南アルプスの大井川源流に捨てようとしている発生土を静岡市街地に積み上げたら…?
なんでも今月18日に、南アルプス横断トンネルの早川町側で、トンネル起工式を行うそうなのだ。
そちら側に掘り出す320万立方メートルもの発生土処分について、最終的な処分方法も確定していないのに、ことリニアに関してJR東海お得意の”見切り発車”である。
山梨県側に出す発生土が320万立方メートルで済むのかどうか、実はアヤシイと思う。というのも、どう考えたって静岡側での取り扱いがムチャクチャだからである。
JR東海は、静岡県側に掘り出す発生土360万立方メートルについては、すべて大井川沿いの燕沢とよばれる平坦地に積み上げて残置する計画である。これを山の麓に積んでゆくと、既存の林道まで分厚い盛土の下になるのは、前回示した想像図の通り。
この360万立方メートルという量。単純に計算すれば東京ドーム3杯となるけど、全く実感がわかない。というわけで、平地に持って来たらどうなるのだろうかと、新たに想像図を描いてみた。
ところで、盛土を積み上げる際には、国土交通省によるのか、土木学会によるのか、建設業界のルールなのか、ちょっとよく分からないけれども、設計基準が定められている。
(参考)盛土設計基準
国土交通省北陸地方整備局による(PDFファイル)
http://www.hrr.mlit.go.jp/gijyutu/kaitei/sekkei_r/pdf/3.pdf#search='%E7%9B%9B%E5%9C%9F+%E8%A8%AD%E8%A8%88'
国土交通省北陸地方整備局による(PDFファイル)
http://www.hrr.mlit.go.jp/gijyutu/kaitei/sekkei_r/pdf/3.pdf#search='%E7%9B%9B%E5%9C%9F+%E8%A8%AD%E8%A8%88'
盛土の容積に関係する事項としては、、
●盛土の法面勾配の標準は高さ:奥行=1:1.8
●高さ5mを超える場合は、高さ5mごとに”犬走り”と呼ばれる幅1.5mの段を設けなければならない
といったことが定められているようだ。この前提で高さ50mまで積むことを考えると、その断面は図Aのようになる。
図A 盛土勾配
つまり50mの高さにまで積み上げるためには、最低でも103.5mの幅が必要である。
この先、面倒なので計算過程は省くけれど、この勾配をもとに50mの高さで360万立方メートルを積み上げると、図Bのような感じになる。
図B 360万立方メートルの発生土を正方形の敷地に高さ50mで積み上げた場合
計算が面倒であったが、敷地は319mになるようだ。これで容積が360万立方メートルである。それを静岡市街地に持って来たらどうなるのだろう…?と思って、GoogleEarthの「ポリゴン機能」から推定したのが冒頭の図である。
もうちょっと遠くからとらえるとこんな感じ。
図C 発生土と八幡山の比較
右の黒っぽい部分は標高64mの八幡山である。ちなみに八幡山の容積を1:10000地形図から方眼法によって推測すると、約180万立方メートルであった。南アルプスに吐き出される発生土は八幡山の2倍(注)にも及ぶのである。
(注)
八幡山の体積については、地形図から計測すると約179万立方メートルという数字が出た。ところがこの山は木で覆われているので、遠くから眺めると実際の体積よりも大きく見えていることになる。面積を大雑把に7万㎡とし、木の高さを10mと見積もると、見た目のボリュームは70万立米増しの250万立米ぐらいとなる。というわけで、見た目で比較すると、リニアの発生土は八幡山の1.4倍ぐらいといえるのではなかろうか。
静岡ローカルな話でごめんなさい。