前回の続きとなりますので、そちらから続けてお読みください。
前回、国交省はトンネル工事で大井川の流量に影響を及ぼす可能性を予見したうえで事業認可をしたかもしれない、と書きました。
ところで、同じ資料にはその他にも不審な点あります。
JR東海は、旧運輸大臣の指示により、アセスの始まる平成23年より前から、南アルプス地域での流量観測を行っていたと説明しています(前回参照)。その観測地点のうち、静岡県内(=大井川流域)での地点は次の通りです。
静岡県版 補正評価書資料編より
表によると、
平成18/19年から調査を継続している地点があります。
いっぽう、平成18年時点で調査をしていたものの、翌19年ないし20年には中止し、中断期を経て、平成23年渇水域から再開している地点もあります。
どういうわけか、前者は西俣~二軒小屋付近に集中しています。平成23年7月の配慮書で明らかにされる3㎞幅ルート案に近接した地点であり、最終的なトンネル位置(下段図の黒破線)にも一致しています。中には「流量が大幅に減少する」という試算結果の出された地点も含まれています。
分かりやすく、前者を赤、後者を黄色、そして配慮書で示されたルート案との位置関係を示すと次の通り。
上段…平成23年7月公表の環境影響評価配慮書より
下段…平成26年8月公表の補正評価書より
不自然だと思われませんか?
①平成19年より流量を継続して観測している地点は、なぜかトンネルの位置と一致する。
②トンネルから離れることとなる観測地点では、流量観測を早期に打ち切っていた。
不思議ですよね。まるで、平成19年の時点で4年後に考案するトンネルの位置を予言していたかのようです。流量観測を行う際に、トンネル位置が決まっていなかったのであれば、もっと南側の支流(赤石沢、聖沢等)だって観測していなければならぬはずです。
こんなふうに書くと、
「施行条件等により前もって位置を決めていたのだから、流量観測地点が絞り込まれていても不自然なことはない」という批判が出てきそうです。
「施行条件等により前もって位置を決めていたのだから、流量観測地点が絞り込まれていても不自然なことはない」という批判が出てきそうです。
しかしですねえ、建設指示を出した時点では、ルートの位置は全くの未定だったはずなんですよ。
中央新幹線小委員会では、幅25㎞の帯としてルートを示した答申を作成し、これに基づいて国交大臣より建設指示が出されました。25㎞幅の中で、環境配慮等により路線の位置を選定してゆくという建前です。
答申には次のように書かれています。
現時点、つまり答申を出した平成23年5月12日の時点では、「どこを通るべきか決まっていない」としているんですよね。これは、中央新幹線小委員会における環境配慮の審議が大雑把であったことの言い訳にもなっています。
それなのに、審議の始まる前で、あらかじめ路線の位置を決め、流量観測地点の絞り込みを行っていたのだとしたら、この答申は嘘っぱちとなりますし、中央新幹線小委員会の審議は芝居以外の何物でもなくなります。
もっとも、こんなことを突っ込まなくとも、建設指示からわずか10日で25㎞幅から3㎞k幅を絞り込むことが可能であるはずがない。長野を除く6県分の配慮書について、印刷と製本、インターネットへのアップロードだけで数日かかるはず。前もって作成してなければ10日で用意できるはずがない。