リニアが時速600キロで走ろうが、JR東海がギネス申請しようが、そんなこととは全く関係のないのがこのブログ。
えー、そのギネス申請しようとしているJR東海が、南アルプス山中の大井川源流の河原に計画している、超巨大発生土置場(残土を大規模に盛土して”処分”)についての懸念の話題に戻ります。
話が飛び飛びですので、位置や計画概要の確認意味もかねて、前々回記事からお読みください。
http://blogs.yahoo.co.jp/jigiua8eurao4/13812317.html
http://blogs.yahoo.co.jp/jigiua8eurao4/13812317.html
発生土を巨大な盛土として処分しようとしているのは、大井川源流の、燕沢という沢が流れ込むあたりの、河原が広がっている場所になります。
前々回までのブログ記事では、過去の空中写真により、燕沢付近平坦地における大井川の流れの様子ご覧いただきました。要点をまとめると、特徴は次のようになります。
●この付近には、その流域に崩壊地をもつ小支流が5~6本流入しており、頻繁に土石流が流れ込んでいるとみられる。
●この付近の大井川本流の勾配は、周囲の支流に比べて相対的に緩やかであり、急峻な支流から流れ込んだ土石流は大井川の河原に堆積することとなる。
●平坦地の上側には千枚岳から崩れ落ちた大量の礫が円錐状に堆積しており、砂礫の供給源となっている可能性がある。
●流路が頻繁に変わっている。
●流路が変わるとともに、河原における植生の様子も頻繁に変わっている。すなわち、「無植生⇒まばらな草原・灌木林⇒高木林⇒洪水による植生の破壊」という変遷が短いサイクルで繰り返されているとみられる。
●平坦地のすぐ下流側で川幅が狭くなっており、流下する土砂をせき止めている可能性がある。つまり狭窄部が砂防ダムのような位置づけとなっているかもしれない。
JR東海は、かような場所を発生土置場にしようと考えています。もう一か所の大規模発生土置場候補地である扇沢源頭(標高2000m稜線上)が使えない場合は、こちら燕沢付近平坦地に、最大高さ50m、長さ1000mにわたって積み上げ、残土として処分する可能性を示唆しているところです。
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図1 燕沢付近平坦地の地図
環境影響評価書より
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図2 南アルプス大井川源流での発生土処分計画
ど、どーなるのでしょう???
シロウト考えですけど…
盛土容積を300万立方メートル、長さ1000m、平均高さ30~40mと仮定すれば、幅は75~100mとなります。いっぽう現在の燕沢付近における河床幅は100~150mです(林道と対岸との距離)。したがって発生土を積み上げたら、川幅は半分程度に狭められることになります。
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図3 発生土置場のイメージ(作者の想像)
ここに土石流が流下したら…?
土石流というのは、大量の石や砂礫が、水を仲立ちとしながら重力によって急勾配の谷底を滑り落ちる現象です。もともと谷底に大量の砂礫が堆積しているような沢、あるいは流域内に崩壊地の多い沢で頻発します。
谷から平地に出る地点では、引きずり落ちる力よりその場にとどまろうとする力が上回るため、堆積が始まります。先端がストップしたら、後ろから滑り落ちてくる後続部分は流路が阻害されるため、首を振るように流路を変更するなどし、全体として円弧状に堆積することとなります。昨年夏の広島や、一昨年秋の伊豆大島での空撮映像を御記憶の方も多いでしょう。「土石流」と入力し、画像検索をすれば、その様子を写した写真もたくさんヒットします。
JR東海の計画では、大井川の岸を数百メートル~1000mにわたって高さ数十mで盛土するわけです。交差部については、当然、ある程度の余裕をもって設計されるのでしょうが、いくつかの小支流の出口を狭める形になります。燕沢付近平坦地に流れ込む小支流は、いずれも土石流を頻繁に流し込んでいます。
特に左岸の崩壊地は、ここ40年程度の間に規模が拡大しています(3/30ブログ記事参照)。だから砂像ダムを複数設置)。衛星画像でも、運ばれてきた大きな石がゴロゴロしているのが明瞭に写っています。
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図4 燕沢付近の詳細画像
図1の地図で、「大井川」と注釈のあるあたりを拡大
右下の沢から砂礫が流下していて、道路はそれをよけて緩くカーブしている。大き目の石(わだちと比較して30~50㎝程度?)がゴロゴロしているのが分かる。反対側の斜面からも、大量の砂礫が流下しているのが明瞭。
もし今後大規模な崩壊が生じて土石流となった場合、盛土によって川幅が狭められているのですから、これまで河原に薄く広がっていた土石流堆積物は、盛土間の流路を通って大井川本流の流路へダイレクトに流れ込み、本流がせき止められるかもしれません。
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図5 土石流堆積地に盛土したら…?
本流をせき止めた場合、その上流側に大量の水をためこみ、やがて大規模な土石流として一気に流れ下る事態が想定されます…。
あくまで「懸念」の域をでませんが、こうしたリスクは確実に増すと思います。そのあたりの危険性はどのように考慮しているのでしょうか?
環境影響評価の準備書審査の過程で静岡市長からも、このような点が強い懸念事項としてJR東海に意見提出されました。その後、評価書において「適切に対処するから心配ない」という見解がJR東海から出され、事業認可に至りましたが、今までのところ、「適切な対処」とはいかなるものか、全く示されていません。それなのに「今年中には着工する」という方針ばかり伝えてきております。
環境影響評価の準備書審査の過程で静岡市長からも、このような点が強い懸念事項としてJR東海に意見提出されました。その後、評価書において「適切に対処するから心配ない」という見解がJR東海から出され、事業認可に至りましたが、今までのところ、「適切な対処」とはいかなるものか、全く示されていません。それなのに「今年中には着工する」という方針ばかり伝えてきております。
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図6 燕沢平坦地の安全性に対するJR東海の見解
千枚崩れという古い崩壊地にばかり着目しており、崩壊が現在も進行中であるその他の中小規模の荒廃渓流については言及していない。
4/21になって、山梨実験線での時速600キロ走行をギネス申請するなんて報道されてますけど、、そんなヒマがあるなら残土の取り扱いについてきちんとした説明をしろと思うのであります。
(蛇足)
ということは、これまでとは異なる知見が得られたことになるわけです。
いっぽう、リニアの環境への影響を予測した結果(環境影響評価準備書)が公表されたのは、2013年の9月18日のことであり、最終的な結果は2014年8月29日に評価書として取りまとめられました。このときの内容をもとにして、事業認可されたことになります。
いっぽう、リニアの環境への影響を予測した結果(環境影響評価準備書)が公表されたのは、2013年の9月18日のことであり、最終的な結果は2014年8月29日に評価書として取りまとめられました。このときの内容をもとにして、事業認可されたことになります。
つまり営業運転に必要なデータを取得したのは、アセスが終了してからということになります。
順序が逆なんじゃないのかな?