リニア計画の問題を追いかけているジャーナリスト樫田茂樹氏のブログにおいて、早川町内のレポートと同町内における発生土量と運搬車両のナゾがまとめられています。
これを眺め、改めて山梨県内における発生土量を見直してみたところ、早川町の東隣に位置する富士川町内における発生土量について、気になった次第であります。
JR東海は、富士川町と早川町との間に「第四南巨摩トンネル」を計画しています。なお正式名称は”隧道”ですが、ここではトンネルとよびます。
このトンネルは長さ8627m。山梨県の評価書資料編によると、そのトンネルから東側に181.9万立米、西側に94.2万立米、合計283.3万立米の発生土が掘り出される試算になっています。
山梨県編評価書 資料編 廃棄物のページより複製
青の枠内が第四南巨摩トンネルからの発生土量
高下地区が東側、早川町青崖地区が西側坑口となる
評価書に書いてある数字を図示すると以下のような具合になります。
背景画像は国土地理院地形図閲覧サービス「うぉっちず」より複製・加筆
この283.3万立米という数字、長野県側で計画されている伊那山地トンネルからの総発生土量290万立米とほぼ同じになります。しかし、長さ15300m・斜坑総延長3000mの伊那山地トンネルと同じ量が、8600m・斜坑1800mのトンネル建設で生じるとは不自然です。
何だかアヤシイので、ちょっと検証してみます。
まずは、断面積と長さから、どれだけの容積を掘るのか見積もります。
トンネル内側の面積は74㎡としていますが、実際に工事を行う際はコンクリート壁の分を余計に掘らなければなりません。これについてJR東海は静岡県の準備書審査会では107㎡と説明しているので、この値を使います。
南巨摩第四トンネルの長さは8627m。したがって掘るべき容積は8627m×107㎡で約92.3万立米となります。
また、このトンネル建設に先立って長さ1800mび斜坑(非常口)を設ける計画です。前述の資料より、斜坑の掘削断面積は68㎡とされているため、1800m×68㎡で、約12.2万立米となります。
合わせて約104.5万立米。
砕いた岩は不整形になるので、容積が増します。これを「土量の変化率」とよび、岩の種類や工法によって異なりますが、1.1~2.0倍ぐらいになるようです。同じく富士川町内で計画している第三南巨摩トンネルでは、どうやら1.49を使用しているようなので、この値を当てはめると、104.5万立米×1.49で約156万立米。南巨摩第四トンネルからは、これぐらいの発生土が掘り出される勘定となります。
しかし冒頭に記した通り、評価書によると、ふたつの斜坑から掘り出されるのは283.3万立米になるとのこと。
これはおかしい。残り130万立米はどこから掘り出されるのだろう?
この量を8600mのトンネルだけで掘り出すとすると、断面積は206㎡になってしまいますが、こんなに大きいはずがない。先進坑を設けるにしても、これでは大きすぎます。南アルプストンネルでの先進坑断面積は55㎡としてますので。
第四南巨摩トンネル北側の高下地区では、変電所や保守施設を計画しており、他地域より大量(240万立米)の発生土を運び込んで盛土するとのことなので、そこでの整地によって生じるのかとも考えました。しかし評価書によると、高下地区での切土つまり地上工事による発生土量は4.2万立米。関係がないようです。
赤枠内が高下地区への発生土量
地上工事での発生土は切土の欄
あと考えられるのは、高下地区に想定している保守施設がトンネルと一体化した大規模地下構造である可能性ですけど・・・
そんなことは評価書には一行も書いてないよなあ・・・?