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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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大井川源流部で川が消滅するんじゃないのか? ~導水路は環境保全に約立たない!

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大井川での流量減少予測に対し、導水路ではどうしようもないという話です。

元に戻せない問題なので、むしろ、こっちのほうが深刻かもしれません。


添付図表1は、現況と導水路完成後の流量予測値を比較した図です。事後調査報告書ではモノクロですので、大井川水資源対策検討委員会の資料からカラー版を貼り付けておきます。

イメージ 4
添付図表1 南アルプスでの工事概要
次の図表2の位置関係を見るのに参考にしてください 

イメージ 3
添付図表2 大井川導水路案
JR東海の大井川水資源対策検討委員会資料より複製
リニア南アルプストンネルは、大井川流域地下では標高980~1210mに掘られる。しかしトンネル頭上の大井川は標高1350m前ぐらいなので、自然流下させるには下流まで引いてこなければならない。導水路はトンネルの標高1170m付近から分岐し、11㎞下流の標高1150m付近で川に放流する。 

導水路案は「下流の水資源をどうするのか」という一点に絞られて出てきた案です。・・・まぁおそらくは、大量湧水で工事ができなくなるのを防ぐための「排水路」だと思うのですが。 

それはともかく、見落とされがちだったのが、図左上にある地点です。ここには中部電力の西俣取水堰があります。

ここでは、
現況の流量(解析値)3.97㎥/s
トンネル完成後の予測値 3.41㎥/s
導水路完成後の予測値 3.40㎥/s
となっています。

導水路出口より16㎞も上流なので、トンネル湧水を戻すことはできません。導水路完成後に0.01㎥/s増えると試算されたのは誤差でしょう。流量の減少が0.57㎥/sというのはかなり大きな値だと思いますが、それほど騒がれていないようです。しかしよく考えると、実はとんでもない自然破壊が隠されているんじゃないかと思い至ったのでありました。


ここは、北の塩見岳から流れてきた中俣と、南の悪沢岳(荒川岳)から流れてきた小西俣とが合流する地点です。合流点より下流が西俣と呼ばれます。

予測地点は、この合流点のすぐ下流というのが重要です。

ここでの流域面積は約36㎢。

このうち、中俣の流域面積は約17㎢で47%小西俣の流域面積は約19㎢で53%㎢となっています。したがって単純に考えると、合流点(取水堰)での現況流量3.97㎥/sのうち47%は中俣から、53%が小西俣から来ていることになります。つまり中俣から1.87㎥/s、小西俣から2.1㎥/sと推定されます。
イメージ 1
添付図表3 西俣取水堰で合流する中俣と小西俣
緑色の部分が中俣の流域(17㎢)
赤色の部分が小西俣の流域(19㎢)
流域面積と流量とが比例すると考えると、中俣の流量は1.87㎥/s、小西俣の流量は2.1㎥/sであると推定される。 


ここで図 をもう一度確認していただきたいのですが、リニアのトンネルが貫くのは小西俣流域のほうです。中俣は遠く離れているので、おそらくトンネル工事の影響はほとんど受けないでしょう。

すると取水堰での流量減少予測0.57㎥/sは、ほとんどが小西俣での減少に伴うものだと考えられるのです。2.1㎥/sから0.57㎥/s減ったら1,54㎥/sとなり、現在の3/4となります。


ところで今までの試算は年間平均流量を対象としたものです。

さらに問題なのは渇水期。

環境影響評価書では、渇水期の流量予測値は以下のように試算されていました。
イメージ 2
添付図表4 補正版環境影響評価書(静岡県編)より複製・加筆 

赤く囲ったのが西俣取水堰になります。これによると、西俣取水堰では現況の渇水期流量1.18㎥/sとしています。

先ほどと同様に考えると、中俣からの流入量は0.55㎥/s、小西俣からの流入量は0.63㎥/s、合流して1.18㎥/sとみなされます。

これが、トンネル完成後には0.62㎥/sまで減ると試算しています。おそらくこの減少量は小西俣での減少に伴うモノでしょう。

0.63㎥/sから0.56㎥/s減って0.07㎥/s?
言い換えれば70リットル/秒?

しかも「渇水期の3ヵ月平均」なので、うち半分(45日)くらいはこれを下回ってしまう。標高2000m近い高地ですから、流量がこれだけ減れば凍結しかねません。

これじゃほとんど「川が消滅」するも同然では? 
◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 

西俣取水堰より上流は、大井川水系に生息しているヤマトイワナに残された数少ない生息地のひとつとして、禁漁区に設定されています。確かに林道建設や水力発電の影響を受けていない昔ながらの環境が残され、川が多くの魚を養えるだけの規模をもち、なおかつ純粋なヤマトイワナが残されている水系というと、ここぐらいしか残されていないのかもしれません。

今となっては登山道すら存在しないので、容易に人が入ることもないでしょう。

そういう場所を根本からぶっ壊してしまいかねないのだから、大井川水系最悪の自然破壊は、ここ小西俣で起こるではないかと思うのです。もちろん下流域での”毎秒2トンの減水”も大問題ですが、そちらの方は、水利調整でも何でも、原理的には対処方法がある。けれども小西俣の場合は、どうしようもない。 

小西俣は列車の通るトンネルより1000mも高い位置になるから、ポンプアップするととんでもないエネルギーが必要になる。0.56㎥/sを1000mくみ上げるなら、最低でも5500kWは必要。水力発電所が一つ必要になってしまう!

それなのに「導水路建設で環境保全ができる」などというのは、とんでもない話だと思うのであります。

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