南アルプスの中南部に、
二軒小屋
赤石
赤石沢
田代川第二
赤石
赤石沢
田代川第二
という5つの水力発電所があります。いずれも大井川に堰を設けて取水し、発電しています。
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二軒小屋、赤石、赤石沢の3発電所は、いずれも大井川の本・支流に設けられた7つの堰から取水し、大井川本流へと落とし、発電しています。それぞれの発電所のデータは以下の通り。
【二軒小屋発電所】
西俣・東俣から常時1.15㎥/s取水、常時2100kw(最大26000kw)発電。
【赤石沢発電所】
大井川本流・西河内沢・赤石沢上流部・聖沢から常時0.76㎥/s取水した水を赤石沢下流へ落として常時1500kw(最大19000)発電。
【赤石発電所】
赤石沢発電所に落とされた水を赤石ダムにため、常時1.06㎥/s取水して大井川本流に落とし発電。常時発電はせず、最大39500kw発電。
西俣・東俣から常時1.15㎥/s取水、常時2100kw(最大26000kw)発電。
【赤石沢発電所】
大井川本流・西河内沢・赤石沢上流部・聖沢から常時0.76㎥/s取水した水を赤石沢下流へ落として常時1500kw(最大19000)発電。
【赤石発電所】
赤石沢発電所に落とされた水を赤石ダムにため、常時1.06㎥/s取水して大井川本流に落とし発電。常時発電はせず、最大39500kw発電。
いずれも中部電力の発電所で、水を本来の川から地下水路に流し、合わせて常時3600kw、最大84500kw発電しています。このため、川の流量はかなり減ってしまっています(ただし、最終的には大井川本流に戻されています)。
また田代川第二発電所は東京電力所有で、大井川本流から取水し、県境の稜線をくぐって山梨県側の内河内川(早川支流:富士川水系)へ、標高差500mを落として発電しています。認可された常時取水量は1.98立方メートル/秒で、常時8300kwを発電しています(最大5.34㎥/s:21700kw)。
以上のように、南アルプス山中となる大井川源流部でも、かなりの水力発電所関連の施設が造られ、大井川の水を使っています。4か所を合計した※最大出力は10万6200kwありますが、常時発電しているのは11900kwです。
※水力発電所は、貯水槽に水をため、ピーク時に合わせて多く落として出力を増やす。
当然のことながら、これらを造るために環境が破壊され、例えば沢登りの世界では天下の茗渓とうたわれた赤石沢は、取水による流量減少と工事による土砂流出により、下流側半分がただの河原に変化してしまったそうです。東俣、西俣、西河内沢いずれも同じ傾向だとか。
いくらなんでも場所が悪いよなあ…。
以上は予備知識。
JR東海による予測によると、トンネル工事に伴い、大井川本流の流量が約2㎥/s減少、支流の西俣でも約1㎥/s減少するとされています。この水はトンネルに湧き出し、東側の早川方面への流れ出すことになります。そしてもしこの予測が当たってしまった場合、ポンプでトンネルから水をくみ上げて流すとしています。
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流量減少予測 準備書より作成
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準備への意見に対する見解書より複製
以前にも書きましたが、このポンプが消費するエネルギーについて、ちょっと考えてみました。
ポンプを動かすのに必要なエネルギーは、
P=ρ×g×Q×H÷η×(1+α)…①
で示されるそうです。大井川・早川流域界直下のトンネル標高は約980m、2㎥/sの減少が予測される二軒小屋斜坑付近は標高1390mなので、2㎥/sの水を410mくみ上げることとなります。
ここで①の式に
ρ:水の密度 1000㎏/㎥
g:重力加速度 9.8ms・s
Q:くみ上げる水の量 2㎥/s
H:くみ上げる高さ 410m
η:ポンプ効率 0.8と仮定(詳細不明ですがこんなものらしい)
α;余裕率 0.15
ρ:水の密度 1000㎏/㎥
g:重力加速度 9.8ms・s
Q:くみ上げる水の量 2㎥/s
H:くみ上げる高さ 410m
η:ポンプ効率 0.8と仮定(詳細不明ですがこんなものらしい)
α;余裕率 0.15
を代入すると、約11600kwという数字が出てきます。つまり、ポンプで水をくみ上げて流量減少に対応するのであれば、常時11600kwのエネルギーを消費し続けねばなりません(実際には摩擦の影響などもあるので、もっと大きくなる)。
また、二軒小屋斜坑より160m高い西俣斜坑付近でも1㎥/sの減少が予測されています。生態系維持などの対策には、ここまでさらに1㎥/sをくみ上げねばなりません。ここでのエネルギー消費を見積もってみると、①の式に、Q=1㎥/s、H=160mを代入して、約2300kw程度となります。
さらに、西俣斜坑より170m高い西俣上流部でも0.6㎥/s程度の減少が予測されています。ここまでくみ上げるのなら、またまた1200kwのエネルギーが必要。
合わせて15100kw
以上のように、JR東海の主張通りにポンプくみ上げで流量減少に対応するには、常時15100kwのエネルギーを消費し続けねばなりません。これは東海道新幹線を1本走らせるのに必要なエネルギーと同等であり、きわめて無駄な消費といえます。
エネルギーがムダなだけでありません。必要なエネルギーは、当然、電力会社から供給される電力でまかなうはずです。この15100kwという概算値は、前半部分に書いた通り、大井川源流部から取水して発電している11900kwと同じかそれ以上になります。これでは、何のために取水して発電しているのか、意味が分かりません。
JR東海は、水をくみ上げることを「環境保全措置」としていますが、逆に無駄なエネルギー浪費になるうえ、かつての発電所建設が、大規模で無駄な自然破壊となってしまいます。
特に大井川水系と早川水系という関係に着目しますと…
東京電力が、大井川から約2㎥/s取水し、早川水系に500m落として発電しているのが8300kw。
JR東海が、大井川から早川へ2㎥/s流出しないよう、地下410mからくみ上げるのに必要な電力が11600kw。
JR東海が、大井川から早川へ2㎥/s流出しないよう、地下410mからくみ上げるのに必要な電力が11600kw。
おかしくありませんか?
これじゃあ、JR東海がくみ上げるよりも、中部電力・東京電力に取水をやめてもらったほうが明らかに消費エネルギーが少なくてすみます。
もちろん、そんなことをしたら発電所施設が不要となるので、設備(発電所、取水堰、導水トンネル、送電線)の全面的撤去と自然回復を、JR東海が責任をもって進めてもらう必要が出てきますが。
大井川の水のくみ上げ構想は破綻してるんじゃないんかな?