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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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「外野の人間は黙っていろ」は正論なのかな?

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ホリエモン氏の話がネット上に掲載されておりました。
 
 
 そもそもリニア中央新幹線計画が問題になること自体の意味がわからない。政府が株式を保有していない一民間企業が、自己資金でインフラをつくることのどこに問題があるのか。

 事業主体となるJR東海は旧国鉄の優良資産を引き継いだ会社だ。政府は上場後、株式を全部売却していて、その売却益で国民に利益は還元されていると考えるべきで、公共的色彩が強い企業とはいえ、民間企業であることは間違いない。

 まず環境問題についてだが、きちんと環境アセスメントもやっているし、確かに世界初の大深度地下長距離トンネルという技術的チャレンジがあるものの、それはチャレンジしてみないとわからないことだ。それに文句を付けるのは筋違いと言えよう。

 もっと筋違いな批判は採算が取れないのではないかという指摘だ。一民間企業の事業が赤字になるかもしれないと、外野が文句を付ける権利はどこにもないだろう。そんなことをしたらベンチャー企業の大半は事業をスタートさせることすら難しくなる。

 そもそもリニア中央新幹線は、JR東海のドル箱である東海道新幹線の高い収益力があるからこそ実現できるものだ。そしてそのドル箱である東海道新幹線は致命的な欠陥を抱えている。それは東海地震や富士山の潜在的な噴火リスクに対応できていないということだ。もしそのような事態になればバックアップは航空路しかない、もし富士山が噴火すればそれすら怪しくなる。そんな事態になっても、リニア中央新幹線があればバックアップが可能である。

 首都圏と中京圏が40分台で結ばれるのはもうひとつ意義がある。それはこの二つの都市圏が実質的に合体することだ。これは世界的に見ても初めてのことであり、その社会的実験にはチャレンジしてみる価値はあるだろう。もしかしたら1+1が2になる以上の価値が生まれるかもしれない。

 個人的にはそれ以上に地面を500キロ以上のスピードで走る近未来の交通手段を見たいという思いもある。それに水を差そうとしている人たちは新しい技術には何でも反対してしまうような人たちなのだろう。

 一説によればイノベーションを必要とする人、積極的に関わろうとする人は全体の2割程度らしい。それ以外は現状維持を望むのだそうだ。しかし社会は継続的なイノベーションによって成り立っている。現状維持ほど難しいものはなく、誰かが新しいチャレンジをしているからこそ成り立っている。それを8割の人が筋違いに邪魔をする事態は避けなければならない。

 これまでは公的セクターがこのような巨大インフラのイノベーションを担う必要があったが、民間の資金調達インフラが整うことによって、公的セクターである必要はなくなって、このような水を差す人たちは筋違いの指摘をするようになってしまった。なぜこんなことに気づけないのだろう。無駄な邪魔をするようなことだけはやめてもらいたいと切に願う。
 
もしかすると、政財界におられる方の中には、こういうお考えの方が多いのかもしれません。
 
ところで一読して、どっかで見覚えがあるなあ…と思っていたら、先月の産経新聞の記事「朝日、毎日はリニアもお嫌いか」というものにそっくりなのでした。産経新聞の場合、『夢の超特急リニアが現実のものになるという国家プロジェクトなんだから皆が皆喜ばねばならないのに、なんで朝日・毎日新聞は批判しているのか』っていう記事でありました。
 
国家プロジェクトに対して皆が皆喜ぶべきだ!なんて、産経新聞の大嫌いな、某人民共和国の政府系新聞そっくりなのですが。
 
ここでいう「朝日・毎日新聞」を「外野の人間」に置き換えると、ホリエモン氏の話とほぼ同じになります。もしかしたらホリエモン氏は、週刊朝日の記者からインタビューを求められて、面倒だったから産経の記事を適当にいじっただけなんじゃないのかな?

産経新聞にしろホリエモンにしろ、共通しているのは「外野の人間は黙っていろ」ということです。私はこれに、強い違和感を抱きます。何で言論の自由が認められている国において、某人民共和国のスローガンみたいなことを言い出すんだろう?
 
どうも、「JR東海は純然たる民間企業であり、リニア計画は民間事業なのだから株主以外は口出しするな」というニュアンスのようですが、果たしてそういうものなのでしょうか。
 
これが、周囲に大きな影響を及ぼさない事業だったら、別に誰も文句を言わないでしょう。新幹線の座席を変えようが、新たな車両を導入しようが、駅構内で焼きたてパンを売ろうが、ホテル事業に参入しようが、どうぞご自由になさってくださって構いません。
 
リニア計画っていうのは、そういうわけにはいかないんじゃないのかな?
 
「時速500キロの夢」を実現させるということは、巨大な構造物が出現するということと同義であり、それがために、直接的・間接的に影響を受ける人が何万、何十万にも及ぶわけです。
 
リニア計画では、品川から名古屋までの286㎞において、軌道が出現します。地上区間や車両基地等は当然、立ち退きを要求して土地を購入せねばならないし、8割がトンネルなので、東京ドーム60杯近い膨大な残土が掘り出されます。この残土が運ばれてゆく先で、大きな環境破壊を起こしかねません。トンネルを掘ったら地下水を引き込んで川を涸らしてしまうかもしれません。それに最低でも13年間は、工事に伴う騒音やダンプ公害が生じてしまいます。

住み慣れた土地を追われる人
工事によって生活環境が一挙に悪化する人
存亡の危機に立たされる集落
メチャクチャにされかれない自然環境
60万人分の水利権が消滅するかもしれない川
残土で大災害を招きかねない山岳地域

それに、自分たちの暮らす地域の将来は、自分たちの手で決めたいのに、全く生活に関わりのないJR東海&リニア計画がメチャクチャにしそうで腹立たしい!という意識を抱く人も多いことでしょう。

こういったことが現実問題として浮上してきているわけです。こうした様々な問題に危機感を抱き、計画の是正を求める人々に対して「株主でもないなら黙っていろ」というのは暴論以外の何物でもないでしょう。
 
もちろんこういった問題は、リニア計画に限らず、規模の違いはあるとはいえ、これまでも繰り返されてきました。
 
今月は東海道新幹線開業50周年です。
 
昭和39年の東海道新幹線の開業後、沿線でたいへんな騒音・振動問題が生じました。財政難の国鉄が、建設費をおさえるために、用地取得を最小限にとどめたことが要因だとみられます。名古屋駅東側では民家の軒先をかすめるようにして高架線が築かれ、列車が通るたびに震度3程度の揺れに見舞われる区域が広がっていたということです。このほかにもあちこちで同様の訴えが起こり、浜松市など授業ができなくなったとして移転を余儀なくされた小学校も数校あったようです。名古屋での騒音・振動問題は原告が数千人におよぶ大きな訴訟となり、「新幹線公害」という言葉まで生まれました。
 
50年前の「夢の超特急」実現において、大きな環境破壊と沿線の住民軽視が起きていたことは、まぎれもない事実です。高度成長期において、社会全体でその程度ならば許容範囲と認める時代背景があったのでしょう。とはいえ、現実に発生している問題に目をつむるわけにもいかない。
 
だからこそ反省がなされて、様々な環境対策技術や手続き規制が導入されるようになり、環境保全に対する意識が高まってきたのです。
 
昭和50年には新幹線騒音の基準値が定められ、また昭和54年には、整備5新幹線の建設に際しては環境影響評価を行うよう、運輸大臣から通達が出されました。事業を実施する前に、環境への影響を予測して対策を考えさせようと試みたわけです。
 
このときは住民等の関与はほとんどできない内容でしたが、平成9年になり、ようやく一般の人間(公衆等)による関与が、必要な手続きとして法的に認められるようになりました。「外野からの声」に耳を傾けて計画内容を是正せよと、法律で義務付けられたのです。
 
ところが、リニア計画の環境影響評価において事業者であるJR東海は、住民の声には全く耳を傾けず、市町村との協議にも応じず、知事意見までも無視するということを続けています。こんなことを繰り返してきたので、環境大臣(法律上は国土交通大臣)からは「住民との協議機会をつくれ」「自治体の意見を勘案せよ」という意見まで出されてしまいました。こんな意見を出された事業は、おそらく前代未聞かと思います。
 
「法律に基づいて外野の意見を聞け」と、政府から言われてしまったのですよ。もっとも、環境大臣意見こそ「外野の声」の最たるものとの御認識かもしれませんが。
「外野の人間は黙っていろ」という主張は、過去の大きな公害への反省と、環境問題回避のために長年かけて築かれてきた、住民関与手続きの意味を、何らご存じないからこそ言えるのではないかとも思います。
 
 
 
 
この文章を読むと、もしかすると、「環境面のことなら口出ししてもよいが経営面には口出しするな」という主張なのかもしれません。
 
だけど、リニア計画においてひどい環境破壊が予想され、それにも関わらず環境影響評価が適切に行われていない理由は、ひとえに「リニアだから」というところに帰着すると思います。
 
「時速500キロで走るから路線はまっすぐにして地下に埋めなければならない」
これがリニアの宿命です。それゆえ、
●ルート変更ができないから周囲の声に配慮できない
●膨大な残土を生み出し、運搬過程や処分先で大きな環境破壊を引き起こす
●山奥に膨大な残土が出されるので運び出せず、山中に捨てるしかない
●河川の配置と関係なくトンネルを掘るから川の水を大量に抜いてしまう
「建設単価がとても高い」

これもリニアの宿命です。それゆえ
●突貫工事となり環境負荷が大きくなる
●環境に配慮した高額な工法をとることができない
●工期を伸ばせないから周囲の声に配慮できない
●斜坑や立坑を多くすることで残土や水枯れによる環境負荷を大きくしている
●環境アセス費用をケチっている
 
という問題が必然的に付随します。環境問題の根本にかかわる事項ですが、これらを修正して環境に適した事業に改めるとなると、おそらく超電導リニア方式のままでは対処不可能です。だからこそ、それでも諸問題に目をつむるためにアセスをデタラメに進めたのでしょう。
 
このように考えると、環境問題を解決するためだは、事業目的そのものの妥当性にまでさかのぼって考える必要があるんじゃないのかなと思うのです。
 
すると、環境問題を考えるためには、外野の人間が事業計画の妥当性にまで言及するのも、正当な行為だといえるのではないでしょうか。
 
 

なお、静岡県部分に対する私からの提言を別ページにまとめておきます。 
 
クリックしてください。
 
 
 
 
それから、環境影響評価とは直接関係がありませんが、やはり自然環境に関係するという点で、次のようなことも気になりましたので、新たに付け加えておきます。
 
 
  
なお、評価書の実物を見ながらでないと分かりにくい構図になっておりますが、どうぞご了承ください。そのうち、詳細な説明をしようと思ってますが…。
評価書の実物についてはこちらのJR東海のページからダウンロードなさってください。
 
別に、評価書がものすごくヘタクソだからって、あるいは東海地震発生時の検証がなされていないからといって、リニア計画に反対するというわけではありません。ヘタクソな評価書で事業着手するとマズい事態になってしまうし、東海地震で東海道新幹線と同時被災するようなことになったら大変だから、きちんと懸念は払しょくしてもらわないと困る!!ってことを、強調いたします。

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