リニア計画においては、一般の市民・国民が計画に携われないことになっています。
まあ、規模の大小を問わず、公共事業や国策民営事業、さらにはお役所仕事全般というのはそんな性質なのでしょう。
とはいえ、マジいと思うのですよ。冗談ではなく。
リニア計画と一般市民の関係を見てみると―
「東京-甲府市南部-南アルプス-名古屋-大阪というルートで、超伝導リニアを用いて1時間で結ぶ」という基本計画が1973年に、整備計画が2011年5月に、お役所・JR東海・偉い学者センセイ方・政治家のセンセイ方によって決定しました。このあと2014年に着工するという計画になっています。
この間、市民・国民が計画決定に関わり得た機会というのは、国土交通省中央新幹線小委員会での3回のパブリックコメントだけ。しかも寄せられた意見-賛成意見が減少し、最終的には7割が批判-について何らコメントすることなく一蹴されました。
あとは、せいぜい駅前整備構想で意見を提出するだとか、そんな瑣末なところでお茶を濁すだけに留まっています。環境アセスメントでも意見提出が認められていますが、基本的に環境保全に関わる項目に限定されており、計画そのものへの意見は受け付けていません。
日本の国には間接民主制という、選挙で選ばれた国会議員が国民の代理となり、国会で議論をするという制度がありますが、ことリニア計画については、全く議論対象になっていません。つまり直接的どころか、間接的にも国民の意見が政策決定の場に届いていないことになります。
全く国民の声を聞かずに進められていると言っても過言ではないと思います。
社会や生活環境、自然環境に非常に大きな影響を与えるというのに、全く一般市民が計画に関われないというのは明らかにおかしいと思います。
さて、計画が打ち出されたのは40年前。
そして完成予定は今から30年以上も先の2045年。
計画の決定から完成まで実に72年。
最初の基本計画策定に携わった人々が30歳以上だったとしたら、失礼な言い方になりますが、実際に完成を目の当たりにする可能性は極めて低いはずです。立案者の田中角栄首相をはじめ、既に鬼籍に入られた方も多いかもしれません。最も若かった人が仮に25歳だったとしても、開業時には97歳。
いま現在、計画に携わっている人のことを考えてみても…
例えば国土交通省中央新幹線小委員会に呼ばれ、整備計画にOKを出した「有識者のセンセイ方」は、おしなべて55歳前後。議員のセンセイ方、沿線自治体の人々、国土交通省の官僚、JR東海の重役といった人々の年齢構成も似たようなものなのでしょう。
完成する頃には80~90歳。計画がどういう方向に進んでいっても責任を取っていただくことは不可能です。開通式典に招かれてふんぞり返っているのが関の山…。
いっぽう、完成時にリニアを利用する、あるいは運営する人々の大多数は、まだ選挙権も持っていない今の子供たち。そして生まれてもいない次の世代。つまり声すら挙げられない世代。
どんなに困った事態を引き起こしても、責任は全てこの「声なき声」に振り向けられてしまうわけです。
一番声が大きく、計画を進めている世代には責任を取る必要がなく、一番声が小さく、計画に携われない世代に全ての責任が押し付けられる…。
も~~~のすごく無責任な話に思えます(国の借金や、使用済み核燃料の話に似てますね)。
できるだけ広い範囲から様々な意見を集めることが、少しでもこの無責任状態をよい方向に向かわせる道筋ではないのでしょうか。そういった意味でも、市民・国民の声に耳を傾ける必要があると思います。
特に計画に真正面から向き合っていかなければならない、今の若い世代が、もっと関心を持たねばならないはずです。
とはいっても、だ~れも聞いてないんだろうなあ・・・。