当たり前のことですが、リニア中央新幹線が大阪まで開業する2045年時点では、55歳以下のヒトの全てが平成以降の生まれになります。開業後10年もすれば、昭和生まれのヒトは大部分引退なさっていることになります。このことはどれほど考慮されているのでしょう?
リニア計画が打ち出されたのは40年前の1973年。
そして完成予定は今から30年以上も先の2045年。
計画の決定から完成まで実に72年
そして完成予定は今から30年以上も先の2045年。
計画の決定から完成まで実に72年
よく考えれば、利用客が増えていってもらわなければ困るのは40~50年先。
見方をかえると、40年以上先の人々の生活スタイルや生活環境を、30年・40年前のオジサンたちの価値観に基づき、今のJR東海や国交省やお役所のオジサンたちが決めてしまう…。
見方をかえると、40年以上先の人々の生活スタイルや生活環境を、30年・40年前のオジサンたちの価値観に基づき、今のJR東海や国交省やお役所のオジサンたちが決めてしまう…。
(あ、オバサンもいらっしゃるかもしれませぬが)
これって少々おかしな、あるいは乱暴な話だと思いませんか?
昭和40年当時のオジサン世代-つまり今のおじいさん世代-の考え方を、今から生まれてくる子どもたちに押し付けることは不可能だと思いますし、受け容れてくれないと思います。
「中央新幹線ナントカ同盟会」とか「中央新幹線ナントカ協議会」といった会議が、政府から地方の役場にいたるまであちこちに設けられているようですが、メンバーはほとんど中高年層 悪いけど未来のお客さん、つまり今の若者や子ども達の考え方を深く理解しているとは到底思えないし、予測するなんてもっと難しいと思う(もっとも、計画を批判する人々の年齢構成も似たようなものかも)。
そういえば、リニア中央新幹線の開通を望む人々のブログなんかも、若者が書いたような文脈のものはほとんど見かけません(証明しろと言われても困りますが)。一般の人で関心を寄せているのも、子供の頃にテレビや絵本でリニアモーターカー(宮崎の赤いやつ)を見て、憧れてしまった世代なんじゃないのかな。
おじさん・おじいさん世代
「科学技術を結集してものすごいスピードの乗り物を作り、東京と大阪を1時間で行き来するなんて素晴らしいじゃないか!」
「科学技術を結集してものすごいスピードの乗り物を作り、東京と大阪を1時間で行き来するなんて素晴らしいじゃないか!」
今の若者
「出かけるの面倒だからメールで十分じゃないっスか?」
「出かけるの面倒だからメールで十分じゃないっスか?」
「いつも(ネットを通じて)会ってっから十分っスよ」
これ、冗談でも空想でもないかもしれませんよ。
リニアの途中駅が計画されている長野県飯田市にて、高校生に向けて県議会議員がリニアの夢を熱く語ったところ反応がイマイチだったので、「ひょっとしたらリニアなんていらないと思ってる?」とたずねたところ、大半の生徒が手を挙げたそうです。その議員は「もっと将来に希望を持って」と締めくくったそうな。
ほとんど笑い話ですが、将来を悲観しているわけでも何でもなく、単にフツーの生活をしていくうえでは不必要と感じているんじゃないのかな?
たぶん、沿線のどこでも似たようなものだと思いますよ。早急に10~30代向け限定のアンケートをすべきでは…?
「こんな考え方ではいかん」
「もっと若者に希望を持たせろ」
「若者が内向き思考など嘆かわしい」
とかいう声がどこかから聞こえてきそうですが、いくら叫んだところでその声が30年先まで続くわけがありませんし、その考え方自体が正しいのかどうかも分かりません。
「もっと若者に希望を持たせろ」
「若者が内向き思考など嘆かわしい」
とかいう声がどこかから聞こえてきそうですが、いくら叫んだところでその声が30年先まで続くわけがありませんし、その考え方自体が正しいのかどうかも分かりません。
「まだ社会のことなど分かっていないだけだ。いずれ必要性がわかるはずだ」
という考え方もあると思いますが、これとていつまで通じるかわかりません。
2013年の今は、社会で最も発言力があって社会を引っ張っているのは、当然ながらオジサンたちです。ですから当然のこと、基本的にはオジサンたちの思考・嗜好によって世の中が成り立っています。昭和40~50年代に少年期を過ごされたのですから、当時の空気を受け継いでいるわけです。
でも、15年、20年も経てば、今の若者の発言力が最大になり、リニアが動き出す30年、40年後には、今の子ども達が世の中の中心となります。まもなくファミコン世代が世の中の中心となり、そして日本人の全てが、子供の頃からネットやらデジタル製品に浸って育った世代になる日も、否応なく到来します。
物心ついた頃からスマホをいじり、自室にいながらオンラインゲームで世界のどこかとつながり、ニコニコ動画やYouTubeで遠くの物事を知り、ネットで何でも買い物できる世代が社会の中核を担う頃に、果たして「70年前に考え出された日本でしか実用化されていない超スピードの乗り物」がどれほど意味をなすのか、一度でも顧みられたことがあったのでしょうか?
ちなみにこうした、生まれながらにウェブに浸っている世代をデジタルネイティブと呼ぶとのこと(ネット世代というより実感ありますね)。
あっ、いや、別にこうした世の中が望ましいと言ってるわけじゃないですよ。
ただ、全般的な世の中の流れとして、「移動するのが面倒と感じる若者が増えている」「直接ヒトと会うこと自体が面倒がられる」傾向にあるような気がして、そういう傾向が続けばリニアの需要にも影響してくるんじゃないのかな~なんて思ったのです。
日本人の大半がデジタルネイティブで構成されている30年、40年先の世の中では、スピードアップによる移動時間短縮よりも、ムダな移動をしなくて済む社会が好まれていくんじゃないのかな