前回同様、”リニア反対派”にまつわる大いなる疑問である。お気を悪くされる方が多いと思われるし、批判も多々あろうが、それは承知の上で、あえて苦言を述べさせていただく。
いろいろと情報を収集したみたところ、リニアに反対する人々のうち、きわめて大多数の人が「原発の再稼働につながるから反対」という主張をされているような印象を受ける。
実はこのブログでも、浜岡原発の停止した4年前の時点では「原発を使うんじゃないか」と心配していたのである。
けれども、冷静に考えるとおかしくないだろうか?
なぜ原発由来の電気でなければ動かない?
「リニア反対派」の人々が、なぜ原発問題に固執するのか、よく考えれば考えるほど、分からないのである。原発を使わなければ問題ないのだろうか?
おそらくは、管元総理が浜岡原発の停止を要請したのと前後し、JR東海の葛西会長(当時)が、浜岡原発停止直後に「原発を動かさなければ日本の活路は開けない」といった趣旨の主張を産経新聞に寄せ、その後も同紙と読売新聞、およびWEDGE(JR東海傘下の出版社が作成して新幹線のグリーン車に配布してある雑誌)で、繰り返し、同じような主張を繰り返していたことが根底にあるのだろう。
けれども、「リニアのために原発を動かせ」とは明記していない。当たり前のことだけど、発電の仕組みにかかわらず、電気は電気なので、必要な出力さえあれば、リニアは動かせる。葛西氏の一連の言動は、これは同氏の考え方、もう少し広く見て、政財界に共通した見方であると考えるのがふつうであろう。
あまり知られていないようだけれども、現在、静岡県静岡市清水区の清水港に、製油会社等が共同出資し、200万kw級の火力発電所を建設する計画が進められている。2021年稼働を目指しており、発電した電気は、東京電力と中部電力に売却する予定なのだそうだ。すでに環境影響評価手続きも開始されているのである。
(自分はリニアのことで手一杯で、こちらの火力発電所については不勉強なのだけど、東海地震の津波が想定され、そのうえ市街地に隣接した場所に、そんなバカでかい発電所を造って安全性はどうなのだろうという疑問はある。温排水が内湾に放流されることの、生態系への影響も気になるところである。日本平から眺めた富士山の景観への影響も気になる。)
リニアの消費電力は、東京-名古屋開業の2027年で27万kw、東京-大阪間開業の2045年で74万kwと試算されている(国交省発表)。これについて検証した産総研の阿部氏の論説(岩波の雑誌「科学」所収)によれば、この結果はまあ妥当とみられ、ピーク出力は100万kw程度であろうとのことである。
ということは、この”清水港火力発電所”が稼働すれば、リニアの電力消費など、十二分に供給可能なのである。
そもそも、この”清水港火力発電所”計画の有無にかかわらず、リニアが電気をバカ食いするのは2045年以降である。「その頃には日本の人口は大幅に減少するからリニアの需要は見込めない」のが”リニア反対派”の主張の一部なのだけど、全く同じ理由で、「将来は電力消費も減少に向かうから原発不要!」という主張も”原発反対派”の方々の口から頻繁に出されるところである。
矛盾していないだろうか?
ここから先はkabochadaisukiの妄想ゾーンに突入します。文章は支離滅裂になります。
「リニアのために原発が必要」というのは、原発反対運動とリニア反対運動とをリンクさせて盛り上げようという、それぞれの活動家の脳裏にある思いが生み出したんじゃないのだろうか?
特に「リニア反対」の声は小さいので、原発反対の声の力を借りたいという思惑があるだろうことは容易に想像できる。
もちろん「リニアは電気をバカ食いする」のは事実であり、そのために原発を動かすんじゃないかという不安が広がったとしても不思議じゃない。けれども冷静に現状を考えれば、原発再稼働とリニア計画とを結びつける根拠はかなり希薄なのであり、簡単に矛盾が露呈してしまうであろう。利権があるのに違いないとか、そういう想像はいくらでも膨らむけど、安直に非論理的なことは言っちゃいけないと思うのである。
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一方で、ふつうの人々がリニア計画に抱く素朴な疑問として、「われわれが省エネに励んでいても、なんでそんな電気バカ食いが許されるんだ?」ということもあるであろう。
これについては、深く考えてみる価値があると思う。
地球温暖化対策や省エネは、政府が、目標やルールを法律や諸制度で定めている。特に地球温暖化対策は、国際公約でもある。リニアを含む交通機関も例外ではなく、
環境基本法
交通政策基本法
地球温暖化対策の推進に関する法律
エネルギーの使用の合理化に関する法律
交通政策基本法
地球温暖化対策の推進に関する法律
エネルギーの使用の合理化に関する法律
といった法律で諸制度が定められている。
非常に大雑把に言えば、「鉄道も省エネ化が必要!」ということが、政策としてこれらの法律で定められているのである。
一方で、東京-大阪を結ぶ国の大動脈を、国策として「省エネ型の東海道新幹線」から「エネルギー浪費の超電導リニア」に置き換えることは、これら諸制度と著しくかけ離れているんじゃなかろうか?
「リニアは飛行機よりは省エネ」という主張も一部にみられるが、環境影響評価書では、「東京-大阪の航空便利用客を全廃しても、今とCO2排出量は変わらない」という試算結果が出された。
この温室効果ガス排出量予測は、「原発が動いている」ことが前提である(平成20年に作成された係数を使用)。今後、原発が動かない場合、もしくは上記のように火力発電所を新規に増設した場合には、将来のリニアの動力源はほぼ全て火力発電に頼ることとなり、温室効果ガス排出量はこの試算よりも増える可能性がある(再生可能エネルギーがどうなるかは知りません)。
だからこそ、環境大臣意見では、この点について批判が出された(環境大臣意見は2027年までの事業計画に対するもの)。
環境影響評価書に対する環境大臣意見のコピー
けれども国交省はこの試算結果や環境大臣意見には目をつむって建設にGOサインを出し、さらに政府の成長戦略にもリニア計画を明記しているわけで、明らかに省エネ政策とは逆行しているように思われる。
この矛盾は、十二分に批判根拠足りえると思うし、追及されるべきである。原発再稼働云々が問題ではなく、電気をバカ食いすること自体が問題なのである。