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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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リニア 静岡県版補正評価書の問題点 その2

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現在、静岡市役所において、中央新幹線建設事業に関して市民の声を募集しています。静岡市長の鶴の一声で、「南アルプスを守るために市民の皆様の議論が必要」として、急きょ設けられたものです。
 
10月2日締め切りとなっております。リニアと南アルプスとの関係について、「なんかおかしくない?」「こうやって守るべき」というご意見をお持ちの方、ぜひ意見を出してみましょう。
 
 

 
JR東海の作成した補正評価書の検証を始めて約3週間が経過。一度目を通せば分かると思いますが、評価書というのは実に読みづらいものです。そんなわけで読むのに手間取って、ブログの更新も滞っています。
 
 
それにしてもまあ、よくもこれだけムチャクチャな内容で事業認可を申請したものだなあ…
 
というわけで、前回に引き続き、静岡県版評価書の主だった問題点を並べてみようと思います。今回、新たに追加したものについては赤い字で示しておきます。

【間違い】
●評価書資料編で現地確認されたとする重要な植物種73種が、評価書本編では確認されていないことになっており、環境影響評価の対象となっていない。なお、該当種は全て南アルプス国立公園内指定種というもので、評価書の補正過程で追加されたものであり、全体の補正が間に合っていなかったという壮大な凡ミス(?)とみられる。
 
●工事用車両の通行による猛禽類への影響を低減するために、「環境保全措置」として道路トンネルの設置をおこなうとし、他の環境への影響はないとしている。そのいっぽう、工事用道路トンネルの建設により騒音が生じて猛禽類に影響を与えるおそれがあるから事後調査の対象にするとしている。わけがわからない。
 
●工事用車両の通行が椹島ロッヂ(登山拠点・宿泊施設)に与える影響(視認性)について、「椹島ロッヂは車両の通行する林道から600m離れているから影響は小さい」としている。実際には、椹島ロッヂは林道に隣接しているので、この表現は誤りである。
 
●植生区分の概念について、根本的に誤っている。成立するための気候条件が異なる森林(亜高山針葉樹林と落葉広葉樹林)や、土地条件の大きく異なる場所(河原と斜面上の森林)をいっしょくたにして考えるなんてことはありえない。
 
【ムチャクチャな論理展開】
●生態系の項目において、異なる気候条件や地形条件のもとに成立し、特徴の大きくことなる数種類の森林について、すべてひとまとめにしたうえで、その中から工事予定地と関係のない森林を予測対象にし、改変しないから影響がないという意味不明な論理展開をしている。
 
●南アルプス聖岳や光岳へ向かう登山者は、登山口と、登山拠点である宿泊施設や駐車場との間をつなぐ林道上を歩いて移動している。この林道を、大量の工事用車両が通行する計画である。このため、登山客への影響が懸念されるが、どういうわけかヘリクツをごねて調査対象としていない。
 
●長さ3㎞の工事用トンネルを2本掘り、その中に工事用車両を通すため、騒音が減少し、車両を視認しにくくなるため、猛禽類への影響が緩和されるとし、環境保全措置に位置付けている。長さ3㎞のトンネルを掘るには2~3年の間、地上を大量のダンプカーが通ることになるが、その影響については何も言及していない。そもそも、この工事用トンネルが環境破壊の原因である。
 
●植物の重要種選定基準が、同じ大井川源流域の隣接した場所なのに、どういうわけか調査場所によって異なる。
 
●静岡県内には恒久的な残土捨て場を計画している。それなのに、「他の事業への再利用に回すから環境保全がなされる」としている。
 
【調査不足】
●工事用道路トンネルや斜坑の建設にともなう影響がほとんど扱われていない。合計8~9㎞にもおよび、これだけで県条例に基づくアセス対象の規模なんだけれども。
 
●残土捨て場の存在による景観への影響が十分に予測されていない。これは県知事意見を無視したことになる。
  
【予測・評価内容について検証ができない】
●河川流量が大幅に減少すると大騒ぎになっているが、そもそも実際の川にどれだけの流量があるのか記載されておらず、予測値の妥当性を問うことができない。
 
●工事のアクセス道路となる総延長40㎞近い林道について、改修工事による影響を予測するために動植物の調査をおこない、重要種とされる数十種類について、いずれも影響はないと結論付けている。しかしどこで確認されたのか全くわからず、本当に工事による影響はないのか検証しようがない。
 
●動物や植物の現地調査をどこで行ったのか示していない。そのため適切な場所が選定されたのか不明である。
 
【不自然な調査結果】
●水質予測のために、豊水期と低水期に河川流量を測定しているが、なぜか低水期のほうが流量が多かった地点がある。そのデータについて、検証をすることなく予測の前提としているため、意味不明な予測結果が出ている。
 
●これまで静岡県内および南アルプスでは分布の確認されていない植物が数種現地確認されている。本物だったら保全対象種とすべきであるが、同定の信頼性についての検証をおこなっていない。
 
●騒音の測定地点のうち一か所が川の堰堤近傍であったため、調査結果に川の音が大きく現れていた。こうした自然由来の音は暗騒音としてノイズ扱いされ、本来は調査地点を変えなければならないが、なぜかこれをそのまま試算の前提に使っている。そのため、「もともとうるさい場所だったので工事用車両の通行による影響は小さい」という妙な結論が導き出されている。
 
●山奥の林道において大量の工事用車両の通行が計画されており、林道の改修も計画されているため、動植物への影響が懸念されている。このため各種動植物の生息状況調査が行われたが、ところがどういうわけだか鳥類調査だけ行われていない。
 
【おかしな予測・評価方法】
●大量の工事用車両が林道を通る計画である。これが希少猛禽類に与える影響について考慮したのか不明である。
 
●イワナ類等の水生生物について、生息環境の改変は最小限にとどめるから影響は小さいと結論付けている。しかし河川流量減少による影響は無視している。
 
●生態系の項目において、直接破壊される森林や河原の生態系が調査対象になっていない。

【おかしな環境保全措置】
●工事従事者への教育・講習
 ⇒教育されるべきはこんな評価書をつくったJR東海のほう‼
 
●大井川の水がトンネルを通じて東隣の早川方面へ2㎥/s減少するとの予測に対し、トンネル内へ湧きだした水をくみ上げて対応するとしている。しかしこれを実行すると、現在大井川から早川へ導水している発電所の出力を上回るエネルギーが必要となるので、くみ上げるだけムダである。
 
●同じく、大井川の水が2㎥/s減少した場合、井戸を掘ってまかなうという案も館合えているらしい。2㎥/sもの水を井戸でまかなえば、その分、井戸周辺で川の水が減ってしまう。つまり、水の消える場所が変わるだけで、環境保全措置としての意味がない。
 
●河川流量を減少させないための対策として、「適切な構造及び工法の採用」「地下水等の監視」とがあげられ、いずれも効果の不確実性はないとしている。しかし山梨実験線でのトンネル工事において、河川流量を減少させる可能性を予測しておきながら、それを回避することができなかったとしており、施された環境保全措置は功を奏さなかったはずである。
 
●総延長40㎞近い林道を、毎日400往復前後の大型車両が通行するため、小動物がひかれてしまうおそれがある、もとより個体数の少ないサンショウウオ類等にとっては個体群の存続にかかわる一大事である。これについての対策として、「運転手の努力にまかせる」というトンデモ案が出されている。ちっぽけなカエルやサンショウウオを運転席から見つけ、直前でブレーキをかけるなんてできるわけない。
 
●外来植物の侵入対策として、工事用車両のタイヤを洗浄するとしている。しかしこれだけでは、積荷に付着して侵入するケースに対応できず効果が弱い。もっと有効な案を考えるよう、準備書段階でも指摘されているのに対応していない。
 
●現地調査で見つけられなかった植物について、「生育場所の改変を最小限におさえるから影響は回避できる」としている。見つけていない植物の生育場所をどうやって判断するのだろう?
 
●自然林に残土を積み上げて緑化するとしているが、どういうふうに緑化するつもりなのか何も書かれていない。
 
●着工前の1年間、河川流量の調査をおこない、着工後に流量監視をおこなうための基礎データにするという。たった1年間の調査なので、その年の降水量が平年から大きく外れていたとしても、そのデータが「通常時」として扱われることになる。
 
【国土交通大臣意見を無視】
●JR東海のあげた発生土置場のうち、特に規模の大きな2か所については、国土交通大臣意見で求められた選定要件を全く満たしていない。
 
●河川流量への影響を最小化するために「水系を回避」することも検討するよう求められたが、何も検討していない。
 
 
面倒だからいちいち評価書を複製しませんが、こんな具合でヘンな記述がたくさんあるのです。こりゃ、マズいですよ。
 
何がマズいって、自然環境に取り返しのつかない悪影響を及ぼすだけじゃなく、そういう行為を進める事業者(=JR東海)が、自ら工事を行おうとしている場所が環境保全上特に重要な場所であるという認識、そして自らがおこなう行為がとてつもない環境破壊を引き起こすという認識、どちらも持ち合わせていないってことです。
 
本当に真剣に南アルプスの自然環境が重要なものだと認識し、それでもなおリニアの工事が必要なものだとして十二分な事前調査と学習を行い、万全の環境対策をとるというのなら、こんな論理破綻したアホな評価書なんぞ作成しないでしょう。
 
こういった点は評価書の問題点です。いわば、環境保全策に関する問題点です。静岡県の場合、これに加えて発生土置場(=残土捨て場)の安全性という大問題があります。これについても問題が多々あるのですが、書いているヒマがないのでまたの機会に。

御嶽山の噴火とリニア批判とを安直に結び付けるべきでない

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なんだか分からないけれども、御嶽山の噴火とリニア計画とを結び付けて「リニア反対」の根拠にしようとする声が、散見されます。
 
誰が言いだしっぺか分からないけれども、もう少し冷静・論理的に考えてほしい・・・。
 
 
 
日本地図を見渡してください。小学校や中学校の地図帳でも何でもいいです。火山はで示されています。
 
リニアの路線と御嶽山との距離は、最短で50㎞程度。この距離をもって「御嶽山が危険だからリニアはやめろ!」と言い出したら、山陽新幹線を除く既存の新幹線はことごとく走れなくなります。
 
 
 
特に東北・上越方面。
 
【東海道新幹線】 
言うまでもなく富士の裾野を突っ走ります。箱根だって歴史時代の噴火はありませんが、いつどういう活動をするのか分かりません。もっとも、新幹線の走れなくなるような大噴火が起きたら、首都圏そのものが灰まみれになり、交通途絶どころではありませんが。
 
【上越新幹線】
榛名山の裾野を中山トンネルで突っ切ります。歴史上の噴火記録はありませんが、理科年表によると、5~6世紀に3回噴火した証拠があると書かれています。それから40~50㎞西方には日本有数の活火山である浅間山と草津白根山が煙をなびかせています。1783年の浅間山天明大噴火が再来したら火山灰の降下でひとたまりもありません
 
【東北新幹線】
宇都宮から北では、火山フロントの20~40㎞東側を通ります。歴史時代に噴火が起きた火山は、南から順に日光白根山、那須岳、磐梯山、安達太良山、吾妻山、蔵王山、栗駒山、岩手山となっています。磐梯山の1888年に起きた磐梯山の噴火は、山ごと崩れ落ちた「山体破裂」であり、いくつもの村を埋め尽くしたもので、御嶽山の噴火とは比較になりません。
 
【北海道新幹線】
函館の北で、日本有数の活火山である駒ヶ岳の裾野を通過します。路線は駒ヶ岳の西側ですので、火山灰の影響は受けにくいのかもしれませんが。
 
【北陸新幹線】 
日本有数の活火山、浅間山の裾野を突っ切ります。天明大噴火が再来したら線路ごと消滅するかもしれません。それから上越市内では焼山から20㎞付近を通過します。
 
【九州新幹線】 
終点鹿児島は、言うまでもなく桜島が目の前。
 
もちろん、在来線も高速道路も国道も、火山の裾野を通る区間がたくさんあります。っていうか、火山から50㎞以内に何百万人(たぶん)もの人が生活しているんですが…。
 
 
 
 
とにかく冷静に考えてほしい。
 
富士山が噴火すると危ないから東海道新幹線は廃線にすべきだ!なんて主張が成り立つのでしょうか?
 
  
ところで・・・そもそも、なんで御嶽山の噴火とリニアとが関係あるのかが分かりません
 
常識的に考えて、火山弾が50㎞も飛ぶわけがない。
火砕流が50㎞も流れ下るわけがない。もっともカルデラを形成するような超巨大噴火ならありえるけど、そんな噴火が御嶽山で起きたら、リニアどころか関東甲信ごと消滅する。
 
 
火山灰の影響を心配するのでしょうか?
 
 
「超電導リニア方式は火山灰に弱い」という弱点があるのなら、火山の影響を特別視する必要があるのでしょうが、そういう説明ができない限り、50㎞離れた御嶽山噴火をもってリニアへの反対根拠とするのあからさまにおかしいです。むしろ架線とレール摩擦で走る新幹線よりは強いんじゃないのかな? 
 
それに地下走行ですので、「東海道新幹線よりは富士山噴火の影響は相対的に受けにくい」という理屈も成り立ちます(ちなみに東海道新幹線の三島付近、リニアの大月付近は、ともに富士山から流れ出した溶岩流の先端にあたります。)。

中央新幹線 補正版環境影響評価書(静岡県)の問題事項 総まとめ

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リニア中央新幹線の、補正版環境影響評価書(静岡県編)の検証作業を一通り終えました。
 
間違い、記載内容の矛盾等が多数見受けられ、かなり問題点が多いように思われます。また、環境影響評価に直接関係のない点でも問題が多いように思われます。量が多くてここには書ききれませんので、別のページにまとめておきました。
 
クリックしてください。
 
 
 
 
なお、評価書の実物を見ながらでないと分かりにくい構図になっておりますが、どうぞご了承ください。そのうち、詳細な説明をしようと思ってますが…。
評価書の実物についてはこちらのJR東海のページからダウンロードなさってください。
 
別に、評価書がものすごくヘタクソだからって。リニア計画に反対するというわけではありません。ヘタクソな評価書で事業着手するとマズい事態になってしまうから、間違いはちゃんと直してもらわないと困る!!ってことを、強調いたします。
 


 
環境影響評価というのは、環境に影響を及ぼす可能性の高い、土地の改変をともなう大規模な事業を行う前に、事業者に対して事前に環境への影響を調査・予測・評価を行わせ、対策(環境保全措置)を考えさせるという制度です。
 
環境影響評価制度は、大雑把に言うと、
 
①最初に調査方法を記載した方法書を作成し、
②方法書について住民や自治体の意見を受けつけ、
③調査・予測・評価をおこなって環境保全措置を考え、
④それを記載した準備書を作成し、
⑤準備書について住民や自治体の意見をうけつけ、
⑥意見をもとに準備書の記載内容を変更した評価書を作成し、
⑥評価書について環境省からの審査を受け(担当大臣経由)、
⑦担当大臣意見をもとに評価書を補正し、
⑧補正評価書を担当大臣に提出し、
⑨事業認可審査の判断根拠とする
 
 
っていう、手続きになっています。今は、⑨の段階です。
 
この手続きを定めた環境影響評価法という法律によると、評価書を審査して環境面への影響が緩和できていないと判断される場合は、事業認可してはいけないことになっています。リニアの評価書静岡編の場合、影響が緩和できていないというよりも、書いてあることが間違っているんですけど…。
 
重要種とした73種の植物について、現地で見つかっていると書いてある部分と、見つかっていないと書いてる部分とがあるとか…。
 
こういう間違いに、国土交通省の担当者の方は気付いてらっしゃるのかなあ?
 

東海地震発生時を想定して南アルプスルートの妥当性を検証すべき

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リニア中央新幹線の、補正版環境影響評価書(静岡県編)の検証作業を一通り終えました。
 
間違い、記載内容の矛盾等が多数見受けられ、かなり問題点が多いように思われます。また、環境影響評価に直接関係のない点でも問題が多いように思われます。量が多くてここには書ききれませんので、別のページにまとめておきました。
 
クリックしてください。
 
 
 
 
それから、環境影響評価とは直接関係がありませんが、やはり自然環境に関係するという点で、次のようなことも気になりましたので、新たに付け加えておきます。
 
 
 
「リニアは東海地震で東海道新幹線が被災したときに不可欠」という話を、4年前にJR東海が国に提出した資料から、昨日ネット上に公開されたホリエモン氏の話に至るまで、ずうっと聞かされてきたけれども、「じゃあ、南アルプスルートというのは、東海地震の際にも被災しないのか?」ということを検証した結果は一度も目にしていません。
 
当たり前すぎる疑問なのになんで??
 
なお、評価書の実物を見ながらでないと分かりにくい構図になっておりますが、どうぞご了承ください。そのうち、詳細な説明をしようと思ってますが…。
評価書の実物についてはこちらのJR東海のページからダウンロードなさってください。
 
別に、評価書がものすごくヘタクソだからって、あるいは東海地震発生時の検証がなされていないからといって、リニア計画に反対するというわけではありません。ヘタクソな評価書で事業着手するとマズい事態になってしまうし、東海地震で東海道新幹線と同時被災するようなことになったら大変だから、きちんと懸念は払しょくしてもらわないと困る!!ってことを、強調いたします。
 


 
環境影響評価というのは、環境に影響を及ぼす可能性の高い、土地の改変をともなう大規模な事業を行う前に、事業者に対して事前に環境への影響を調査・予測・評価を行わせ、対策(環境保全措置)を考えさせるという制度です。
 
環境影響評価制度は、大雑把に言うと、
 
①最初に調査方法を記載した方法書を作成し、
②方法書について住民や自治体の意見を受けつけ、
③調査・予測・評価をおこなって環境保全措置を考え、
④それを記載した準備書を作成し、
⑤準備書について住民や自治体の意見をうけつけ、
⑥意見をもとに準備書の記載内容を変更した評価書を作成し、
⑥評価書について環境省からの審査を受け(担当大臣経由)、
⑦担当大臣意見をもとに評価書を補正し、
⑧補正評価書を担当大臣に提出し、
⑨事業認可審査の判断根拠とする
 
 
という手続きになっています。今は、⑨の段階です。
 
一連の手続きを定めた環境影響評価法という法律によると、評価書を審査して環境面への影響が緩和できていないと判断される場合は、事業認可してはいけないことになっています。リニアの評価書静岡編の場合、影響が緩和できていないというよりも、書いてあることが間違っているんですけど…。
 
重要種とした73種の植物について、現地で見つかっていると書いてある部分と、見つかっていないと書いてる部分とがあるとか…。
 
こういう間違いに、国土交通省の担当者の方は気付いてらっしゃるのかなあ?

「外野の人間は黙っていろ」は正論なのかな?

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ホリエモン氏の話がネット上に掲載されておりました。
 
 
 そもそもリニア中央新幹線計画が問題になること自体の意味がわからない。政府が株式を保有していない一民間企業が、自己資金でインフラをつくることのどこに問題があるのか。

 事業主体となるJR東海は旧国鉄の優良資産を引き継いだ会社だ。政府は上場後、株式を全部売却していて、その売却益で国民に利益は還元されていると考えるべきで、公共的色彩が強い企業とはいえ、民間企業であることは間違いない。

 まず環境問題についてだが、きちんと環境アセスメントもやっているし、確かに世界初の大深度地下長距離トンネルという技術的チャレンジがあるものの、それはチャレンジしてみないとわからないことだ。それに文句を付けるのは筋違いと言えよう。

 もっと筋違いな批判は採算が取れないのではないかという指摘だ。一民間企業の事業が赤字になるかもしれないと、外野が文句を付ける権利はどこにもないだろう。そんなことをしたらベンチャー企業の大半は事業をスタートさせることすら難しくなる。

 そもそもリニア中央新幹線は、JR東海のドル箱である東海道新幹線の高い収益力があるからこそ実現できるものだ。そしてそのドル箱である東海道新幹線は致命的な欠陥を抱えている。それは東海地震や富士山の潜在的な噴火リスクに対応できていないということだ。もしそのような事態になればバックアップは航空路しかない、もし富士山が噴火すればそれすら怪しくなる。そんな事態になっても、リニア中央新幹線があればバックアップが可能である。

 首都圏と中京圏が40分台で結ばれるのはもうひとつ意義がある。それはこの二つの都市圏が実質的に合体することだ。これは世界的に見ても初めてのことであり、その社会的実験にはチャレンジしてみる価値はあるだろう。もしかしたら1+1が2になる以上の価値が生まれるかもしれない。

 個人的にはそれ以上に地面を500キロ以上のスピードで走る近未来の交通手段を見たいという思いもある。それに水を差そうとしている人たちは新しい技術には何でも反対してしまうような人たちなのだろう。

 一説によればイノベーションを必要とする人、積極的に関わろうとする人は全体の2割程度らしい。それ以外は現状維持を望むのだそうだ。しかし社会は継続的なイノベーションによって成り立っている。現状維持ほど難しいものはなく、誰かが新しいチャレンジをしているからこそ成り立っている。それを8割の人が筋違いに邪魔をする事態は避けなければならない。

 これまでは公的セクターがこのような巨大インフラのイノベーションを担う必要があったが、民間の資金調達インフラが整うことによって、公的セクターである必要はなくなって、このような水を差す人たちは筋違いの指摘をするようになってしまった。なぜこんなことに気づけないのだろう。無駄な邪魔をするようなことだけはやめてもらいたいと切に願う。
 
もしかすると、政財界におられる方の中には、こういうお考えの方が多いのかもしれません。
 
ところで一読して、どっかで見覚えがあるなあ…と思っていたら、先月の産経新聞の記事「朝日、毎日はリニアもお嫌いか」というものにそっくりなのでした。産経新聞の場合、『夢の超特急リニアが現実のものになるという国家プロジェクトなんだから皆が皆喜ばねばならないのに、なんで朝日・毎日新聞は批判しているのか』っていう記事でありました。
 
国家プロジェクトに対して皆が皆喜ぶべきだ!なんて、産経新聞の大嫌いな、某人民共和国の政府系新聞そっくりなのですが。
 
ここでいう「朝日・毎日新聞」を「外野の人間」に置き換えると、ホリエモン氏の話とほぼ同じになります。もしかしたらホリエモン氏は、週刊朝日の記者からインタビューを求められて、面倒だったから産経の記事を適当にいじっただけなんじゃないのかな?

産経新聞にしろホリエモンにしろ、共通しているのは「外野の人間は黙っていろ」ということです。私はこれに、強い違和感を抱きます。何で言論の自由が認められている国において、某人民共和国のスローガンみたいなことを言い出すんだろう?
 
どうも、「JR東海は純然たる民間企業であり、リニア計画は民間事業なのだから株主以外は口出しするな」というニュアンスのようですが、果たしてそういうものなのでしょうか。
 
これが、周囲に大きな影響を及ぼさない事業だったら、別に誰も文句を言わないでしょう。新幹線の座席を変えようが、新たな車両を導入しようが、駅構内で焼きたてパンを売ろうが、ホテル事業に参入しようが、どうぞご自由になさってくださって構いません。
 
リニア計画っていうのは、そういうわけにはいかないんじゃないのかな?
 
「時速500キロの夢」を実現させるということは、巨大な構造物が出現するということと同義であり、それがために、直接的・間接的に影響を受ける人が何万、何十万にも及ぶわけです。
 
リニア計画では、品川から名古屋までの286㎞において、軌道が出現します。地上区間や車両基地等は当然、立ち退きを要求して土地を購入せねばならないし、8割がトンネルなので、東京ドーム60杯近い膨大な残土が掘り出されます。この残土が運ばれてゆく先で、大きな環境破壊を起こしかねません。トンネルを掘ったら地下水を引き込んで川を涸らしてしまうかもしれません。それに最低でも13年間は、工事に伴う騒音やダンプ公害が生じてしまいます。

住み慣れた土地を追われる人
工事によって生活環境が一挙に悪化する人
存亡の危機に立たされる集落
メチャクチャにされかれない自然環境
60万人分の水利権が消滅するかもしれない川
残土で大災害を招きかねない山岳地域

それに、自分たちの暮らす地域の将来は、自分たちの手で決めたいのに、全く生活に関わりのないJR東海&リニア計画がメチャクチャにしそうで腹立たしい!という意識を抱く人も多いことでしょう。

こういったことが現実問題として浮上してきているわけです。こうした様々な問題に危機感を抱き、計画の是正を求める人々に対して「株主でもないなら黙っていろ」というのは暴論以外の何物でもないでしょう。
 
もちろんこういった問題は、リニア計画に限らず、規模の違いはあるとはいえ、これまでも繰り返されてきました。
 
今月は東海道新幹線開業50周年です。
 
昭和39年の東海道新幹線の開業後、沿線でたいへんな騒音・振動問題が生じました。財政難の国鉄が、建設費をおさえるために、用地取得を最小限にとどめたことが要因だとみられます。名古屋駅東側では民家の軒先をかすめるようにして高架線が築かれ、列車が通るたびに震度3程度の揺れに見舞われる区域が広がっていたということです。このほかにもあちこちで同様の訴えが起こり、浜松市など授業ができなくなったとして移転を余儀なくされた小学校も数校あったようです。名古屋での騒音・振動問題は原告が数千人におよぶ大きな訴訟となり、「新幹線公害」という言葉まで生まれました。
 
50年前の「夢の超特急」実現において、大きな環境破壊と沿線の住民軽視が起きていたことは、まぎれもない事実です。高度成長期において、社会全体でその程度ならば許容範囲と認める時代背景があったのでしょう。とはいえ、現実に発生している問題に目をつむるわけにもいかない。
 
だからこそ反省がなされて、様々な環境対策技術や手続き規制が導入されるようになり、環境保全に対する意識が高まってきたのです。
 
昭和50年には新幹線騒音の基準値が定められ、また昭和54年には、整備5新幹線の建設に際しては環境影響評価を行うよう、運輸大臣から通達が出されました。事業を実施する前に、環境への影響を予測して対策を考えさせようと試みたわけです。
 
このときは住民等の関与はほとんどできない内容でしたが、平成9年になり、ようやく一般の人間(公衆等)による関与が、必要な手続きとして法的に認められるようになりました。「外野からの声」に耳を傾けて計画内容を是正せよと、法律で義務付けられたのです。
 
ところが、リニア計画の環境影響評価において事業者であるJR東海は、住民の声には全く耳を傾けず、市町村との協議にも応じず、知事意見までも無視するということを続けています。こんなことを繰り返してきたので、環境大臣(法律上は国土交通大臣)からは「住民との協議機会をつくれ」「自治体の意見を勘案せよ」という意見まで出されてしまいました。こんな意見を出された事業は、おそらく前代未聞かと思います。
 
「法律に基づいて外野の意見を聞け」と、政府から言われてしまったのですよ。もっとも、環境大臣意見こそ「外野の声」の最たるものとの御認識かもしれませんが。
「外野の人間は黙っていろ」という主張は、過去の大きな公害への反省と、環境問題回避のために長年かけて築かれてきた、住民関与手続きの意味を、何らご存じないからこそ言えるのではないかとも思います。
 
 
 
 
この文章を読むと、もしかすると、「環境面のことなら口出ししてもよいが経営面には口出しするな」という主張なのかもしれません。
 
だけど、リニア計画においてひどい環境破壊が予想され、それにも関わらず環境影響評価が適切に行われていない理由は、ひとえに「リニアだから」というところに帰着すると思います。
 
「時速500キロで走るから路線はまっすぐにして地下に埋めなければならない」
これがリニアの宿命です。それゆえ、
●ルート変更ができないから周囲の声に配慮できない
●膨大な残土を生み出し、運搬過程や処分先で大きな環境破壊を引き起こす
●山奥に膨大な残土が出されるので運び出せず、山中に捨てるしかない
●河川の配置と関係なくトンネルを掘るから川の水を大量に抜いてしまう
「建設単価がとても高い」

これもリニアの宿命です。それゆえ
●突貫工事となり環境負荷が大きくなる
●環境に配慮した高額な工法をとることができない
●工期を伸ばせないから周囲の声に配慮できない
●斜坑や立坑を多くすることで残土や水枯れによる環境負荷を大きくしている
●環境アセス費用をケチっている
 
という問題が必然的に付随します。環境問題の根本にかかわる事項ですが、これらを修正して環境に適した事業に改めるとなると、おそらく超電導リニア方式のままでは対処不可能です。だからこそ、それでも諸問題に目をつむるためにアセスをデタラメに進めたのでしょう。
 
このように考えると、環境問題を解決するためだは、事業目的そのものの妥当性にまでさかのぼって考える必要があるんじゃないのかなと思うのです。
 
すると、環境問題を考えるためには、外野の人間が事業計画の妥当性にまで言及するのも、正当な行為だといえるのではないでしょうか。
 
 

なお、静岡県部分に対する私からの提言を別ページにまとめておきます。 
 
クリックしてください。
 
 
 
 
それから、環境影響評価とは直接関係がありませんが、やはり自然環境に関係するという点で、次のようなことも気になりましたので、新たに付け加えておきます。
 
 
  
なお、評価書の実物を見ながらでないと分かりにくい構図になっておりますが、どうぞご了承ください。そのうち、詳細な説明をしようと思ってますが…。
評価書の実物についてはこちらのJR東海のページからダウンロードなさってください。
 
別に、評価書がものすごくヘタクソだからって、あるいは東海地震発生時の検証がなされていないからといって、リニア計画に反対するというわけではありません。ヘタクソな評価書で事業着手するとマズい事態になってしまうし、東海地震で東海道新幹線と同時被災するようなことになったら大変だから、きちんと懸念は払しょくしてもらわないと困る!!ってことを、強調いたします。

社会的合意の見込めない大型事業の行く末 ―北海道千歳川放水路と比較―

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リニア工事関連銘柄が急上昇したらしいけど、投資家としては読みが甘い!!
 
 
アセス評価書を読めば、こんな事業計画で社会的合意を得られるはずがないのは一目瞭然である!!
 
いや、マジで。国土交通大臣が評価書について出した意見を事業者が完全に無視し、そのうえ大臣自ら見過ごして事業認可させた例は、あの諫早湾干拓事業だけなのだから。そんなアホな事業に地元は協力できない可能性が大なのである。


本日、デタラメだらけなアセス評価書のまま、リニア中央新幹線計画が事業認可されました。
 
東京‐名古屋を47分で結ぶという壮大な目標の反面、事業計画がムチャクチャで環境負荷が甚大なうえ、とどめをさすように環境影響評価書がデタラメであったため、はっきり言って、沿線となる自治体や地域住民の合意は全く得られそうにない状況下での事業認可となりました。
 
(合意が得られそうにないどころではなく、適切な原告を選んで、国交省を相手に、評価書の問題点を根拠に訴訟を起こせば、事業認可は取り消されるのでは?と思うのであります。)
 
超巨大プロジェクトが、社会的合意が得られないまま見切り発車するとどうなるか、よく似たケースが過去にあったので、ちょっと見比べてみましょう。そういった事業には成田空港とか八ッ場ダムとか諫早湾干拓事業とかいろいろありますが、その中でも事業規模が空間的にとりわけ巨大であった千歳川放水路計画というものを例に挙げてみます。
 
◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
北海道の中央部を流れる石狩川。流域面積全国第二位の大河川です。中下流域は現在でこそ一面の水田となっておりますが、もともとは広大な湿原でした。本来は釧路湿原よりも広大であったといわれています。
 
さて、湿原を干拓したのですから、必然的に流域では洪水の被害が多発します。特に、石狩川と千歳川との合流点付近(江別市付近)での水害が深刻であったようです。この洪水被害を軽減しようと考えだされたのが千歳川放水路計画でした。
 
計画が具体化したきっかけは1981年8月のの大洪水でした。台風の通過によって長雨となり、石狩川が大増水しました。このため支流の千歳川の水が本流に排水できなくなり、逆流するような形であふれ、浸水家屋が2万6000棟を超える大規模な災害となりました。
 
この対策として北海道開発局が、洪水時に千歳川の水を巨大放水路で太平洋側に流してしまおうという計画を出し、1982年3月、建設大臣が工事実施計画を正式に決定しました。
 
イメージ 1
 
計画の概要は、長さ38㎞、幅400mの巨大な人工河川をつくり、本来は石狩川を経て日本海に注いでいる千歳川の水を、増水したときには水門をあげて放水路に逆流させ、太平洋側の苫小牧市方面へ流してしまおうというものです。完成していれば、東京の荒川放水路や新潟の大河津分水路をはるかに上回る、巨大な放水路となるはずでした。
 
しかし17年間の紆余曲折を経て、1999年7月、計画は中止となります。
 
巨大な放水路は、確かに洪水対策としては劇的な効果を生みます。反面、それにともなうデメリットも大きく、周囲への配慮がいろいろな面で不可能であり、しかも計画が大きすぎて利害調整がつかなくなってしまったのです
 
【議論の過程で浮上してきた主な懸念事項】 
●途中に、ウトナイ湖という生態系の保全上重要な湿地があり、その近傍で開削をおこなうため湿地の水源を枯渇させると予測された。
●このウトナイ湖は1991年、ラムサール条約で国際的自然保護地域となり、その保全は国際的にも無視できない問題となった。
●1億立方メートルに及ぶ膨大な残土が生じるが、行き先が示せなかったらしい。
●放水路は石狩川流域とは無関係の苫小牧市で海に出るため、洪水時の濁流は苫小牧市に流されることになる。このためなんら放水路建設のメリットのない苫小牧市において、甚大な沿岸漁業被害が予想された。
●酪農地帯を分断してしまう。
 
【計画の進め方における問題点】 
●放水路が必要だとする根拠となった、洪水時の流量試算値が過大なものであるという指摘がなされた。
●放水路計画以外の案を、あまりよく考えることなく北海道開発局自ら消去。
●5000億円の建設費。
 
こういうように、いざ実現させようとしたら、さまざまな問題が一挙に噴出し、湿地の保全を求める市民、日本野鳥の会や日本自然保護協会をはじめとする自然保護団体、専門家、漁協などを中心として大きな反対運動が巻き起こりました。しかも、こうした問題に対する解決方法を北海道開発局が見いだせないまま月日は経ち、肝心の洪水対策がおざなりになるという事態となってしまいました。
 
「いつまでこんなことをやってるんだ」と大蔵省や建設省からも注文がつき、1997年9月、北海道知事のもとに、学者や反対派住民、それから北海道開発局までを勢ぞろいさせた会議が設置されることになりました。
 
その会議の出した提言は「放水路は中止し、洪水対策としては堤防強化と遊水地建設を基本に考えるべき」というものであり、知事はこの旨を北海道開発局に伝え、また紆余曲折を経て、1997年の中止となりました。

千歳川放水路とリニア計画。放水路と鉄道という全く別のものなのですが、事業計画や問題の性格が瓜二つなんですよ
 
【共通点1 前代未聞の巨大プロジェクト】
千歳川放水路は、放水路建設としては日本史上最大のものである
リニアについては言わずもがな
 
【共通点2 大きな自然破壊】
前述の通り、放水路事業は貴重な動植物の宝庫であるウトナイ湖を消滅させかねない事業であった
リニア計画においては、水枯れ、膨大残土、大量ダンプなどで南アルプスと大井川がメチャクチャになるのをはじめ、岐阜においても、希少な植物の宝庫である小湿地群を破壊する可能性がある
 
【共通点3 水源の枯渇】
ウトナイ湖は東西を緩やかな台地に挟まれており、その台地中を流れてくる水が低所で湧きだすことによって涵養されている。放水路計画は、その台地をウトナイ湖の湖面以下にまで開削する計画であり、湖に流れ込むべき水を引き込んでしまうことが予測された
リニア計画においては、一級河川大井川の地下に総延長26㎞ものトンネルを掘るため(本坑、先進坑、斜坑)、毎秒2トンの河川流量減少が起こるとJR東海がアセスで試算。水系の配置と関係なく一直線に大断面トンネルを掘るため、あちこちで同様の懸念がある
 
【共通点4 水源枯渇への対策が実現不可能】
千歳川放水路の場合、放水路両岸に深さ20~30mの止水壁を設け、山側にたまった地下水をポンプアップでウトナイ湖に放流するという案が出された(東京電力が福島第一原発の事故処理でやっていることの巨大版)。
リニアの場合、通常の防水対策以外に何も案を考えていない。問題が起きたらカネでどうにかしようとしてるフシがある
 
【共通点5 計画中にルート途中が国際的自然保護地域となる】
放水路計画が正式決定したのは1982年3月。その後、ルートの中ほどにあるウトナイ湖は1991年10月、ラムサール条約に登録されることになる
南アルプスルートでのリニア建設指示が国土交通省から出されたのは2011年5月。その後2014年6月、南アルプスはユネスコエコパークに登録されることになる
 
【共通点6 大きなメリットが出る地域がある一方でデメリットだけを受ける地域が出現】
千歳川放水路は上述の通り、千歳川流域の洪水対策としては劇的な効果が見込まれた。しかし石狩川流域とは全く関係のない苫小牧市で太平洋につながることになる。放水路から吐き出される濁流による沿岸漁業への甚大な悪影響に加え、苫小牧市の土地が大きく削られてしまうことになる
リニアの場合、メリットを受けるのは基本的に東京・名古屋だけである。東京と名古屋とを47分で結ぶために南アルプスをぶち抜く。このためリニアのメリットとは全く関係のない静岡県静岡市の南アルプス山中に膨大な残土を捨てることになる。生態系や景観の破壊、それに災害誘発の危険性まで懸念されている。その上62万人の生活を支える大井川の水を、大量にトンネル内に引き込んでしまう。同じく南アルプス山中の長野県大鹿村においても、リニア開業によるメリットはほとんどないと思われる一方で、残土運搬にともなう甚大な環境破壊や川の枯渇が懸念されている
 
【共通点7 目的達成のための代替案を考えていない】
千歳川放水路計画の場合、放水路以外にも石狩川本流の拡幅、堤防の強化、遊水地の整備など9つの案があったらしいが、特に議論されることなく放水路計画が選択された。これに固執したため肝心の洪水対策が実施できないこととなり、放水路計画中止の原因ともなった
リニアの場合、いろいろな角度から、走行形式やルートについて考えるべきであるけれども、リニアの実現こそが目的であるため代替案の検討の余地がないというおかしな状況
 
【共通点8 計画の立案段階で環境対策を考慮せず】
千歳川放水路の場合、最初はウトナイ湖をぶち抜くルートを考えていたほど、自然環境への認識が欠けていた。それに、漁業被害を認識していたら放水路計画は最上のものとはいえなかったはずである
リニアの場合、計画にお墨付きを与えた中央新幹線小委員会、技術評価検討委員会どちらも、環境面からの審査はしていない。審議会のメンバーにも環境保全の関係者は一人も参加していない。(千歳川放水路の時代から20年経つのにこの認識)

繰り返しますが、千歳川放水路計画が中止となったのは、あまりにも巨大な計画であって利害調整ができなかったことと、建設目的に説得力がなく社会的合意が得られなかったことが、根本的な原因といえるでしょう。

利害調整ができなかったというのは、「住宅や農地への被害を漁業被害に転嫁させる。千歳川流域で防災効果が見込めても、苫小牧市では環境破壊だけが生じる。」ということが挙げられます。被害の種類と場所が変わるだけという見方ができてしまったのです。
 
合意を得るといういのはカネの問題だけじゃありません。その事業が、慣れ親しんだ故郷や豊かな自然環境を破壊してまで進めねばならない目的を備えているか否かを、よく話し合うことが重要ではないでしょうか。すなわち、治水目的とはいえ、大きな自然破壊や地域社会の破壊を侵さねばならない放水路というものの必要性を、北海道開発局が説明できなかったことに起因するといえるでしょう。他の案に比較して放水路の優位性を説明できなかったともいえます。
 
計画の早期段階で、行政や専門家のみならず、洪水被害に会った地域住民、漁協、自然保護を訴える人々を一堂に会した協議の場を設け、その場において合意に達した治水対策であれば、これほどの混乱はなかったのではないでしょうか。
 
◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
リニアの場合、「民間事業」ゆえに「経営に関わらない外野は黙っていろ」という意見まで聞かれますけど、大型プロジェクトというものは地域住民の合意を得て初めて成功するものですから、それを無視せよというのは暴論以外の何物でもありません。
 
むしろ、JR東海はじめ推進する側がそのような認識のままに進めるのであれば、千歳川放水路以上の紛争状態に陥るのは間違いありません。そして事業者であるJR東海は、地域住民はもとより、地元自治体の信頼を得ることを避けてきたようにしか見えないのです。知事から出された環境影響評価準備書の修正要求にすら応じなかったという異常な対応は、JR東海のもつ悪しき態度の分かりやすい例といえるでしょう。
 
⇒環境影響評価書 静岡県編の問題事項
 
⇒静岡県における発生土置場の問題点
 
静岡の人間ですので大井川や南アルプスの話になりがちで恐縮ですが、南アルプスに大量の残土を捨てたり、大井川から62万人分の水を消し去ったところで、南アルプスおよび大井川流域の住民には、リニア開業のメリットは何もない。JR東海は、リニア開業によって東海道新幹線のダイヤが便利になるという説明をしていたけれども、それがムチャクチャな自然破壊と等価であるかは疑問があります。
 
千歳川放水路の場合は「人命と財産を守る」という立派な目的がありましたが、リニア計画の場合はそれもないわけです。人口6000万人のメガ・リージョン(なんだそりゃ?)をつくるとか、世界の最先端をゆく技術革新とか、SFのような事業目的を並べても住民が納得できるわけがないし、東海地震対策だといっても妥当性を検証したわけではない。結局、事業目的が何なのかよくわからない。ですからハッキリ言って、静岡県としてはそんなものを受け入れる義理も義務も筋合いもないわけですよ。
 
メリットはおろか、納得できる事業目的の説明もないのに、「人口6000万人のメガ・リージョンをつくるために南アルプスに残土を捨てさせなさい。国から事業認可はもらっていますので。」という態度で進めようとするのですから、地元としては拒否しなければ面子もたたない。まして大井川の水は生活に直結するものであり、それを明確な目的もなく奪うのであるのだから、地元自治体としても態度を硬化せざるを得ないでしょう。
 
千歳川放水路計画の場合、北海道開発局は地元の自然保護団体や地域住民との協議を何度も開いていました。単なる説明会ではなく、話し合いの場を一応設け、反対派グループの開いたシンポジウムにもきちんと出席していたのです。
 
ところがJR東海においては、住民との協議の場はこれまでいっさい設けず、環境影響評価手続きに基づく説明会の場でも質問回数を制限したり、沿線事務所は平日日中にしか開かいていないなど、合意を求めるどころか住民との接触を避け続けてきました。
 
今後も一方的な工事説明会しか開かないとしていますから、これでは、永遠に合意形成は不可能でしょう。
 
◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
要するに、リニアは千歳川放水路と比較しても、さらに事業規模が大きく、環境への配慮に乏しく、そのうえ事業の必要性の根拠が希薄であるがために、直接に向き合わなければならない人・地域に対して、必要性を認識して合意に達してもらうことが絶望的だし、JR東海にその合意形成能力は皆無に等しいとみられるのですよ。
 
国土交通大臣からの事業認可は得ても、社旗的合意を得ることは絶望的であり、問題が噴出して泥沼化するのではないかと思うのであります。
 
ゆえに、千歳川放水路を同じ道を歩んで自滅するのではないでしょうか。

山梨県 大柳川の流量予測はどうなっている?

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前回の続き+要点まとめ。
 
 
私は静岡市民ですが、地形図を眺めていて、リニア建設による水環境破壊という点で心配になったのが、山梨県富士川町の旧鰍沢町地区を流れる大柳川という川。
 
 
 
 
この川、上流部は滝の連続する美しい渓谷になっており、図1で示されたとおり、県立公園にも指定された景勝地となっているようです。そのごく浅い直下でトンネル工事が計画されており、掘られればおそらく流量が減少するだろうに、どういうことか調査すらしていないんですよ。
 
ちょっと、ここを通る長大トンネル(約8.5㎞)について見てみましょう。下の地図2で、大柳川の流域におけるトンネルと川との関係について西から東に向かって眺めてみます。
 
図2 大柳川流域における谷とトンネルとの位置関係
国土地理院 電子地図ポータルより複製、加筆
 
図2の、御殿山と記載のあるところの北方で、大柳川の支流(地形図では無名だが雁木沢というらしい)の谷底に接します。谷底の標高は地形図から判断すると900~950m、トンネルの標高は縦断面図(図3)から推定して610m程度です。土被りは300m程度になります。山岳トンネルの工事では、土被りが300mを下回ると渇水が起こりやすくなるとされているので、微妙な深さです。
 
ちなみに山梨県上野原市において、山梨リニア実験線延伸工事で川の枯渇を引き起こした場所では、谷底とトンネルとの厚さ(土被り)は180m程度でした。この180mという数字を覚えておいてください。
 
ここから600mほど東で、大柳川本流をくぐります。谷底の標高は680m程度。トンネルの標高は600m程度。土被りは80m程度になります。谷底とトンネルとの厚さが山岳トンネルとしては非常に薄く、大々的な湧水が予想されます。大規模な湧水が起きれば、川の流量にも大きな影響を与えかねません。このあたりは滝が連続し、温泉もあるようですが、大丈夫なのでしょうか。
 
大柳川の東では、十谷集落を流れる沢の源頭をくぐります。土被りは220m前後と見られます。これも微妙な深さです。(図には無記入)
 
さらに東で、大柳川の支流・清水沢と、その支流・屋敷沢(どちらも地形図では無名)をくぐります。トンネルの標高は530m前後、どちらも谷底とトンネルとの厚さは50~80m程度と見られ、やはり山岳トンネルとしては非常に薄いものです。2つの沢は下流で合流し、不動滝(1:25000地形図で滝記号はあるものの名前は未記入)を経て大柳川に注ぐようです。「富士川町 不動滝」で検索すると、動画や写真が出てきます。流量豊富で豪快な滝のようですが、トンネルが掘られれば流量が減少し、やせ細ってしまうのではないのでしょうか。さらに、準備書の記載を見ると、このあたりの滝は周辺集落の生活用水として利用されているようです。生活への影響は大丈夫でしょうか?
 
屋敷沢を抜け、さらに2㎞ほど北東に進み、別の流域である小柳川の岸でトンネルを抜けて地上に出ます。地上に出るあたりの標高は460mほどです。
 
以上のように、リニアのトンネルは大柳川流域を完全に横断します。その間おおよそ5.3㎞。本流の大柳川はじめ、そのほかにも主な支流を3~4本くぐりぬけます。そして、いずれも非常に土被りが薄い。このことを考えると、河川に流出するはずの水をトンネル内に大量に引き込んでしまう可能性が高いのではないのでしょうか。

しかもこのトンネル、西から東へ下り一辺倒の構造になっています。ということは、大柳川流域でトンネル内に引き込まれた水は、すべて東側坑口の小柳川へと流れ下ってしまいます。万が一川の流量が減少しても、何らかの動力を用いない限り、大柳川流域に戻すことはできません。
 
図3 トンネル縦断面
上は地形図より作成 下は準備書より転載・調整・加筆

 
 
果たして、大柳川の渓谷は守られるのでしょうか?
 
地図を眺めていると、こういう事態が心配されるわけです。
 
それに対して、JR東海はどのような調査・予測・評価・対策をするつもりなのか…と思って山梨県版の環境影響評価書を見たのですが…
 

あれ

どこにもない!?
 

何にも調査してないじゃん!!

冗談でも誇張でもなく、本当に大柳川について調査をしていないんですよ!
 
 
 
わずかに井戸と湧水と温泉の場所を少しずつ挙げただけ。
 
ウソだとお思いでしたら、JR東海のホームページをご覧になってください。http://company.jr-central.co.jp/company/others/prestatement/yamanashi/y_honpen.html
 
第8章の「地下水の水質と水位」「水資源」が該当するはずですが、本当に何にも調査をしていません。何にも調査をしていないのに、「地下水位への影響は小さいと予測する」という一文が結論として示されているだけです。
 
水環境への直接的な影響を調査していないわけですから、「人と自然との触れ合いの場」という項目においても扱われていませんし、植物、生態系の調査もしていません。わずかにトンネル真上で沢の動物調査をおこなったようですが、詳細は不明です。

こんないい加減な環境影響評価準備書が、いままで存在したのでしょうか?
 
「データ不足」というレベルじゃないです。
 
マジでおかしいですよ、コレ。
 
また、同じ富士川町内の土録という集落付近で、小河川(名前分からず)の上流部を100m程度という浅い土被りで通過することになっています。トンネル内に河川水を引き込んだ場合は、北隣の別流域(三枝川?)に流出してしまうことになってしまいます。ここも大柳川同様、何の調査も行われていません。
 
 
 

ところで、ここまでの文章は、昨年11/18に、準備書への疑問というかたちで書いたものです。それから今年4月に評価書が公表され、先日、補正版評価書が国土交通省に提出されました。
 
この間、私の疑問と同様に、山梨県知事意見では大柳川の流量予測をおこなうことと意見が出され、さらに国土交通大臣意見では巨摩山地(大柳川流域)で三次元水収支解析による精度の高い予測を行うよう求められました。
 
したがって本来であれば、このほどの補正版評価書においては大柳川における予測結果が書かれていなければなりません。
 
ところが、補正版評価書でも記載内容がほとんど変わっておらず、大柳川流域におけるトンネル工事による河川流量への予測はなされていないんですよ。
 
というわけで、山梨県知事意見・国土交通大臣意見をともに無視したことになります。


 
以下、まとめ
 
 
 
リニアの第四南巨摩トンネル(JR東海による仮称)は、大柳川流域を完全に横断する。100m未満の浅い土被りで本流・支流を3度くぐり抜けるため、地下水を大量にトンネル内へ引き込むおそれがあり、河川流量を大きく減少させるおそれがある。ひいては水資源や生態系へに対して不可逆的な影響を及ぼすおそれがある。
 
したがってトンネルの工事および存在による河川流量の予測および評価をおこなうべきであるが、環境影響評価結果を記した準備書においては、定性的な予想結果を記すにとどまっている。つまり、具体的に現在の流量や湧水量および予測値を示すのではなく、「対策をとるから問題はない」という記述だけである。これは予測というよりも想像、意地悪く言えば単なる願望である
 
イメージ 2
山梨県版準備書よりコピー
何ら具体的な記載がない
 
このため、準備書に対する山梨県知事意見において、新たに大柳川を調査・予測地点に加え、その結果を評価書に記載するよう求められたが、4月公表の評価書においても、記載内容に変化はなく、8月公表の補正版評価書においても記載がなかった。
イメージ 1
環境影響評価準備書に対する山梨県知事意見 24ページより
 
いっぽう4月公表の評価書に対する国土交通大臣意見においては、大柳川流域を含む巨摩山地から伊那山地にかけての区間では、精度の高い予測をおこなうよう求めている。これは行政指導であるため、常識的には従っているはずであり、したがって大柳川における流量予測は行われているものの、その結果は何らかの理由によって補正版評価書に記載されていないとみるのが自然である。
 
大臣意見は予測結果を評価書に補正版評価書に記載するよう求めているわけではないが、山梨県知事意見および環境影響評価法第25条の規定を勘案し、本来は載せなければならない重要な事項である。
 
そもそも、補正版評価書に予測結果が掲載されていなければ、許認可審査担当者である国土交通大臣は、トンネル工事による環境への影響の程度を把握することもできないし、環境保全措置の妥当性も検証することができないはずである(水資源に関係する情報は、希少動植物の生息情報のように非公開にする理由はないので、公開されないままで審査材料とされることはあってはならない)。
 
山梨県でリニア計画に疑問を持つ方がおられるのなら、「大柳川流域における流量予測結果が評価書に掲載されていない」ことを、「評価書審査のための環境情報の不足」としておおいに問題視すべきであろう。
 
 
なお、第四南巨摩トンネルは大柳川流域を完全に横断し、途中に斜坑も設けられないことから、河川流量を減少させてしまった場合、トンネル内への湧水を川に戻すことが物理的に不可能である。

静岡版評価書 ひどいぞ…

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現在、静岡市役所において、中央新幹線建設事業に関して市民の声を募集しています。静岡市長の鶴の一声で、「南アルプスを守るために市民の皆様の議論が必要」として、急きょ設けられたものです。
 
10月2日締め切りとなっております。リニアと南アルプスとの関係について、「なんかおかしくない?」「こうやって守るべき」というご意見をお持ちの方、ぜひ意見を出してみましょう。
 
 

ところで、先月26日に補正評価書が公示されてから2週間以上、ずっと静岡版評価書の内容を検証しているのですが、それにしてもひどい。細かく見てゆくと何十もの問題点が見つかるのですが、主だったものをあげてみます。
 
 
【間違い】
●評価書資料編で現地確認されたとする重要な植物種73種が、評価書本編では確認されていないことになっており、環境影響評価の対象となっていない。なお、該当種は全て南アルプス国立公園内指定種というもので、評価書の補正過程で追加されたものであり、全体の補正が間に合っていなかったという壮大な凡ミス(?)とみられる。
 
【ムチャクチャな論理展開】
●生態系の項目において、異なる気候条件や地形条件のもとに成立し、特徴の大きくことなる数種類の森林について、すべてひとまとめにしたうえで、その中から工事予定地と関係のない森林を予測対象にし、改変しないから影響がないという意味不明な論理展開をしている。
 
●南アルプス聖岳や光岳へ向かう登山者は、登山口と、登山拠点である宿泊施設や駐車場との間をつなぐ林道上を歩いて移動している。この林道を、大量の工事用車両が通行する計画である。このため、登山客への影響が懸念されるが、どういうわけかヘリクツをごねて調査対象としていない。
 
●長さ3㎞の工事用トンネルを2本掘り、その中に工事用車両を通すため、騒音が減少し、車両を視認しにくくなるため、猛禽類への影響が緩和されるとし、環境保全措置に位置付けている。長さ3㎞のトンネルを掘るには2~3年の間、地上を大量のダンプカーが通ることになるが、その影響については何も言及していない。そもそも、この工事用トンネルが環境破壊の原因である。
 
●植物の重要種選定基準が、同じ大井川源流域の隣接した場所なのに、どういうわけか調査場所によって異なる。
 
【予測・評価内容について検証ができない】
●河川流量が大幅に減少すると大騒ぎになっているが、そもそも実際の川にどれだけの流量があるのか記載されておらず、予測値の妥当性を問うことができない。
 
●工事のアクセス道路となる総延長40㎞近い林道について、改修工事による影響を予測するために動植物の調査をおこない、重要種とされる数十種類について、いずれも影響はないと結論付けている。しかしどこで確認されたのか全くわからず、本当に工事による影響はないのか検証しようがない。
 
【不自然な調査結果】
●水質予測のために、豊水期と低水期に河川流量を測定しているが、なぜか低水期のほうが流量が多かった地点がある。そのデータについて、検証をすることなく予測の前提としているため、意味不明な予測結果が出ている。
 
●これまで静岡県内および南アルプスでは分布の確認されていない植物が数種現地確認されている。本物だったら保全対象種とすべきであるが、同定の信頼性についての検証をおこなっていない。
 
●騒音の測定地点のうち一か所が川の堰堤近傍であったため、調査結果に川の音が大きく現れていた。こうした自然由来の音は暗騒音としてノイズ扱いされ、本来は調査地点を変えなければならないが、なぜかこれをそのまま試算の前提に使っている。そのため、「もともとうるさい場所だったので工事用車両の通行による影響は小さい」という妙な結論が導き出されている。

【おかしな環境保全措置】
●工事従事者への教育・講習
 
⇒教育されるべきはこんな評価書をつくったJR東海のほう‼
 
●大井川の水がトンネルを通じて東隣の早川方面へ2㎥/s減少するとの予測に対し、トンネル内へ湧きだした水をくみ上げて対応するとしている。しかしこれを実行すると、現在大井川から早川へ導水している発電所の出力を上回るエネルギーが必要となるので、くみ上げるだけムダである。
 
●同じく、大井川の水が2㎥/s減少した場合、井戸を掘ってまかなうという案も館合えているらしい。2㎥/sもの水を井戸でまかなえば、その分、井戸周辺で川の水が減ってしまう。つまり、水の消える場所が変わるだけで、環境保全措置としての意味がない。
 
●河川流量を減少させないための対策として、「適切な構造及び工法の採用」「地下水等の監視」とがあげられ、いずれも効果の不確実性はないとしている。しかし山梨実験線でのトンネル工事において、河川流量を減少させる可能性を予測しておきながら、それを回避することができなかったとしており、施された環境保全措置は功を奏さなかったはずである。
 
●総延長40㎞近い林道を、毎日400往復前後の大型車両が通行するため、小動物がひかれてしまうおそれがある、もとより個体数の少ないサンショウウオ類等にとっては個体群の存続にかかわる一大事である。これについての対策として、「運転手の努力にまかせる」というトンデモ案が出されている。ちっぽけなカエルやサンショウウオを運転席から見つけ、直前でブレーキをかけるなんてできるわけない。
 
●外来植物の侵入対策として、工事用車両のタイヤを洗浄するとしている。しかしこれだけでは、積荷に付着して侵入するケースに対応できず効果が弱い。もっと有効な案を考えるよう、準備書段階でも指摘されているのに対応していない。
 
【国土交通大臣意見を無視】
●JR東海のあげた発生土置場のうち、特に規模の大きな2か所については、国土交通大臣意見で求められた選定要件を全く満たしていない。
 
 
面倒だからいちいち評価書を複製しませんが、こんな具合でヘンな記述がたくさんあるのです。こりゃ、マズいですよ。
 
何がマズいって、自然環境に取り返しのつかない悪影響を及ぼすだけじゃなく、そういう行為を進める事業者(=JR東海)が、自ら工事を行おうとしている場所が環境保全上特に重要な場所であるという認識、そして自らがおこなう行為がとてつもない環境破壊を引き起こすという認識、どちらも持ち合わせていないってことです。
 
本当に真剣に南アルプスの自然環境が重要なものだと認識し、それでもなおリニアの工事が必要なものだとして十二分な事前調査と学習を行い、万全の環境対策をとるというのなら、こんな論理破綻したアホな評価書なんて作らないはずですから。

リニア 静岡県版補正評価書の問題点 その2

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現在、静岡市役所において、中央新幹線建設事業に関して市民の声を募集しています。静岡市長の鶴の一声で、「南アルプスを守るために市民の皆様の議論が必要」として、急きょ設けられたものです。
 
10月2日締め切りとなっております。リニアと南アルプスとの関係について、「なんかおかしくない?」「こうやって守るべき」というご意見をお持ちの方、ぜひ意見を出してみましょう。
 
 

 
JR東海の作成した補正評価書の検証を始めて約3週間が経過。一度目を通せば分かると思いますが、評価書というのは実に読みづらいものです。そんなわけで読むのに手間取って、ブログの更新も滞っています。
 
 
それにしてもまあ、よくもこれだけムチャクチャな内容で事業認可を申請したものだなあ…
 
というわけで、前回に引き続き、静岡県版評価書の主だった問題点を並べてみようと思います。今回、新たに追加したものについては赤い字で示しておきます。
 
本日(22日月曜日)、マスコミ向けのリニア体験乗車が行われ、「リニア技術スゲーぞ!」って、なんだかもう開業したかのような騒ぎになってますが、リニア技術以前に、事業認可申請に必要な環境影響評価書を満足に作成できていないという情けない状況であることも、報道してもらいたいものです。
 

【間違い】
●評価書資料編で現地確認されたとする重要な植物種73種が、評価書本編では確認されていないことになっており、環境影響評価の対象となっていない。なお、該当種は全て南アルプス国立公園内指定種というもので、評価書の補正過程で追加されたものであり、全体の補正が間に合っていなかったという壮大な凡ミス(?)とみられる。
 
●工事用車両の通行による猛禽類への影響を低減するために、「環境保全措置」として道路トンネルの設置をおこなうとし、他の環境への影響はないとしている。そのいっぽう、工事用道路トンネルの建設により騒音が生じて猛禽類に影響を与えるおそれがあるから事後調査の対象にするとしている。わけがわからない。
 
●工事用車両の通行が椹島ロッヂ(登山拠点・宿泊施設)に与える影響(視認性)について、「椹島ロッヂは車両の通行する林道から600m離れているから影響は小さい」としている。実際には、椹島ロッヂは林道に隣接しているので、この表現は誤りである。
 
●植生区分の概念について、根本的に誤っている。成立するための気候条件が異なる森林(亜高山針葉樹林と落葉広葉樹林)や、土地条件の大きく異なる場所(河原と斜面上の森林)をいっしょくたにして考えるなんてことはありえない。
 
【ムチャクチャな論理展開】
●生態系の項目において、異なる気候条件や地形条件のもとに成立し、特徴の大きくことなる数種類の森林について、すべてひとまとめにしたうえで、その中から工事予定地と関係のない森林を予測対象にし、改変しないから影響がないという意味不明な論理展開をしている。
 
●南アルプス聖岳や光岳へ向かう登山者は、登山口と、登山拠点である宿泊施設や駐車場との間をつなぐ林道上を歩いて移動している。この林道を、大量の工事用車両が通行する計画である。このため、登山客への影響が懸念されるが、どういうわけかヘリクツをごねて調査対象としていない。
 
●長さ3㎞の工事用トンネルを2本掘り、その中に工事用車両を通すため、騒音が減少し、車両を視認しにくくなるため、猛禽類への影響が緩和されるとし、環境保全措置に位置付けている。長さ3㎞のトンネルを掘るには2~3年の間、地上を大量のダンプカーが通ることになるが、その影響については何も言及していない。そもそも、この工事用トンネルが環境破壊の原因である。
 
●植物の重要種選定基準が、同じ大井川源流域の隣接した場所なのに、どういうわけか調査場所によって異なる。
 
●静岡県内には恒久的な残土捨て場を計画している。それなのに、「他の事業への再利用に回すから環境保全がなされる」としている。
 
【調査不足】
●工事用道路トンネルや斜坑の建設にともなう影響がほとんど扱われていない。合計8~9㎞にもおよび、これだけで県条例に基づくアセス対象の規模なんだけれども。
 
●残土捨て場の存在による景観への影響が十分に予測されていない。これは県知事意見を無視したことになる。
  
【予測・評価内容について検証ができない】
●河川流量が大幅に減少すると大騒ぎになっているが、そもそも実際の川にどれだけの流量があるのか記載されておらず、予測値の妥当性を問うことができない。
 
●工事のアクセス道路となる総延長40㎞近い林道について、改修工事による影響を予測するために動植物の調査をおこない、重要種とされる数十種類について、いずれも影響はないと結論付けている。しかしどこで確認されたのか全くわからず、本当に工事による影響はないのか検証しようがない。
 
●動物や植物の現地調査をどこで行ったのか示していない。そのため適切な場所が選定されたのか不明である。
 
【不自然な調査結果】
●水質予測のために、豊水期と低水期に河川流量を測定しているが、なぜか低水期のほうが流量が多かった地点がある。そのデータについて、検証をすることなく予測の前提としているため、意味不明な予測結果が出ている。
 
●これまで静岡県内および南アルプスでは分布の確認されていない植物が数種現地確認されている。本物だったら保全対象種とすべきであるが、同定の信頼性についての検証をおこなっていない。
 
●騒音の測定地点のうち一か所が川の堰堤近傍であったため、調査結果に川の音が大きく現れていた。こうした自然由来の音は暗騒音としてノイズ扱いされ、本来は調査地点を変えなければならないが、なぜかこれをそのまま試算の前提に使っている。そのため、「もともとうるさい場所だったので工事用車両の通行による影響は小さい」という妙な結論が導き出されている。
 
●山奥の林道において大量の工事用車両の通行が計画されており、林道の改修も計画されているため、動植物への影響が懸念されている。このため各種動植物の生息状況調査が行われたが、ところがどういうわけだか鳥類調査だけ行われていない。
 
【おかしな予測・評価方法】
●大量の工事用車両が林道を通る計画である。これが希少猛禽類に与える影響について考慮したのか不明である。
 
●イワナ類等の水生生物について、生息環境の改変は最小限にとどめるから影響は小さいと結論付けている。しかし河川流量減少による影響は無視している。
 
●生態系の項目において、直接破壊される森林や河原の生態系が調査対象になっていない。

【おかしな環境保全措置】
●工事従事者への教育・講習
 ⇒教育されるべきはこんな評価書をつくったJR東海のほう‼
 
●大井川の水がトンネルを通じて東隣の早川方面へ2㎥/s減少するとの予測に対し、トンネル内へ湧きだした水をくみ上げて対応するとしている。しかしこれを実行すると、現在大井川から早川へ導水している発電所の出力を上回るエネルギーが必要となるので、くみ上げるだけムダである。
 
●同じく、大井川の水が2㎥/s減少した場合、井戸を掘ってまかなうという案も館合えているらしい。2㎥/sもの水を井戸でまかなえば、その分、井戸周辺で川の水が減ってしまう。つまり、水の消える場所が変わるだけで、環境保全措置としての意味がない。
 
●河川流量を減少させないための対策として、「適切な構造及び工法の採用」「地下水等の監視」とがあげられ、いずれも効果の不確実性はないとしている。しかし山梨実験線でのトンネル工事において、河川流量を減少させる可能性を予測しておきながら、それを回避することができなかったとしており、施された環境保全措置は功を奏さなかったはずである。
 
●総延長40㎞近い林道を、毎日400往復前後の大型車両が通行するため、小動物がひかれてしまうおそれがある、もとより個体数の少ないサンショウウオ類等にとっては個体群の存続にかかわる一大事である。これについての対策として、「運転手の努力にまかせる」というトンデモ案が出されている。ちっぽけなカエルやサンショウウオを運転席から見つけ、直前でブレーキをかけるなんてできるわけない。
 
●外来植物の侵入対策として、工事用車両のタイヤを洗浄するとしている。しかしこれだけでは、積荷に付着して侵入するケースに対応できず効果が弱い。もっと有効な案を考えるよう、準備書段階でも指摘されているのに対応していない。
 
●現地調査で見つけられなかった植物について、「生育場所の改変を最小限におさえるから影響は回避できる」としている。見つけていない植物の生育場所をどうやって判断するのだろう?
 
●自然林に残土を積み上げて緑化するとしているが、どういうふうに緑化するつもりなのか何も書かれていない。
 
●着工前の1年間、河川流量の調査をおこない、着工後に流量監視をおこなうための基礎データにするという。たった1年間の調査なので、その年の降水量が平年から大きく外れていたとしても、そのデータが「通常時」として扱われることになる。
 
【国土交通大臣意見を無視】
●JR東海のあげた発生土置場のうち、特に規模の大きな2か所については、国土交通大臣意見で求められた選定要件を全く満たしていない。
 
●河川流量への影響を最小化するために「水系を回避」することも検討するよう求められたが、何も検討していない。
 
 
面倒だからいちいち評価書を複製しませんが、こんな具合でヘンな記述がたくさんあるのです。こりゃ、マズいですよ。
 
何がマズいって、自然環境に取り返しのつかない悪影響を及ぼすだけじゃなく、そういう行為を進める事業者(=JR東海)が、自ら工事を行おうとしている場所が環境保全上特に重要な場所であるという認識、そして自らがおこなう行為がとてつもない環境破壊を引き起こすという認識、どちらも持ち合わせていないってことです。
 
ヘタクソな環境影響評価書というのは、これまでにもたくさん作られてきました。しかし、それが原因で事業認可が否認されなかった例はありません。というのも、通常は事業者と担当行政庁との間で審議をおこない、事業認可が可能になるよう、評価書を補正してゆくからです。ところがこのリニア計画の場合、知事意見はもとより国土交通大臣(=環境大臣)からの意見すら検討していない。こんなのはほとんどありません。環境問題どころか法律違反の可能性もある…。例外だったのは諫早湾干拓事業ぐらいのものですが、その後、大々的な環境破壊と混乱を引き起こしたのは周知の事実…。
 
本当に真剣に南アルプスの自然環境が重要なものだと認識し、それでもなおリニアの工事が必要なものだとして十二分な事前調査と学習を行い、万全の環境対策をとるというのなら、こんな論理破綻したアホな評価書なんぞ作成しないでしょう。
 
こういった点は評価書の問題点です。いわば、環境保全策に関する問題点です。静岡県の場合、これに加えて発生土置場(=残土捨て場)の安全性という大問題があります。これについても問題が多々あるのですが、書いているヒマがないのでまたの機会に。

御嶽山の噴火とリニア批判とを安直に結び付けるべきでない

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なんだか分からないけれども、御嶽山の噴火とリニア計画とを結び付けて「リニア反対」の根拠にしようとする声が、散見されます。
 
誰が言いだしっぺか分からないけれども、もう少し冷静・論理的に考えてほしい・・・。
 
 
 
日本地図を見渡してください。小学校や中学校の地図帳でも何でもいいです。火山はで示されています。
 
リニアの路線と御嶽山との距離は、最短で50㎞程度。この距離をもって「御嶽山が危険だからリニアはやめろ!」と言い出したら、山陽新幹線を除く既存の新幹線はことごとく走れなくなります。
 
 
 
特に東北・上越方面。
 
【東海道新幹線】 
言うまでもなく富士の裾野を突っ走ります。箱根だって歴史時代の噴火はありませんが、いつどういう活動をするのか分かりません。もっとも、新幹線の走れなくなるような大噴火が起きたら、首都圏そのものが灰まみれになり、交通途絶どころではありませんが。
 
【上越新幹線】
榛名山の裾野を中山トンネルで突っ切ります。歴史上の噴火記録はありませんが、理科年表によると、5~6世紀に3回噴火した証拠があると書かれています。それから40~50㎞西方には日本有数の活火山である浅間山と草津白根山が煙をなびかせています。1783年の浅間山天明大噴火が再来したら火山灰の降下でひとたまりもありません
 
【東北新幹線】
宇都宮から北では、火山フロントの20~40㎞東側を通ります。歴史時代に噴火が起きた火山は、南から順に日光白根山、那須岳、磐梯山、安達太良山、吾妻山、蔵王山、栗駒山、岩手山となっています。磐梯山の1888年に起きた磐梯山の噴火は、山ごと崩れ落ちた「山体破裂」であり、いくつもの村を埋め尽くしたもので、御嶽山の噴火とは比較になりません。
 
【北海道新幹線】
函館の北で、日本有数の活火山である駒ヶ岳の裾野を通過します。路線は駒ヶ岳の西側ですので、火山灰の影響は受けにくいのかもしれませんが。
 
【北陸新幹線】 
日本有数の活火山、浅間山の裾野を突っ切ります。天明大噴火が再来したら線路ごと消滅するかもしれません。それから上越市内では焼山から20㎞付近を通過します。
 
【九州新幹線】 
終点鹿児島は、言うまでもなく桜島が目の前。
 
もちろん、在来線も高速道路も国道も、火山の裾野を通る区間がたくさんあります。っていうか、火山から50㎞以内に何百万人(たぶん)もの人が生活しているんですが…。
 
 
 
 
とにかく冷静に考えてほしい。
 
富士山が噴火すると危ないから東海道新幹線は廃線にすべきだ!なんて主張が成り立つのでしょうか?
 
  
ところで・・・そもそも、なんで御嶽山の噴火とリニアとが関係あるのかが分かりません
 
常識的に考えて、火山弾が50㎞も飛ぶわけがない。
火砕流が50㎞も流れ下るわけがない。もっともカルデラを形成するような超巨大噴火ならありえるけど、そんな噴火が御嶽山で起きたら、リニアどころか関東甲信ごと消滅する。
 
 
火山灰の影響を心配するのでしょうか?
 
 
「超電導リニア方式は火山灰に弱い」という弱点があるのなら、火山の影響を特別視する必要があるのでしょうが、そういう説明ができない限り、50㎞離れた御嶽山噴火をもってリニアへの反対根拠とするのあからさまにおかしいです。むしろ架線とレール摩擦で走る新幹線よりは強いんじゃないのかな? 
 
それに地下走行ですので、「東海道新幹線よりは富士山噴火の影響は相対的に受けにくい」という理屈も成り立ちます(ちなみに東海道新幹線の三島付近、リニアの大月付近は、ともに富士山から流れ出した溶岩流の先端にあたります。)。

中央新幹線 補正版環境影響評価書(静岡県)の問題事項 総まとめ

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リニア中央新幹線の、補正版環境影響評価書(静岡県編)の検証作業を一通り終えました。
 
間違い、記載内容の矛盾等が多数見受けられ、かなり問題点が多いように思われます。また、環境影響評価に直接関係のない点でも問題が多いように思われます。量が多くてここには書ききれませんので、別のページにまとめておきました。
 
クリックしてください。
 
 
 
 
なお、評価書の実物を見ながらでないと分かりにくい構図になっておりますが、どうぞご了承ください。そのうち、詳細な説明をしようと思ってますが…。
評価書の実物についてはこちらのJR東海のページからダウンロードなさってください。
 
別に、評価書がものすごくヘタクソだからって。リニア計画に反対するというわけではありません。ヘタクソな評価書で事業着手するとマズい事態になってしまうから、間違いはちゃんと直してもらわないと困る!!ってことを、強調いたします。
 


 
環境影響評価というのは、環境に影響を及ぼす可能性の高い、土地の改変をともなう大規模な事業を行う前に、事業者に対して事前に環境への影響を調査・予測・評価を行わせ、対策(環境保全措置)を考えさせるという制度です。
 
環境影響評価制度は、大雑把に言うと、
 
①最初に調査方法を記載した方法書を作成し、
②方法書について住民や自治体の意見を受けつけ、
③調査・予測・評価をおこなって環境保全措置を考え、
④それを記載した準備書を作成し、
⑤準備書について住民や自治体の意見をうけつけ、
⑥意見をもとに準備書の記載内容を変更した評価書を作成し、
⑥評価書について環境省からの審査を受け(担当大臣経由)、
⑦担当大臣意見をもとに評価書を補正し、
⑧補正評価書を担当大臣に提出し、
⑨事業認可審査の判断根拠とする
 
 
という手続きになっています。今は、⑨の段階です。
 
一連の手続きを定めた環境影響評価法という法律によると、評価書を審査して環境面への影響が緩和できていないと判断される場合は、事業認可してはいけないことになっています。リニアの評価書静岡編の場合、影響が緩和できていないというよりも、書いてあることが間違っているんですけど…。
 
重要種とした73種の植物について、現地で見つかっていると書いてある部分と、見つかっていないと書いてる部分とがあるとか…。
 
こういう間違いに、国土交通省の担当者の方は気付いてらっしゃるのかなあ?
 

東海地震発生時を想定して南アルプスルートの妥当性を検証すべき

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リニア中央新幹線の、補正版環境影響評価書(静岡県編)の検証作業を一通り終えました。
 
間違い、記載内容の矛盾等が多数見受けられ、かなり問題点が多いように思われます。また、環境影響評価に直接関係のない点でも問題が多いように思われます。量が多くてここには書ききれませんので、別のページにまとめておきました。
 
クリックしてください。
 
 
 
 
それから、環境影響評価とは直接関係がありませんが、やはり自然環境に関係するという点で、次のようなことも気になりましたので、新たに付け加えておきます。
 
 
 
「リニアは東海地震で東海道新幹線が被災したときに不可欠」という話を、4年前にJR東海が国に提出した資料から、昨日ネット上に公開されたホリエモン氏の話に至るまで、ずうっと聞かされてきたけれども、「じゃあ、南アルプスルートというのは、東海地震の際にも被災しないのか?」ということを検証した結果は一度も目にしていません。
 
当たり前すぎる疑問なのになんで??
 
なお、評価書の実物を見ながらでないと分かりにくい構図になっておりますが、どうぞご了承ください。そのうち、詳細な説明をしようと思ってますが…。
評価書の実物についてはこちらのJR東海のページからダウンロードなさってください。
 
別に、評価書がものすごくヘタクソだからって、あるいは東海地震発生時の検証がなされていないからといって、リニア計画に反対するというわけではありません。ヘタクソな評価書で事業着手するとマズい事態になってしまうし、東海地震で東海道新幹線と同時被災するようなことになったら大変だから、きちんと懸念は払しょくしてもらわないと困る!!ってことを、強調いたします。
 


 
環境影響評価というのは、環境に影響を及ぼす可能性の高い、土地の改変をともなう大規模な事業を行う前に、事業者に対して事前に環境への影響を調査・予測・評価を行わせ、対策(環境保全措置)を考えさせるという制度です。
 
環境影響評価制度は、大雑把に言うと、
 
①最初に調査方法を記載した方法書を作成し、
②方法書について住民や自治体の意見を受けつけ、
③調査・予測・評価をおこなって環境保全措置を考え、
④それを記載した準備書を作成し、
⑤準備書について住民や自治体の意見をうけつけ、
⑥意見をもとに準備書の記載内容を変更した評価書を作成し、
⑥評価書について環境省からの審査を受け(担当大臣経由)、
⑦担当大臣意見をもとに評価書を補正し、
⑧補正評価書を担当大臣に提出し、
⑨事業認可審査の判断根拠とする
 
 
という手続きになっています。今は、⑨の段階です。
 
一連の手続きを定めた環境影響評価法という法律によると、評価書を審査して環境面への影響が緩和できていないと判断される場合は、事業認可してはいけないことになっています。リニアの評価書静岡編の場合、影響が緩和できていないというよりも、書いてあることが間違っているんですけど…。
 
重要種とした73種の植物について、現地で見つかっていると書いてある部分と、見つかっていないと書いてる部分とがあるとか…。
 
こういう間違いに、国土交通省の担当者の方は気付いてらっしゃるのかなあ?

「外野の人間は黙っていろ」は正論なのかな?

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ホリエモン氏の話がネット上に掲載されておりました。
 
 
 そもそもリニア中央新幹線計画が問題になること自体の意味がわからない。政府が株式を保有していない一民間企業が、自己資金でインフラをつくることのどこに問題があるのか。

 事業主体となるJR東海は旧国鉄の優良資産を引き継いだ会社だ。政府は上場後、株式を全部売却していて、その売却益で国民に利益は還元されていると考えるべきで、公共的色彩が強い企業とはいえ、民間企業であることは間違いない。

 まず環境問題についてだが、きちんと環境アセスメントもやっているし、確かに世界初の大深度地下長距離トンネルという技術的チャレンジがあるものの、それはチャレンジしてみないとわからないことだ。それに文句を付けるのは筋違いと言えよう。

 もっと筋違いな批判は採算が取れないのではないかという指摘だ。一民間企業の事業が赤字になるかもしれないと、外野が文句を付ける権利はどこにもないだろう。そんなことをしたらベンチャー企業の大半は事業をスタートさせることすら難しくなる。

 そもそもリニア中央新幹線は、JR東海のドル箱である東海道新幹線の高い収益力があるからこそ実現できるものだ。そしてそのドル箱である東海道新幹線は致命的な欠陥を抱えている。それは東海地震や富士山の潜在的な噴火リスクに対応できていないということだ。もしそのような事態になればバックアップは航空路しかない、もし富士山が噴火すればそれすら怪しくなる。そんな事態になっても、リニア中央新幹線があればバックアップが可能である。

 首都圏と中京圏が40分台で結ばれるのはもうひとつ意義がある。それはこの二つの都市圏が実質的に合体することだ。これは世界的に見ても初めてのことであり、その社会的実験にはチャレンジしてみる価値はあるだろう。もしかしたら1+1が2になる以上の価値が生まれるかもしれない。

 個人的にはそれ以上に地面を500キロ以上のスピードで走る近未来の交通手段を見たいという思いもある。それに水を差そうとしている人たちは新しい技術には何でも反対してしまうような人たちなのだろう。

 一説によればイノベーションを必要とする人、積極的に関わろうとする人は全体の2割程度らしい。それ以外は現状維持を望むのだそうだ。しかし社会は継続的なイノベーションによって成り立っている。現状維持ほど難しいものはなく、誰かが新しいチャレンジをしているからこそ成り立っている。それを8割の人が筋違いに邪魔をする事態は避けなければならない。

 これまでは公的セクターがこのような巨大インフラのイノベーションを担う必要があったが、民間の資金調達インフラが整うことによって、公的セクターである必要はなくなって、このような水を差す人たちは筋違いの指摘をするようになってしまった。なぜこんなことに気づけないのだろう。無駄な邪魔をするようなことだけはやめてもらいたいと切に願う。
 
もしかすると、政財界におられる方の中には、こういうお考えの方が多いのかもしれません。
 
ところで一読して、どっかで見覚えがあるなあ…と思っていたら、先月の産経新聞の記事「朝日、毎日はリニアもお嫌いか」というものにそっくりなのでした。産経新聞の場合、『夢の超特急リニアが現実のものになるという国家プロジェクトなんだから皆が皆喜ばねばならないのに、なんで朝日・毎日新聞は批判しているのか』っていう記事でありました。
 
国家プロジェクトに対して皆が皆喜ぶべきだ!なんて、産経新聞の大嫌いな、某人民共和国の政府系新聞そっくりなのですが。
 
ここでいう「朝日・毎日新聞」を「外野の人間」に置き換えると、ホリエモン氏の話とほぼ同じになります。もしかしたらホリエモン氏は、週刊朝日の記者からインタビューを求められて、面倒だったから産経の記事を適当にいじっただけなんじゃないのかな?

産経新聞にしろホリエモンにしろ、共通しているのは「外野の人間は黙っていろ」ということです。私はこれに、強い違和感を抱きます。何で言論の自由が認められている国において、某人民共和国のスローガンみたいなことを言い出すんだろう?
 
どうも、「JR東海は純然たる民間企業であり、リニア計画は民間事業なのだから株主以外は口出しするな」というニュアンスのようですが、果たしてそういうものなのでしょうか。
 
これが、周囲に大きな影響を及ぼさない事業だったら、別に誰も文句を言わないでしょう。新幹線の座席を変えようが、新たな車両を導入しようが、駅構内で焼きたてパンを売ろうが、ホテル事業に参入しようが、どうぞご自由になさってくださって構いません。
 
リニア計画っていうのは、そういうわけにはいかないんじゃないのかな?
 
「時速500キロの夢」を実現させるということは、巨大な構造物が出現するということと同義であり、それがために、直接的・間接的に影響を受ける人が何万、何十万にも及ぶわけです。
 
リニア計画では、品川から名古屋までの286㎞において、軌道が出現します。地上区間や車両基地等は当然、立ち退きを要求して土地を購入せねばならないし、8割がトンネルなので、東京ドーム60杯近い膨大な残土が掘り出されます。この残土が運ばれてゆく先で、大きな環境破壊を起こしかねません。トンネルを掘ったら地下水を引き込んで川を涸らしてしまうかもしれません。それに最低でも13年間は、工事に伴う騒音やダンプ公害が生じてしまいます。

住み慣れた土地を追われる人
工事によって生活環境が一挙に悪化する人
存亡の危機に立たされる集落
メチャクチャにされかれない自然環境
60万人分の水利権が消滅するかもしれない川
残土で大災害を招きかねない山岳地域

それに、自分たちの暮らす地域の将来は、自分たちの手で決めたいのに、全く生活に関わりのないJR東海&リニア計画がメチャクチャにしそうで腹立たしい!という意識を抱く人も多いことでしょう。

こういったことが現実問題として浮上してきているわけです。こうした様々な問題に危機感を抱き、計画の是正を求める人々に対して「株主でもないなら黙っていろ」というのは暴論以外の何物でもないでしょう。
 
もちろんこういった問題は、リニア計画に限らず、規模の違いはあるとはいえ、これまでも繰り返されてきました。
 
今月は東海道新幹線開業50周年です。
 
昭和39年の東海道新幹線の開業後、沿線でたいへんな騒音・振動問題が生じました。財政難の国鉄が、建設費をおさえるために、用地取得を最小限にとどめたことが要因だとみられます。名古屋駅東側では民家の軒先をかすめるようにして高架線が築かれ、列車が通るたびに震度3程度の揺れに見舞われる区域が広がっていたということです。このほかにもあちこちで同様の訴えが起こり、浜松市など授業ができなくなったとして移転を余儀なくされた小学校も数校あったようです。名古屋での騒音・振動問題は原告が数千人におよぶ大きな訴訟となり、「新幹線公害」という言葉まで生まれました。
 
50年前の「夢の超特急」実現において、大きな環境破壊と沿線の住民軽視が起きていたことは、まぎれもない事実です。高度成長期において、社会全体でその程度ならば許容範囲と認める時代背景があったのでしょう。とはいえ、現実に発生している問題に目をつむるわけにもいかない。
 
だからこそ反省がなされて、様々な環境対策技術や手続き規制が導入されるようになり、環境保全に対する意識が高まってきたのです。
 
昭和50年には新幹線騒音の基準値が定められ、また昭和54年には、整備5新幹線の建設に際しては環境影響評価を行うよう、運輸大臣から通達が出されました。事業を実施する前に、環境への影響を予測して対策を考えさせようと試みたわけです。
 
このときは住民等の関与はほとんどできない内容でしたが、平成9年になり、ようやく一般の人間(公衆等)による関与が、必要な手続きとして法的に認められるようになりました。「外野からの声」に耳を傾けて計画内容を是正せよと、法律で義務付けられたのです。
 
ところが、リニア計画の環境影響評価において事業者であるJR東海は、住民の声には全く耳を傾けず、市町村との協議にも応じず、知事意見までも無視するということを続けています。こんなことを繰り返してきたので、環境大臣(法律上は国土交通大臣)からは「住民との協議機会をつくれ」「自治体の意見を勘案せよ」という意見まで出されてしまいました。こんな意見を出された事業は、おそらく前代未聞かと思います。
 
「法律に基づいて外野の意見を聞け」と、政府から言われてしまったのですよ。もっとも、環境大臣意見こそ「外野の声」の最たるものとの御認識かもしれませんが。
「外野の人間は黙っていろ」という主張は、過去の大きな公害への反省と、環境問題回避のために長年かけて築かれてきた、住民関与手続きの意味を、何らご存じないからこそ言えるのではないかとも思います。
 
 
 
 
この文章を読むと、もしかすると、「環境面のことなら口出ししてもよいが経営面には口出しするな」という主張なのかもしれません。
 
だけど、リニア計画においてひどい環境破壊が予想され、それにも関わらず環境影響評価が適切に行われていない理由は、ひとえに「リニアだから」というところに帰着すると思います。
 
「時速500キロで走るから路線はまっすぐにして地下に埋めなければならない」
これがリニアの宿命です。それゆえ、
●ルート変更ができないから周囲の声に配慮できない
●膨大な残土を生み出し、運搬過程や処分先で大きな環境破壊を引き起こす
●山奥に膨大な残土が出されるので運び出せず、山中に捨てるしかない
●河川の配置と関係なくトンネルを掘るから川の水を大量に抜いてしまう
「建設単価がとても高い」

これもリニアの宿命です。それゆえ
●突貫工事となり環境負荷が大きくなる
●環境に配慮した高額な工法をとることができない
●工期を伸ばせないから周囲の声に配慮できない
●斜坑や立坑を多くすることで残土や水枯れによる環境負荷を大きくしている
●環境アセス費用をケチっている
 
という問題が必然的に付随します。環境問題の根本にかかわる事項ですが、これらを修正して環境に適した事業に改めるとなると、おそらく超電導リニア方式のままでは対処不可能です。だからこそ、それでも諸問題に目をつむるためにアセスをデタラメに進めたのでしょう。
 
このように考えると、環境問題を解決するためだは、事業目的そのものの妥当性にまでさかのぼって考える必要があるんじゃないのかなと思うのです。
 
すると、環境問題を考えるためには、外野の人間が事業計画の妥当性にまで言及するのも、正当な行為だといえるのではないでしょうか。
 
 

なお、静岡県部分に対する私からの提言を別ページにまとめておきます。 
 
クリックしてください。
 
 
 
 
それから、環境影響評価とは直接関係がありませんが、やはり自然環境に関係するという点で、次のようなことも気になりましたので、新たに付け加えておきます。
 
 
  
なお、評価書の実物を見ながらでないと分かりにくい構図になっておりますが、どうぞご了承ください。そのうち、詳細な説明をしようと思ってますが…。
評価書の実物についてはこちらのJR東海のページからダウンロードなさってください。
 
別に、評価書がものすごくヘタクソだからって、あるいは東海地震発生時の検証がなされていないからといって、リニア計画に反対するというわけではありません。ヘタクソな評価書で事業着手するとマズい事態になってしまうし、東海地震で東海道新幹線と同時被災するようなことになったら大変だから、きちんと懸念は払しょくしてもらわないと困る!!ってことを、強調いたします。

社会的合意の見込めない大型事業の行く末 ―北海道千歳川放水路と比較―

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リニア工事関連銘柄が急上昇したらしいけど、投資家としては読みが甘い!!
 
 
アセス評価書を読めば、こんな事業計画で社会的合意を得られるはずがないのは一目瞭然である!!
 
いや、マジで。国土交通大臣が評価書について出した意見を事業者が完全に無視し、そのうえ大臣自ら見過ごして事業認可させた例は、あの諫早湾干拓事業だけなのだから。そんなアホな事業に地元は協力できない可能性が大なのである。


本日、デタラメだらけなアセス評価書のまま、リニア中央新幹線計画が事業認可されました。
 
東京‐名古屋を47分で結ぶという壮大な目標の反面、事業計画がムチャクチャで環境負荷が甚大なうえ、とどめをさすように環境影響評価書がデタラメであったため、はっきり言って、沿線となる自治体や地域住民の合意は全く得られそうにない状況下での事業認可となりました。
 
(合意が得られそうにないどころではなく、適切な原告を選んで、国交省を相手に、評価書の問題点を根拠に訴訟を起こせば、事業認可は取り消されるのでは?と思うのであります。)
 
超巨大プロジェクトが、社会的合意が得られないまま見切り発車するとどうなるか、よく似たケースが過去にあったので、ちょっと見比べてみましょう。そういった事業には成田空港とか八ッ場ダムとか諫早湾干拓事業とかいろいろありますが、その中でも事業規模が空間的にとりわけ巨大であった千歳川放水路計画というものを例に挙げてみます。
 
◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
北海道の中央部を流れる石狩川。流域面積全国第二位の大河川です。中下流域は現在でこそ一面の水田となっておりますが、もともとは広大な湿原でした。本来は釧路湿原よりも広大であったといわれています。
 
さて、湿原を干拓したのですから、必然的に流域では洪水の被害が多発します。特に、石狩川と千歳川との合流点付近(江別市付近)での水害が深刻であったようです。この洪水被害を軽減しようと考えだされたのが千歳川放水路計画でした。
 
計画が具体化したきっかけは1981年8月のの大洪水でした。台風の通過によって長雨となり、石狩川が大増水しました。このため支流の千歳川の水が本流に排水できなくなり、逆流するような形であふれ、浸水家屋が2万6000棟を超える大規模な災害となりました。
 
この対策として北海道開発局が、洪水時に千歳川の水を巨大放水路で太平洋側に流してしまおうという計画を出し、1982年3月、建設大臣が工事実施計画を正式に決定しました。
 
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計画の概要は、長さ38㎞、幅400mの巨大な人工河川をつくり、本来は石狩川を経て日本海に注いでいる千歳川の水を、増水したときには水門をあげて放水路に逆流させ、太平洋側の苫小牧市方面へ流してしまおうというものです。完成していれば、東京の荒川放水路や新潟の大河津分水路をはるかに上回る、巨大な放水路となるはずでした。
 
しかし17年間の紆余曲折を経て、1999年7月、計画は中止となります。
 
巨大な放水路は、確かに洪水対策としては劇的な効果を生みます。反面、それにともなうデメリットも大きく、周囲への配慮がいろいろな面で不可能であり、しかも計画が大きすぎて利害調整がつかなくなってしまったのです
 
【議論の過程で浮上してきた主な懸念事項】 
●途中に、ウトナイ湖という生態系の保全上重要な湿地があり、その近傍で開削をおこなうため湿地の水源を枯渇させると予測された。
●このウトナイ湖は1991年、ラムサール条約で国際的自然保護地域となり、その保全は国際的にも無視できない問題となった。
●1億立方メートルに及ぶ膨大な残土が生じるが、行き先が示せなかったらしい。
●放水路は石狩川流域とは無関係の苫小牧市で海に出るため、洪水時の濁流は苫小牧市に流されることになる。このためなんら放水路建設のメリットのない苫小牧市において、甚大な沿岸漁業被害が予想された。
●酪農地帯を分断してしまう。
 
【計画の進め方における問題点】 
●放水路が必要だとする根拠となった、洪水時の流量試算値が過大なものであるという指摘がなされた。
●放水路計画以外の案を、あまりよく考えることなく北海道開発局自ら消去。
●5000億円の建設費。
 
こういうように、いざ実現させようとしたら、さまざまな問題が一挙に噴出し、湿地の保全を求める市民、日本野鳥の会や日本自然保護協会をはじめとする自然保護団体、専門家、漁協などを中心として大きな反対運動が巻き起こりました。しかも、こうした問題に対する解決方法を北海道開発局が見いだせないまま月日は経ち、肝心の洪水対策がおざなりになるという事態となってしまいました。
 
「いつまでこんなことをやってるんだ」と大蔵省や建設省からも注文がつき、1997年9月、北海道知事のもとに、学者や反対派住民、それから北海道開発局までを勢ぞろいさせた会議が設置されることになりました。
 
その会議の出した提言は「放水路は中止し、洪水対策としては堤防強化と遊水地建設を基本に考えるべき」というものであり、知事はこの旨を北海道開発局に伝え、また紆余曲折を経て、1997年の中止となりました。

千歳川放水路とリニア計画。放水路と鉄道という全く別のものなのですが、事業計画や問題の性格が瓜二つなんですよ
 
【共通点1 前代未聞の巨大プロジェクト】
千歳川放水路は、放水路建設としては日本史上最大のものである
リニアについては言わずもがな
 
【共通点2 大きな自然破壊】
前述の通り、放水路事業は貴重な動植物の宝庫であるウトナイ湖を消滅させかねない事業であった
リニア計画においては、水枯れ、膨大残土、大量ダンプなどで南アルプスと大井川がメチャクチャになるのをはじめ、岐阜においても、希少な植物の宝庫である小湿地群を破壊する可能性がある
 
【共通点3 水源の枯渇】
ウトナイ湖は東西を緩やかな台地に挟まれており、その台地中を流れてくる水が低所で湧きだすことによって涵養されている。放水路計画は、その台地をウトナイ湖の湖面以下にまで開削する計画であり、湖に流れ込むべき水を引き込んでしまうことが予測された
リニア計画においては、一級河川大井川の地下に総延長26㎞ものトンネルを掘るため(本坑、先進坑、斜坑)、毎秒2トンの河川流量減少が起こるとJR東海がアセスで試算。水系の配置と関係なく一直線に大断面トンネルを掘るため、あちこちで同様の懸念がある
 
【共通点4 水源枯渇への対策が実現不可能】
千歳川放水路の場合、放水路両岸に深さ20~30mの止水壁を設け、山側にたまった地下水をポンプアップでウトナイ湖に放流するという案が出された(東京電力が福島第一原発の事故処理でやっていることの巨大版)。
リニアの場合、通常の防水対策以外に何も案を考えていない。問題が起きたらカネでどうにかしようとしてるフシがある
 
【共通点5 計画中にルート途中が国際的自然保護地域となる】
放水路計画が正式決定したのは1982年3月。その後、ルートの中ほどにあるウトナイ湖は1991年10月、ラムサール条約に登録されることになる
南アルプスルートでのリニア建設指示が国土交通省から出されたのは2011年5月。その後2014年6月、南アルプスはユネスコエコパークに登録されることになる
 
【共通点6 大きなメリットが出る地域がある一方でデメリットだけを受ける地域が出現】
千歳川放水路は上述の通り、千歳川流域の洪水対策としては劇的な効果が見込まれた。しかし石狩川流域とは全く関係のない苫小牧市で太平洋につながることになる。放水路から吐き出される濁流による沿岸漁業への甚大な悪影響に加え、苫小牧市の土地が大きく削られてしまうことになる
リニアの場合、メリットを受けるのは基本的に東京・名古屋だけである。東京と名古屋とを47分で結ぶために南アルプスをぶち抜く。このためリニアのメリットとは全く関係のない静岡県静岡市の南アルプス山中に膨大な残土を捨てることになる。生態系や景観の破壊、それに災害誘発の危険性まで懸念されている。その上62万人の生活を支える大井川の水を、大量にトンネル内に引き込んでしまう。同じく南アルプス山中の長野県大鹿村においても、リニア開業によるメリットはほとんどないと思われる一方で、残土運搬にともなう甚大な環境破壊や川の枯渇が懸念されている
 
【共通点7 目的達成のための代替案を考えていない】
千歳川放水路計画の場合、放水路以外にも石狩川本流の拡幅、堤防の強化、遊水地の整備など9つの案があったらしいが、特に議論されることなく放水路計画が選択された。これに固執したため肝心の洪水対策が実施できないこととなり、放水路計画中止の原因ともなった
リニアの場合、いろいろな角度から、走行形式やルートについて考えるべきであるけれども、リニアの実現こそが目的であるため代替案の検討の余地がないというおかしな状況
 
【共通点8 計画の立案段階で環境対策を考慮せず】
千歳川放水路の場合、最初はウトナイ湖をぶち抜くルートを考えていたほど、自然環境への認識が欠けていた。それに、漁業被害を認識していたら放水路計画は最上のものとはいえなかったはずである
リニアの場合、計画にお墨付きを与えた中央新幹線小委員会、技術評価検討委員会どちらも、環境面からの審査はしていない。審議会のメンバーにも環境保全の関係者は一人も参加していない。(千歳川放水路の時代から20年経つのにこの認識)

繰り返しますが、千歳川放水路計画が中止となったのは、あまりにも巨大な計画であって利害調整ができなかったことと、建設目的に説得力がなく社会的合意が得られなかったことが、根本的な原因といえるでしょう。

利害調整ができなかったというのは、「住宅や農地への被害を漁業被害に転嫁させる。千歳川流域で防災効果が見込めても、苫小牧市では環境破壊だけが生じる。」ということが挙げられます。被害の種類と場所が変わるだけという見方ができてしまったのです。
 
合意を得るといういのはカネの問題だけじゃありません。その事業が、慣れ親しんだ故郷や豊かな自然環境を破壊してまで進めねばならない目的を備えているか否かを、よく話し合うことが重要ではないでしょうか。すなわち、治水目的とはいえ、大きな自然破壊や地域社会の破壊を侵さねばならない放水路というものの必要性を、北海道開発局が説明できなかったことに起因するといえるでしょう。他の案に比較して放水路の優位性を説明できなかったともいえます。
 
計画の早期段階で、行政や専門家のみならず、洪水被害に会った地域住民、漁協、自然保護を訴える人々を一堂に会した協議の場を設け、その場において合意に達した治水対策であれば、これほどの混乱はなかったのではないでしょうか。
 
◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
リニアの場合、「民間事業」ゆえに「経営に関わらない外野は黙っていろ」という意見まで聞かれますけど、大型プロジェクトというものは地域住民の合意を得て初めて成功するものですから、それを無視せよというのは暴論以外の何物でもありません。
 
むしろ、JR東海はじめ推進する側がそのような認識のままに進めるのであれば、千歳川放水路以上の紛争状態に陥るのは間違いありません。そして事業者であるJR東海は、地域住民はもとより、地元自治体の信頼を得ることを避けてきたようにしか見えないのです。知事から出された環境影響評価準備書の修正要求にすら応じなかったという異常な対応は、JR東海のもつ悪しき態度の分かりやすい例といえるでしょう。
 
⇒環境影響評価書 静岡県編の問題事項
 
⇒静岡県における発生土置場の問題点
 
静岡の人間ですので大井川や南アルプスの話になりがちで恐縮ですが、南アルプスに大量の残土を捨てたり、大井川から62万人分の水を消し去ったところで、南アルプスおよび大井川流域の住民には、リニア開業のメリットは何もない。JR東海は、リニア開業によって東海道新幹線のダイヤが便利になるという説明をしていたけれども、それがムチャクチャな自然破壊と等価であるかは疑問があります。
 
千歳川放水路の場合は「人命と財産を守る」という立派な目的がありましたが、リニア計画の場合はそれもないわけです。人口6000万人のメガ・リージョン(なんだそりゃ?)をつくるとか、世界の最先端をゆく技術革新とか、SFのような事業目的を並べても住民が納得できるわけがないし、東海地震対策だといっても妥当性を検証したわけではない。結局、事業目的が何なのかよくわからない。ですからハッキリ言って、静岡県としてはそんなものを受け入れる義理も義務も筋合いもないわけですよ。
 
メリットはおろか、納得できる事業目的の説明もないのに、「人口6000万人のメガ・リージョンをつくるために南アルプスに残土を捨てさせなさい。国から事業認可はもらっていますので。」という態度で進めようとするのですから、地元としては拒否しなければ面子もたたない。まして大井川の水は生活に直結するものであり、それを明確な目的もなく奪うのであるのだから、地元自治体としても態度を硬化せざるを得ないでしょう。
 
千歳川放水路計画の場合、北海道開発局は地元の自然保護団体や地域住民との協議を何度も開いていました。単なる説明会ではなく、話し合いの場を一応設け、反対派グループの開いたシンポジウムにもきちんと出席していたのです。
 
ところがJR東海においては、住民との協議の場はこれまでいっさい設けず、環境影響評価手続きに基づく説明会の場でも質問回数を制限したり、沿線事務所は平日日中にしか開かいていないなど、合意を求めるどころか住民との接触を避け続けてきました。
 
今後も一方的な工事説明会しか開かないとしていますから、これでは、永遠に合意形成は不可能でしょう。
 
◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
要するに、リニアは千歳川放水路と比較しても、さらに事業規模が大きく、環境への配慮に乏しく、そのうえ事業の必要性の根拠が希薄であるがために、直接に向き合わなければならない人・地域に対して、必要性を認識して合意に達してもらうことが絶望的だし、JR東海にその合意形成能力は皆無に等しいとみられるのですよ。
 
国土交通大臣からの事業認可は得ても、社旗的合意を得ることは絶望的であり、問題が噴出して泥沼化するのではないかと思うのであります。
 
ゆえに、千歳川放水路を同じ道を歩んで自滅するのではないでしょうか。

国土交通大臣の事業認可は環境影響評価法違反じゃないの???

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10月17日、JR東海の推進するリニア中央新幹線計画の事業認可が太田国土交通大臣より出されました。これによってJR東海は、建設に向けて事業用地の取得や測量、土地開発規制の解除手続きなどを開始することができるわけです。
 
この認可が、今後の日本の環境行政における重要な変換点になると思われるのですが、そのことに言及した新聞等は見当たりませんね…、

これは、今後の環境影響評価制度の根幹にかかわる大問題になります。おそらく、十数年後の法律書などで、特異な例として取り扱われるに違いありません。
 

 
その端的な例。
 
新幹線鉄道の建設にかかわる事項を定めた全国新幹線鉄道整備法という法律には、認可手続きの際に、環境面からの審査を行うことを定めた規定はありません。

その一方、環境影響評価法第33条には、次のように書かれています。
 
第33条   対象事業に係る免許等を行う者は、当該免許等の審査に際し、評価書の記載事項及び第二十四条(注 国土交通大臣意見)の書面に基づいて、当該対象事業につき、環境の保全についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査しなければならない。
 
(一・二は略)
 
三   免許等を行い又は行わない基準を法律の規定で定めていない免許等
 当該免許等を行う者は、対象事業の実施による利益に関する審査と前項の規定による環境の保全に関する審査の結果を併せて判断するものとし、当該判断に基づき、当該免許等を拒否する処分を行い、又は当該免許等に必要な条件を付することができるものとする。
 
 
この第33条の規定により、新幹線鉄道の認可の審査の際には、環境影響評価書の記載事項に基づいて、環境保全について適切な配慮がなされるかとうか審査しなければならないことになっています。「書面に基づいて」というのがキーワードです。
 
いっぽう、当日の太田大臣の記者会見
 
太田国交相はこの日の閣議後会見で、南アルプスを貫く長大トンネル工事や温室効果ガス増大などの環境影響について、「国交相意見で求めた環境への措置について、JR東海がすべて(対策を)行うと言っていることを確認した」と述べ、影響は抑えられるとの認識を示した
(朝日新聞デジタルよりhttp://www.asahi.com/articles/ASGBK3F8XGBKUTIL00Q.html朝日新聞の記事は信ぴょう性に乏しいかもしれないけど、これぐらいはまちがっていないだろう)
 
ん?
 
 
 
おかしくないですか?
 
環境影響評価法では、『評価書の記載事項及び第二十四条の書面に基づいて、当該対象事業につき、環境の保全についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査しなければならない』としているわけです。
 
いっぽう大臣の会見によると『国交相意見で求めた環境への措置について、JR東海がすべて(対策を)行うと言っていることを確認した』として、認可したわけです。

法律では評価書の記載事項に基づいて審査しろとしているのに、国土交通大臣はJR東海が保全を行うと言っているから認可したとしています。
 
 
 
「書面で審査しろ」と法律で決まっているのに「口約束」で確認…?
 
これって、法律に違反していませんか?
 
 
 
長くなるので続きはまた後日。

リニア認可は環境影響評価法第33条に違法しているのでは?

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10月17日、JR東海の推進するリニア中央新幹線計画の事業認可が太田国土交通大臣より出されました。これによってJR東海は、建設に向けて事業用地の取得や測量、土地開発規制の解除手続きなどを開始することができるわけです。
 
この認可が、今後の日本の環境行政における重要な変換点になると思われるのですが、そのことに言及した新聞等は見当たりませんね…、

これは、今後の環境影響評価制度の根幹にかかわる大問題になります。おそらく、十数年後の法律書などで、特異な例として取り扱われるに違いありません。
 
そもそも環境影響評価制度は、事業認可審査とどのような関係にあるのでしょうか。そこから考えてみましょう。
 

 
時速200キロ以上で走行する鉄道を建設する場合、その手続きには全国新幹線鉄道整備法という法律が適用されます。通常の鉄道事業法に、いろいろな特例などを追加するような性格の法律です。この法律には、認可手続きの際に、環境面からの審査を行うことを定めた規定はありません。

その代わりに、環境影響評価法第33条には、次のように書かれています。
 
第33条   対象事業に係る免許等を行う者は、当該免許等の審査に際し、評価書の記載事項及び第二十四条(注 国土交通大臣意見)の書面に基づいて、当該対象事業につき、環境の保全についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査しなければならない。
 
(一・二は略)
 
三   免許等を行い又は行わない基準を法律の規定で定めていない免許等
 当該免許等を行う者は、対象事業の実施による利益に関する審査と前項の規定による環境の保全に関する審査の結果を併せて判断するものとし、当該判断に基づき、当該免許等を拒否する処分を行い、又は当該免許等に必要な条件を付することができるものとする。
 
 
この第33条の規定により、新幹線鉄道の認可の審査の際には、環境影響評価書の記載事項に基づいて、環境保全について適切な配慮がなされるかとうか審査しなければならないことになっています。これは私kabochadaisukiの思い込みと疑われても困りますので、裁判所判事の見解を引用してみましょう。
 
「評価書における環境影響評価の判断の過程に看過し難い過誤等があり、被告(国土交通大臣)の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告の上記判断は不合理であり、裁量権の逸脱があるものとして違法と解すべき」
(大阪地判平成18年3月30日 西大阪高速鉄道西大阪延伸線工事の事業認可取り消しを求める裁判にて)
 
また、沖縄県新石垣空港の設置許可の取り消しを求める訴訟における判決(住民側敗訴)文で、裁判所は、環境影響評価法第33条1項の審査に基づく許認可等処分が違法になる場合を列挙しています。(東京地方裁判所 平成23年6月9日)
 
これ、非常に重要だと思うので、別紙から抜き出してみます
 
(ア)環境配慮という絶対的考慮要素を書いた場合
 
(イ)判断過程において考慮すべきでない事項を考慮し、考慮すべき事項を考慮せず、又は考慮要素の認識や評価を誤って許認可等処分した場合
⇒許認可等権者は科学的かる客観的な見地からひょうかしなければならない
 
(ウ)恣意的な環境影響評価手続きに対し抑止効果を欠いた処分がされた場合
 
(エ)第三者的視点による補完機能を欠く処分がされた場合
⇒第23条に基づく環境大臣意見を勘案しているか
 
(オ)事後のフォローアップ機能を欠く処分がされた場合
 
(カ)評価書の記載事項の判断過程に誤りがある場合に(たとえ記載内容に誤りがなくても)これを是正せずに許認可等処分がされた場合
 
(キ)評価書の記載内容に誤りがあるのにこれを是正せずに許認可等処分がされた場合 
 
⇒リニアの評価書に最も関わってくると思うのでコピペ 
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(ク)環境影響評価の手続き違反を看過して処分がされた場合
 
(ケ)合理的理由を示すことなく24条意見(注 担当大臣意見)に対応しなかった場合 
 
このたびのリニア中央新幹線環境影響評価書は、私の見た範囲では、下線を引いた3項目に該当するように思われます。特に、(ケ)については確実にあてはまるでしょう。つまり、この東京地方裁判所の見解に照合すると、太田国土交通大臣のリニア事業認可は違法になるのかもしれません。
 
ざっと3項目の例を挙げておきます。いずれも静岡県編評価書です。
 
(イ)の例
 国土交通大臣の意見において、静岡県を含む巨摩山地から伊那山地までの山岳トンネル区間については、精度の高い予測を行うよう求められており、それに対し、三次元水収支解析を実施したと見解を述べている(表13-1(24))。
 その結果である「表8-2-4-5河川流量の予測結果」において、工事着手前の現況流量は解析値として示されている。しかし現実の河川における実際の流量が示されていないため、この解析値の妥当性を検討することができない。 たとえば「地点番号06大井川(田代ダム下流)」において、工事着手前の解析流量が表8-2-4-5-において9.03㎥/sと試算されているが、本評価書の記載内容からでは、現実の同地点において、実際にこの流量があるか否かの確認ができない。よって工事期間中および完成後の流量の予測値についても、妥当性を検証することができない。「表6-3-1(13)静岡県知事からの意見と事業者の見解」右欄に掲載されている渇水期流量についても同様である。また、静岡県知事から求められた「河川流量減少に関する定量的な判断ができるように定量的な判断基準について示すこと(表6-3-1(13)のカ)」という意見にも答えることができていない。
 すなわち、工事および山岳トンネルの存在による水資源への影響に係る予測結果について、その妥当性を検証するための情報が評価書内に掲載されていないため、「(2)予測及び評価」については全体として論拠を欠く。 したがって8-2-4-18ページにおける「水資源に係る環境影響の低減が図られている」とする評価結果には根拠がない。
 根拠がないのであるから、評価書の記載事項からでは、予測結果や環境保全措置の妥当性は審査できないはずである。それにもかかわらず事業認可をした国土交通大臣の行為は違法ではないか?
 
(キ)の例
 以下の73種の植物種については、資料編の「表9-1-1-2 高等植物確認種一覧」においては現地で確認されていると記載されているのにも関わらず、本編の「表8-4-2-8 高等植物に係る重要な種確認一覧」においては現地で確認されていないことになっている。これでは「8-4-2 植物」全般の記載内容は大幅に誤っていると言わざるを得ない。
ヒメスギラン、ヒモカズラ、ヤマハナワラビ、クモノスシダ、ウサギシダ、ミヤマウラボシ、シナノナデシコ、レイジンソウ、ホソバトリカブト、ミヤマハンショウヅル、ミヤマカラマツ、シナノオトギリ、オサバグサ、ミヤマハタザオ、ミヤマタネツケバナ、ミヤママンネングサ、トガスグリ、ダイモンジソウ、クロクモソウ、シモツケソウ、モリイチゴ、イワキンバイ、ミネザクラ、イワシモツケ、イワオウギ、ウスバスミレ、ヒメアカバナ、ゴゼンタチバナ、ヤマイワカガミ、イワカガミ、ウメガサソウ、シャクジョウソウ、ギンリョウソウ、コバノイチヤクソウ、ベニバナイチヤクソウ、ジンヨウイチヤクソウ、サラサドウダン、ウスギヨウラク、ウラジロヨウラク、アズマシャクナゲ、ミツバツツジ、サツキ、トウゴクミツバツツジ、リンドウ、ツルアリドオシ、トモエシオガマ、クガイソウ、イワタバコ、キンレイカ、ヤマホタルブクロ、タニギキョウ、タカネコンギク、カニコウモリ、ミネウスユキソウ、マルバダケブキ、カイタカラコウ、アカイシコウゾリナ、ツバメオモト、イワギボウシ、コオニユリ、クルマユリ、クルマバツクバネソウ、タマガワホトトギス、エンレイソウ、シロバナエンレイソウ、ミヤマヌカボ、コイチヨウラン、エゾスズラン、オニノヤガラ、ミヤマウズラ、ミヤマモジズリ、タカネフタバラン、コケイラン
⇒詳細(9/1のブログ記事)http://blogs.yahoo.co.jp/jigiua8eurao4/13168551.html
つまり植物の項目は全面的に誤っているのにもかかわらず、是正を要求することなく事業認可したのであるから、東京地裁の見解に照らし合わせれば明白な違法行為である。
 
(ケ)の例
 静岡県内の発生土置場については、準備書の段階で示されている。その選定過程について準備書では、「過去に伐採された場所や人工林等から選定した」としており、その記述がそのまま評価書おより補正評価書でも用いられていた。
いっぽう評価書に対する国土交通大臣意見においては、発生土置場について「自然植生、湿地、希少な動植物の生息・生育地、まとまった緑地等、動植物の重要な生息・生育地や自然度の高い区域、土砂の流出があった場合に近傍河川の汚濁のおそれがある区域を回避すること」「レクリエーション等の場から見えない場所を選定すること」という要件を述べている。しかし事業者は、準備書段階で示した地点に対し、この要件からの検証を行っていない。すなわち、評価書において大臣意見を無視しているのにもかかわらず事業認可したのであるから、違法性が問われるべきである。
 
 
 
問題点はまだままだたくさんあるので、この東京地裁の見解に照らし合わせれば大量に疑惑が出現すると思います。
 
 
 

リニア中央新幹線計画においては、このように問題だらけの環境影響評価書を、是正することもなく事業認可しました。評価書の記載事項が誤っていても事業者(JR東海)が「きちんと対応すると言っている」(17日の太田大臣記者会見)という理由があれば事業認可できるならば、何でもかんでもやりたい放題になってしまいます。カネと時間をかけて、真面目にアセスをおこなおうとする事業者は出なくなってしまうことでしょう。そもそも大臣の一存で法律の解釈変更をしていいのでしょうか? 
 
かような理由で、日本の環境行政史上に残る大問題だといえます。
 
この点は国会の場で正してもらわないと、本当に困りますよ。

なぜ山梨県大柳川での流量をアセス対象にしない? 知事意見・大臣意見を無視

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私は静岡市民ですが、地形図を眺めていて、リニア建設による水環境破壊という点で心配になったのが、山梨県富士川町の旧鰍沢町地区を流れる大柳川という川。
 
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この川、上流部は滝の連続する美しい渓谷になっており、図1で示されたとおり、県立公園にも指定された景勝地となっているようです。そのごく浅い直下でトンネル工事が計画されており、掘られればおそらく流量が減少するだろうに、どういうことか調査すらしていないんですよ。
 
ちょっと、ここを通る長大トンネル(約8.5㎞)について見てみましょう。下の地図2で、大柳川の流域におけるトンネルと川との関係について西から東に向かって眺めてみます。
 
図2 大柳川流域における谷とトンネルとの位置関係
国土地理院 電子地図ポータルより複製、加筆
 
図2の、御殿山と記載のあるところの北方で、大柳川の支流(地形図では無名だが雁木沢というらしい)の谷底に接します。谷底の標高は地形図から判断すると900~950m、トンネルの標高は縦断面図(図3)から推定して610m程度です。土被りは300m程度になります。山岳トンネルの工事では、土被りが300mを下回ると渇水が起こりやすくなるとされているので、微妙な深さです。
 
ちなみに山梨県上野原市において、山梨リニア実験線延伸工事で川の枯渇を引き起こした場所では、谷底とトンネルとの厚さ(土被り)は180m程度でした。この180mという数字を覚えておいてください。
 
ここから600mほど東で、大柳川本流をくぐります。谷底の標高は680m程度。トンネルの標高は600m程度。土被りは80m程度になります。谷底とトンネルとの厚さが山岳トンネルとしては非常に薄く、大々的な湧水が予想されます。大規模な湧水が起きれば、川の流量にも大きな影響を与えかねません。このあたりは滝が連続し、温泉もあるようですが、大丈夫なのでしょうか。
 
大柳川の東では、十谷集落を流れる沢の源頭をくぐります。土被りは220m前後と見られます。これも微妙な深さです。(図には無記入)
 
さらに東で、大柳川の支流・清水沢と、その支流・屋敷沢(どちらも地形図では無名)をくぐります。トンネルの標高は530m前後、どちらも谷底とトンネルとの厚さは50~80m程度と見られ、やはり山岳トンネルとしては非常に薄いものです。2つの沢は下流で合流し、不動滝(1:25000地形図で滝記号はあるものの名前は未記入)を経て大柳川に注ぐようです。「富士川町 不動滝」で検索すると、動画や写真が出てきます。流量豊富で豪快な滝のようですが、トンネルが掘られれば流量が減少し、やせ細ってしまうのではないのでしょうか。さらに、準備書の記載を見ると、このあたりの滝は周辺集落の生活用水として利用されているようです。生活への影響は大丈夫でしょうか?
 
屋敷沢を抜け、さらに2㎞ほど北東に進み、別の流域である小柳川の岸でトンネルを抜けて地上に出ます。地上に出るあたりの標高は460mほどです。
 
以上のように、リニアのトンネルは大柳川流域を完全に横断します。その間おおよそ5.3㎞。本流の大柳川はじめ、そのほかにも主な支流を3~4本くぐりぬけます。そして、いずれも非常に土被りが薄い。このことを考えると、河川に流出するはずの水をトンネル内に大量に引き込んでしまう可能性が高いのではないのでしょうか。

しかもこのトンネル、西から東へ下り一辺倒の構造になっています。ということは、大柳川流域でトンネル内に引き込まれた水は、すべて東側坑口の小柳川へと流れ下ってしまいます。万が一川の流量が減少しても、何らかの動力を用いない限り、大柳川流域に戻すことはできません。
 
図3 トンネル縦断面
上は地形図より作成 下は準備書より転載・調整・加筆

 
 
果たして、大柳川の渓谷は守られるのでしょうか?
 
地図を眺めていると、こういう事態が心配されるわけです。
 
それに対して、JR東海はどのような調査・予測・評価・対策をするつもりなのか…と思って山梨県版の環境影響評価書を見たのですが…
 

あれ

どこにもない!?
 

何にも調査してないじゃん!!

冗談でも誇張でもなく、本当に大柳川について調査をしていないんですよ!
 
 
 
わずかに井戸と湧水と温泉の場所を少しずつ挙げただけ。
 
ウソだとお思いでしたら、JR東海のホームページをご覧になってください。http://company.jr-central.co.jp/company/others/prestatement/yamanashi/y_honpen.html
 
第8章の「地下水の水質と水位」「水資源」が該当するはずですが、本当に何にも調査をしていません。何にも調査をしていないのに、「地下水位への影響は小さいと予測する」という一文が結論として示されているだけです。
 
水環境への直接的な影響を調査していないわけですから、「人と自然との触れ合いの場」という項目においても扱われていませんし、植物、生態系の調査もしていません。わずかにトンネル真上で沢の動物調査をおこなったようですが、詳細は不明です。

こんないい加減な環境影響評価準備書が、いままで存在したのでしょうか?
 
「データ不足」というレベルじゃないです。
 
マジでおかしいですよ、コレ。
 
また、同じ富士川町内の土録という集落付近で、小河川(名前分からず)の上流部を100m程度という浅い土被りで通過することになっています。トンネル内に河川水を引き込んだ場合は、北隣の別流域(三枝川?)に流出してしまうことになってしまいます。ここも大柳川同様、何の調査も行われていません。
 
 
 

ところで、ここまでの文章は、昨年11/18に、準備書への疑問というかたちで書いたものです。それから今年4月に評価書が公表され、先日、補正版評価書が国土交通省に提出されました。
 
この間、私の疑問と同様に、山梨県知事意見では大柳川の流量予測をおこなうことと意見が出され、さらに国土交通大臣意見では巨摩山地(大柳川流域)で三次元水収支解析による精度の高い予測を行うよう求められました。
 
したがって本来であれば、このほどの補正版評価書においては大柳川における予測結果が書かれていなければなりません。
 
ところが、補正版評価書でも記載内容がほとんど変わっておらず、大柳川流域におけるトンネル工事による河川流量への予測はなされていないんですよ。
 
というわけで、山梨県知事意見・国土交通大臣意見をともに無視したことになります。
 

大臣様、実行不可能で環境負荷の原因となる環境保全措置は適切なのですか?

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(お詫び)
一昨日、新石垣空港設置許可取り消しを求める裁判の判決文で、裁判所が「大臣の認可行為が違法となるケースとしていくつかの例をあげた」と書きました。しかしあの例は、裁判所の示したものではなく原告側が考えたものでありました。大変、失礼いたしました。記事は削除しました。お詫び申し上げます。
 


さて、本題に移ります。
 
先日も触れましたが、リニアの認可を伝えるニュースの中に、次のような一文がありました。
 
太田国交相はこの日の閣議後会見で、南アルプスを貫く長大トンネル工事や温室効果ガス増大などの環境影響について、「国交相意見で求めた環境への措置について、JR東海がすべて(対策を)行うと言っていることを確認した」と述べ、影響は抑えられるとの認識を示した。

国土交通大臣が、会見の場においてこんなことを述べていたわけですが、評価書に書かれている環境保全措置が、実は実行することができないものであったらどうなるのでしょう?
 
無意味かつ有害な環境保全措置であるのにもかかわらず、その点を見過ごしてもいいのかな? ということです。環境影響評価書静岡県編には、そうした点がいくつも見受けられます。一例をあげて、考えてみたいと思います。
 
 
環境影響評価法第33条
当該免許等の審査に際し、評価書の記載事項及び第二十四条(注 国土交通大臣意見)の書面に基づいて、当該対象事業につき、環境の保全についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査しなければならない。』
 
これを念頭において、以下の文章をお読みください。なお今回、読みやすさを考えて「です・ます調」はやめます。
 
なお、問題にしているのは図に示したあたりになります。静岡市の最北部、南アルプス第3の高峰、標高3142mの悪沢岳の麓になります。
 
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次の「表 8-4-1-44(10) 環境保全措置の内容」は、「静岡県編環境影響評価書 8-4-1動物」において、事業者(JR東海)が行うとしている環境保全措置の一例である。 
 
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現地調査の結果、対象事業実施区域において確認された希少猛禽類のうち、イヌワシとクマタカの2種に対し、その保全のために「工事用道路トンネルを設置」するとしたものである。その効果は、「工事用道路トンネルを設置し地上における工事用車両の運行を低減することで、重要な猛禽類の生息環境への影響を低減できる」というものとしている
 
同じく評価書の資料編より、その工事用道路トンネルを示した図を転載する。図中、灰色で記された2本の太い点線がそれである。
 
 
 
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地形図上で計測すると、西側のもの(アーイ間)は約2200m、東側のもの(アーオ間)は約3000mの長さがある。アーイ間の工事用道路トンネルの先には、ウ地点において作業員宿舎の設置や、リニアの通る本坑へと通ずる長さ3500mの斜坑(非常口:ウーエ間)の掘削が計画されていることに留意していただきたい。
 
どちらもトンネル頭上に狭く崩れかけた未舗装の林道があるが、「工事用道路トンネルを設置することが環境保全措置になる」というのであれば、そこに大型車両を大量に通すと、猛禽類への影響が大きいと判断したのであろう
 
猛禽類の生息場所は保護のために非公開であるが、常識的に考えて、「影響を避けるために工事用道路トンネルを掘って車両を通す」というのなら、猛禽類は、工事用トンネル頭上の林道近傍で確認されているはずである。そうでなければ、環境保全措置とは言えないからである。この地理概念が重要であるので、注意していただきたい。
 
だが、ここで大きな疑問が生じる。工事用道路トンネル自体の建設工事のための車両はどこを通るのか?という点である。
 
西側(ア-イ間)の工事用道路トンネルについて考察してみる。
 
仮にア地点側からのみ掘削を開始すれば、地上(猛禽類推定生息地)を車両が通ることはない。これなら影響はほぼ皆無であり、猛禽類に対する環境保全措置として成り立つ。
 
仮に月100mのペース(かなり速い掘削速度)で掘っていったら、アーイ間を掘り終えるのには2200m÷100m/月で、22か月つまり2年弱かかる。それからウ地点までの道路整備と、伐採作業と整地および作業員宿舎を建設、沈砂池の設置を行うと、また数か月かかる。それからようやく斜坑の掘削にとりかかれるわけだが、3500mを月100mのペースで掘り下げていったら、本坑のエ地点まで35ヵ月つまり約3年かかることになる。
 
つまり、工事用道路トンネルが「猛禽類に対する環境保全措置」として意味をなすためには、「本稿の掘削開始まで5~6年かかる」ことが前提となる
 
ところが、これは実行不可能である。
 
2015年にア地点から掘り始めたとすると、エ地点に達するのは2020年となる。それから地質確認兼排水用の先進坑を掘りはじめ、ある程度掘り進めてから、本坑を掘削することになる。
 
しかしリニアの名古屋開業は2027年を予定し、その前に2年間の試運転等が計画されているので、2025年までに南アルプスのトンネルは完成されていなければならない。県内のトンネル区間は10.7㎞×2本あり、そのうちエ地点を起点とする工区が何㎞になるか不明だが、たった5年で完成できるはずがない
 
したがって、おそらくア地点一方からでの掘削では時間がかかりすぎるとしてイ地点からも掘りはじめ、工期を半分に短縮しようとするのに違いない。同時に、ウ地点からの斜坑掘削も行うつもりでいるのであろう。
 
事実、評価書の表3-2-1を見ると、1年目からA地区(西側の斜坑つまりウ-エ)で掘削工事を進めるとしている。ここから掘り出した発生土は、地上の林道を通って搬出しなければならないはずである
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少々分かりにくいが、上から3段目に「インバート工」という項目がある。これは、土被りの大きい大断面トンネルにおいて、トンネルの断面を円形に近づけて強度を高めることを目的として、トンネル底部を円弧状に掘り下げるものである。逆アーチともいえる。これは本坑の掘削で用いられるものである。表では4年目からインバート設置をおこなうとしていることから、このときまでに斜坑は掘り終えてあり、先進坑もある程度は掘ってあることになる
 
つまり、3年程度の間に、ア-イのトンネル建設と、ウにおける各種工事と、ウ-エのトンネル建設とを終えていなければならないので、3種の工事は同時進行で行っているはずである
 

お気づきであろうか?
 
環境保全措置として「工事用道路トンネルを掘って、その中に工事用車両を通すことで猛禽類への影響を低減できる」としておきながら、実際には工事用道路トンネルの完成前から、その工事用道路トンネル掘削現場と斜坑からの発生土を積んだダンプカーが、大量に林道を通るのである。すなわち、現計画において工事用道路トンネルを設置するという行為は、環境保全措置として全く意味をなさないのである
 
もう一度「表 8-4-1-44(10)」を掲げる。そこには効果の不確実性はないと断言しているが、これは真っ赤なウソなのである。
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環境保全措置としての工事用道路トンネルの問題点は、これだけではない。「表 8-4-1-44(10)」にには「他の環境への影響はない」とも書かれている。
 
だが、これもウソである。当たり前だがトンネルを掘れば発生土が生じ、その運搬や発生土置場の拡大によって新たな環境負荷が生じるからである
 
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昨年、県の環境影響評価準備書の審査会においてJR東海が提出した資料によると、工事用道路トンネルを掘ることにより59万立方メートルの発生土が生じるとしている。県内発生分の16%を占める。県内に示された7地点の発生土置場候補地のうち、一つか二つは、この工事用道路トンネルからの発生土で占められるのに違いない

以上のように、評価書の記載事項から環境保全措置としての「工事用道路トンネルの設置」の妥当性を検証すると、環境保全措置としての意味はなく、そのうえ環境への影響を大きくするものである。
 
環境保全措置としての「工事用道路トンネルの設置」問題がこれだけにとどまらない。
 
少々長くなるが、環境影響評価を行う際のマニュアル(主務省令)を引用する。
第二十九条 事業者は、環境影響がないと判断される場合及び環境影響の程度が極めて小さいと判断される場合以外の場合にあっては、事業者により実行可能な範囲内で選定項目に係る環境影響をできる限り回避し、又は低減すること、必要に応じ損なわれる環境の有する価値を代償すること及び当該環境影響に係る環境要素に関して国又は関係する地方公共団体が実施する環境の保全に関する施策によって示されている基準又は目標の達成に努めることを目的として環境の保全のための措置(以下「環境保全措置」という。)を検討しなければならない。
 事業者は、前項の規定による検討に当たっては、環境影響を回避し、又は低減させる措置を検討し、その結果を踏まえ、必要に応じ、損なわれる環境の有する価値を代償するための措置(以下「代償措置」という。)を検討しなければならない。

第三十条 事業者は、前条第一項の規定による検討を行ったときは、環境保全措置についての複数の案の比較検討、実行可能なより良い技術が取り入れられているかどうかの検討その他の適切な検討を通じて、事業者により実行可能な範囲内で対象鉄道建設等事業に係る環境影響ができる限り回避され、又は低減されているかどうかを検証しなければならない。
 
実行するつもりもなく、意味もなく、さらにそれを行うことで新たな環境負荷を生み出す行為を「環境保全措置」と称しているのであるから、事業者(JR東海)は、この主務省令第29条を第30条に基づいた検証を行っていない(または不十分)な検証しかしていないことになる。
 



ここで法律の条文に改めて目を通してみましょう。
 
環境影響評価法第33条 
 対象事業に係る免許等を行う者は、当該免許等の審査に際し、評価書の記載事項及び第二十四条(注 国土交通大臣意見)の書面に基づいて、当該対象事業につき、環境の保全についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査しなければならない。
 
という規定に忠実に従って、評価書をくまなく審査すれば、環境保全措置としての「工事用道路トンネルの設置」のもつウソ(善意に解釈すれば間違い)に気づくはずです。素人の私が気付くのですから、国土交通省に採用されるような優秀なお方なら、即座に見抜けることでしょう。
 
それにも関わらず事業認可したということは、国土交通大臣は、評価書のウソ(もしくは間違い)には目をつむったことになるのではないでしょうか。
 
さらに太田大臣は「JR東海が環境保全措置を適切に行うと言っている」からOKという見解を示していますが、そもそも無意味どころか環境破壊の要因となるのですから、これを環境保全措置と位置付け安易に実行させること自体が問題ではないでしょうか。それを見過ごしたことも大問題です。
 
平気でこういうことをしてはいけないんじゃないのかな?

 

アセス開始前の事業計画に合わせるためにアセス結果を事業計画に反映できないってどういうこと?

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今年3月になりますが、環境影響評価準備書への県知事意見において、事業計画を見直してほしいという意見が出されました。
 
たとえば静岡県や長野県から、斜坑(JR東海は非常口と呼称)の数を削減すべきだという意見が出されています。このほかにも路線の地下化や発生土置場の見直し要求が出されています。
 
斜坑というのは長大トンネルを掘る際、トンネル途中の地上から本坑へ向かって掘られる作業用の補助トンネルのことです。1本斜坑を設けるたびに切羽(先端で岩を掘っている場所)を2か所増やすことができ、1工区あたりの工期を短縮できることになります。10㎞のトンネルを両側から掘れば、1切羽で掘られる長さは5㎞ですが、中央に斜坑があれば、1切羽あたりの掘削距離は2.5㎞に短縮できるのです。
 
 
このため工事を進める側の都合としてはぜひ設けたいものですが、地上においては、
●工事用車両の台数が短期間に集中する
●工事用車両による影響範囲が広がる
●発生土が増える
●本坑だけでなく斜坑による水枯れが起こりうる
といった環境問題や懸念が生じます。
 
長野県南木曽町や静岡県静岡市においては、どちらにも斜坑を2本掘るという計画が出されました。それを受け、上記のような懸念から、その数を削減すべきという意見が出されたのです。
 
たとえば静岡市の場合、南アルプス山中に2本の斜坑が計画されていますが、長さは3500mと3100m、断面積は68㎡もあります。ちなみに、静岡市街地西郊にある国道1号線静清バイパスの丸子藁科トンネルは、長さ約2㎞で発生土は約20万立方メートルです。現在2本目(上り線用?)を掘ってますが、合わせてもおそらく40万立方メートル。南アルプス山中の斜坑は、作業用のトンネルに過ぎないのに、国道1号線のトンネルよりはるかに規模がデカいのです
 
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静岡市内に出される発生土360万立米のうち、斜坑自体が76万立米と約2割を占めています。発生土による深刻な自然破壊や災害が懸念されている中、その削減は重要な課題であるはずです。
 
また、南アルプス二軒小屋に設けられる斜坑は、大井川を縫うように掘られる計画です。大井川の流量が毎秒2トン減少するという試算結果が環境影響評価書に掲載されましたが、このうちかなりの減少分が、斜坑によってもたらされているはずです。
 
斜坑は、リニアを走らせるという最終目標自体には関係のない存在です。不要かもしれない施設の存在によって大きな環境破壊が懸念されているのですがら、その数を削減すべしという意見が出されるのは当然のことでしょう。
 
ところがこうした要請に対し、JR東海は今年4月に公表した環境影響評価書において、「平成39年度(2027年度)開業を前提としているので困難」という見解を述べました。
 
評価書については、その後環境省による審議を経て6月に環境大臣から「地元自治体の意見を勘案せよ」という意見が出され、7月の国土交通大臣意見でもこれが踏襲されました。ところがJR東海は8月公表の補正評価書においても、4月時点と全く同じ見解を述べ、そのまま10月17日の事業認可となりました。
 
これは補正版評価書(静岡県編)よりコピーしたものです。
 
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青く線を引いた部分には、「平成39年度(2027年度)開業を前提としているので困難」というニュアンスになっています。
 
長さ53㎞の青函トンネルの場合、斜坑は2つありますが、その間は20㎞ほどあります。ゆえに、日本にはこの距離を2方向からのみ掘ったという前例があります(20年かかりましたが)。英仏海峡トンネルやスイスのゴッタルドベーストンネル(58km)も、確か似たような構造だと記憶しています。ですので、斜坑の数は減らせないというのは、基本的には工期の問題であるはずです。
 
これは静岡市だけでなく、長野県でも同様です。
 
長野県南木曽町では、町とJR東海とのやり取りが議事録として公開されています。
 
こちらでもやはり、「斜坑を減らすと工期が延びるため2027年度開業に間に合わなくなってしまう。だから斜坑を減らせない。」という意見になっております。
 
 
 
う~ん、2027年度開業…
 
誰が決めたんだろう?
 
 
 
静岡市や南木曽町が「2027年までにリニアを開業させてくれ」と要望したうえで2027年度の開業が設定され、再びそれを修正してほしいといういうのなら、「その要望には応えられません」とするJR東海の主張には、筋が通っていることになります。
 
 
 
 
ところが、そうではありません。
 
 
「2027年度開業」というのは、アセス手続きの始まる1年以上前の2010年5月10日、中央新幹線小委員会の席上でJR東海が一方的に言い出したことです
 
この日の資料「超電導リニアによる中央新幹線の実現について」という資料に書かれていますが、資金調達や技術力の観点から、2027年度開業が適当であると導き出されたことになっています。言い換えれば環境配慮はおこなわず、周囲の合意も得ていないわけでして、事業者の都合のみで設定されたものです。
 
別に、何か大きな会合での総意として2027年度開業が出されたわけでもないし、国会で決められたわけでもない。007のように、ソビエト中枢部のような恐ろしげな機関(なんだそれ?)から銃を突き付けられて、2027年度絶対開業命令が下ったわけでもない。
 
 
 
 
何か事業計画を立てる場合、資金繰りや技術などの観点から、計画の青写真として完成目標を設定ることは当たり前です。これには問題はありません。
 
ただし大きな土木工事を伴うような事業なら、周囲の環境に大きな影響を及ぼすおそれがあります。事業者側の都合だけで環境をメチャクチャにしてよいはずがありませんし、そんな計画で周囲が納得できるわけもありません。だから、法律で環境影響評価手続きを行うことが定められ、事業計画を環境に配慮したものに改めさせるのです。
 
環境影響評価手続きは、その結果を事業計画に反映させ、環境の保全が可能な事業内容に改めてゆくために行われます。これは環境影響評価法第1条に定められている大原則…というか目的です。
 
第一条 この法律は、土地の形状の変更、工作物の新設等の事業を行う事業者がその事業の実施に当たりあらかじめ環境影響評価を行うことが環境の保全上極めて重要であることにかんがみ、環境影響評価について国等の責務を明らかにするとともに、規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価が適切かつ円滑に行われるための手続その他所要の事項を定め、その手続等によって行われた環境影響評価の結果をその事業に係る環境の保全のための措置その他のその事業の内容に関する決定に反映させるための措置をとること等により、その事業に係る環境の保全について適正な配慮がなされることを確保し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に資することを目的とする
 
はい。読みにくいですけど、線を引いた部分に、そう書かれておりますね。
 
ですので本来であれば、具体的な開業年度や工事計画は、環境影響評価手続きの過程において再検討されるべきものなのです。それがこの制度の目的なのですから。
 
「民間事業であり、技術力と資金調達の面などを踏まえて2027年度開業が妥当なものとしたのだから、それを変えさせるのは間違っている」という声があがるかもしれません。
 
しかし環境への配慮は何もしていなかった青写真を、外部の目を交えて検証してみた結果、環境に悪影響を及ぼすおそれが高い、もしくは周囲の合意が得られそうもない事業計画であると判断されたのなら、それは問題のある事業計画であるのですから、修正せねばならないのは当然でしょう。そしてどうやっても修正が不可能であるのなら、残念だけれども事業の実施をあきらめてもらわねばなりません。
 
例えば2005年に開催されることとなった愛知万博では、事前の環境影響評価の結果、当初の事業計では環境への負荷が大きすぎるという意見が数多く出され、会場予定地や事業規模を2度変更する事態となりました。周囲の声を無視して強引に進めると、諫早湾干拓事業のような取り返しのつかない事態に陥ってしまうかもしれません。
 
評価書に対する環境大臣意見において「技術の発展の歴史を俯瞰すれば、環境の保全を内部化しない技術に未来はない」という異例の表現が用いられたのは、この点を強調したものであるのでしょう。
 
 
環境影響評価手続き開始前に(事業者の都合だけで)決めた完成時期に合わせるために、環境影響評価手続きを反映することができないというのは、論理的に間違っているのではないでしょうか?
 


 
【今回の要旨】
環境影響評価(以下アセス)法第1条によると、アセス制度は、その結果を事業計画や事業内容の決定に反映させ、事業に係る環境の保全について適性な配慮がなされるためにおこなわれるものとされている。つまりアセス法の主旨に則れば、具体的な工事手順、工区、工期、完成時期等については、アセス結果を反映して決定されるべきものである。
 
斜坑の数など事業計画を見直すべきだという県知事意見は、アセス手続きの過程で得られた事業計画に関する情報と地域事情を踏まえたうえで、環境を保全するために必要な対応として出されたものである。そのため事業者(JR東海)は、この意見を環境保全上の観点から勘案し、事業計画に反映させてゆかねばならない。それがアセス制度の目的である。
 
しかるに事業者は、2027年度開業を実現するために斜坑の数を削減することができないとの見解を述べている。「2027年度開業」という計画が環境配慮と社会的合意を経て出されたものであるならば異論はない。
 
しかし2027年度開業という目標は、アセス手続きの開始以前において、環境配慮や社会的合意については何ら考慮せずに設定したものである(アセス開始以前に環境保全について検討をしているのであれば、その内容は計画段階環境配慮書に掲載されているはずである)。
 
つまり、アセス手続き開始前に設定された開業予定年に合わせるため、事業計画にアセス結果を反映することができないとする見解は、回答になっていないのである。
 
 
 

リニア JR東海のホンネは「着工したくない」んじゃないの?

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国交省もJR東海も、
ホントはリニアなんて造りたくないんじゃないのかな?
 
って感じる今日この頃。
 
まあ、冗談というか、皮肉なんですけど。
 
どうも環境影響評価書と、その後の過程が度を越えてメチャクチャで、不自然ささえ覚え、「本当に造る気あるのかな~」なんていうマークが頭に浮かんでしまうのです。
 
 
 
前に指摘しましたが、補正後評価書の静岡編には、「【8-4-2 植物】の記載内容には大きな誤りがあるため全面的に意味が不明である」というとんでもない間違いがあります。
 


《大問題の概要》
 「8-4-2植物 表8-4-2-8、表8-4-2-13、表8-4-2-15」によれば、文献調査及び現地調査により確認された重要な植物は540種であったとしている。表8-4-2-17(1)によれば、このうち29種が現地調査で確認されたとして、予測対象とされている。また、現地で確認されたなかった140種については表8-4-2-17(2)において予測対象とされている。しかし残る371種については、本評価書においてどのように扱われているのか不明である。少なくとも環境影響評価の対象とはされていない。

 特に以下の73種の植物種については、資料編の「表9-1-1-2 高等植物確認種一覧」においては現地で確認されていると記載されているのにも関わらず、本編の「表8-4-2-8 高等植物に係る重要な種確認一覧」においては現地で確認されていないことになっている。これでは「8-4-2 植物」全般の記載内容は大幅に誤っていると言わざるを得ない。

ヒメスギラン、ヒモカズラ、ヤマハナワラビ、クモノスシダ、ウサギシダ、ミヤマウラボシ、シナノナデシコ、レイジンソウ、ホソバトリカブト、ミヤマハンショウヅル、ミヤマカラマツ、シナノオトギリ、オサバグサ、ミヤマハタザオ、ミヤマタネツケバナ、ミヤママンネングサ、トガスグリ、ダイモンジソウ、クロクモソウ、シモツケソウ、モリイチゴ、イワキンバイ、ミネザクラ、イワシモツケ、イワオウギ、ウスバスミレ、ヒメアカバナ、ゴゼンタチバナ、ヤマイワカガミ、イワカガミ、ウメガサソウ、シャクジョウソウ、ギンリョウソウ、コバノイチヤクソウ、ベニバナイチヤクソウ、ジンヨウイチヤクソウ、サラサドウダン、ウスギヨウラク、ウラジロヨウラク、アズマシャクナゲ、ミツバツツジ、サツキ、トウゴクミツバツツジ、リンドウ、ツルアリドオシ、トモエシオガマ、クガイソウ、イワタバコ、キンレイカ、ヤマホタルブクロ、タニギキョウ、タカネコンギク、カニコウモリ、ミネウスユキソウ、マルバダケブキ、カイタカラコウ、アカイシコウゾリナ、ツバメオモト、イワギボウシ、コオニユリ、クルマユリ、クルマバツクバネソウ、タマガワホトトギス、エンレイソウ、シロバナエンレイソウ、ミヤマヌカボ、コイチヨウラン、エゾスズラン、オニノヤガラ、ミヤマウズラ、ミヤマモジズリ、タカネフタバラン、コケイラン
 
こちらは「評価書 資料編 表9-1-1-2」赤く囲ったヒメスギランという植物は、欄に●がついており、現地で確認されたことになっている
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こちらは「評価書 本編の表8-4-2-8」。こちらではヒメスギランの現地確認欄には○がついておらず、現地で確認されていないことになっている
 
イメージ 1
 
これでは、ヒメスギランは現地で確認されたのかされていないのか、意味不明である。また、この環境影響評価書では、表8-4-2-8に●をつけた種だけに対して、詳細な影響予測を行って環境保全措置を講じるという論理を用いている、このため、表8-4-2-8に●のつけられていないヒメスギランについては、何ら影響予測も環境保全措置も講じられていない
 
なお、両表の下部に見えているヤマハナワラビという植物についても、同じである。このような植物種が合わせて73種もある
 
 
詳細はこちらをご覧いただきたい。
http://blogs.yahoo.co.jp/jigiua8eurao4/13168551.html
 



これら73種の植物は、いずれも「国立、国定公園特別地域内指定植物図鑑-関東・中部(山岳)編ー」に掲載されていることを理由として、重要種に選定したという共通点があります。
 
この選定要件は、(国土交通大臣意見を受けて)補正する際に新たに設けたと、評価書の中に明記してあります。つまり、4月に公表された評価書では、この図鑑の掲載種は(長野県編評価書では重要種に選定されていたものの)静岡県編では選定されていませんでした。
 
おそらくエコパーク内での重要種選定基準を統一する必要性や、将来の国立公園拡張計画を見据えて選定要件にすべしといった理由で、環境省、静岡県、静岡市、エコパーク関連組織あたりから指導されたのでしょう。
 
いずれにせよ、重要種に選んでおいた植物について、評価書内の一方のページではで現地確認したとしているものの、他のページでは確認していないとして環境影響評価の対象にすらなっておらず、意味不明なのです。
 

だけども不自然なのです。
 
まず不自然なのは、常識的に考えてこんな凡ミスを連発するか?ということです。リニアのアセスを行ったのは、評価書の最後に書いてありますけど、アジア航測、日本気象協会、パシフックコンサルタンツ、国際航業といった業者です。環境アセスメント業界ではトップクラスの有名企業が勢ぞろいしています。これらの企業が、こんなアホなミスを何十連発もするはずがないし、やったところでメリットもない
 
それから、国交省の姿勢も不自然です。
 
これまで様々な事業において、評価書の評価結果が不適切として事業認可取り消しを求めるような訴訟が起こされてきました。そのような訴訟において取り上げられる評価書の問題点というと、騒音レベルが許容範囲を超えている/いないとか、オオタカなど猛禽類の狩場の消失率についての認識とか、水質予測に用いられた計算式の妥当性など、かなり科学的・数理的な内容が取り上げられることがほとんどです。圏央道の高尾山トンネルとか、あきる野ICとか、諫早湾開門調査とか…。圏央道の高尾山トンネル裁判の際には、環境影響評価書の問題点を指摘するために、大学の教授が何人も見解を陳述したとのことですし。
 
ところが本日取り上げている問題は、環境影響評価の中でも重要な「植物に対する影響予測・評価」が、記載ミス(?)によって全面的に意味不明になっているという、誰の目にも明白な間違いです。
 
評価書(静岡県編)の場合、この植物の項目だけでなく、「大井川の河川流量予測における現況解析流量の妥当性が検証できない」とか、「生態系評価において改変予定地の植生は評価対象にならず、関係ない植生が評価対象になっている」といった、あからさまな間違いが他にも大量にあります。
 
お隣山梨県では、河川流量について調査して結果を評価書に書けと知事意見を出され、そのうえ国土交通大臣からも念を押されたのに、ことごとく無視したという、ほとんど前例のないことまでしています。
 
「評価書の不備を無視した国土交通大臣の事業認可は違法」として取り消し訴訟を起こすためのネタが揃ってしまってるように見えるのですよ。
もっとも適格な原告がいるかどうか、取り消しを命じられるかどうかは別問題)
 
もし国土交通省の担当者が審査の過程でこれらに気付き、それでも強引に事業認可させたいのであれば、将来の”訴訟ネタ”へのけん制というか、保険として、環境影響評価法第33条第2項の「当該免許等に必要な条件を付することができるものとする」という規定を利用し、付帯条件で「評価書の不備は直しておくこと」ぐらいはつけると思います。
 
しかし、大量の問題点については何ら言及することもなく、事業認可となった。これは不自然です。格好の裁判ネタの数々が放置されているという…。
 
 
不自然といえば、JR東海の姿勢も妙です。
 
工事で大きな影響を確実に受ける地域から、市町村レベルで出された、環境保全に関する協定締結の要請などを、ことごとく蹴っているようですが(静岡は除く)、そんな態度を続けることは、事業推進がますます困難になることは誰の目にも明らかです。http://www.nikkei.com/article/DGXLZO76190620W4A820C1L31000/(日経記事)
 
最近では共産党の国会議員も国会の場においてこの点を取り上げ始めているとか。http://www.youtube.com/watch?v=IgIJ1_Hhcu4
 
地元の合意がなければ絶対に工事なんてできないのに、事業者自らわざわざ合意形成の芽をつぶすって、どういうことなのだろう?
 
 
まるで取り消し訴訟の乱発や問題泥沼化を待ち望んでいるかのように見えるんですよ。こんな態度を見るにつけ、どーも手続きだけは進めるけど着工する気はないんじゃないかという疑念が頭の片隅に浮かんできます。
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