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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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備忘録 南アルプスにトンネルを掘ることの問題点

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ブログというものの性質上、過去に書いた内容は時が経つにつれて自分でも分からなくなってしまいます。
というわけで、備忘録として、南アルプスに長大なトンネルを掘ることに、私が大きな疑問を抱いている理由を書き並べます。
 
イメージ 1
JR東海作成の環境影響評価配慮書に加筆
 
イメージ 2
(1)掘ってよい場所かどうかの議論が皆無
  ●原生的な空間という認識が欠如
南アルプススーパー林道の通る北沢峠以南のおよそ110㎞にわたる稜線には、道路やトンネルはもとより送電線、地下水路といった人工的な構造物は一切横切っていない。植生のうえでも、太平洋側で最大級の自然林が残されている。原生的な空間の広がりとしては、太平洋側で最大である。推進者側には、こうした原生的な空間が存在することの価値が完全に欠落している。また斜坑が設けられる大井川源流の静岡市二軒小屋は、発電所・登山小屋関係者を除くと無人地帯であり、森林伐採と水力発電所建設を除くと、これまで大規模な改変が行われていない場所である。改変の是非については慎重に判断されるべきであるが、何の議論も根拠ないにもかかわらず、斜坑を設けることが前提となっている。
  ●政策の不一致
2010年の同時期に南アルプスの自然環境についての審議が環境省と国土交通省にて行われた。審議の結果、環境省は周辺よりも優れた環境を有すると判断して国立公園区域の大規模拡張を決定した。いっぽう国土交通省は、自然環境はルート選定に影響しないという観点から審議を放棄し、時間短縮効果のみの視点から南アルプスルートを決定した。同じ場所の環境について、正反対の判断を下したことになる。
  ●計画段階での環境配慮の恣意的な無視
→詳細はこちら 
  ●周辺自治体は南アルプスをユネスコエコパークおよび世界自然遺産へ登録しようと活動を行っているが、あからさまに登録上の障害であるリニア計画との整合性が全くとれていない。
  ●様々な問題点があるのにもかかわらず、在京メディアにおいては全く扱われていない。 
 
(2)自然・環境破壊
  ●膨大な残土が発生するが、事実上処分方法がない。
私の試算では500万㎥以上、1坑口から約100万㎥発生。掘り出し口となる長野県大鹿村釜沢、静岡県静岡市二軒小屋は南アルプスの山奥ゆえ、環境に配慮した運搬・処分は不可能である。  →詳細はこちら
  ●大型車両の頻繁な通行
震動・騒音・粉塵の発生による動植物への悪影響や小動物の轢死を招く。     
  
●岩盤内の地下水流動は一度破壊されたら復元は物理的に不可能である。影響の予測も不可能。
  ●河川の水量への影響も予測不可能。
  ●工事現場までの輸送路建設による大きな自然破壊。
工事現場は市街地から遠く離れた山奥であり、円滑な輸送のためには道路整備が不可欠。急峻な山岳地域での道路工事では、直接的な植生破壊、生態系の寸断、河川の荒廃、土砂崩れの誘発、外来動植物の伝播がつきもの。
  ●水質汚染
一帯は大井川や小渋川の源流域であり、非常に水質が良好な場所であるが、工事により長期間にわたって水の濁りがとれなくなる。有害な物質を含む残土が発生する可能性もある。冬季も車両の通行が行われる場合、融雪剤がまかれ、水質汚染につながるおそれがある。
  
●ルート上に十谷温泉、小渋温泉が存在するが、温泉枯渇のおそれがある。
  ●車両の頻繁な通行、大量の資材搬入にともない外来動植物が大量に進入する。
  ●工事は谷底で行われるが、間接的に高山帯の生態系へ及ぼす影響が予測不可能。
  ●工事期間は10年以上と長く、静かな山峡の地という雰囲気がぶち壊される。
大鹿村や早川町は鉱山都市へと一変する。
  
●南アルプスという場所と相容れない
人工物がほとんど存在せず、日常生活から途絶したエリアに、地下深くとはいえ時速500キロで大都市を結ぶ超伝導リニアという、大自然と全く相反する科学技術の結集のようなものが出現することに違和感が生ずる。
  ●調査方法にも問題が多い
→詳細はこちら
  
(3)災害のおそれ
  ●建設目的と災害リスクとの関係が不明
推進者側は「東海地震対策にリニアが必要」と主張しているが、南アルプスルートでは東海地震および南海トラフ巨大地震の想定震源域北縁を通り、揺れによるガイドウェイの損傷や土砂崩れ、トンネル内壁の崩落などの恐れがある。それにもかかわらず、東海地震時の影響については、審議段階で全く扱われていない。
  ●南アルプスの隆起速度
南アルプスの隆起速度は「年間4㎜前後、100年間40㎝で日本最大級」というのが地質・地形学者の常識的ともいえる共通認識であるが、JR東海では「突出した値でない」という認識であり、大きな違いがある。長期的に見た場合のトンネル維持コストや安全性に影響が出るのではないか。     →詳細はこちら 
  ●土砂災害の常習地域
南アルプス長大トンネルの坑口となる早川は糸魚川-静岡構造線に、小渋川の谷は中央構造線に接し、地質条件は非常に悪く土砂災害に対して脆弱である。実際、過去の東海地震や大雨の際に大規模な土砂災害が発生している。小規模な土砂崩れは日常茶飯事である。万一落石が発生した場合、時速500キロで突っ込んだら大変なことになる。
  ●無事に緊急停止できるのか
以上のように、災害リスクが非常に高い地域である。超伝導リニアは時速500㎞から停止するまでに90秒の時間と6㎞以上の距離を要するが、その間に衝突事故を起こしたら大惨事となりかねない。
  ●緊急時の乗客救助が困難
さらに南アルプスをお横断する約52㎞の区間は救助拠点となる市街地から遠く離れている。そのうえトンネルに達する林道の近傍は土砂災害に対して脆弱であり、東海地震が起きたら孤立する可能性が高く、救助も容易ではない。
  
●緊急時の通路が度々寸断する
大雨の際に、二軒小屋への林道が寸断するのは日常茶飯事である。
  
●一帯は大部分が無人地帯であり、あえて土砂災害対策を行う必要のない場所である。
そのような場所で災害対策工事を大規模におこなうことは本来不要なことであって、無秩序な自然破壊以外の何物でもない。

中には私の勝手な思い込みと感じられるような項目があるかもしれませんが、妥当なものもあると思います。様々な問題をことごとく無視して計画が進められることに、最大の懸念を抱きます。

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