者に対して地球温暖化対策と省エネを推進するためのものです。法律をつくったのは通産省(経済産業省)ですが、運輸業界あてには国土交通省を経由して通達されています。その国土交通省のホームページには、制度説明のファイルで次のように掲載されていました。
はい。鉄道業界においても、エネルギー消費の原単位を年率1%ずつ減らすよう、求めています。「省エネを呼びかけてるよ~!」とする、国土交通省のタテマエになります。「省エネルギー型車両の導入」なんてのもありますね。
しかし超電導リニア方式の中央新幹線というものは、省エネとは縁の遠い乗り物です。前にも掲載しましたが、温室効果ガスの排出量は、2045年の大阪開業時には、現行(2005年)に比べて1.15倍に増加するとのこと。
温室効果ガスの排出量が増えるということは、電力の消費量が現在の東海道新幹線に比べて大きくなることを意味します。詳しくは環境影響評価書をご覧になっていただきたいのですが、一人当たり電力消費は4倍以上になるとのこと。移動時間が半分になるのにエネルギー消費が4倍以上になるのでは、エネルギー消費の原単位はやたらと増えていることになります。
これ、どうも最上段の「省エネ法」の規定に反しているように思えてならないんですよ。
確かに超電導リニアは、航空機よりはエネルギ消費の原単位は小さく、1/3程度です。しかしリニアの乗客の8割以上は東海道新幹線からのシフトを想定しているので、仮に航空機を全廃させても、全体としての消費量は変わらないんですよ。しかも省エネ法でいう削減は事業者ごとに求めているので、JR東海による消費が激増することは、本末転倒なのです(別に罰則規定があるわけではない)。
だから、省エネ法の観点からみれば、国土交通省は簡単にこの事業を認めてはならなかったのではないでしょうか。せめて付帯事項をつけるべきではなかったかと。
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私、リニア計画を原発再稼働に結び付けて批判する声には、どうも論理に飛躍が大きすぎると思うので賛同しかねます。
しかしこの省エネ法と、セットになっている地球温暖化対策法とを考え合わせると、どうも原発と結びつきそうなものが見て取れます。
省エネ法とは別に、地球温暖化対策法という法律では、温室効果ガスの排出量削減を呼びかけています。京都議定書が根底にあり、国際公約のための法律という意味合いも持ちます。
もちろん、鉄道業界を含む、運輸業界も対象となっています。
(国土交通省のページ)
やはり国として鉄道業界に対しても、前期省エネ法に基づく省エネの呼びかけとともに、地球温暖化対策法に基づく温室効果ガスの排出量削減を呼びかけているわけです。その手前、軽々に温室効果ガス大量放出の乗り物を認可するわけにはいきません。
で、ここで思い浮かぶのが「地球温暖化対策に原発を…」と言っていた話。
速い話、原発が動いていて火力発電の比率が低い状況なら、化石燃料の消費が減らせるので、リニアの走行による温室効果ガスの排出量も少なくて済むっていうわけです。「省エネ法の精神には反するけど地球温暖化対策法は遵守できる」ってわけです。これならば、リニアを監督する国土交通省の体面も、ある程度守られるかもしれません。
もっとも、体面は守られるけど安心と環境は守れませんが。