南アルプストンネルの静岡県側では、まるっきり環境保全に役立たない環境保全計画がJR東海から出され、それに対して静岡市長より大幅修正を図るよう県知事に対して意見書が出されました。
果たして本気で工事を行うつもりがどこまであるのだろう?と思わざるを得ません。
しかし同じ南アルプストンネルの長野県側では、既に昨年11月に”起工式”が行われたのに続き、このほど非常口工事のためとして、農林水産大臣より保安林解除の通告が出されました。
保安林制度とは森林法に基づく制度です。大まかに言うと、土砂災害の防止、水源涵養、景観保全、雪崩防止などのために森林を保全するというもので、範囲を指定してその中での伐採や土地の改変などの行為が規制されます。大鹿村の工事予定地の場合、大部分の箇所が「土砂流出防備林」に指定されているようです。
そのように大事な保安林ですが、「保安林の指定理由が消滅したとき」または「公益上の理由により必要が生じたとき」には、かなり煩雑な手続きを経て解除することができます。
(詳細 岩手県庁ホームページ 以下の表も同ページより引用)
http://www.pref.iwate.jp/dbps_data/_material_/_files/000/000/004/092/kaijyonotebiki.pdf#search=%27%E4%BF%9D%E5%AE%89%E6%9E%97+%E8%A7%A3%E9%99%A4%27
(詳細 岩手県庁ホームページ 以下の表も同ページより引用)
http://www.pref.iwate.jp/dbps_data/_material_/_files/000/000/004/092/kaijyonotebiki.pdf#search=%27%E4%BF%9D%E5%AE%89%E6%9E%97+%E8%A7%A3%E9%99%A4%27
農林水産大臣ないし都道府県知事に多種類の書類を提出して審査されるのですが、図面や設計図、利害関係者の同意などのほかに、予算関係書類というものが必要となるそうです。
規則では「予算書及び残高証明書の写し等資金の調達方法を称する書類」とあります。
なんでもバブル期において、「地元の利益のため」としてスキー場やゴルフ場などを誘致し、保安林解除を行って工事を始めたものの、バブル崩壊とともに事業計画が雲散霧消し、中途半端に森林破壊を招くだけで終わるケースが相次いだそうで、そういう事態を防ぐために予算関係書類が必要となったそうです。
「資金の調達方法」という言葉を見て、すぐに思い出したのは、昨年秋に閣議決定した「JR東海への3兆円財政投融資」。
この財政投融資の話が決まったのち、鉄道ジャーナルという雑誌にて、鉄道政策専門家が疑問を呈しておられました。曰く、「リ大阪開業前倒しには賛同するが、土木工事の始まっていない現段階で3兆円も融資を行うのは不可解。名古屋開業時点で返済が増えるだけで大阪開業前倒しの役には立たない。」というものです。
佐藤信之「安倍政権による総合経済対策 リニア中央新幹線大阪延伸の前倒しとJR羽田新線」鉄道ジャーナル2016年11月号より該当部分を要約
リニア計画を追いかけているジャーナリストの樫田茂樹氏も、ご自身のブログで疑問を投げかけておられました。
以下、引用させていただきます。
昨年から今年にかけて、JR東海は各地で工事契約を交わしていますが、本格着工にはまだ程遠い状態です。
先日もJR東海の柘植社長が「2027年開業は厳しい」と発言しましたが、では、なぜ今「機構」から3兆円もの融資を受けるのか?
以下、以前、ネット記事で見たり、鉄道に詳しいジャーナリストから教えられて整理した情報です。
★一つには、東京・名古屋に必要な5.5兆円もの金を工面できないこと。
5.5兆円のうち、2.5兆円は東海道新幹線からの収益を充てることができるかもしれないとはいえ、それでも3兆円足りない。しかし、その3兆円を借りようにも、担保物件が3兆円もないJR東海に金融機関は融資をしようとしなかったのでは。借りたとしても、金利も3%台。
また、海外の投資家は、数年前にJR東海の社長が「リニアはペイしない」と発言したことと、自己資金だけでは、いずれ5.5兆円以上のカネが必要になる東京・名古屋の建設は無理なのではとの読みからやはり投資に動いていなかった。
樫田茂樹氏のブログ「記事の裏だって伝えたい」
(2017/1/13)よりコピーさせていただきました。
http://shuzaikoara.blog39.fc2.com/blog-entry-528.html
(2017/1/13)よりコピーさせていただきました。
http://shuzaikoara.blog39.fc2.com/blog-entry-528.html
しかし金融とか財務のことなどさっぱり分からぬ私の頭ですが、実は次のようなシナリオがあったんじゃないかと想像します。
仮に現段階で民間金融機関から資金をかけ集めていなくても、これでは「財政投融資で3兆円が融資された」旨の書類を出せばいいのではないか?
調べてみると、保安林解除だけでなく河川との交差部分(橋梁、川をくぐるトンネル)での工事でも、土地の掘削や工作物の新設のためには事業者の信頼性が問われるそうです。よくわかりませんが、やはり資金面でも審査されるようなので、そこでも「財政投融資で3兆円が融資された」旨の書類を出せばいいのではないでしょうか?
そんなわけで、JR東海への3兆円融資は、「大阪開業8年前倒し」のためではなく、国の各種審査をパスさせるためだったりして。。。
あくまで具体的根拠のない憶測ですので、その点はご留意願います。