リニア中央新幹線構想について、手元にある雑多なメモなどをまとめて年表を作成してみました。
よろしかったら参考になさってください。
リニア中央新幹線整備事業にかかわる年表
ところで年表を作成していて気付いたのだけども、リニア沿線で最もリニア実現に熱心なのは、どうも愛知県のように思われるのであります。
JR東海によるリニア計画について、国土交通省や政府よりも中京地区の政財界のほうが熱心に後押ししているんじゃないかな?
過去1年ほどの中京地区での主だった動きを並べてみると…
2014年
2月9日 愛知県庁内に、「中京独立戦略本部会議」が設置される。県庁のHPによると、【世界と闘える愛知・名古屋の実現に向けた司令塔として、「中京都」構想をはじめ、愛知県及び名古屋市が共同して取り組むべき施策の立案、推進について協議し、合意形成を図る。】ことが目的であり、その核となるのがリニア中央新幹線だという。12人のメンバーにはJR東海現社長も加わっている。
2月9日 愛知県庁内に、「中京独立戦略本部会議」が設置される。県庁のHPによると、【世界と闘える愛知・名古屋の実現に向けた司令塔として、「中京都」構想をはじめ、愛知県及び名古屋市が共同して取り組むべき施策の立案、推進について協議し、合意形成を図る。】ことが目的であり、その核となるのがリニア中央新幹線だという。12人のメンバーにはJR東海現社長も加わっている。
5月23日
愛知県が「リニアを見据えた鉄道ネットワークの充実・強化に関する検討会議」を設置。第1回目会合を開く。
6月30日
愛知県内瀬戸市の窯業団体が、リニアの工事によって愛知県内で生ずる建設発生土650万立方メートルについて、全量を受け入れて陶土採掘跡地に埋め戻すことを検討していることが、中日新聞にて報じられる。
愛知県内瀬戸市の窯業団体が、リニアの工事によって愛知県内で生ずる建設発生土650万立方メートルについて、全量を受け入れて陶土採掘跡地に埋め戻すことを検討していることが、中日新聞にて報じられる。
11月12日
愛知県庁において、「リニア新時代に向けた中京大都市圏づくり勉強会」が開催される。
愛知県庁において、「リニア新時代に向けた中京大都市圏づくり勉強会」が開催される。
12月18日
名古屋市の河村市長が、リニア開業を見据えて高さ1000mのタワーや大規模展示場を建設する方針を表明(本気かな?)。
名古屋市の河村市長が、リニア開業を見据えて高さ1000mのタワーや大規模展示場を建設する方針を表明(本気かな?)。
12月27日
日経新聞にて、名古屋鉄道、近畿日本鉄道、三井不動産は名古屋駅に地上50~60階建ての大型複合ビルを建設する計画であることが報じられる。総事業費は約2000億円。
日経新聞にて、名古屋鉄道、近畿日本鉄道、三井不動産は名古屋駅に地上50~60階建ての大型複合ビルを建設する計画であることが報じられる。総事業費は約2000億円。
2015年
1月30日
名古屋市と名古屋まちづくり公社、JR東海が名古屋駅周辺の用地取得について協定を結ぶ。同公社がJR東海から委託を受け、地権者らとの交渉にあたる。協定期間は22年3月31日までで、JR東海から同公社への委託費は約23億円。
名古屋市と名古屋まちづくり公社、JR東海が名古屋駅周辺の用地取得について協定を結ぶ。同公社がJR東海から委託を受け、地権者らとの交渉にあたる。協定期間は22年3月31日までで、JR東海から同公社への委託費は約23億円。
2月23日
愛知県とJR東海とが、リニア中央新幹線建設に伴う用地取得交渉を委託する協定を結ぶ。県の外郭団体の「県土地開発公社」職員が地権者と交渉し、協定の期間は2020年3月末まで。
愛知県とJR東海とが、リニア中央新幹線建設に伴う用地取得交渉を委託する協定を結ぶ。県の外郭団体の「県土地開発公社」職員が地権者と交渉し、協定の期間は2020年3月末まで。
2月24日
愛知県庁において「第3回リニアを見据えた鉄道ネットワークの充実・強化に関する検討会議」が開催される。名鉄三河線を強化し、豊田駅とリニア名古屋駅との間を40分で結ぶことなどが提言される。
愛知県庁において「第3回リニアを見据えた鉄道ネットワークの充実・強化に関する検討会議」が開催される。名鉄三河線を強化し、豊田駅とリニア名古屋駅との間を40分で結ぶことなどが提言される。
このほかにも名古屋の好景気を伝える報道が繰り返されており、なんだかリニアバブルといった雰囲気が読み取れます。似たような構想は長野でも山梨でもやっていますが、そもそも経済規模が桁違いですので、リニア計画全般に与える影響と言う点では、やはり愛知・名古屋の力は無視することができないと思います。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
まあ、タワーを造ろうが、中京都を造ろうが、隣県の住民としては「勝手にやれば」としか言いようがございません。
でも、このようにリニア景気に踊らされている人々は、リニア開業の「利」とは、中京圏とは無縁の地域における「害」の上に成り立つというものであることを、御認識なさってくださっているのでしょうか。そのことが気になるのであります。
名古屋・愛知県がもつ「中京都」構想を実現するためには、どうも2027年のリニア中央新幹線名古屋開業が前提なのだそうです。
ところが、その「2027年リニア中央新幹線名古屋開業」を実現させるためには、たいへんな環境破壊と自然破壊とが避けられません(そもそも2027年開業の突貫工事自体が無理なのである)。しかもその影響を受ける地域は、「中京都」とはあまり関係のない場所になります。岐阜県東濃地区のどこかにウラン残土が運ばれてゆくかもしれないし、南木曽町の古い集落であったり、阿智村や大鹿村の山里であったり、静岡市の南アルプスや大井川流域であったり、座間市の水源であったり、川崎市の住宅地であったりするわけです。
「中京都」の実現が、こうした「中京」以外の地域への迷惑押し付けの上に成り立っているということを、審議されている方々は御認識なさっておられるのでしょうか。
NIMBYと位置付けられがちなゴミ処理場等の場合でも、大抵の場合は利害地域が同一の行政単位におさまっていますから、利を得る地域と害を受ける地域とで、互いに顔が見えるかもしれないし、建設予定地が受ける影響について想像を働かせることも可能でしょう。そういう中で意見を交わしてゆくうちに必要性が理解されて、合意を形成する空気が醸成されてくるのだと思います。
しかしリニアでは、高速道路やダム等に比しても、それは困難ではないでしょうか。
利を得る地域は害を受ける地域とは全く別の地域であり、しかも互いの接点が全くない。
「中京都」構想という目標のために、南アルプスに残土を捨ててゆくことや、山里をダンプカーで埋め尽くすことを目の当たりにする人々が、「中京都」構想の意思決定に加わる機会も権利もない。
冒頭のリンク先にある県庁のHPを見渡しても、そういう迷惑の押し付けのうえで初めて実現可能となる「中京都」構想なるものの進め方が、果たして適切かどうかを考える機会もないようです。
ア愛知県や名古屋市の姿勢は、法律や制度のうえでは、JR東海が勝手に進めた事業を契機ととらえて騒いでいるだけだから、別に何の問題もないのだけれども、人間の感情としては、なんだかおかしな話だなあ…と思うのであります。
意味不明な文章で失礼いたしました。