残土問題の続きを書こうと思ってましたが、本日の静岡新聞夕刊一面に次のような記事が出ていました。
というわけで、ちょっとこの問題について簡単に触れようと思います。
この記事は、準備書で、大井川上流部の流量が2立方メートル/秒減少するいう予測がでていたことによるものです。
一部抜粋。
JR東海の予測結果は、リニア完成後に大井川上流部で流量が現況から毎秒約2トン減少するという内容。毎秒2トンは、上水道を7市約63万人が利用する大井川広域水道企業団の水利権量と同じだ。
これは準備書「水資源」のところにある表に基づきます。
でも本当に「2トン/秒」の減少なのか、準備書の記載内容だと分からないのですよ。
準備書の「水資源」の表を見ると、例えば田代ダム(二軒小屋の取水堰)の下流側で現況9.03㎥/秒が7.14㎥/秒に減少すると予測されています。記事はこの記載に基づきます。下に貼り付けた図の青く囲った部分に当たります。
ところがこの表、よく見ると現況の流量のところに(解析)という文字が添えられています。
これは、流量を予測する計算の前提として用いた、理論上の値のことをさすんですね。トンネル工事終了後の流量も、当然この解析値が前提となっています。
それじゃあ、本当の流量はどうなんだ?と思って準備書を見回してみると、「水質」というところに実際に現地で測った値が載せられていました。
で、「水質」のところで、先ほどと同じ田代ダム下流側の流量実測値を見てみると、1.2~1.3㎥/秒という値になっています。
?
実際の流量は1.2~1.3㎥/秒程度なのに、計算の前提とした値は9㎥/秒?
詳細な説明は準備書を見ていただかないと難しいので省きますが、他の地点についても同様な傾向にあります。全体として、解析値は実測値の5~7倍となっています。
なんかおかしくありませんか?
この準備書を読むにあたっては、本当は
「現況9.03㎥/秒が7.14㎥/秒に2立方メートル/秒の減少」
ではなく
「2~3割の減少」
と解すべきであり
ということは
「現況1.3㎥/秒が1㎥/秒にまで減少」
することを意味しているんじゃ・・・?
さらにわけの分からないことに、長野県版準備書では水資源の予測においても実測値を用いています。それなのになぜか大井川では解析値を用いているのです。これはいったいどういうことなのでしょう?
まさか、流量の激減を隠すつもりなのでは・・・?
いずれにせよ、大井川は「ダム銀座」と知られ、発電用水、農業用水、水道用水、工業用水として大量に取水されています。いっときは「河原砂漠」とまで言われ、長年の「水返せ」運動により、細々ではあるものの、ようやく流れを取り戻したという歴史があります。
それでも、これらの水は主に流域で使うという目的で取水されているものです。水が減ってもまだ納得がゆきます。それに対しトンネル工事による渇水はただダラダラ隣の山梨県側へ流れ出すだけであり、流域にとっては迷惑以外の何物でもありません。
膨大な残土、ひどく荒らされる谷、そして渇水…
リニアは静岡県に対して何をもたらすのでしょうか?
ぜひ沿線自治体の方々に伺いたいところです。そういえば、長野県飯田市も渇水を大変懸念されておりましたが、いかがなされたのでしょう?