リニアのトンネル建設により、大井川の流量減少が予測されています。JR東海は、本坑の途中からトンネルを分岐させ湧水を流し、大井川の下流側に放水する”導水路案”で、下流の流量減少に対応できるとしています。
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大井川上流域を拡大
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図1 大井川源流部の水力発電施設
理論的にはこれで下流の流量減少は防げるものの、しかし導水路出口より上流の流量維持には結びつかず、また、直接的・間接的に、余計な環境破壊をもたらすのではないかという疑念がぬぐえません。特にトンネルの頭上には水力発電施設が多数配置されており、流量減少がこれらを管理する電力会社の意向にどのように関わってくるのか、全く読めない点が心配です。
さて、環境影響評価書によると、図の上端左側に位置する西俣堰堤付近でも、次のように流量が減ると試算されています。
年間
3.97㎥/s⇒3.41㎥/s
3.97㎥/s⇒3.41㎥/s
12~2月
1.18㎥/s⇒0.62㎥/s
1.18㎥/s⇒0.62㎥/s
西俣堰堤は、リニアの本坑よりも500m程度高い位置にあり、ここに水を戻すことは不可能です。流量減少が生じた場合、導水路とかポンプくみ上げといった対策を取りようがない。
この数字をどう解釈すればいいのでしょう?
そして河川環境や発電所への影響にはどのようなものがあるのでしょうか?
大井川の最上流部には二軒小屋発電所があります。間ノ岳から南に流れている東俣と、悪沢岳を時計回りに迂回して南東に流れる西俣との二河川より取水し、その合流点付近に落として発電しています。この二軒小屋発電所で使用している水量が公開されているため、これをもとに西俣堰堤付近における流量を見積もってみたいと思います。
参考にするのは静岡県がまとめた「図表で見るしずおかエネルギーデータ」という資料。推定方法を説明します。
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表1 西俣堰堤における推定流量の算出方法
Aの月使用流量とは、一ヶ月間での水の総使用量です。これが入手した資料。
一ヶ月の数値から月平均での秒単位での取水量を求めるために、一月の日数と一日の秒数(86400秒)とで割ります。これがB。
こうして求めた平均使用量は、西俣・東俣両堰堤からの合計ですので、西俣堰堤の流域面積が占める割合0.57をかけると、西俣堰堤からの取水量の推定値が求まります。これがCです。
さらに同堰堤に設定されている維持放流量0.12㎥/sを加えると、同堰堤付近における流量の推定値Dが出ます。
同様に、データを入手することのできた平成16年から平成23年の8年間について試算した結果がこちらになります。
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表2 二軒小屋発電所使用水量から推定した西俣堰堤における推定流量(単位:㎥/s)
なお、西俣堰堤の下流にある田代ダムでの実測に基づく流量グラフ(省略)と比較し、電力会社側の都合で取水量を減らしていると考えられる月は除外しています(緑色の空欄)。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
以下、試算結果についての考察
流量は年による変動が大きい。したがってJR東海の言う「現在の渇水期流量1.18㎥/s」は、流量の豊富な年と乏しい年とを単純に平均化した値ではないかと思われる。つまり流量の少ない年のことは考慮していない。
特に冬の渇水期には、推定流量が0.6㎥/s程度にまで減る月も現れた。これらの月については、下流の田代ダムでの実測流量も極端に小さく計測されており、流量低下は電力会社側の都合による取水停止ではなく自然要因によると思われる。
ちなみに平成20年2月~3月について気象条件を調べてみると、顕著な寒冬ではなく、冬型気圧配置が持続したわけでもなかったが、南アルプス方面に降水をもたらした低気圧は本州南岸を通過することが多く、館野850㍱の気温から判断すると、2月いっぱいは雨ではなく雪になっていたようである。降水が雪となって積もる一方であったから、川の流量増加には結びつかなかったのであろう。
JR東海の予測では、渇水期には0.56㎥/s程度の減少が予測されている。これが現実となった場合、極端に流量が減少し、現在の維持流量0.12㎥/sの確保すら危うくなるのではないだろうか。流量が極端に減れば、川が凍結するおそれもあり、川に生息する生物への影響が懸念される。
また、トンネル工事により流量が減少すれば、渇水期には西俣堰堤からの取水はできなくなる可能性がある。するとこの期間の発電は東俣堰堤からの取水だけに頼ることになり、発電能力は半減してしまう。この出力低下をどこか別の発電所で補う必要が生じるが、それは新たな環境負荷につながってしまう。
さらには、この下流にある田代ダムの維持流量について東京電力が説明したところによると、寒冷地の水力発電所は、常に一定量の水を流していないと凍結による被害を受けてしまうそうである(それにより、田代ダムは冬季も1.62㎥/sの取水を許可されている)。すると、西俣堰堤もまた、一定程度の水を流していなければならず、渇水だからといって取水を極端に減らすことは困難になる。すると、現在の維持流量0.12㎥/sをキープできるか、やはり疑わしくなる。
どうするのだろう?
参考
【二軒小屋発電所 諸元】
最大認可出力 26000kW
取水位標高 1716m、放水位標高 1416.5m
有効落差 323.8m
最大使用水量 11.00㎥/s
常時使用水量 1.15㎥/s
東俣堰堤流域面積 36.0㎡
西俣堰堤流域面積 37.1㎡
最大認可出力 26000kW
取水位標高 1716m、放水位標高 1416.5m
有効落差 323.8m
最大使用水量 11.00㎥/s
常時使用水量 1.15㎥/s
東俣堰堤流域面積 36.0㎡
西俣堰堤流域面積 37.1㎡
【田代ダム取水量】
第13回大井川水利流量調整協議会 東京電力提出資料