山梨県庁の県民情報センターに保管されている山梨実験線環境影響調査報告書というものを見たい
リニアにおける環境への影響を気にするのであれば、これを検証することが不可欠だと思います。
例えば水環境に関する問題。実験線のトンネル建設にともない、笛吹市や上野原市の複数の箇所で沢や井戸が枯渇する事態となっているようです。この実験線建設に先立ち、環境への影響を見定めるためとして作成されたものが、山梨実験線環境影響調査報告書にあたります。
これは法律や条令などの制度内で作成された正式な環境アセスメント文書ではなく、おそらくは自主的に作成されたものと推察します。その報告書において、トンネル掘削にともなってどのような影響が生じると予測し、どのような対策ととるとしていたのか? それを検証することは、リニア計画の今後を占うための極めて重要な作業だと思います。
正式なアセス文書ではないためか、山梨県の公立図書館には納められおらず、各地のリニア説明会においては、山梨県庁にあるとかJR東海が所有しているとか、当事者でさえどこにあるのかも分からない状況だったようですが、山梨県庁が保管していて、手続きを踏めば公開されるようなんです。
⇒山梨県 県民情報センターのページ
リンク先の「行政資料目録検索」にある「M 環境」というところをクリックすると、PDFファイルが表示され、そこには次のように掲載されています。
山梨県県民情報公開センターのページより複製
そう。ちゃんと山梨県庁に置いてあるんですよ!!
【補足説明】
じつは以前、当方のブログにおいて「品川~名古屋間286㎞のおよそ15%はアセス適用外?」として、山梨実験線環境影響調査報告書の情報提供を呼びかけたことがあります。
最近、リニア計画の問題点を取材しているジャーナリストの樫田氏のブログにおいて、この話題が取り上げられていましたので、改めて思い出したという次第です。
この山梨実験線環境影響調査報告書というものは、同実験線建設に先立ち、環境への影響を調べるとして、平成2年(1990年)に
〇財団法人鉄道総合技術研究所(鉄道総研)
〇東海旅客鉄道株式会社(JR東海)
〇独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄建機構)の3者共同で作成されたもののようです。
〇東海旅客鉄道株式会社(JR東海)
〇独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄建機構)の3者共同で作成されたもののようです。
ご承知の通り、山梨実験線42.8㎞区間は、現在そのまま中央新幹線の路線の一部に組み込まれています。品川~名古屋間286㎞のおよそ15%に相当します。
現在、環境影響評価手続きは、特に規模の大きい事業については法律にしたがって、それより規模の小さい事業については各都道府県の条例に従って進められることになっています。対象となる事業の種類は、法律や条令によってあらかじめ定められています。
中央新幹線整備事業については、2011年から2014年にかけて、環境影響評価法に従って中央新幹線の環境影響評価が行われ、建設工事・施設の存在・列車の走行にともなう環境への影響が予測されることとなりました。ところが山梨実験線区間は既存の実験線をそのまま営業路線に転用することとなったため、建設工事および施設の存在による環境への影響については取り扱われておりません。
環境影響評価制度と山梨実験線の沿革について、ちょっと確認してみます。
1973(昭和48)年 全国新幹線鉄道整備法に基づく基本計画路線として中央新幹線が選定される。
1979(昭和54)年 整備5新幹線に関する環境アセスメントの運輸大臣通達(準備書段階から)
1984(昭和59)年 国が関与する大規模事業を対象にアセスメントを行うことを閣議決定(閣議アセスメントとよばれる)。
1987(昭和61)年 国鉄民営化。リニア研究は財団法人鉄道総合技術研究所(鉄道総研)が継承。
1990(平成2)年 鉄道総研・東海旅客鉄道株式会社(JR東海)・独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄建機構)が「山梨実験線環境影響調査報告書」を作成。山梨リニア実験線着工。
1979(昭和54)年 整備5新幹線に関する環境アセスメントの運輸大臣通達(準備書段階から)
1984(昭和59)年 国が関与する大規模事業を対象にアセスメントを行うことを閣議決定(閣議アセスメントとよばれる)。
1987(昭和61)年 国鉄民営化。リニア研究は財団法人鉄道総合技術研究所(鉄道総研)が継承。
1990(平成2)年 鉄道総研・東海旅客鉄道株式会社(JR東海)・独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄建機構)が「山梨実験線環境影響調査報告書」を作成。山梨リニア実験線着工。
同年 山梨県環境影響評価等指導要綱が公布
1997(平成9)年 3月山梨リニア実験線先行区間18.4㎞完成、走行実験開始。
同年 環境影響評価法(以下アセス法)成立。
1998(平成10)年 6/12 アセス法施行。技術指針等を定める主務省令(鉄道)制定。アセスメントのマニュアル。
2000(平成12)年 JR東海、鉄道総合技術研究所、鉄建機構に対し、地形・地質等の調査を指示。
2007(平成19)年 1月 山梨リニア実験線の延伸工事開始。JR東海が中央新幹線構想を発表。
2009(平成21)年 1月 「山梨実験線の建設計画」の変更について国土交通大臣の承認。
2011(平成23)年 5月 超伝導リニア方式による中央新幹線の建設指示。6月中央新幹線(東京・名古屋間)について環境影響評価開始。
2013(平成25)年 8月 山梨実験線完成。試験運転の再開。
1997(平成9)年 3月山梨リニア実験線先行区間18.4㎞完成、走行実験開始。
同年 環境影響評価法(以下アセス法)成立。
1998(平成10)年 6/12 アセス法施行。技術指針等を定める主務省令(鉄道)制定。アセスメントのマニュアル。
2000(平成12)年 JR東海、鉄道総合技術研究所、鉄建機構に対し、地形・地質等の調査を指示。
2007(平成19)年 1月 山梨リニア実験線の延伸工事開始。JR東海が中央新幹線構想を発表。
2009(平成21)年 1月 「山梨実験線の建設計画」の変更について国土交通大臣の承認。
2011(平成23)年 5月 超伝導リニア方式による中央新幹線の建設指示。6月中央新幹線(東京・名古屋間)について環境影響評価開始。
2013(平成25)年 8月 山梨実験線完成。試験運転の再開。
山梨実験線は、結果的に営業路線に組み込まれることになったものの、建設時はあくまで実験施設の扱いでした。旅客輸送を目的とした新幹線鉄道の建設ではないため、1984年閣議決定の閣議アセスメントの対象にはなっておりません。またその後の延伸工事においても、やはり実験施設であったため環境影響評価法や県条例の適用も受けておりません。
よく分からないままに”環境調査報告書”が作成され、実験線が完成し、結果としてあちこちで水源を破壊してしまった。。。この水枯れについては、現在の評価書資料編には、次のように「あらかじめ予測していた」と書かれています。ところが具体的にどのような対策をとるつもりでいたのか、生態系への影響はどのように見込んでいたのか、地元にはどのように説明して合意を得たのか、何よりなぜ防げなかったのか、そういったことが全く分かりません。特に①や⑧は、2007年以降の延伸工事にともなって生じた事例です。現在の建設技術でも防げなかったわけですよ。
評価書より複製・加筆
このように、よく分からないままに作成された「アセスもどき」が、果たして環境保全に十分なものだといえるのか、改めて検証する必要があると思います。