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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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南アルプス登山道 山梨と静岡とのダブルスタンダート

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”リニア反対派”への苦言を続ける。

例によって、また山梨県編の環境影響評価書の問題であるが、こんな馬鹿げた評価書を放置しておいて、反対も何もないのである。


今回取り上げるのは、「人と自然との触れ合い活動の場」である。


静岡市の二軒小屋ロッヂは、南アルプス南部の主要な登山拠点となっている。ここに来るには、静岡市街地からバスを乗り継いでくるのが主流である。それとは別に、山梨県早川町の新倉から、県境の伝付峠を越えてくるというルートもある。私は歩いたことがないけれども、結構多くの人に利用されているようで、早川町のHPにも掲載されている。

登山ガイド等を参照にすると、早川町新倉の田代入口というバス停で降り、内河内川沿いの車道を進み、車道終点の発電所からは崖っぷちの登山道を進み、やがて川から離れてつづら折りとなり、標高2000mの伝付峠を超え、大井川の二軒小屋に至るというもので、1日がかりのルートらしい。2011年9月の台風15号により大きな被害を受け、現在も復旧作業が続いているとのこと。話の都合上、このルートを「新倉~伝付峠~二軒小屋」としておく。

概略図を掲載しておく。

イメージ 7
新倉~二軒小屋付近拡大
イメージ 1
右端の田代入口のバス停付近が新倉である。

◇   ◇   ◇   ◇   ◇

勘のいい方はお気づきかもしれないが、「新倉~伝付峠」ルートは、リニアの建設工事予定地にあたるのである。

イメージ 2
山梨県編 環境影響評価書より複製・加筆

ルート前半の舗装道路沿いに、斜坑の設置が計画されているのである。この斜坑は、品川~名古屋間で最長の3900mが想定されており、そこから148万立方メートルの発生土が掘り出されるということらしい。といいうわけで、大量のダンプカーの通行が予想されるし、ダンプの他にも重機や資材や燃料を積んだ車両が大量に行き交うのであろう。ちなみに、新倉地区全体では、最大で月11000台前後の車両が稼働するとのこと。何か11000台なのか、詳細は不明である。

その工事による懸念は枚挙にいとまがないが、話の都合上、「人と自然との触れ合い活動の場」という観点に絞る。

登山とは、環境影響評価でいう「人と自然との触れ合い活動」であるから、それに影響を及ぼす可能性のある事項は、環境影響評価の対象にされるべきである。例えば、
●ルートの寸断・変更
●工事用車両の通行による快適性への影響
●視認性(目にはいるもの)の変化
●工事による騒音・振動
●登山口へのアクセスの変化
といった項目である。ところがJR東海は、2013年9月の準備書の段階では、このような事項が登山活動に与える影響については予測・評価を行っていなかった。

というわけで、準備書に対して山梨県知事から次のような意見が出された。
イメージ 3
「笹山1(新倉~伝付峠)と」いうところである。歩行者に影響が出る恐れがあるから、きちんと予測・評価せよというわけで、至極マトモな意見である。

で、JR東海の回答である。珍回答と言うほかない。
イメージ 4

予測・評価は行わないとしているのである。しかし、どのように読んでも理解不可能である。

「工事の進捗により周辺状況が変化すること」「影響が工事期間中に限定されること」が、なぜ予測・評価を行わない理由になるのだろうか? どのように変化するのか示すことが、環境影響評価の目的のはずであろう。

それから、「新倉~田代発電所付近までは登山道のみの使用として整備されているわけではない」という理由もつけているのだが、これは理由になるのだろうか?

訳のわからないことに、同じ登山ルートの静岡県側(伝付峠~二軒小屋)は、環境影響評価の対象にされているのである。
イメージ 5
静岡県編 評価書より複製

上述の通り、新倉の田代入口バス停から伝付峠を経て二軒小屋まで登山道が通じているのだが、静岡県側では環境影響評価の対象、山梨県側では対象外としたのである。この違いは何によるものなのだろうか? 

さらに、新倉~内河内発電所間の舗装路と同様に、工事用車両が通行する林道東俣線を、予測・評価の対象としているのである。

イメージ 6
静岡県編 評価書より複製


大井川沿いの林道東俣線も、登山者送迎用バスよりも、発電所管理や工事関係の車両が多く通行する道である。その林道東俣線が「登山者等の通行に影響を与える可能性がある」として予測・評価対象にあげているのに、峠を越えた山梨側では、同様な道路を予測・評価対象としないのはなぜなのだろうか?

静岡編の評価書での評価結果が妥当であったとはいえない。はっきり言って、デタラメである。それでも、評価対象としただけマシである。山梨では評価対象とするよう念を押されたのに、訳の分からないヘリクツを並べて拒んだのだから。同じ南アルプスの登山ルートなのに、事業者が合理的な理由もなく、勝手に二重基準を設けたとしか言いようがない。

その理由は論理的に説明されるべきである。


別に、登山道への影響など、リニア建設による大規模な環境破壊等に比べれば、些末な問題といえるかもしれない。しかし、環境影響評価の手続きは科学的に行わなければならないと定められているのであり、また、科学的かつ論理的に行うことによって、人々の合意形成を目指す手段でもある。それが非論理的に行われているのであり、しかも誰も是正しようとさえしないのだから、おかしな話であろう。

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