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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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環境影響評価をやりなおしてください その2

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前回の記事で指摘した通り、静岡県内における事業計画は今年4月以降、次々と変更されています。もっとも静岡だけでなく、長野県内でも変電所計画が突如として浮上するなど二転三転しているようですけど。。。

さて、大規模な工事をおこなうと環境への影響が生じます。環境行政において、それを防ぐための手法が環境保全措置とよばれ、それを考案してゆくために環境影響評価が行われます。

何度も触れていますように、環境影響評価の手続きは、
配慮書…環境面から事業計画を検証
方法書…調査方針を掲載
準備書…調査・評価結果および環境保全措置の方針を報告
評価書…環境保全措置の確定
補正評価書…所轄大臣意見を受けて確定
事後調査計画書…モニタリング計画等

という書類(図書)を作成し、行政機関や公衆等からの審査がされることで進められます。このうち配慮書、方法書、準備書については公衆等からの意見提出と事業者による見解表明を行うことが法律で定められています。言い換えれば、準備書への意見提出を最後に、法律で定められた公衆等からの意見提出の機会はなくなります。
(環境省の説明ページ)

静岡県内版の準備書(2013年9月)では、静岡市内における地上での事業計画は次のようなものだと説明されていました。
イメージ 1
図1 準備書段階での地上工事の計画
環境影響準備書より複製 

そして公衆等はこの説明に基づいて意見提出を行い(2013年10月)、市や県の専門家会議もこの事業計画について意見を提出した(2014年3月)わけです。環境省による意見(2014年6月)も、国土交通大臣による審査・認可も、この事業計画に基づいています。

ところが前回述べました通り、今年2015年4月以降、JR東海は次々と事業計画を変更し始めました。今日(9/27)までに明らかになった変更点を記入すると図2のようになります。
イメージ 2
図2 評価書手続き終了後における静岡市内での地上工事計画の変更
非常口(斜坑)の位置が明らかにされたのは評価書の段階 
道路トンネル新案と導水路の位置は事業認可後に発表   

ハッキリ言って、準備書および評価書の段階とは、まるで異なっています。したがって以前の事業計画に基づいた環境保全措置が現在でも有効なのかどうか、全く分からなくなっています。

元の事業計画自体があいまいなうえ、評価書もメチャクチャであったことから、環境への負荷が増えたのか減ったのか、それも分かりません。

ところで、事業計画の変更と環境影響評価のやり直しについてみてみましょう。

環境影響評価法の規定により、補正評価書を確定するまでに事業計画を「法律で定められた以上の規模」で変更しようという場合は、準備書の作成から手続きをやり直すことと定められています(第28条および第21条、第25条)。

ところが補正評価書が確定した後に事業計画を変更する場合は、アセス手続きの再実施を行うかどうかについては、事業者の自主判断にゆだねられています(第32条)。

したがって本件(リニア静岡版評価書)の場合、一連の事業計画の変更は補正評価書の確定以降に出てきた話ですので、事業者に再手続の義務はありません

また、付帯施設の変更は「法律で定められた以上の規模」に該当しません。リニアを含む鉄道事業の場合、列車の走る軌道部分にかかる一定規模以上の変更のみが、法律での再実施義務となります。ですからどのみち、JR東海にアセスをやり直す義務は、法律上はないと思われます。

しかしだからといって何もしないのはおかしな話でしょう。前回記事を重複しますが、
●改変を受ける場所が変更
●工事用車両の通行台数の場所ごとの変更
●工事の順序やスケジュールの変更
●工事用道路トンネルの位置・規模変更
  ・発生土量の変更
  ・トンネル頭上の沢・地下水への影響
  ・坑口における動植物や景観への影響
●環境保全措置としての工事用道路トンネルの妥当性
●燕沢に発生土を集約した場合の各種予測結果の変更
 ・生態系への影響(そもそも予測していない)
 ・環境保全措置の妥当性
 ・景観への影響(そもそも予測していない)
 ・周辺の崩壊地からの土砂流出へ与える影響(そもそも考慮していない)
 ・工事騒音の増大
 ・緑化計画の変更
●導水路トンネル建設による諸影響についてアセス未実施
 ・発生土量の増加
 ・坑口付近での生態系や景観への影響
 ・頭上の沢への影響
●導水路トンネル計画における論理破綻(⇒2015/6/14ブログ記事)
 ・建設目的が不明
 ・評価書における河川流量についての環境保全措置を否定
●事後調査計画の内容にも変更が生じうる

事業計画変更により、これらの項目が総じて変わります。ただでさえダメダメな評価書が、完全に不信のものとなるわけです。したがって事業認可の前提となった調査結果と環境保全措置、そして事後調査計画も、全面的に修正されねばおかしな話です。JR東海自身が修正不要だと考えている場合でも、その妥当性を確認せねばなりません。


環境影響評価法第1条では、環境影響評価の目的を次のように掲げています。長ったらしいし主語と述語の関係もわかりにくい、いかにも”法律用語”然とした読みにくい文章ですが、重要なので全文を引用します。 

この法律は、土地の形状の変更、工作物の新設等の事業を行う事業者がその事業の実施に当たりあらかじめ環境影響評価を行うことが環境の保全上極めて重要であることにかんがみ、環境影響評価について国等の責務を明らかにするとともに、規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価が適切かつ円滑に行われるための手続その他所要の事項を定め、その手続等によって行われた環境影響評価の結果をその事業に係る環境の保全のための措置その他のその事業の内容に関する決定に反映させるための措置をとること等により、その事業に係る環境の保全について適正な配慮がなされることを確保し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に資することを目的とする。 

JR東海が今年に入って行っていることは、赤く記した部分をそっくり否定することなんですよ。このままでは環境影響評価の目的を達成できないんです。


変更後の事業計画や環境保全措置については、公衆等による意見提出の機会が事実上失われているのですから、この点について事業者ならびに行政機関の考え方を確認する必要もあるでしょう。そもそも南アルプスユネスコエコパーク内での経済活動は、市民・事業者・行政との協働でおこなうとされていますし。


またJR東海は、他県の評価書においては、評価書段階までに計画を具体化できなかった施設については、配慮書への環境大臣意見に基づき、改めて調査()をおこなうとしています。これは発生土置場を念頭においたものですが、静岡県内における導水路も道路トンネル新案も、これに該当するはずです。
具体的な位置・規模等の計画を明らかにすることが困難な付帯施設に関する環境保全措置の内容をより詳細なものにするための調査 
9/8ブログ記事 



したがってJR東海が本当に南アルプスの環境保全を適切におこない、一般の人々や地元自治体との合意を得たいという意思をもっているのであれば、環境影響評価法第32条
事業者は、第27条の規定による公告を行った後に、対象事業実施区域及びその周囲の環境の状況の変化その他の特別の事情により、対象事業の実施において環境の保全上の適正な配慮をするために第14条第1項第5号又は第7号に掲げる事項を変更する必要があると認めるときは、当該変更後の対象事業について、更に第5条から第27条まで又は第11条から第27条までの規定の例による環境影響評価その他の手続を行うことができる。 

に基づき、環境影響評価手続きの再実施を行うべきだと思います。


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