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だからJR東海の環境アセスメントは信頼できない ―岐阜県 土壌汚染未報告問題―

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既にご存知かもしれませんが、一昨日、岐阜県のリニア建設予定地において、井戸などから環境基準以上の濃度の有害物質が検出されたものの、JR東海が県に報告をしていなかったという発表がありました。

新聞報道の一部を引用します。

リニア工事 基準超す水銀検出 JR東海、県に報告せず /岐阜
毎日新聞2016年2月23日 地方版
 県は22日、リニア中央新幹線工事に伴いJR東海が2012〜14年に実施した地下水調査などで基準値を超す総水銀などが検出されていたにもかかわらず県に報告していなかったと発表した。県は要綱で有害物質による汚染を確認した際は報告するよう求めているが、JR東海は「要綱を承知していなかった」としている。県はJR東海を注意し、経緯や再発防止策を報告するよう指示した。 


これは、ひょっとしたら「要綱を承知していなかった」ではすまされない問題かもしれません。と同時に、行政による監視の限界が露呈した事態と言えそうです。

こちらは岐阜県庁の報道発表資料です。
イメージ 1
岐阜県庁ホームページ 報道発表資料より複製 


ここで注目していただきたいのは、「平成24~26年に実施した調査結果」のうち、井戸水調査の2地点です。瑞浪市大鍬町地内という地点ではふっ素が、多治見市北丘町地内という地点では総水銀が、それぞれ基準値を超過して検出されたものの、JR東海は県の担当部署への報告を怠ったとされています。

両地点について、採水年月日をご覧ください。瑞浪市大鍬町ではH25.1.31に、多治見市北丘町ではH25.1.29に行ったとしています。

ところで、JR東海は環境影響評価の過程において、地下水の水質調査を行っています。問題の井戸についても現地で採水調査を行っており、環境影響評価書によれば、その日付は「平成25年1月29日~平成25年2月15日」とされています。

イメージ 2
 環境影響評価書 岐阜県編 地下水の水位及び水質8-2-3-17ページより複製・加筆 


したがって、この報告漏れのあった採水調査とは、環境影響評価として行われていたと思われます

それでは結果について、環境影響評価書ではどのように扱われていたのでしょうか? 

イメージ 4
環境影響評価書 岐阜県編 地下水の水位及び水質8-2-3-20~21ページより複製・調整・加筆


まずは瑞浪市大鍬町に着目してみます(赤枠)。

評価書の表によると、この井戸では自然由来のふっ素が1.1㎎/L検出されたと記載されています。基準値は0.8㎎/L以下と併記してあるので、基準値超えであったことが分かります。

したがって瑞浪市大鍬町については、基準値超えという結果について評価書という形で公表自体はしていたものの、県の適切な部署(県事務所環境課)への報告は怠っていたことになります。これについては冒頭の報道通り、報告漏れ、つまり「うっかりミス」の範囲でくくられるかもしれません。

次に多治見市北丘町に着目します(青枠)。

ここについては、上段の表8-2-3-8(1)では水温やOHなどの調査結果が記されています。しかし下段の表8-2-3-8(3)「自然由来の重金属等」には記載がありません。どういうことなのかな?と思って、評価書の別ページに目を移すと、次のような表がありました。

イメージ 3

この多治見市北丘町については、、「自然由来の重金属等」の調査を行っていないとしているわけです。

しかし、岐阜県の報道発表資料によれば、採水調査によって基準値以上の総水銀が検出されたことになっていますよね・・・?

 

水質の分析調査をしていないはずの井戸で、水質調査の結果、基準値以上の総水銀が検出されていた? 

意味が分かりません 

現時点で言えることは、JR東海は現地調査を行った事実そのものを、評価書には記述していなかったことになります。うっかりミスなのか、意図的なのか、判断はつきませんが、どちらにせよ、事実とは異なる結果を評価書に記載していたことになります。

これは極めてひどい事態だと思います。なぜなら次のようなことが考えられるためです。

①ここ岐阜県では、リニアのトンネルはウランを含む鉱床を貫く。地元より多大な懸念が寄せられていることに対し、JR東海は、「ウラン鉱床は回避できるから問題はない」「ウランを含む部分は掘らない前提で工事を進める」「モニタリングを適切に行う」としている。
ウランが検出されても同じような姿勢をとるのではないか? 

②事後調査として、水環境や大気環境などのモニタリングを行い、万が一影響が生じた場合は速やかに報告をして対策を講じるとしている。
速やかに報告を行っていないことが露呈した。 

ほかの項目でも、ほかの県でも、同じようなことがたくさんあるのではないか?
例えば、JR東海は重要な動植物について「現地調査で見つからなかったから対策は不要」という姿勢を貫いている(例:静岡県大井川のヤマトイワナ)。このたびの問題は、その現地調査結果自体の信頼性を失わせるものである。
都合の悪い事実は伏せているのではないか?  

環境影響評価の過程で事業者が事実と異なる報告をしていても、行政機関にはそれを見抜くことができなかったことが判明した。 
結局、環境影響評価制度は事業者を性善説とみなして進められるため、事業者の都合によって情報を操作されてしまう可能性を否定できない。行政や審議会の有識者には、それを見過ごさぬ能力が求められるのだけど…。


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