静岡市とJR東海との間で交わされた「合意文書」を確認しました。
https://blog.goo.ne.jp/matsuya-kiyoshi/e/2a47164837dc0eca86f44f687b1fcb5f
https://blog.goo.ne.jp/matsuya-kiyoshi/e/2a47164837dc0eca86f44f687b1fcb5f
画像では読み辛いので書き改めます。
中央新幹線(南アルプストンネル静岡工区内)の建設と地域振興に関する基本合意書
静岡市(以下、「市」という。)と東海旅客鉄道株式会社(以下、「JR東海」という。)は、中央新幹線(南アルプストンネル静岡工区内)の建設の円滑な推進と地域の振興に資するため、下記の事項について、それぞれの役割分担のもと、相互に連携、協力して誠実に取り組むものとする。
記
1.市及びJR東海は、中央新幹線の建設に伴う交通の安全確保及び地域振興のため、県道三ツ峰落合線及び主要地方道南アルプス公園線の道路改良について、以下の役割分担のもと相互に協力して進める。
(1)新設するトンネル(京塚橋付近~大沢戸橋付近)はJR東海が自らの負担で施工する。
(2)トンネル前後の道路拡幅及び災害防除等の道路改良は、市が自らの負担で施工する。
(1)新設するトンネル(京塚橋付近~大沢戸橋付近)はJR東海が自らの負担で施工する。
(2)トンネル前後の道路拡幅及び災害防除等の道路改良は、市が自らの負担で施工する。
2.JR東海は、市からのモニタリング等適切な環境保全措置の要請を踏まえ、環境影響評価に基づき、中下流域にも配慮して誠実に対応する。
3.JR東海は、地元要望である剃石地区の造成に協力するものとし、市は、これに必要な手続きに協力する。
4.市は、発生土等の再生利用に協力するものとする。
5.市は、JR東海の南アルプストンネル工事に必要となる許認可を含む行政手続きに関して速やかに対応する。
内容の詳細等は別途協議するものとする。
この合意の証として本書2通を作成し、市及びJR東海は記名押印の上、各自その1通を保有する。
この合意の証として本書2通を作成し、市及びJR東海は記名押印の上、各自その1通を保有する。
静岡市長
田辺信宏 印
東海旅客鉄道株式会社代表取締役社長
金子 慎 印
田辺信宏 印
東海旅客鉄道株式会社代表取締役社長
金子 慎 印
これはマズいんじゃないのか、と思うのであります。
前回のブログで指摘した通り、工事用車両通行を目的としながらリニア本体工事の本格化に間に合うのかという根本的な疑問があるのですが、それより次の部分がヤバイ。
4.市は、発生土等の再生利用に協力するものとする。
ここでいう「発生土等」とは、県道トンネルの発生土なのか、リニア本体工事の発生土なのか、あるいは両方か、それすら判然としない。それに「発生土等」という表現がなされており、通常の発生土以外のもの――廃棄物、汚泥、環境基準を上回る汚染物質を含む発生土など――が出てきて多額の処理費用と特殊な処分方法が必要となった際に、静岡市に対して処理を強力させることが可能になるかもしれません。
さらに、現時点でリニア発生土の「再生利用に協力する」ことを宣言することは危険すぎると思います。
JR東海は環境影響評価書において、静岡県内への発生土360万立米のうち90%を”有効利用”することを目標に掲げています。なおその後の計画変更により10万立米程度増える見込みであり、県道トンネルを設ければさらに40万立米程度増えるでしょう。
現在、発生土は大井川沿いの平坦地に山積みにする計画ですが、バカみたいに巨大な盛土を行ったところで、使うメドはたっていません。これじゃ目標を達成できないということで、JR東海は市に協力を依頼したのだと思います。
この場所で工事を行う際に必要な河川法や森林法での各種許可は、市長ではなく県知事がもっています。市長が何を協力できるというのか見当が付きません。
そして何よりこの場所、どう考えてもヤバイ。
盛土は大井川に面しているため、洪水時に流出するおそれがあります。また、ここが平坦になっているのは、周辺を取り囲む大規模崩壊地から崩れた土砂が分厚く堆積しているためです。崩れてきた土砂の堆積場所を埋め立てるなんてことは、ふつうは考えない。
こんな場所を”有効利用”、つまり盛土を何かの施設に利用するべく静岡市が協力したと仮定しましょう。盛土の出現によって災害を招いたり、あるいは盛土上の施設利用者が災害に巻き込まれたりしたら、その責任は静岡市が負うことになるのかもしれない。
穿った考え方をすれば、JR東海が自社だけでリスクを背負い込むのは危険だと判断し、静岡市と折半しようとして載せられたようにも見えます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
合意に至った経緯もオカシイと思います。
静岡県と静岡市の様々な部署がメンバーとなり、中央新幹線の工事計画に係る情報共有を行うのが目的だそうです。
このように、静岡市以外の行政機関が加わって中央新幹線や南アルプスユネスコエコパーク内の物事について対応してゆく組織として
・大井川流域振興連絡会
・県中央新幹線環境保全連絡会議
・南アルプスユネスコエコパーク静岡地域連絡協議会
・県中央新幹線環境保全連絡会議
・南アルプスユネスコエコパーク静岡地域連絡協議会
があげられています。
県道トンネルが計画されている場所は南アルプスユネスコエコパーク登録地域内です。そして建設の名目は、「中央新幹線(南アルプストンネル静岡工区内)の建設の円滑な推進と地域の振興」となっています。それならば、その情報はこれら組織で共有されていなければオカシイ。
いっぽう、県知事や県庁職員は、今回の合意事項について、「内容は知らない」「県をはずして話が進められた」と話しています(6/21 静岡新聞朝刊)。大井川流域の自治体も同様の反応を示しているようです。
それが事実なら、静岡市は勝手にJR東海と交渉を続け、県や他の自治体には全く情報を伝えていなかったことになります。したがって市が作成した南アルプスユネスコエコパーク実行計画を、自ら完全に無視したことになります。
メチャクチャだと思います。