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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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大地震発生時には南アルプス地下に長時間滞在していただけます?

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師走というわけで、いろいろと立て込んでおりまして、久しぶりの更新であります。
 
リニア中央新幹線は、本当に災害リスクそのものじゃないか?と感じるざるを得ないことを、またも発見…。
 
 
南アルプスの自然環境と大井川の水を守ろうと、静岡県庁に中央新幹線環境保全連絡会議というものが設置されました。その議事録や資料を読み返していて、「?」というものを発見いたしました(まあ、そんなものばっかりなんだけど)。
 


 
「東海地震など大災害に備えて東京―大阪間を二重系統化する!」
 
というのが、リニア計画の一大建設理由に挙げられています。
 
イメージ 5
平成23年5月、国土交通省中央新幹線小委員会が国土交通大臣に提出した答申です。リニア計画推進に、国がお墨付きを与えた第一号の文書になります。
 
マスコミ等も、この見解をそのまま流し続けています。
 
ところが南アルプスは東海地震を含む南海トラフ沿いの大地震の想定震源域北縁にあたり、山崩れやら地殻変動といったリスクが避けられないというのは、このブログで何度も繰り返してきたとおりです。
(別ページにまとめたもの)
 
そもそも長さ25㎞もの長大トンネルなので、列車が緊急停止する事態が考えられます。そういう事態を想定したのか、JR東海は、環境影響評価準備書以降、工事用の斜坑のことを非常口と呼ぶようになりました。
 
(”斜坑”と称すると、工事に不可欠な事業者本位の都合で地元に押し付けるというイメージがあるので、それを避けようとしたのかもしれない)
 
ところが、非常口というものも山奥に設けられます。
 
イメージ 4
赤の太い点線がリニアの本坑、ピンクの点線が「非常口」になります。
(国土地理院地形図閲覧サービス「うぉっちず」より複製・加筆)
 
 
このうち静岡県内における「非常口」は、大井川の源流域に2つ計画されています。下の図で太い波線で描かれているものです。
 
静岡県部分を拡大したものです(環境影響評価書より)
イメージ 1
 
 
 
ところがこれ、どちらもトンデモない山奥なのですよ。
 
出口の標高は、南側のものが1350m、北側のものは1550mにもなります。斜坑付近にある水力発電施設での観測によると、冬場は氷点下15度ぐらいにまでは下がるとのこと。
リニア沿線でいうと、愛知県内の最高峰茶臼山(1415m)よりも高く、丹沢山地の最高峰とあまり変わらない標高になります。関東周辺の有名な観光地でいえば、草津温泉、奥日光の戦場ヶ原、北アルプスの上高地ぐらいの標高です。
 
しかも、ここに通じる道をたどって市街地にまで向かうと、優に80㎞はあります。そのうえ、南アルプス山中の約40㎞については、大地震が起きたら確実に道が消滅します。それに、この斜坑に最も近い井川集落は、大地震発生時には一週間程度孤立するおそれがあるとされています。この斜坑は、その井川集落よりさらに30㎞も離れています。ということは、救助の手が及ぶのは、停止から相当に先になってしまいます。
 
リニアの乗客は東京-名古屋-大阪を行き来するわけですから、当然、普段着のはずです。普段着のビジネスマンが1000人も突然冬山に放り出される…?
 
(真冬の上高地に、大手町のビル街を歩く格好で出かける人がいるでしょうか?)
 
こりゃ、大量冬山遭難です。
 
こんなところに脱出してどうするんだ?
 
と、少し事情を知っている方なら疑問に感ずることでしょう。そんな素朴な疑問が、冒頭の中央新幹線環境保全連絡会議で出され、JR東海が見解を示しました。マスコミ報道などまったくなされていないので、おそらくご存知の方はほとんどいないことでしょう。
 
それがこちら。
イメージ 2
(11月18日 第3回会議の資料2よりコピー)
http://www.pref.shizuoka.jp/kankyou/ka-050/assess/rinia/kaigi.html
 
 
うん?
 
先進坑や非常口を活用し、長時間滞在して頂ける安全な空間を設置する予定です・・・
 
 
 
南アルプスの地下にて、乗客1000人が長時間カンヅメ状態になる事態を想定しているのでしょうか? いろいろと疑問が浮かび上がります。
 
率直な疑問として、乗務員は2~3人しかいない状況下、1000人(2編成止まったら2000人)もの乗客をどのように誘導するのでしょうか。パニックを起こさないのでしょうか? 外部との連絡が取れるか分からない、食糧がどの程度備蓄されるのか不明…、非常電源はどの程度持つのか、大地震直後の状況下、いつ救助の手が回るか分からない…
 
これって、大地震に備えるどころか、災害リスクそのものなのでは? 
 
次に、以前と言っていたことが違います。
 
こちらは、冒頭の答申です。このときは、乗客は速やかに避難させるとしていました。これは火災時の想定になっていますが、地震時でもこのように対応するとし、準備書の段階までこの見解が使い回されてきました…。
イメージ 3
 
なんで言うことがコロコロ変わるんだろう?
 
ところで、青函トンネルでは、斜坑に非常時の滞在場所を設置しているとのことです。もしかすると、それに依拠した見解なのかもしれません。
 
しかしよく考えていただきたいのですが、地下に長時間滞在できるのなら、その間に、東の山梨側か西の長野側から救助に迎えにいけばいいのです。わざわざ静岡県内の、南アルプス山中の「非常口」に乗客を誘導し、冬山遭難救助隊の救助を何日間も待つ必要はないはずです。言い換えると、非常時の滞在場所を設置するぐらいなら、静岡県内の非常口は不要ではないでしょうか。
 
静岡県内の2つの斜坑を「非常口」として使うとは、長野側や山梨側からでは救助に向かえない、間に合わない事態を想定していることになります。長野や山梨から救助に迎えない事態…橋梁崩落とか、連絡道路が大崩壊するとか…、そんなことを考えているのでしょうか?
 
それって、建設目的の二重系統化を否定した想定なんじゃないのかなあ? 
 
 
 
最後にもう一点。「関係自治体にご相談させて…」って、
リニアを利用するわけでもない静岡県が、なぜリニア乗客の避難・救助にかかわらなければならないんだ? 
 

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