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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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部分的な環境アセスメント逃れ? 山梨県のリニア関連道路工事

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山梨県側の残土運搬用トンネル(?)について気になりました。
 
山梨県では建設発生土が676万㎥発生するそうです。東京ドーム5杯半に相当します。
 
なお「建設発生土が発生」と書くと、言葉が重複してしまいますが、お役所(国交省)が「工事で発生した土は残土ではない!有効な資源だ!」と主張するために、こういう妙な言葉を生み出したようです。
 
面倒なので、この先は残土で通します。
 
このうち240万㎥については、富士川町高下地区で計画している変電所の造成工事に回す計画なのだそうです。それから4.1万㎥については、早川町内の発生土置場に積み上げるのだそうです。
 
残り426万㎥の行き先は未定でしたが、このうち早川町内へ出される約300万㎥のうち約半分について、「早川・芦安連絡道路」の整備に使うという話が急浮上してきました。具体的な量は明記されていないものの、山梨県版の評価書にも、活用先の具体例としてその名があがっています。

「早川・芦安連絡道路の整備計画」というのは、早川町奈良田温泉から北に向かう林道を拡幅し、夜叉神峠付近に、既存の夜叉神峠トンネルとは別にもう1本、4㎞弱の長大トンネルを掘り、奈良田温泉と芦安温泉との間に一般車両の通年通行が可能な道路を造ろうというものです。既存の林道は狭いうえ冬季は閉鎖されるため、奈良田温泉は孤立することが多々ありましたが、これが完成するとそのおそれが緩和されるとのことで、前々から早川町が早期実現を要請していたそうです。
 
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「リニア建設は渡りに船」ってことで山梨県の事業として行われ、全事業費は70~80億円で、そのうち30億円をJR東海が供出することになりそうだということ。それから今年度末の着工を目指すとか。
http://www.sannichi.co.jp/linear/news/2014/02/27/15.html
(山梨日日新聞の記事)
 
また、早川・芦安連絡トンネルを掘り終えた後は、リニアのトンネルから生じた残土を新設トンネルを使って運搬し、芦倉温泉付近の谷を埋め立て、大きな駐車場を建設するという計画もあるようです。芦倉温泉は、南アルプス北部の登山拠点となっており、シーズン中は登山客のマイカーで大混乱するため、その対策という目的なのだそうです。
(これも山梨日日新聞2/16)
 
というわけで、この二つの工事で300万立方メートルの残土を使い切るのだそうです。
 
これって、なんだか妙な話じゃないでしょうか?
 
 
私が指摘したいのは、この道路整備&駐車場建設計画に反対するとか、そういうことではありません。そもそも静岡の人間ですから、そんなことに首を突っ込むつもりは毛頭ございません。
 
今年度末をめどに着工するってことは、事前のアセスはやらないってことです。

結構、大規模な工事なんですが、一切、事前のアセスが行われないので、それは手続きとしておかしくないか?
 
4月に公表された評価書では、この早川・芦安連絡道路整備予定地については、対象事業実施区域に含まれておらず、なんらアセスは行われていません。
 
道路整備&駐車場建設計画については、一応、山梨県が事業主体となっています。
 
山梨県の単独事業としてみた場合、事業規模は山梨県条例でアセスが必要となる基準(林道の拡幅の場合は延長8㎞以上)以下であり、アセスは不要な事業という見方ができます。
 
ですが、事業費の約4割をJR東海が出し、しかもリニア中央新幹線建設事業から生じた残土を大量に処分・運搬するために造られるという性格も持ち合わせています。ですので見方によっては、リニアの建設工事の一環ともとれます。しかも、これを造らなければ残土を物理的に処分することができず、本体工事を進められません。リニア建設に不可欠な事業の一部に対し、山梨県が40~50億円を払うという見方もできます
 
既存の林道を拡幅するためにリニアのトンネルから出た残土を使い、また、新夜叉神トンネルを掘り終えた後は、残土を新設トンネルを使って運搬するわけですから、リニアの本体工区から、残土を満載した大型ダンプカーが大挙、奈良田温泉を通ってその北へ向かうこととなります。当然、現状よりは車両の通行台数が増えます。
 
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工事用車両の通行に伴う騒音や振動は、環境影響評価の主要な評価項目です。たとえば評価書でも、この早川町内のトンネル坑口から同町内大原野地区(地図下端)に計画されている発生土置場までの間の道路において、現状の騒音状況を調べ、車両の通行台数と工事期間中の騒音値を予測しています。その結果、1日465台の車両が通行するものの、規制値と同じ70㏈になるから問題ないと結論付けています(規制値と同じなら問題大有りですが)。
 
ところが「早川・芦安連絡道路の整備計画」に関係する場所での騒音は一切予測がなされていません。大原野地区では4.2万立米の残土処分と、そのほか本体工事のための車両が1日465台通行する予測になっていました。しかし奈良田温泉方面には、その80倍の残土が運ばれる計画です。どれだけの車両が通行するというのでしょう?
 
同量の残土を運搬するために、長野県大鹿村では1日1700台以上の車両が通行するという予測になっていましたが…。

また、道路を拡幅すれば、その周辺に分布している動植物は直接的な影響を受けます。林道沿いとはいえ、車両の通行は制限され、また山深い場所ですから、もしかするとレッドリストに掲載されているような希少種が分布しているかもしれません。猛禽類が近傍に営巣していたら、後々えらいことになります。ところが、動植物についても何も調査していません。ですので、何が分布しているのかも分からないまま、着工してしまいます。
 
それから早川の渓谷沿いで、残土を用いて道路拡幅を行います。ですので、川に濁りが生じたり汚水が流されるかもしれません。ですので影響を予測して環境保全措置を講ずる必要もあるでしょう。
 
静岡県の場合、道路拡幅までは行わないものの、大量の大型車両の通行する計画の大井川沿いの林道で、一応は動植物の調査を行っているので、環境への影響を考慮するのであれば、同様の手続きを踏むべきでしょう。
 
 

繰り返しますが、これがJR東海の事業なら、様々な項目について調査・予測・評価が必要となります。ところが建設費の出所が変わったがために、アセスは不要となっています。
 
なんだか妙じゃありませんか?
 
 
同じリニアのトンネル坑口から出た残土を積んで…、
JR東海の計画した発生土置場へ向かうダンプカー通行はアセスの対象。
山梨県が計画した道路拡幅現場へ向かう、数十倍のダンプカー通行はアセス対象
 
同じリニアのトンネルから掘り出した残土を運搬するダンプカーでも、行き先が異なるだけで扱いがこんなに異なるのです。
 
環境影響評価は環境への影響を予測・評価して環境保全策を考案するために行われるものですが、今回指摘した場所については、それを行う/行わないという判断は、環境への影響の大小ではなく、建設費の出所によって決まったわけです。
 
意地の悪い見方をすると、本来ならリニア建設工事の一環としてアセスを行うべきものを、分割して山梨県による事業に位置付け、アセスを不要としたのかもしれません。

 
工事の計画されている一体は、いちおうはユネスコ・エコパークに登録されている場所であり、駐車場建設もその利活用に関連しているのですが、このような進め方は、エコパークの概念とは相いれないように思われます。
 

 
静岡県(南アルプス南部・大井川源流部)における評価書の疑問点
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