静岡県内に掘り出す発生土を、南アルプス山中に置き去りにするという報道が静岡新聞においてなされたのは、2013年9月6日のことでした。http://park.geocities.jp/jigiua8eurao4/SouthAlps/Shizuoka-news/2013.9.6.jpg
360万立方メートルの盛土というのは相当な規模になります。環境への影響は甚大であると想像されますが、しかし例によって、具体的な情報は全く示されておりません。
(図3について)
環境影響評価手続きで準備書の公表される前のことです。
準備書は9月18日に公表。そこではじめて、県内には360万立方メートルの発生土が掘り出されること、そして発生土置場候補地として、後にJR東海自ら回避することになる燕沢源頭を含め、7地点を計画していることが示されていました。しかし、どこにどれぐらいの発生土を処分する方針なのか、それぞれの受け入れ容量をどの程度と見込んでいるのか、それぞれの箇所においてどのような環境への負荷が生じ。環境保全措置を検討しているのか、具体的なことは全く明らかにされぬままでした。
というわけで、環境影響評価とは名ばかりで、結局、具体的な環境保全措置は示されることなく、懸念ばかりが残ったまま終了し、事業認可となりました。
その後、事業認可を受けて1年経ってから「扇沢発生土置場をやめて発生土は全て燕沢平坦地に集約する」という話が出てきました。新聞報道によれば、長さ1000m、最大高さ50mという、途方もなく巨大な規模を想定しているとのこと。で、このほど11月30日の中央新幹線環境保全連絡会議の場において、県にその案が示されたということです。
360万立方メートル全てを一か所に集約する?
どういうつもりなんだ?
どういう状況になるんだ?
どういう状況になるんだ?
360万立方メートルの盛土というのは相当な規模になります。環境への影響は甚大であると想像されますが、しかし例によって、具体的な情報は全く示されておりません。
そこで、「長さ1000m高さ50m」という情報をもとに、試行錯誤を繰り返し、地図上で想像図を描いてみました。専用のソフトがあれば、簡単に数字を出すことができると思いますが、そんなものは持っていないので全て手作業です…。
まず、とりあえずは位置関係から。
図1 南アルプス横断トンネル
図1の中央やや右手に二軒小屋とあり、その左下に緑で塗った地点が、問題となっている燕沢平坦地です。西に標高3161mの荒川岳(悪沢岳)がそびえています。二軒小屋をはさんで斜坑が2地点設けられ、そこから掘り出された発生土が、全て燕沢平坦地に向かうことになります。
その燕沢付近の詳細な地形図はこちら。
図2 燕沢平坦地の地形図
環境影響評価書より複製・加筆
で、盛土をすると、こんな感じになるんじゃないかと。
図3 燕沢発生土置場想像図
燕沢付近はやや広い谷になっておりますが、
●その谷底の半分を埋める
●盛土長さ1000m
●大井川に接する部分には最大高さ10mの垂直な擁壁を築く
●擁壁より上側には法勾配30度で盛る
●平坦地の中ほどには左岸(図右手)より土石流の頻発する沢が流入しているので、その沢の部分は埋めずに残す。
この条件で積み上げてゆくと、谷底から50~60m積み上げていったところで、ちょうど360万立方メートル程度の容積が確保できます。沢を挟んで南側半分は、標高1275~1285mを基盤として上面は1320~1330mに、北側半分は、1285~1315mを基盤として1340mにまで積み上げると想定しています。真上から見た面積は約19万平方メートルとなりました。
なお、図の右上から左下に延びている灰色の太い線は林道東俣線です。これは分厚い盛土の下になりそうですので、付け替えが必要となるでしょう。大井川本流の直線化工事も必要となるかもしれません。
盛土の基底部分の幅を少々広げれば(川の方に前進させれば)、高さは10m程度低くなるかしれません。また、沢の部分を暗渠にしてしまえば、全体の容積を小さくできると思います(土石流が詰まるけど)。それでも大きな違いはないでしょう。っていうか、こうでもしなけりゃ、360万立方メートルの容積は確保できません。「あてずっぽうで文句を言うな!」というお叱りを受けるかもしれませんので、念のため、試算根拠を末尾に記しておきますね。
ちなみに、Googleの衛星画像に加筆するとこんな具合(面倒なので沢の部分も塗りつぶしています)。
図4 燕沢発生土置場想像図(Googleの衛星画像に加筆)
もう、生態系の保全も、景観の維持も、ユネスコエコパークの理念も、土砂災害リスクも、ナ~ンにもありません。
こうして想像図を作ってみると、燕沢発生土置場について「林道東俣線からの景観に与える影響を予測せよ」という知事意見に対し、的外れな回答をよこしていた理由が分かりました。林道ごと消滅してしまうのだから、景観も何もないのでしょう。
図5 準備書における景観予測についての静岡県知事意見とJR東海の見解
ハッキリ言って、
ムチャクチャ!!
(図3について)
評価書の関連図(ブログ本文中の図2)の実物は、1:10000縮尺である。これに1㎜枠の方眼をかけると、1つのマスは100平方メートルとなる。このマス目の数を数えると面積がわかる。これが方眼法という手法である。