気になるデータを見つけたので内容更新。
先日のこどもの日にニュースで放送していたのですが、こどもの人数は、毎年過去最小を更新し続け、減少の一途をたどっているとのこと。
したがって、今後年間100万人単位での移民でもない限り、人口は減少の一途をたどります。
10兆円という莫大な予算を投ずるリニア中央新幹線。将来のリニア利用者の数はどうなるのでしょう?
リニアの需要予測についてネット上で検索してみると、「首都圏、名古屋、関西圏の人口減少は緩やかだから問題ない」という意見が散見されます。これは多分、JR東海が用いたこの資料によると思われます。
東京 大阪市間のデータについて(平成21年10月13日)
また、ここから派生して、2010年5月10日にJR東海が国土交通省中央新幹線小委員会に提出した各資料によると、現在の東海道新幹線の輸送実績は年431億人キロですが、2045年には、リニア中央新幹線と東海道新幹線とを合わせて675億人キロとなるそうです。(超伝導リニアによる中央新幹線の実現について)
要するに、人口が減少するのにも関わらず、東京-大阪を行き来する人々が現在の1.6倍に増えるとのこと。JR東海は「固めの予想である」と自賛。これについて中央新幹線小委員会では何にも審議対象にもならず、週刊東洋経済など雑誌なんかでもJR東海の記載どおりに「固めの予想となっている」と評価されたりしていますが、妥当なんでしょうか?
この資料を見ると、確かに全国での年率人口減少率0.65%に対し、沿線人口では0.5%と若干小さくなっています。また、JR東海が沿線と見なす都府県(東京・埼玉・千葉・神奈川・山梨・長野・岐阜・愛知・三重・奈良・京都・大阪・兵庫)での人口は、2008年の6800万人から2045年の5650万人へと、37年間で13%の減少となっています。全国での値が21.4%減少しているのに比べると緩やかであり、これくらいなら許容範囲と見込んでいるのかもしれません。とはいえ、減少していることには違いありません。
ところで、この資料の人口予測は全年齢を対象にしたものです。
しかし東京-名古屋-大阪という東海道新幹線の利用者の大部分は出張などビジネス利用であるはずです。お盆や正月しか利用しない方にはイメージがつきにくいかもしれませんが、平日はスーツ姿の方ばっかりですから。
というわけでビジネス利用の中核を占める15~64歳人口について、今年3月27日に、国立人口問題研究所から発表された、2010年の調査に基づく最新の予測を掲載します。
15~64歳人口の減少率は、JR東海が資料として用いた全人口での値よりも大きくなっており、リニア完成前の段階で、現在の3/4にまで減少してしまいます。これは、市場そのものが3/4に縮小してしまうことを意味していると思います。
人口減少率が13%だったとしても、お年寄りばっかりだったら多くの利用なんぞ望めません。それゆえ、「13%の人口減少なら想定内」というのは、ちょっと甘いんじゃないかな…と思ってしまうのであります。
なお埼玉、兵庫、京都の人口も加えられていますが、これら府県がリニアの利用圏内となるかは定かでありません。埼玉県内から関西へは、ひょっとしたら北陸新幹線のほうが利便性がよいかもしれず、京都・兵庫も乗り換え不要の東海道新幹線を使ったほうが便利かもしれないからです。長野や岐阜も、全域がリニア利用圏内になるとは到底思えません。
また、JR東海の資料では2045年大阪開業時の人口は掲載されていますが、その後の人口予測については触れていません。
この点について人口問題研究所の資料によれば、全国の人口は次のように推移してゆくとの予想。
2050年 9708万人 うち15~64歳人口5001万人
2055年 9193万人 うち15~64歳人口4706万人
2060年 8674万人 うち15~64歳人口4418万人
2055年 9193万人 うち15~64歳人口4706万人
2060年 8674万人 うち15~64歳人口4418万人
と、1年間で約100万人ずつ減少してゆくという予測になっています。ちなみに2060年の年間人口増加率は-1.2%、15~64歳人口にいたっては-1.4%前後となります。仮に大阪開業時の人口規模が想定内だっとしても、建設費を償却するために需要を増やしていかなければならない期間にも、どんどん人口すなわち市場が縮小してゆくことになっています。
これは、開業前後の人口増加率が、毎年年間+1%前後であり、開業後も40年間にわたって増加が続いた東海道新幹線とは、全く正反対の条件です。
これを端的に示すデータを。
まず、東海道新幹線の建設最中であった1960年の人口ピラミッドです。
一見して分かるとおり、下方ほど裾野の広いピラミッド型です。地理学などの用語では「多産少子型」とよばれます。10~15歳代に突出したピークがありますが、これが第一次ベビーブーム、あるいは団塊の世代になります。こども世代に人口のピークがあるわけですから、これから人口は増えてゆきます。したがって潜在的な利用者数すなわち市場は確実に拡大の一途をたどります。
国鉄は、こうした社会状況から東海道本線の輸送力は限界に達したと判断し、東海道新幹線の建設に踏み切ったわけです。
それから半世紀を経て、リニア計画を実行に移そうとしている現在(2010年)の状況。
50年が経ち、団塊の世代は55~65歳になっています。この団塊の世代と、団塊ジュニア(第二次ベビーブーム)世代の30~45歳代とにピークがあります。利用の中心層が人口のピークを形成しているのですから、現在が利用のピークになっていると考えて間違いないと思います。その下は年齢が若くなるほど幅が狭くなっています。第二次ベビーブーム世代の子供による人口増加は見られません。つまり、今後の人口増加は見込めません。団塊ジュニア世代が引退してしまえば、15~64歳人口は急激に減少します。
そして今から半世紀後の2060年の予想。リニアの大阪開業後から15年後となり、最も利用者が増えていってもらわなければ困る時期です。
1960年とは逆に、上方すなわち高齢者層の幅が最大であり、下方ほどすぼんでいます。85歳前後のピークが第二次ベビーブーム世代ですね。冗談ではなく「年寄りばっかり」という社会になってしまうわけです。一人当たりの利用頻度が増えようとも、利用者層そのものがそれを上回る勢いで縮小していきかねないことを意味しています。また、2010年よりも全体の面積自体が小さくなっており、これは人口の減少を意味します。
こんな人口構成で、現在の1.6倍もの需要が見込めるのでしょうか?
また、こちらに1920年から2060年にかけての人口動態の動画が掲載されています。
戦後に増加した人口が2030年ごろから急激に減少するということ、人口の主体が高齢化してゆくとともに、若い世代の人数が先細りの一途であるという実態があからさまになっています。
最後に世代別の人口推移予測を掲載します。
市場の中核となる15~64歳人口は激減、65歳以上人口は停滞のち漸減だが比率は増大の一方、潜在的市場の0~14歳人口も減少の一途。
つまり、少なくとも人口推移という面からは、仮にリニアが素晴らしい乗り物で人々をひきつけたとしても、利用者が爆発的に増える要素は全くないように見えるのです。
なお需要予測を達成するためには、2045年以降には、日本人が現在より2倍も頻繁に東京-大阪を行き来するようにならなければならないようです。
http://blogs.yahoo.co.jp/jigiua8eurao4/folder/464959.html
http://blogs.yahoo.co.jp/jigiua8eurao4/folder/464959.html
ホントに妥当な予測といえるのでしょうか?