大深度地下利用についての説明会が始まっていますが、いっぽうで静岡県区間については音沙汰がなくなりました。
2017年1月17日、JR東海は静岡県条例に基づき、県内工区における導水路トンネル、燕沢発生土置場、位置変更後の工事用道路トンネルについての環境影響評価結果を静岡県に報告。
3月13日、大井川流域の上水道、土地改良区、電力会社など計11の水利用団体はJR東海に対し、流量減少対策の内容を明記した協定を4月末までに締結するよう要望。
4月3日には静岡県が意見書をJR東海に提出。同月末日までに、大井川の流量保全について流域自治体と協定を結ぶよう要請。
それから1年1ヵ月が経過。
いまだ具体的な話は見えてきません。
静岡県区間が未着工であることから、JR東海社長が2027年開業に危機感を抱き始めた…との報道がなされ始めてもいます。
これに関連し、一部には「静岡県が無理な要求をしている」との声があるようです。
(例)「迷走するリニア新幹線ホリエモン×ひろゆきが「根本的にヘン! 海外輸出できる技術なのにもtったいないよ」 週刊プレNEWS 2018/5/12
しかし、そもそも迷惑をかけるのはJR東海のほう。ムチャが露呈した計画を進めようとして事業が停滞しているわけだから、計画を修正しないのが間違っていると思います。
トンネル完成時には、大井川では2㎥/s程度の流量減少が起こるとの予測。これに対し、JR東海は長々と排水路(導水路トンネル)を掘って、川に自然流下させるといいます。
JR東海の試算では、この方法で戻せる量は1.3㎥/sであり、残る0.7㎥/sは戻せないとのこと。そのため「必要に応じて」ポンプでくみ上げて排水させる意向としています。
しかし本来大井川を流れているはずであった0.7㎥/s分は、河川環境を維持するという意味を含め、流域の貴重な財産であることに変わりありません。それを永久に失うことになってしまいます。
また、試算はあくまで試算です。静岡市が専門業者に試算を委託したところ、JR東海のシミュレーションとは大きく異なる値が出てきたように、現時点では流量減少を正確に見積もることは困難です。もしも予想に反して導水路取り付け位置より低い部位で大量湧水が生じた場合、自然流下ではほとんど戻せなくなります。つまり先に導水路を建設してしまうと川に戻せる量を見通せない。
そして何より、導水路案では出口より上流へは水を戻せません。
そのため、今のJR東海の環境保全策では、地元では納得できずにいるのです。先のリンク先記事に登場する発言者方は、こうした懸念を非難されていますが、それはちょっと見当違いじゃないかと思います。
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ところで・・・。
トンネル工事で大量の湧水が生じ、川の流量が減るという予測が出され、これに対してJR東海が示した対策が、上記の導水路案というわけです。
大量の湧水が生じるという予測に対し、「いかに川に戻すか」⇒これがJR東海の基本姿勢。
ここが不可解。
大量の湧水が予測されるのなら、川に戻す方法を考えるより先に、まずは湧水をより少なくする方策を考えるべきです。なぜそれをしないのでしょうか?
いきなり南アルプスを迂回せよとは言わぬまでもトンネルの位置を見直すとか、非常口を削減するとか、工法や構造を変えるとか、まずはそっちを先に考えるべきでしょう。
今のところ、現行のトンネル計画について、河川流量に与える影響の検討状況は示されていません。それゆえに計画再検討の余地は大いにあるはずです。