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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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乾燥堆肥の大量搬入 ―南アルプスは誰のモノ?―

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慌てて書いたので文章がまとまっていません。思いついたことをダラダラ書いてます。

本日、南アルプスの静岡県側、つまり大井川源流域に、土地所有者の特種製紙という企業が、大量の乾燥堆肥を搬入しているという報道がなされました。
(静岡新聞 平成27年9月13日朝刊)
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この乾燥堆肥は、同社の製紙工場から排出された汚泥を原料として生産されるものであり、リニアのトンネル掘削によって生じた発生土を緑化するために用いるとしているそうです。南アルプス山中の大井川源流に汚泥起源の堆肥を大量搬入…理屈云々以前に、直感として、ちょっとそれってどうなのよ?という疑問が頭をよぎりました。

っていうか、発生土自体の処分方法が決まってないのに、どうして早くも搬入してるのだろう? 

イメージ 2
大量の乾燥堆肥を仮置きするのは、この図で「発生土置場候補地」として黄色の点線で囲った範囲になるようです。

大井川の源流域一帯は、特種製紙という企業の一大所有地となっています。江戸時代は幕府の直轄地だったものが、明治維新後に所有者が二転三転し、最終的に当時の大実業家・大倉喜八郎の手に渡ったようです。

製紙用・製材用として昭和の終わりにかけて大規模な伐採が続けられてきましたが、ここ四半世紀ほどの間は、伐採は控え、本来の森林環境が戻りつつあります。
現在、南アルプスにおける登山施設や送迎バスの運営を行っているのは、特種製紙傘下の東海フォレストという企業になります。

で、その社有林に大量の乾燥堆肥を搬入する計画であるとのことです。

現在のところ、大井川源流域では農業は全く行われておらず、山小屋を除くと人工的な水質汚濁の原因となる物質は排出されていないはずです。つまり人工的な水質汚濁はほとんど皆無といっていいでしょう。そこへあえて化成肥料(尿素配合)を大量に運び込むという話になっています。

堆肥1万7000立方メートルとなるとダンプカー3000台分に相当します。ホームセンターで販売されている40リットル入りの袋なら42万5000袋に相当します。これを運搬すること自体、”ある程度”の環境への影響につながると思うのですが、どうなのでしょう? JR東海による環境影響評価での想定に含まれているのかどうかも分かりません。 

同社の南アルプス社有林については、山林経営が赤字ゆえ、是が非でもリニア計画に協力したいという話を伝え聞きます。今般の堆肥搬入計画もその一環を担ってますし、その他にも観光開発や農業をおこなうといった計画のあることも、新聞では伝えられています。万事について「勝手に決まっちゃっている」感が否めません。
 
◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 
 
土地所有者が自らの土地で何をしようが、法律の範囲内であれば問題ない。この考え方は、おそらく間違ってはいないでしょう。

しかし同時に、その行為によって起こりうる影響が、土地所有者による責任を負えることの可能な範囲を超えてしまうおそれがある場合でも容認できるのか?という点も忘れてはいけないと思います。

ハッキリいって、ここで行われる行為は、社会的な影響が大きいと断言します。
すなわち、

●広い範囲にわたって良好な環境が残されている。
●生態系や景観の保全上重要な場所である。
●一級河川大井川の水源地帯である。
●全国から登山者が集まる。
●保全上、重要な場所として国立公園区域の拡張計画がある。
 

という場所ゆえ、そこで行われる大規模な経済活動は、社会的な影響が大きいと考えます。それゆえ、南アルプスの環境とその恵みは、誰のモノでもない公共財といわれるものに相当する部分が大きいと言えるでしょう。

なお細かい話になりますが、影響を受ける可能性のある環境について土地所有者の権利は及ばない事項もあるようです。一例をあげますと、野生動物は無主物であって誰の所有物でもない、という法律上の規定があります。
民法239条1項:所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。 
だから、保全上特に重要な動物については、たとえ土地所有者であっても好き勝手にすることはできず、その処遇には社会的な議論をおこなう余地があると思います。 
また、河川法により、河川の水も所有の対象にすることはできません。  

◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 

一帯は南アルプスユネスコエコパークに登録されています。そもそもユネスコエコパークは、事業者、住民、行政の総意に基づく管理と運営によって自然環境を持続可能な形で利活用していこうという制度であり、土地所有者の意向のみで環境に影響を及ぼしかねない行為を実施することは、その目的とはかけ離れていると言えます。っていうか、それが通用するのなら、登録した意味がありません。

ゆえに、今や南アルプスで行われる、ある程度以上の諸行為には、社会的な合意や説明責任が求められると思います。静岡市による南アルプスユネスコエコパークの管理運営計画にも、その旨が明記されています。

イメージ 3
静岡市作成 南アルプス管理運営計画より


市や県、あるいは環境省には、事業者・土地所有者と住民(というか関心のある日本国民全般)との間をとりもつコーディネーターとしての役割が強く求められると思うのであります。


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