ふっふっふっ…
前略 JR東海さま
御社の作成されました補正版・環境影響評価書の静岡県版に、信じられないような間違いを見つけましたぞ!!
冗談ではなく、植物に関する項目まるまる間違いという、とんでもない間違いなのであります。
国土交通省の審査担当者の方には、このミスを見過ごすことなどございませんよう、くれぐれもご注意願います。
間違いは、「8-4-3植物」というところでございます。
●間違いの概要
8-4-2植物の表8-4-2-8、表8-4-2-13、表8-4-2-15によれば、文献調査及び現地調査により確認された重要な植物は540種であったとしている。表8-4-2-17(1)によれば、このうち29種が現地調査で確認されたとして、予測対象とされている。また、現地で確認されたなかった140種については表8-4-2-17(2)において予測対象とされている。しかし残る371種については、本評価書においてどのように扱われているのか不明である。
特に73種の植物種については、資料編の「表9-1-1-2 高等植物確認種一覧」において、現地で確認されていると明記されているのにも関わらず、本編の「表8-4-2-8 高等植物に係る重要な種確認一覧」においては、現地で確認されていないことになっており、そのため何ら予測・評価がなされておらず、環境保全措置についても検討されていない。
8-4-2植物の表8-4-2-8、表8-4-2-13、表8-4-2-15によれば、文献調査及び現地調査により確認された重要な植物は540種であったとしている。表8-4-2-17(1)によれば、このうち29種が現地調査で確認されたとして、予測対象とされている。また、現地で確認されたなかった140種については表8-4-2-17(2)において予測対象とされている。しかし残る371種については、本評価書においてどのように扱われているのか不明である。
特に73種の植物種については、資料編の「表9-1-1-2 高等植物確認種一覧」において、現地で確認されていると明記されているのにも関わらず、本編の「表8-4-2-8 高等植物に係る重要な種確認一覧」においては、現地で確認されていないことになっており、そのため何ら予測・評価がなされておらず、環境保全措置についても検討されていない。
●説明
(話がややこしいので、できればこちらのJR東海のホームページから、「評価書本編8-4-3植物」,
「資料編9 植物」という部分をダウンロードし、見比べながら読んでくださるとありがたいです。)
静岡県版の補正版評価書(以下、評価書と記述)の記載によりますと、静岡県内の文献調査と現地調査により、工事を計画している範囲に生育しているであろう「重要な植物」は、540種だそうです。「重要な植物」というのは、いろいろな選定基準に照らし合わせてみて、保全上、重要であると考えられるため、対策(環境保全措置)の検討が必要な種類という意味です。
コピーが面倒なのでいちいち表を複製しませんが、その内訳は、高等植物(種子植物とシダ植物)が534種(評価書の表8-4-2-8)、蘚苔類(コケの類)が3種(評価書の表8-4-2-13)、キノコ類が3種(表8-4-2-15)となっています。
それでですね、評価書の「表8-4-2-8 高等植物に係る重要な種確認一覧」ではこの540種のうち29種は現地調査で確認されたので、予測対象種に選定しています。つまり工事や構造物の出現によってどういう影響を及ぼし、どういう対策をとるべきかを検討しているんです。この29種については、評価書において確認個体数や生育条件等を説明し、やや詳しく扱っています。
また、現地で見つからなかった残り411種のうち140種については、「現地調査で確認できなかったが、文献調査において対象事業実施区域及びその周囲に生育する可能性が高いと考えられる」として、とりあえず予測対象種に選定しています(評価書 表8-4-2-17(2))。ただ、評価書内での扱いは雑で、十把一絡げに「影響は小さい」と結論付けられています。
じゃあ、残る371種はどうなっているの?
この371種を環境影響評価の対象としなかった理由については、評価書では何も語っていません。
これだけでも重大な記載ミスです。
ところが問題はこれだけにとどまりません。
先ほど述べた「表8-4-2-8 高等植物に係る重要な種確認一覧」というものについて、一部分をここに掲げてみます。
青く囲ったところに、ヒメスギランという名前がありますね。これは原始的なシダの一種で、長いモールのような姿をした奇妙な植物です。まあ、どんな姿をしているかは、この際どうでもいいいです。で、表の「確認状況」の欄を見ると、「現地」のところに〇はついておらず、現地調査では確認されていなかったことになります。
じゃあ、「現地で確認されていないけれども予測対象とした140種」の中に含まれているか?と思い、予測対象種の一覧表8-4-2-17(2)を確認してみますと、ここにもヒメスギランの名はありません。
つまり、ヒメスギランは現地調査では見つからず、話の展開上は文献調査でも生育している可能性は低いと判断され、予測対象種に選定されなかったと解釈できます。
ここからが大問題。
評価書には、本編に書ききれなかったデータが収められている資料編というものがあります。その資料編には、現地調査で実際に確認された植物のリストが掲載されています。
で、そこを確認してみると…
はっきりとヒメスギランの名が掲載されているじゃありませんか!!
どういうことなのでしょうか?
資料編で現地確認されたとするヒメスギランが、別の表では現地で確認されていないことになっている・・・。
資料編の「表9-1-1-2 高等植物確認種」には、確認地域と時期ごとに●がつけてあることから、こちらのほうが信頼性は高いといえます。ということで、重要種であるヒメスギランは現地調査で実際に確認されているものの、何らかの事情で「表8-4-2-8 高等植物に係る重要な種確認一覧」からは漏れたと推測されます。
このような意味不明の記載をされている植物種はヒメスギランにとどまりません。ヒメスギランの他にも、
ヒモカズラ、ヤマハナワラビ、クモノスシダ、ウサギシダ、ミヤマウラボシ、シナノナデシコ、レイジンソウ、ホソバトリカブト、ミヤマハンショウヅル、ミヤマカラマツ、シナノオトギリ、オサバグサ、ミヤマハタザオ、ミヤマタネツケバナ、ミヤママンネングサ、トガスグリ、ダイモンジソウ、クロクモソウ、シモツケソウ、モリイチゴ、イワキンバイ、ミネザクラ、イワシモツケ、イワオウギ、ウスバスミレ、ヒメアカバナ、ゴゼンタチバナ、ヤマイワカガミ、イワカガミ、ウメガサソウ、シャクジョウソウ、ギンリョウソウ、コバノイチヤクソウ、ベニバナイチヤクソウ、ジンヨウイチヤクソウ、サラサドウダン、ウスギヨウラク、ウラジロヨウラク、アズマシャクナゲ、ミツバツツジ、サツキ、トウゴクミツバツツジ、リンドウ、ツルアリドオシ、トモエシオガマ、クガイソウ、イワタバコ、キンレイカ、ヤマホタルブクロ、タニギキョウ、タカネコンギク、カニコウモリ、ミネウスユキソウ、マルバダケブキ、カイタカラコウ、アカイシコウゾリナ、ツバメオモト、イワギボウシ、コオニユリ、クルマユリ、クルマバツクバネソウ、タマガワホトトギス、エンレイソウ、シロバナエンレイソウ、ミヤマヌカボ、コイチヨウラン、エゾスズラン、オニノヤガラ、ミヤマウズラ、ミヤマモジズリ、タカネフタバラン、コケイラン
と、なんと合計73種にもおよびます。ヒモカズラとヤマハナワラビについては、上に掲げた表のコピーでも間違いが確認できますので、よくご覧になってください。
「表9-1-1-2 高等植物確認種」によれば、静岡県内の現地調査で確認された高等植物は759種で、そのうち現地で確認された重要な高等植物種は本来は102種であるのに、本編の「表8-4-2-8 高等植物に係る重要な種確認一覧」ではなぜか29種しか確認していないという意味不明な記述になっているんです。
別の見方をすると、「表8-4-2-8 高等植物に係る重要な種確認一覧」では、重要な種は540種生育している可能性があるとし、そのうち29種だけが現地確認したとしていましたが、残る73種についてはウソをついて確認されていなかったことにしちゃっているともいえます。
73÷540≒13.5というわけで、約14%の重要な植物種が記載漏れ?という言い方もできます。
なお、これらの種はいずれも『国立公園特別地域内指定植物図鑑掲載種』という条件で重要種に選定されています。この選定条件は、4月に公表された一度目の評価書では採用されておりませんでした。したがって、環境省か国土交通省、あるいは静岡県庁か静岡市から「これを重要種の選定要件にすべき」と指摘され、急きょ変更したものの、全体の補正が間に合わなかったといったところでしょう。
いずれにせよ、先ほども述べたように、高等植物の環境影響評価は「表8-4-2-8 高等植物に係る重要な種確認一覧」に基づいています。その表が全面的に信頼できないということは、静岡県版補正評価書の植物に係る記載内容は全面的にデタラメということになります。
こういうことを書くと、「そんなことリニアには関係ないよ」と思われる方がおられるかもしれません。しかし、この植物リストの間違いは、影響が小さい/大きいとか、そういう性質の問題ではなく、「事業認可に必要な評価書という書類の記載内容が大幅に誤っている」という大問題なのです。
これでも評価書の記載内容は妥当だとして事業認可をするのなら、国土交通省は許認可審査の役割を放棄したこととなり、あからさまな環境影響評価法違反になってしまいます。