個人的にいろいろと立て込んでいて、久々の更新になります。
それから昨日(5日)、南アルプス山中にてJR東海が設置した”専門家会議”による、導水路についての現地視察があったようですが、これについて言いたいことがあるのでまた後日。
それから昨日(5日)、南アルプス山中にてJR東海が設置した”専門家会議”による、導水路についての現地視察があったようですが、これについて言いたいことがあるのでまた後日。
リニアの建設工事により、南アルプスに外来種の動植物が搬入して生態系を乱すおそれについて、もう少し続けたいと思う。
トンネルを建設するのに必要なコンクリート骨材は、現地で調達するのではなく、南アルプスの外から運び込むのだという。
リニアのトンネルの掘削断面積は107㎡である。そして内空有効断面積(トンネル断面積から設備分を差し引いたもの)は74㎡となっている。ということは、33㎡は壁やガイドウェイで占められる。ガイドウェイ等を除いた30㎡程度がコンクリート壁ということになであろう。静岡県内における掘削延長は9400mということなので、
30㎡×9400m=282000㎥のコンクリートが必要となる。
その他のトンネルについて、本坑と同じ断面構造であると仮定すると、
先進坑⇒掘削断面積55㎡なので壁の断面積は約17㎡
17㎡×9400m≒160000㎥
斜坑⇒掘削断面積68㎡なので壁の断面積は約21㎡
21㎡×6600m≒139000㎥
道路トンネル⇒掘削断面積41㎡なので壁の断面積は約12.6㎡
先進坑⇒掘削断面積55㎡なので壁の断面積は約17㎡
17㎡×9400m≒160000㎥
斜坑⇒掘削断面積68㎡なので壁の断面積は約21㎡
21㎡×6600m≒139000㎥
道路トンネル⇒掘削断面積41㎡なので壁の断面積は約12.6㎡
12.6㎡×8500m≒107000㎥
トンネルの壁を構築するのに必要なコンクリートの量は、約688,000㎥という数字が出てきた。
さらに、林道東俣線を舗装する計画である。
舗装の厚さを10㎝とすれば、必要なコンクリートの量は
0.1㎡×35000m×4m≒14000㎥
となる。アスファルト舗装ならまた違った値になるだろうし、舗装下に敷き詰める砕石をどこから調達するのかも分からない。
舗装の厚さを10㎝とすれば、必要なコンクリートの量は
0.1㎡×35000m×4m≒14000㎥
となる。アスファルト舗装ならまた違った値になるだろうし、舗装下に敷き詰める砕石をどこから調達するのかも分からない。
まあ、ざっと見積もって合計約70万立方メートルというところではないだろうか。
コンクリートの原料は、水、セメント、骨材(主に砂利)である。このうち骨材は、容積比で約3/4を占めるという。というわけで、70万立方メートルのコンクリートを造るのに必要な骨材の量は、約53万立方メートルといったところであろう。
これだけの砂利を、どこかから南アルプス山中へと運び込んでくるわけである。これに外来植物の種子や切れ端が混ざっていたらどーなるんだろう?
きれいに洗って1立方メートルに1粒くらいにまで混入を減らしたとしても、それでも5万粒…?
大量の砂利は、ダンプカーで次々運び込み、コンクリートプラントにザーッとぶちまけられることになる。そして水やセメントと混ぜてコンクリートを練り上げることになる。もちろん周囲を壁や屋根で囲まれるだろうけど、2㎜程度しかない綿毛付の種子なんかは、ぶちまけた衝撃で簡単に飛散してしまうだろう。
対策可能なのだろうか?
環境影響評価書には、砂利に種子が混入しているリスクについては全く言及していないのである。
種子だけでなく、最近ではアルゼンチンアリなどという外国産のアリなんかも紛れ込んでいるおそれがあるというが…。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
もうひとつ懸念されるのは、発生土置場の緑化である。
発生土(あるいは残土)といっても正体は土ではなく砕かれた岩である。これに草木を植えても育ちようがないから、何らかの手段によって土壌を作る必要がある。
ど~するんだ?
環境影響評価書には、発生土置場での緑化方針として次の図が掲載されているけれども、
こんなのは論外である。
種子吹付というのは、工事によって出現した丸裸の地表に、素早く成長する植物の種子を、機械によって吹きつけるという工法である。手っ取り早く緑が回復することから、道路工事や造成地で頻繁に用いられている。手っ取り早く緑が回復するのだが、どーいうわけだか用いられている種子はほとんど外国産のようなのである。
これは静岡市内に最近できた公園&砂防工事の事例である(県と市の事業)。
日本平一角に、斜面を削って造られた公園なのだが、3月上旬にも関わらず、結構、緑が保たれている。こりゃなんだろうと思って初夏まで待ったら、どうもヨーロッパ原産のカモガヤ(別名オーチャードグラス)なるイネ科の草であった。
建設費を抑えるためなのだろうけど、こういうことを林地のそばで安易に行うべきではないと思う。それでもここは、もともと茶畑だった場所であり、住宅地にも接しているという、人為的影響の強い場所だから、外来種を用いても、まだ許されるかもしれない。だけど、南アルプス山中では絶対にやってはいけないことである!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ところで、評価書をみた限りでは、どうも緑化についての方針がいまひとつ分からない。いや、緑化に限らずあらゆる項目について言えるんだけど…。
例えば評価書にはこんな記載があった。
施工ヤード(発生土置場を含む)跡地は、在来種によって早急に緑化することにより、外来種が繁殖するスキを与えないのだという。
書いてあること自体は正論である。
けれども、どうやって実行するんだ?
小規模な面積を緑化するのであれば、いったんはがした表土を別の場所で保管しておき、盛土後にかぶせて草木を育成するという手法が可能である。もともとその場所にあった土だから、生えてくる草木も、その場にもともと育つ種になり、自然な植生が再現されるというわけである。国立公園内などでは、この手法が用いられる事が多いそうだ。
けれどもJR東海が南アルプスで計画している発生土置場は条件が全く異なる。
発生土置場を緑化する目的は、雨や凍結・融解などにより、発生土が崩れ落ちるのを防ぐためである。したがって安全性の面からは早急に緑化する必要がある。けれどもここは南アルプスの山中であるから、長い年月をかけてでも、元々の植生を復元しなければならない。
この相反する二つの目的を達成しなければならない。はっきり言ってムリであるから、そんな無茶なことをこんな場所でやるほうが間違っている。
ムチャであることをもう少し具体的に考えてみる。
例えば大井川河原(燕沢付近)に計画している「最大高さ50m、最大長さ1000m」の発生土置場について、必要となる面積をざっと試算してみると、発生土360万㎥を盛土するにあたり、勾配30度で盛土すると、表面積は170000㎡ぐらいとなる。サッカー場なら20~25面分ぐらいとなる。(簡略化のため、平均高さ30m、平均長さ700m、平均幅150mで試算)
この場所はもともと河原であったのだから、表土をはがして盛土表面に張り付けても、あまり緑化効果は期待できない。河原の植生を盛土上に復元しても、安定した状態にはならず、緑化の本来の目的―土砂の流出を食い止めること―を達成するのは困難であろう。
したがって土壌の育成から始めなければならないのである。
もともとの土壌に乏しい場所の場合、土壌をその場で手作りしなければならない。膨大な量の腐葉土や土をどこかから運び入れなければならないが、そこに外来種植物の種子や病害虫が持ち込まれてしまうおそれがある。
コストさえかければ、高度に処理した腐葉土を購入することも可能だろうが、やろうとしているのは家庭菜園ではなくサッカー場20面以上の緑化である。ただでさえいろいろなコストをケチっている会社であるから、もしかすると東南アジア産の腐葉土なんてのを使いかねない(最近園芸店でよく見かける)。
在来種の緑化のためには、地元産の苗木も手間暇かけて育成しなければならない。木を植えても大きくなるまでには何年もかかるから、それまでの”つなぎ”になる在来種の草を育てなければならない。大面積に播く大量の種子を、地元でどうやって確保するというのだろう?
最近では、「在来種を植えればよい」という要求が高まる一方でコスト削減の要請から、「在来種だけど外国産」という、訳の分からないものが用いられるケースが増えているという。マメ科のメドハギ、コマツナギといった種で横行しているようであるが、地元産だけではとても要求に見合うだけの種子が確保できないから、中国産などの種子を播いてしまうというわけである(食品の世界と同じ)。これが正しい姿なのかどうかは分からないけれども、「ユネスコエコパーク」といういう場では行うべきではないだろう。
それからここは寒冷地である。年の半分近くは土壌が凍ってしまうのだから、凍害にそなえて、丸太やワラなど、様々な資材を持ち込んで土木工事も施す必要がある。こういうものに外来種の種子が混入してくるのではあるまいか?
「在来種による緑化等に努める」と書いてあっても、ハッキリ言ってそれを実行するための方針が全く示されていないのだから、まるっきり信用ができない。ムチャである。
ちなみに南アルプスの聖平という地点で行われている植生復元事業では、土壌流出防止に用いる材木について、地元井川産の杉を熱処理したうえで用いているらしい。果たしてJR東海に、そこまで行う気構えはあるのだろうか?