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評価書(静岡県版)にブチ切れた その1 扇沢発生土置き場の詭弁

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バカにしくさっていると感じたのが「評価書 資料編8 発生土置き場の安全性について 8-1 扇沢付近発生土置き場」です。
 
これは標高2000mの稜線上にまでトンネルを掘り、東京ドーム2杯分程度の残土を捨てようという狂気じみた計画。このブログで何回も指摘し、そればかりか静岡市長・静岡県知事ともども「やめろ!」と繰り返した危険この上もない場所。
 
ちなみにGoogleEarthで見るとこんな感じ。
イメージ 2
 
地形図で示すとこんな感じ(Kabochadaisuki作成)
イメージ 3
左側の道路トンネルの長さは2150mとなっていますが2500mの誤りです。

 
 
以下に評価書を複製して貼り付けます。書いたのがJR東海なのか調査を担当したコンサルタント会社なのかどちらか存じませんが(評価書に書いてよ!)、論理的に支離滅裂で意味不明なのです。
 
本当にこの内容で自信があるのなら、この文章をもって地すべり学会や地形学会や地理学会の場で発表しに行ってみてもらいたいものです。
 
イメージ 1
 
イメージ 4
>地質確認を目的として現地踏査やボーリング調査を実施している
⇒だったらその現地踏査やボーリング調査結果を評価書に掲載してください。
 
>扇沢の谷底部は岩盤が露頭しており、
⇒それってどういう意味なんでしょうか 露頭という言葉は、「地層が露出している場所」という意味です。 意味不明です。
 
>ボーリング調査においても岩盤を確認しており、
⇒そりゃまあ、山の中ならどこだってボーリングで穴を掘れば岩盤にたどり着くはずです。その岩盤の種類、地層の走行・傾斜、亀裂の状況、風化の程度を示さなければ、岩盤を確認したことが何の意味を持つのか伝わりません。
 
>現地踏査でも扇沢東斜面を除き特段の問題は確認されておらず
⇒問題が確認されているならマズいのではありませんか?
 
>扇沢の谷底より西側の稜線付近は比較的良好な岩盤が分布するものと推定される
⇒何をしたのかもわからないのにどうしてそういう結論に至るのか、読んでいる側として論理的に意味不明です。
 
>伝付峠から扇沢に至る稜線には溝状凹地が点在しているが、
⇒そういう場所であること自体、ここが非常に不安定であることを意味しています。溝状凹地というのは、重力によって山肌が崩れ始めることによって生じた亀裂であるとされており、そういうものがあることは要注意ってことのはずです。
 
>概ね図8-1-1で認識されている地すべり地形に合致しており
⇒図8-1-1は、防災科学研究所が空中写真を使って推測したもので、その作業で示された地すべりは、かなり大規模なものである可能性が高いものです。その場所に溝状凹地を確認したのであれば、それはヤバさを現地確認したということです。
 
>これらを包括するような大規模な崩壊の兆候が顕在化しているようには認められないこと
⇒何でそういう結論が出てくるのか論理的に意味不明です。前の文章とつながっていません。
 
>および本地域における崩壊の主要因とされる隆起や
⇒隆起が崩壊の主要因といういい方には語弊があります。活発な隆起は、崩れる場=山を形成する作用(内的プロセス(endogenetic)とよばれる)であって、崩す作用(外的プロセス(exogenetic process))とは別の概念です。地形学の教科書で冒頭に書いてあることであり、大学の学部生のレポートでさえ、こんなことを書いたら怒られます。
 
>川の下刻に伴う侵食は非常に長い期間で進行する現象であることから中央新幹線の共用期間中において大規模崩壊を懸念すべき状況にない。
おもいっきり間違っています。侵食は、常にガラガラ崩れているわけではなく、間欠的に崩壊として起こるものです。
2011年9月の紀伊山地、2005年の九州山地(ともに台風による豪雨)とかで大崩壊が頻発したように、規模の大きな侵食なら、一挙に数十~100m程度後方へ崩れることも珍しくはありません。まして本地域は大崩壊の密集地域です。それに、大崩壊を起こす引き金となる「東海地震」というものを想定しなければならないはずです。
 
>従って、発生土置き場の詳細を検討する段階で岩盤の状態を考慮しながら配置などを決めていくことにより安全性の確保は十分可能であると考えられる。
⇒ですから、なぜ安全なのか論理的に意味不明なのですが…
 
イメージ 5

 
>なお、山梨県との境界側の稜線の斜面下方に地すべりが想定されているが、西側に発生土を置くことによりその末端を押さえることになるため、地すべりに対して抑制的に作用するものと考えられる。
⇒その地すべりについて詳細な調査を全くしていないのに、なんでそんなこと言えるのか不明です。
 
>また、扇沢の西側の稜線より西を上端とする地すべりも想定されているが、これに対して計画されている盛土は、地すべりの情報斜面の荷重の増大を招いて地すべりを誘発するような関係にはなく、特段の影響を与えないものと考えられる。
⇒こっちも何も調べていないのに、なんでそんなことが言えるのか、全く分かりません。
 
>いずれにしても、長期的な安全確保の観点に立ち、計画段階において必要な地質調査、慎重な現地確認及び斜面の安定性の検討を行うとともに、関係機関と協議を行う。
⇒結局、現段階では何も分かってないってことじゃないんですか!?
それに関係機関である市や県は、「ここはやめてくれ」と言ったはずですが?
 
事業認可後に詳細な調査を行って、ここの発生土置場が本当にヤバいことが判明した場合、数百万立方メートルの残土の行方が定まらなくなります。すると静岡県版の評価書の内容は全面的に無意味になりますし、山梨や長野の評価書内容も大きな変更につながります。南アルプスにトンネルを掘ることが、残土の取り扱いという面で物理的に不可能になるかもしれませんが、事業認可後では容易に後戻りできなくなってしまいます。建設費や事業計画全般の見通しにも大きな影響を与えることは間違いありません。
 
 
必要な調査は今やらなければならないはずですが??
 
 
それから図8-1-1についてさらなる疑問が二点。

まず、扇沢の南側に大規模な地すべりがあります。JR東海の計画では、扇沢に残土を捨てに行くため、ここに長さ3㎞のトンネルを掘るとのことです(図中黒い太点線)。
 
地すべりをぶち抜くトンネルなど正気なのでしょうか?
標高差500mを一気に駆け上がるトンネルですから(16%勾配)、これ以上深くして勾配をきつくさせることは難しいので(重機・人員輸送の車両が通行できなくなる)、トンネルを深く潜らせて地すべり下方を迂回することは無理であるはずです。静岡でいえば、由比のさった峠のような、大規模対策工事が必要になるかもしれませんが、そうしたら評価書の記載内容など無意味になります。
 
それから、扇沢は山梨県側からも崩されているのが一目瞭然です。しかしその点についても言及はありません。これはどうなってるのでしょう?
 
 
また、ふつう、残土の表面は植物で覆い、積み上げた残土が雨、風、地震、凍結・融解作用で崩れないようにします。ところがここは標高2000mという高地のうえ、稜線上で風当りの強い場所です。大面積の緑化は不可能です。これではいつまでたっても残土は不安定なままです。
 
 
 

扇沢のヤバさにとどめをさすようなものがこちら。
 
イメージ 6
 
評価書の4-2-1-65ページから複製・加筆した図です。

発生土置き場と示された円の中心を、南北に黒い線が貫いていますね。
これ、断層です。井川-大唐松山断層といいます。活断層ではありません。しかし断層のそばは破砕帯といって岩が砕かれているので、常識的に考えて、盛土を行うことは禁物のはずです。岩盤がボロボロだと重さで沈下してしまうからです。この断層について、「安全性について」では全く触れていません。
 


 
以上のように、「発生土置き場の安全性」と言いながら、その中身はデタラメばかりです。地形学を学ぶ大学1年生のレポート水準にも達してません。ところが、JR東海はこんなシロモノを環境影響評価書として正式に作成しました、
 
 
市民をバカにしているとしか思えません。
 
 
 
 
 
 

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