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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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実験線延伸工事での水枯れ事例

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このほど南アルプスのユネスコエコパーク登録に向けて、関係市町村で基本合意書の締結式が行われたと、報道がなされました。
 
イメージ 3
2013年8月18日 静岡新聞朝刊より
 
うまくいけば南アルプスの環境保全と周辺の活性化につながることが期待されます。しかしながら、果たして目前に迫っているリニア中央新幹線という、超巨大計画に対して、どのような対応をとるというのでしょう? その答えはいっこうに聞こえてきません。
 
とっても疑問に感じておりますので、その点は別途、長文にまとめてございます。よろしかったらご覧ください。→http://park.geocities.jp/jigiua8eurao4/SouthAlps/hozen/ecopark.html
 
さて、前回は南アルプスを流れる大井川の水枯れに対する懸念を書きました。
 
水枯れといえば、このほど延伸工事の終了した山梨実験線でも、トンネル掘削にともない多数の水枯れを引き起こしていると報道がなされています。
→http://shuzaikoara.blog39.fc2.com/blog-entry-239.html
 
 
現在は環境影響評価の最中ですので、このように実際に起きてしまった問題について、JR東海には丁寧に説明する義務が、住民には聞く権利があると思うのですが、そのような質疑が行われたとは寡聞にして知りませぬ。
 
下手をすると、うやむやのまま闇に葬られてしまうかもしれませんので、こちらで勝手な想像をします。
場所が紹介されていて、地形図から判断できる場所について見てみると、水枯れは次のような場所で起きています。
 
①川の谷底の下方にトンネルを掘ったケース
大月市朝日小沢地区の場合、川底とトンネルとの標高差はおおよそ150~200m。
上野原市秋山地区の場合、谷底とトンネルとの標高差はおおよそ90~150m。
②扇状地にトンネルを掘ったケース
笛吹市竹居地区
 

上野原市秋山地区のケースについて、地形図で現場を見てみましょう。
 
当時(2011年12月)の山梨日日新聞の記事がリンク切れとなっていますので、要点をまとめますと、
・水の涸れたのは「棚の入り川」。集落の水源として利用。 
・水枯れの起きた現場の1㎞上流にて2008年10月から秋山トンネルの掘削工事が始まった。
・2010年7月頃から川の水が涸れ始めた。先に500m西側の沢で水が涸れ、工事が進むにつれて東側の川も涸れ初めた。
・数㎞西側の都留市(トンネル坑口のある方)の沢では逆に水量が増加
・渓流魚のイワナやヤマメが水たまりにとり残されている。
・2010年8月から、JR東海が当面の対策として地下水監視用に掘削した深さ100mの井戸から地下水を供給。
・JR東海は、「現時点での原因特定は困難だが、トンネル工事が周辺の河川の流量に影響を与える可能性がある」として、工事終了後に因果関係を調査する方針。

イメージ 1
国土地理院の地形図閲覧システム「うおっ地図」より複製
山梨県上野原市で水枯れの起きたあたり 赤い線はリニア実験線の秋山トンネル
 
容量を少しでも小さくするために四隅を削ってありますが、あまり気になさらないでください。
 
画像左端にある「車両基地」というのが、地形図作成当時のリニア実験線東端です。2008年以降、ここからさらに東へ、赤線部分にトンネルが掘られました。これが秋山トンネルで長さが約3㎞あります。

図の中央で、北に流れている川が「棚の入り川」だと思われます。上流部は複数の谷に分岐していますが、主だった谷について、便宜上、西からA谷、B谷、C谷としておきます。

秋山トンネルは、紫色で囲ったあたりで、棚の入り川上流部をくぐっています。このあたりの棚ノ入沢谷底の標高は、A谷で730m前後、B谷で800m前後、C谷で830m前後です。
 
車両基地の標高は630mです。また、このトンネルの勾配は、実験線概念図(省略)から判断すると非常に緩やかな上りとなっていますので、棚の入り川上流部をくぐる部分のトンネル高度は、640mほどと推察されます。
 
すると、このトンネルと谷底との間の厚さは、おおよそ90~190m程度と見込まれます。
 
 
イメージ 2
ちなみにGoogleEarthを用いてこのトンネルの断面を描くとこんな感じです。青い矢印は、想定される水の流れ。西側の坑口側の沢で水量が急増しているのだそうです。トンネル内に湧出した水が、勾配に沿って西側へ流れているのでしょう。
 
一般的に谷は、周辺よりも侵食されやすいがために削られ、くぼんでいるものです。侵食されやすい原因は様々であり、一概には言えませんが、もともと大きな亀裂が入っていることも一因に挙げられます。そのような亀裂には、地上から水が浸透しています。
 
地上の地形がくぼんで谷を形成していることと表裏一体ですが、谷の地下には多くの水が含まれていることが、一般論として言えます。ですから、本来は谷底下方にトンネルを掘ることは避けられるとのことです。
 
地表とトンネルとの厚さ(土被り)がどの程度あれば大丈夫なのかは、その地域ごとに異なるのでしょうが、一般的には厚ければ厚いほど、地表の水環境への影響は小さくなるものと思われます。また、流域の端に近いところを通せば、流域全体への影響は小さくなるはずです。
 
ここの部分は、100m前後の土被りでは不十分であったことが、結果論ではありますが、言えると思います。
 
ここのケースでも、トンネルにカーブを加え、もう少し南側の稜線に近い部分を通過させれば、土被りは300m程度にはなり、流域の端を通ることにもなるため、水枯れはそれほどひどくならなかったかもしれません。あるいは、トンネルなど造る必要のないルート設計にしていればよかったのかもしれません。
 
まあ、そうした融通の全く効かないところが、「直線しか進めない」超伝導リニアの特徴なのですが。
 
 
 
また、②の扇状地というのは、河川が上流から運んできた石や砂が、上空から見て扇を描くように堆積した地形のことです。川底に厚く石や砂が形成されているので川の水は地中に浸透して伏流水となりがちです。その反面、地下には豊富な水があり、井戸や湧き水として生活に役立っています。
 
扇状地の場合は、地上に路線を設ければ何の問題もありません。ところがここに伏流水の流れをさえぎるように地中構造物を築けば、当然水の流れに影響が出ます。構造物の構造や深さにもよりますが、一般的には上流側では地下水位の上昇、下流側では地下水位の低下を招きます。
 
(ちなみに扇状地にトンネルを設けて災害を招いた例として、JR武蔵野線の事例が有名です。武蔵野線の北西部は、多摩川扇状地を横切ってで造られました。多摩川から伏流した水が、西から東へと流れている地域です。その流れをさえぎるようにトンネル・掘割構造で路線が造られたため、大きな影響を及ぼしました。線路の西側で地下水位の上昇で浸水被害、東側で低下を招き、特に新小平駅駅では1991年秋の長雨で、駅舎が水没するという事故まで起こりました。)
 
笛吹市内におけるリニアのトンネル構造や深さなど、詳しいことは全く分かりません。しかしトンネルの存在が伏流水の流れをさえぎり、下流方で地下水位の低下を招き、井戸の枯渇や湧き水の現象を引き起こした可能性が高いと思われます。
 
 
 
 
①、②どちらのケースにしろ、このような地上の地形を全く無視した立地では、シロウトでも一見して水枯れを心配してしまいます(そして実際に起きている)。ましてトンネルの設計にあたったプロフェッショナルの方々が、そんなことに気付かなかったはずがありません。
 
となると、水枯れはあらかじめ織り込み済みだったと考えざるをえません
 
時速500キロで突っ走るためには、地表の起伏に関係なく、ひたすら真っ直ぐにトンネルを掘らねばなりません。実際、想定ルート上には多数の「トンネルでくぐらざるをえない川」が存在しています。このリニア計画が実行に移されれば、実験線建設時と同様に、いたるところで水枯れを引き起こすに違いありません。
 
実験線の着工前には「環境影響調査書」なるものが作成され、現在でも山梨県庁に保管されているようです。いかなる調査だったのか、開示して
 
なぜ水枯れが起きたのか
着工前の調査で予測は不可能だったのか
どうして回避できなかったのか
水枯れの起こる可能性について説明はあったのか
今後の対策にどう活かすつもりなのか
 
これらが検証されなければならないと思います。

また、間もなく環境影響評価準備書が公表されるのでしょうが、谷の地下や扇状地をトンネルでくぐっている場合は、水枯れについてどの程度言及しているのか、予測・評価の手法が示されているかをチェックすることが重要化と思います。

 

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