先日、気がついた静岡市法定外公共物管理条例について、もう少し考えてみたいと思います。
環境影響評価書でのJR東海による予測では、西俣取水堰上流ではトンネル工事に伴い、次のように流量が減少するとの試算がされています。
●現況の年平均流量を3.97㎥/sとすると、トンネル完成後には3.41㎥/sになる。
●渇水期については1.18㎥/sが0.62㎥/sになる。
●渇水期については1.18㎥/sが0.62㎥/sになる。
予測地点のすぐ上流で、北から中俣、西から小西俣という川が合流しています。ここがミソで、中俣流域はリニアのトンネルからは2㎞以上離れており、大きな影響は受けないと思われます。評価書記された「高橋の方法※」に基づく予測検討範囲からも外れています。
※過去のトンネル工事による経験則に基づき、トンネル建設によって地下水位低下が及ぶ範囲を予測する方法。
http://mishi.weblike.jp/82_yusui_yosoku.html
※過去のトンネル工事による経験則に基づき、トンネル建設によって地下水位低下が及ぶ範囲を予測する方法。
http://mishi.weblike.jp/82_yusui_yosoku.html
つまり取水堰での大幅な流量減少は、トンネルと交差する小西俣での流量減少を反映しているに違いありません。
単純に流量が流域面積に比例すると考えれば、取水堰での流量3.97㎥/sのうち2.1㎥/sが小西俣から供給されていることになります。そして、流量減少は小西俣で起こると仮定すると…
●小西俣の年平均流量が2.1㎥/sとすると、それが0.57㎥/s減る。
●小西俣の渇水期流量が0.63㎥/sとすると、それが0.56㎥/s減る。
●小西俣の渇水期流量が0.63㎥/sとすると、それが0.56㎥/s減る。
渇水期流量は0.07㎥/sと、一跨ぎできるような小川になってしまうことになりそうです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、取水堰が一級河川「西俣川」の起点となっており、ここより下流では河川法に従って管理されています。
青の実践が一級河川。点線はそれ以外の主な河川(普通河川)。
取水堰より上流には河川法の適用は及ばず、普通河川とよばれます。普通河川は必要に応じて市町村が条例を定めて管理することになっており、静岡市の場合はが静岡市法定外公共物管理条例が該当するようです。
この条例の規定は、なかなかに興味深い。少々長いですが、市の例規集からコピペします。
(目的)
第1条 この条例は、法令に特別の定めがある場合を除き、静岡市の区域内に存する法定外公共物の管理又は利用に関し必要な事項を定め、もって公共の福祉に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において「法定外公共物」とは、次に掲げる公共の用に供されている財産で、市が管理するものをいう。
(1) 市が所有する道路で道路法(昭和27年法律第180号)が適用されないもの
(2) 河川、湖沼、ため池その他の水流又は水面で河川法(昭和39年法律第167号)が適用又は準用されず、及び下水道法(昭和33年法律第79号)が適用されないもの並びにこれらが存する土地
(3) 前2号に掲げる財産に附属する工作物、物件又は施設
(禁止事項)
第3条 法定外公共物においては、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 法定外公共物を損傷し、又は汚損すること。
(2) 法定外公共物に土石(砂を含む。以下同じ。)、竹木及びごみ、ふん尿、鳥獣の死体その他の汚物若しくは廃物を投棄し、又はたい積すること。
(3) 工場若しくは事業場の汚水若しくは廃液又は坑水をみだりに法定外公共物に排出すること。
(4) 前3号に掲げるもののほか、法定外公共物の管理又は利用に支障を及ぼすおそれのある行為をすること。
2 前項各号に掲げるもののほか、前条第1号に係る法定外公共物にあっては、当該法定外公共物の構造又は交通に支障を及ぼすおそれのある行為をしてはならない。
3 第1項各号に掲げるもののほか、前条第2号に係る法定外公共物にあっては、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 適当な設備のない場所で貨物の船積み又は陸揚げをすること。
(2) 法定外公共物の構造又は流水機能に支障を及ぼすおそれのある行為をすること。
(許可事項)
第4条 次に掲げる行為をしようとする者は、市長の許可を受けなければならない。
(1) 法定外公共物が存する土地を占用すること。
(2) 法定外公共物において、土石及び生産物を採取すること。
(3) 法定外公共物において、工作物を新築し、改築し、又は除却すること。
(4) 法定外公共物を横過し、又はその地下において工作物を新築し、改築し、又は除却すること。
(5) 法定外公共物において、土地の掘削、盛土若しくは切土その他土地の形状を変更する行為又は竹木の栽植及びその伐採をすること。
(6) 法定外公共物の維持、修繕、改良等のため当該法定外公共物の構造を変更する工事を行うこと。
(7) 前各号に掲げるもののほか、法定外公共物の機能に影響を及ぼすおそれのある行為をすること。
第1条 この条例は、法令に特別の定めがある場合を除き、静岡市の区域内に存する法定外公共物の管理又は利用に関し必要な事項を定め、もって公共の福祉に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において「法定外公共物」とは、次に掲げる公共の用に供されている財産で、市が管理するものをいう。
(1) 市が所有する道路で道路法(昭和27年法律第180号)が適用されないもの
(2) 河川、湖沼、ため池その他の水流又は水面で河川法(昭和39年法律第167号)が適用又は準用されず、及び下水道法(昭和33年法律第79号)が適用されないもの並びにこれらが存する土地
(3) 前2号に掲げる財産に附属する工作物、物件又は施設
(禁止事項)
第3条 法定外公共物においては、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 法定外公共物を損傷し、又は汚損すること。
(2) 法定外公共物に土石(砂を含む。以下同じ。)、竹木及びごみ、ふん尿、鳥獣の死体その他の汚物若しくは廃物を投棄し、又はたい積すること。
(3) 工場若しくは事業場の汚水若しくは廃液又は坑水をみだりに法定外公共物に排出すること。
(4) 前3号に掲げるもののほか、法定外公共物の管理又は利用に支障を及ぼすおそれのある行為をすること。
2 前項各号に掲げるもののほか、前条第1号に係る法定外公共物にあっては、当該法定外公共物の構造又は交通に支障を及ぼすおそれのある行為をしてはならない。
3 第1項各号に掲げるもののほか、前条第2号に係る法定外公共物にあっては、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 適当な設備のない場所で貨物の船積み又は陸揚げをすること。
(2) 法定外公共物の構造又は流水機能に支障を及ぼすおそれのある行為をすること。
(許可事項)
第4条 次に掲げる行為をしようとする者は、市長の許可を受けなければならない。
(1) 法定外公共物が存する土地を占用すること。
(2) 法定外公共物において、土石及び生産物を採取すること。
(3) 法定外公共物において、工作物を新築し、改築し、又は除却すること。
(4) 法定外公共物を横過し、又はその地下において工作物を新築し、改築し、又は除却すること。
(5) 法定外公共物において、土地の掘削、盛土若しくは切土その他土地の形状を変更する行為又は竹木の栽植及びその伐採をすること。
(6) 法定外公共物の維持、修繕、改良等のため当該法定外公共物の構造を変更する工事を行うこと。
(7) 前各号に掲げるもののほか、法定外公共物の機能に影響を及ぼすおそれのある行為をすること。
線を引いた部分によれば、法定外公共物つまり河川を損傷したり管理や流水機能に支障を及ぼしてはいけない。そして、地下に工作物を新築する場合は、静岡市長の許可を受けなければならないとしています。その深さについての決まりはない。
つまりトンネルが河川と交差する部分で工事を行うには、JR東海は市長の許可を受けねばならぬはずでしょう。
そして、その許可を与える基準はこちらのページに掲載されています。
「静岡市法定外公共物(河川)工作物設置許可基準について」
http://www.city.shizuoka.jp/000_005222.html?fbclid=IwAR1qzjT3hLRqxZlIwPwhbQMUMtmeRBVxIV7is2mwjcXCIqQ9ASt12Sv5ZGo
「静岡市法定外公共物(河川)工作物設置許可基準について」
http://www.city.shizuoka.jp/000_005222.html?fbclid=IwAR1qzjT3hLRqxZlIwPwhbQMUMtmeRBVxIV7is2mwjcXCIqQ9ASt12Sv5ZGo
基本方針として次のようなことが定められています。
素直に解釈すれば・・・
小西俣の流量を大幅に減らすような行為は、あからさまに自然環境を損ねると予測されますし、取水堰(発電用水)にも損失を与える可能性もあります。
JR東海は、小西俣はじめ工事予定地付近の小河川には絶滅危惧ⅠA類指定のヤマトイワナが生息している可能性があるとして継続調査を続けていることから、同社としてこの場所の生態系保全上の重要性も、そこに悪影響を及ぼしかねない可能性も、承知はしているはずです(タテマエだとしても、重要性を認めてなかったら継続調査は不要と判断するはずなので)。
事業者自ら環境への悪影響が起こる可能性を認め、その対策を考案していない以上、現時点で静岡市長が河川交差部での工事許可を与えてはならないと思われます。
つまり河川法に基づき県知事の許可が必要となる一級河川(交差部6ヵ所)だけでなく、そのほか複数の普通河川との交差部もまた、南アルプストンネル工事のネックとなるのではないでしょうか。