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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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南アルプストンネル山梨工区の早期着工は不可能?

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南アルプストンネルの山梨側工区が落札されたことを受けて、新聞各紙は「リニア本格着工」という報道をしていました。けれどもこれって、いわゆるミスリードじゃないのでしょうか。

というのも、「発生土処分がどうなるのか、いまいち確定していない」ということが見落とされているからです。

先日のブログでこのように書きました。

山梨県早川町にも大量の発生土が出される。地形的に行き場はないはずであるが、山梨県による道路整備事業の建設資材に転用するということで話がまとまっている。JR東海と建設費を折半し、南アルプス北部の夜叉人峠付近で、トンネル新設を含む大規模な道路整備を行うという計画であるが、アセスは行わず、詳細な事業計画も不明のまま、事業化が決定されている。このため早川町における発生土処分計画はクリアしたことになり、工事見積もりが行えたのだと考えられる。
ブログ過去記事⇒http://blogs.yahoo.co.jp/jigiua8eurao4/13376466.html


リニアのトンネル掘削により、早川町には合計329万立方メートルの発生土が生じます。東京ドーム2.7杯分になります。これについて、山梨県が計画している「早川芦安連絡道路」の建設工事に転用することで、処分することができるという大きな構想があります。
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早川芦安連絡道路構想というのは、南アルプス北部の夜叉人峠トンネル付近に、新たに長さ4㎞弱の道路トンネルを建設しようというものです。災害発生時の早川町の孤立防止、南アスーパー林道のバイパス機能が求められているそうです。また、新トンネル完成後は、その東側の芦安山岳館付近に大規模な駐車場を造成しようという話もあります。

こちらについては山梨県が事業主体となるので、JR東海によるアセス対象ではありません。そのため、事業計画の詳細な内容や環境への影響等が、いまいち不明なままです。

イメージ 2

リニアのトンネル工事で生じた発生土を、夜叉人峠付近での盛土や芦安温泉付近での駐車場造成に転用しようというのが、この構想のミソです。

リニアのトンネル内で生じた発生土を外に運び出すところまでがJR東海の事業であり、それを運搬して道路盛土&駐車場造成に使うのが山梨県の事業になります。

◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 

その早川芦安連絡道路の環境調査については、今年1月に入札が公示されたようです。http://www.njss.info/offers/view/4949600/

その後の情報はリサーチ不足の折、不明ですけど…。けれども、常識的に考えた場合、一般的な環境アセスメントと同様に騒音や振動、水質、動植物や生態系、景観等が対象になると思われます。

ところで動物調査といえば、早川芦安連絡道路の建設予定地付近では、イヌワシやクマタカをはじめとする希少な猛きん類の生息が確認されており、繁殖している可能性があります。リニア本体工事でも、早川町内の改変予定地内外でイヌワシの繁殖が確認されていますから。
環境省 平成16年8月31日 希少猛禽類調査(イヌワシ・クマタカ)の結果について
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=5218 

官民を問わず、猛きん類の生息している可能性の高い地域で大規模な開発を行う場合、十分な調査を行うことが求められます。「法律上の義務ではないけどそういうことをやるべし」という、政府からの通達であります
環境庁作成 猛禽類保護の進め方
https://www.env.go.jp/nature/yasei/raptores/protection.html 

ですから当然のこと、今年1月に入札の公示された早川芦安連絡道路の環境調査においても、猛きん類調査がおこなわれるものと推察します。

「猛禽類保護の進め方」によれば、例えばイヌワシの場合、2営巣期(=1.5年以上)の調査機関が求められています。冬の訪れとともに、巣作りや求愛行動など繁殖行動を開始するため、12月が調査開始となるケースが多いようです。

今年の冬の訪れとともに調査を開始した場合、終了するのは2017年の終わりごろとなります。その後、調査結果を受けて環境保全策の必要性の有無や、必要な場合はその方法を検討しなければなりません。猛きん類だけではなく、その他にも希少な動植物が確認された場合は、それなりの対策が求められます。

工事計画が具体化するのはその後です。したがって早川芦安連絡道路が着工できるようになるのは、早くとも2018年の半ば以降でなければおかしいはずです。

調査結果によっては、工事計画がかなりの制限を受ける可能性もあります。事実、岐阜県で計画されているリニア関連の道路整備事業は、オオタカの営巣が指摘されたことにより、今年夏より追加調査が行われています。もしもイヌワシやクマタカの営巣が近傍で確認されでもしたら、事業計画自体が白紙に戻る可能性もあります。

◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 

ところがリニア中央新幹線についての山梨県版評価書を見ると、早くも1年目にはトンネル掘削に着手する予定になっています(内河内川斜坑)。

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山梨県版評価書の資料編を複製・加筆
ここでいう「1年目」とは、平成26年度を示している。
青崖地区…斜坑の予定地。早川の谷底。84.2万立米+94.2万立米の発生土が出される予定。
内河内川…こちらも斜坑の予定地。早川支流内河内川沿いの谷底。147.5万立米の発生土が出される予定。 

評価書の別の部分では、工事は平成26年度に着工するとしています(山梨編評価書3-46ページ)。ですから「2年目」とは、平成27年度つまり今年度を意味します。上記の表ですと…内河内川の斜坑では、早くも1年目に「掘削・支保工」を行うとしていますね。支保工とは、掘削したトンネルの壁が崩れないように補強する工事のことです。

本命の発生土処分=早川芦安連絡道路の着工は、2018年半ば以降にならないと決まらないのに、なぜか今年度中にはトンネル掘削が行える前提で評価書が書かれていたことになるわけです。

それから冒頭で述べたように、このたび南アルプストンネルの山梨県側工区の施工業者が決まったとのことですが、こちらのほうも、2016年着工というスケジュールを前提としているはずです。

早川町内には、塩川という地区に発生土置場が想定されていますが、受け入れ可能量は4万立方メートルとされており、斜坑588m分しかありません(斜坑断面積68㎡)。2018年までの2年分を受け入れる容積はありません。ですのでここは有力な処分場になっていないはずです。 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 

ついでながら、早川芦安連絡道路が完成した後は、芦安山岳館付近で大規模な駐車場造成を行うとしています、別にこの駐車場構想自体に文句をつけるつもりはありません。けれども、それだけ大規模な造成工事を行う条件がそろっているのでしょうか?

夜叉人峠一帯を源流とする御勅使川(みだいがわ)は、暴れ川として有名です。川の名称は、洪水に見舞われた際、都から勅使が派遣されたためだとも、「乱れ川」がなまったものだともいわれています。戦国時代、武田信玄が甲府を守るために大規模な工事を施したことで、治水史上にも名を残しています。

明治以は、国直轄による砂防工事が始まり、一帯は砂防ダムだらけのはずです。土木遺産にも指定されているようです。

一生懸命に土砂の流出を抑えようとしているところに、数十万立米単位で盛土を計画しているわけで、なんだか妙な気がします。安全性をめぐり、計画が二転三転するかもしれません。

JR東海&山梨県のリニア計画は、ここでの大規模造成が可能という前提でもあります。




・・・発生土処分は、事前調査すらしていない他の事業ゆえ不確実な要素が多いのに、それらが全てクリアできる前提で掘削工事を開始?

これって、何かおかしくないでしょうか?
そして、「早期着工」は、スケジュール上、ありえないのではないでしょうか?


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