新年早々、ものすご~く不可思議な状況になっております。このブログを始めて間もなく5年になりますが、こんな事態は初めてです。
昨晩(1/3)、夕飯を食べながらNHKを見ていたら、「今年は日本の高速鉄道にとって節目の年。北海道新幹線が函館まで延伸。そしてリニア中央新幹線の南アルプストンネルが本格着工!」って感じでニュースが流れてきました。
そのニュースの原稿らしきものがネットで公開されていました。NHKの記事はすぐに消されるので、全文をコピーします。
NHK 01月01日 06時42分
11年後の開業を目指す東京・名古屋間のリニア中央新幹線の南アルプストンネルについて、JR東海はことし3月ごろからまず「非常口」の掘削を開始し、リニアモーターカーが走るトンネル本線の掘削工事は秋ごろから始める見通しです。
南アルプスを貫くリニア中央新幹線のトンネルは、山梨、静岡、長野の全長25キロのうち、山梨側の7.7キロの区間が先月18日に工事に入り、現在は山梨県早川町で資材置き場の整備などを進めています。
初めてとなるトンネルの掘削は、ことし3月ごろから緊急時に避難路となる「非常口」を斜めに掘り進む工事が行われます。
「非常口」の掘削は早川町内の2か所で進められ、本線が通る予定の地点に達したあと、ことし秋ごろから将来リニアモーターカーが走るトンネル本線の掘削に入るということです。
南アルプストンネルは、最も深い所で地上から1400メートルに達するうえ、周辺の地層が複雑に入り組み、地下水脈の場所もはっきり分からないことから、建設計画上の難所とされています。
JR東海は「地域の人たちと連携を取り、安全に工事を進めていきたい」としています。
リニア中央新幹線を巡っては、山梨県内の区間で建設予定地の地権者がおよそ1300人に上り、一部の区間で用地取得の交渉が進められていますが、山梨県はことしはさらに広い範囲で交渉を本格化させたいとしています。
初めてとなるトンネルの掘削は、ことし3月ごろから緊急時に避難路となる「非常口」を斜めに掘り進む工事が行われます。
「非常口」の掘削は早川町内の2か所で進められ、本線が通る予定の地点に達したあと、ことし秋ごろから将来リニアモーターカーが走るトンネル本線の掘削に入るということです。
南アルプストンネルは、最も深い所で地上から1400メートルに達するうえ、周辺の地層が複雑に入り組み、地下水脈の場所もはっきり分からないことから、建設計画上の難所とされています。
JR東海は「地域の人たちと連携を取り、安全に工事を進めていきたい」としています。
リニア中央新幹線を巡っては、山梨県内の区間で建設予定地の地権者がおよそ1300人に上り、一部の区間で用地取得の交渉が進められていますが、山梨県はことしはさらに広い範囲で交渉を本格化させたいとしています。
何だか分からないけど、年が明けてから唐突にその他のマスコミも、ネットでリニアの南アルプストンネル工事のニュースを流しているようなんですね。それも判を押したかのように、ほとんど同じ内容なのである。
J-CASTニュース 1月4日(月)11時30分配信
いつ吹き出すかわからない地下水脈... リニア新幹線工事で最難関は南アルプストンネル
いつ吹き出すかわからない地下水脈... リニア新幹線工事で最難関は南アルプストンネル
リニア中央新幹線(東京・品川―名古屋)を建設中のJR東海は12月18日、ルート中で最難関とされる南アルプストンネル(総延長25キロ)の起工式を開いた。山岳トンネルとしては日本最長で、工期に10年もかける。2027年開業を目指すリニア建設の肝とも言える場所で、計画通りの費用と時間で完成できるかを占う工事ともなる。
東洋経済オンライン 1月4日(月)6時0分配信
27年開業なるか? リニアの行く手阻む最難関
27年開業なるか? リニアの行く手阻む最難関
2027年の開業を目指す「リニア中央新幹線」。品川~名古屋間約286kmのうち、工事の最難関といわれている南アルプストンネルの工事が2015年12月18日、山梨県側の「山梨工区」で始まった。(中略)
山岳トンネルは「掘ってみないとわからない」部分が多いといわれ、計画よりも工事期間が延びた例は決して少なくない。南アルプストンネルの工期が延びれば、必然的にリニアの開業時期にも影響することになる。
山岳トンネルは「掘ってみないとわからない」部分が多いといわれ、計画よりも工事期間が延びた例は決して少なくない。南アルプストンネルの工期が延びれば、必然的にリニアの開業時期にも影響することになる。
黒部ダム建設を題材にした石原裕次郎主演の『黒部の太陽』然り、青函トンネルの難工事を描いた高倉健主演の『海峡』もまた、大自然とヒトの攻防をスクリーンに蘇らせた大作である。中でも工期が10年にも及ぶ南アルプストンネルだ。12月18日、山梨県早川町でJR東海が主催した起工式を機に、本格的な掘削を進める。
Yahoo!乗りものニュース 1月2日(土)13時50分配信
リニア“最大の難所”南アルプストンネル、真の懸念は 高速鉄道の未来占う
2015年12月18日、JR東海はリニア中央新幹線で“最大の難所”とされる長さ25km19mの南アルプストンネルにおいて工事を開始。これにより「超電導リニア」を用いた“新世代の高速鉄道”建設が、いよいよ本格的に始まりました。
リニア“最大の難所”南アルプストンネル、真の懸念は 高速鉄道の未来占う
2015年12月18日、JR東海はリニア中央新幹線で“最大の難所”とされる長さ25km19mの南アルプストンネルにおいて工事を開始。これにより「超電導リニア」を用いた“新世代の高速鉄道”建設が、いよいよ本格的に始まりました。
…南アルプストンネルで予定されている工期は10年。その進捗が中央新幹線、そして海外への展開も考えられている新世代の高速鉄道「超電導リニア」の将来を占う、としても過言ではありません。
こんな感じです。ほぼ全ての記事に
●昨年12月18日に起工式を行った
●最大の懸案は南アルプスのトンネル工事である
●南アルプスのトンネル工事では難工事が予想される
●工事が遅れれば全体の計画に影響する
という要素が共通しています。そしてNHKを除く4本の記事は、全てYahoo!のページで報じられています。
これ、ひょっとしてどっかの誰かが起草した文章を、そのまま使い回してるんじゃないのかな?って思うほど、内容が似通っています。
しかも単に内容が共通しているだけじゃなく、南アルプスの事情を調べてこの記事を書いているわりにはあまりに無知であり、逆に不自然に思えます。このように、コピーのような記事が出回るのは、たぶんリニアの建設指示の出された2011年5月以降、初めてのことでしょう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
例えばトンネルを掘るのなら、まずは発生土(残土)の行き先を決めなければなりません。それが決まってないのだから、今は技術がどうのこうの言う前の段階です。
例えばこんなアホな現計画が実現するはずない。
静岡県大井川源流 燕沢にJR東海が計画している発生土置場の想像図
JR東海は設計図を公表していないので、これまでの情報より作者が推定。
この燕沢発生土置場については、河川法や森林法に基づいて許可申請を出すにあたり、安全性を証明しなければならない。そのためには周囲の山崩れ・地すべりの挙動、河床変動、地盤調査、積雪観測などをしなければならない。それに具体的な環境影響評価は事後調査として後回しにしたから、それだって適切に行う必要がある。ここに発生土を集約することを表明したのは昨年9月以降であるから、これら調査は全て今後の予定。というわけで、今年中に本格着工できるはずがない。
そして大量の残土の行き先を決めたとしても、次には大量のダンプカーを走らせるにあたり、地域の合意を得なければなりません。ところが現時点で、住民とのコミュニケーションが成立しているとは言いがたい。
無断で測量を開始したり(富士川町)、事前通告なくボーリング調査内容を24時間に変更する(大鹿村)、安全面より回避すべしと地元住民から要求された燕沢に発生土を集約すると公表(静岡市)…なんてことをしていたのだから、当然と言えば当然なんだけど。
水が噴き出すというのは、言い換えれば地上の水を引き込むこと。評価書で大井川水系や小河内沢など、南アルプス山中の渓流を壊す可能性を指摘しておきながら、いまだに有効な環境保全措置を出していない。この点だってクリアしなければならない。
静岡市の南アルプス林道管理条例とか、同市の清流保全条例とか、南アルプスユネスコエコパーク管理運営計画、ユネスコへの説明責任…これらに整合させるつもりがあるのかいな?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
要するに、JR東海の視点にたって南アルプストンネル工事での最大の懸案は何かを考えてみると、それはすなわち、ムチャクチャな環境破壊に起因して地元の信頼と合意を得ていない!ということに尽きるはずです。現状では工事が難航するんじゃなくて、工事に取り掛かる準備自体ができないのだから。昨年7月には山梨県内で立ち木トラストが始まり、8月には大鹿村の住民から、リニアに絡む一切の工事禁止を求める仮処分を名古屋地裁に申し立てが行われたし、今年中には事業認可取り消しを求める訴訟が行われるという話も聞きます。
…こんなこと、評価書を何時間もかけて読むとか何百人にも取材するとか、そんなことをしなくとも、役場に電話1本をかければすぐにわかる話でしょう。
何社もの記者がそれをせず、コピペのような記事を一斉に報じているのです。これは不自然と言うべきではないでしょうか。
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さらに輪をかけて不自然なのはNHKの姿勢。NHKは、以前は「リニア中央新幹線と環境問題」と題した番組を放送していていました。南アルプスでの工事に伴う環境保全上の問題も取り上げています。
2014年11月05日 くらし☆解説 「リニア中央新幹線建設と環境問題」
それから、、クローズアップ現代で、リニアの残土問題を取り扱っていました。
2014年12月18日 クローズアップ現代”建設残土”が家を襲う
このクローズアップ現代では、「放送直前に某所より圧力がかけられリニア問題に割く時間を減らした」という噂があるのですが、冒頭の放送内容と関係あるのでしょうか?
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完全に想像になりますが、もしかしたら昨年12月18日の起工式に際し、事業者からマスコミ各社に対し、年明けに一斉報道するよう依頼がなされたんじゃないのかなあ…?
マスコミ各位 以下の内容に留意して正月明けに報道を願います
●2027年開業を目指すリニア最大の難関は南アルプスのトンネル工事です!
●とにかく大変な工事で、これが遅れたら大変!
●土被り1400m! いつ水が噴き出すか分からない!
●難工事に挑むのは大成建設!
●地元との合意形成とか環境保全とか、そんなのは全然懸案じゃないから、書かないでね
リニアを造ろうとしている会社より
って感じで。
地元での反発の高まりを隠そうとしているんじゃないか?と勘ぐってしまうのである。