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トンネル2㎞を掘ってから起工式?

本日、南アルプス横断トンネルの起工式が早川町にて行われたそうです。

ふーん。。。

既に2㎞もトンネルを掘ってあるのに、何を今さら「起工式」なんだろう?


JR東海は今頃になって早川町向けに”評価書もどき”を出してきましたが、そこには次のような写真が添えられています。
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イメージ 1

これは早川町新倉の工事予定地の現状です。写真①の右手にトンネルが掘られていますが、これは「試掘した跡」だそうです。試掘というのはトンネルの設計を決めるために必要な地質調査のことですけど、結構な規模に見えます。近くの電柱と比較すると、高さ・幅とも4~5mはありそうに見えます。

換気ダクトなのか排水施設なのか分かりませんけど、でっかいパイプ状のものもつけられています。

この試掘調査についてインターネットで調べてみると、2008年から始まっていたようです。

日経ケンプラッツより一部記事を転載します。

道路沿いに間口50~60mほど、山に向かって奥行き10mほどが囲われていた。掲示を見ると、施工者であるJV(共同企業体)を構成する大成建設、名工建設、銭高組のほか、発注者の東海旅客鉄道(JR東海)、早川町に本社を置く保坂建設と、計5つの社名が確認できる。工事名は「中部山岳地区早川町内 水平ボーリング用作業坑掘削」だ。
 JR東海は以前から、周辺で垂直ボーリング調査や既設導水路トンネルの施工履歴調査を進めてきた。2008年2月28日に掘削を始めた水平ボーリング調査は、最終的な確認という位置づけだ。現場の南側部分で実施していた。国交省が求めた規模を越えて山の奥まで水平ボーリングを進めることで、トンネルをより効率的・経済的に施工できるよう備える。そのためには新たに作業坑を掘削する必要がある。作業坑は内空断面積が30㎡、延長が2km、NATM(ナトム)工法で築く。  

(出典) 日経ケンプラッツ
 「リニア新幹線、南アルプスのボーリング調査現場はいま…(2008/12/1) 」

ボーリング調査に必要だとして、トンネルが掘られたという経緯ですね。断面積30㎡というと、九州新幹線など整備新幹線で本体工事に使われ建設された斜坑と同じ大きさになります。いっぽうリニアの作業トンネル(斜坑=JR東海は非常口と呼称)は、断面積は倍以上の68㎡を予定しているとのことなので、今後さらに拡幅し、本体工事用に転用するつもりなのでしょう。

ここ青崖(せいがん)地区に予定されている非常口の長さは、評価書によれば2.5㎞ということですので、すでに75%は掘り進めたことになります。もう完成しちゃったのかな?

◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 

ところで中央新幹線計画の建設指示が出されたのは2011年の5月。環境影響評価(以下アセス)が開始されたのは同年6月です。

ということは、試掘坑は、アセス手続き開始の3年以上前から始められていたことになります。考え方によっては、アセス開始前に事実上の着工をしていたと言えなくもありません。したがって青崖非常口については、その立地にあたって適正な環境調査が行われていたのかどうか、疑問が生じます。…もしかすると「やった」と主張するのかもしれませんが、少なくともその真相は現時点では不明です。

試掘の行為自体はあくまで「調査」であり、その工事について環境影響評価手続きを経ていないことは、法的には問題はありません。さらに現場内外においては、2011年以降に現地調査が行われており、形式上は必要な手続きを経ています。

しかし既に改変されてからの現地調査でもあります。もしも貴重な動植物が分布していたとしても、その生息地をつぶしてしまっていたのかもしれません。付近に営巣していた猛きん類を追っ払ってしまった後という可能性だって否定できません。
評価書には環境保全措置として「貴重な動植物の生息場所を避けて改変する」とか「改変地域をなるべく小さくする」とは書いてあっても、その前提がアセス開始時点で崩されていたのかもしれないのです。

このように問題があるわけですが、それはひとえに全国新幹線鉄道整備法という旧態依然とした法律にその根源があるのではないでしょうか。

【全国新幹線鉄道整備法 第五条】
国土交通大臣は、前条の規定により基本計画を決定したときは、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構その他の法人であつて国土交通大臣の指 名する ものに対し、建設線の建設に関し必要な調査を行うべきことを指示することがで きる。
 

とあります。それなら…

①国土交通大臣が「必要な」調査について環境配慮を怠れば、ルートは環境配慮と関係なく決定してしまう。
②ここでは「基本計画を決定したときは…必要な調査を命じることができる」とあるが、斜坑や工事道路など付帯施設を、アセスのずっと前に建設することが可能となる。それを建設認可後に転用できるのであるから、立地に関して環境配慮が不必要になる。

ということになります。これは事業の位置や規模の検討段階において環境配慮を求めた環境影響評価法第三条の二「計画段階配慮事項についての検討」と矛盾するのではないでしょうか。
http://www.env.go.jp/policy/assess/1-1guide/2-2.html

もっとも計画段階環境配慮の義務が生じたのはリニアの建設指示の後なので、JR東海の姿勢を問うことは困難かもしれませんが、将来のために二つの法律の関係は整理されるべきだと思います。

◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 

とまあ、既成事実の積み重ねで「起工式」に至ったわけですが、これは昨年の12月17日に品川駅での起工式からちょうど1年を経たということで、新たなる既成事実づくりのパフォーマンスに過ぎないのでしょう。

実際には、例えば早川町に掘り出す発生土326万立方メートルについて、160万立方メートルの大口受け入れ先は山梨県営の別事業であり、その計画自体がどうなるかは今後の現地調査次第あって不明ですし、残りの行き先は全くの未定。

ちなみに326万立方メートルを野積みするとこんなイメージになります。
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イメージ 2
326万立方メートルを早川河川敷に野積みしたイメージ
1:1.8勾配で高さ50mまで積んでゆくと、盛土敷地は長さ710m、幅207mとなる。 


県境を越えた静岡や大鹿側では、様々な懸案が何も解決しておらず、つまり南アルプス全体としての発生土処分計画は何ら方向性すら定まっていないのに「適正に解決できる見込み」と、完全なる見切り発車となっております。
おかしな会社だなあ…。

アクセス数が増えているついでに、南アルプストンネルの構造について概要を記しておきます。
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イメージ 3

次表が南アルプス区間で計画されているトン炎るになります。 赤く囲ったのが、今回「起工式」を行った南アルプストンネルと、その作業用トンネルになります。

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イメージ 4

本坑自体は長さ25㎞ですが、先進坑、斜坑(非常口)、工事用道路トンネル、導水路を全て合わせると57.8㎞になります。

それから発生土量です。同様に、南アルプストンネルから出される発生土については赤く囲っており、総量は837万立方メートルです。そのうち360万立方メートルは南アルプスど真ん中の大井川源流部に置き去りにする計画であります。
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イメージ 5



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