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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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リニアは活断層を突っ切るから反対⇒富士川河口断層帯と交差する東海道新幹線も廃止すべきでしょうか?

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活断層についての続きになります。

最初にお断りしておきますが、筆者は「断層変位が起きればどんな構造物も耐えられない。よって活断層を貫くリニア中央新幹線は危険極まりなく、中止すべきである。」という主張には軽々に賛同することができません。

というのも、仮にこの主張通りに活断層対策を見直すとすれば、実現するかどうかすら疑わしいリニアよりも、現に乗客を乗せて営業運転している列車のほうを先に考える必要があるわけで、後述の通り、そうなれば社会的な大混乱が生じかねないからです。

「活断層を貫く」という視点でとらえれば、何より「危ない」のは東海道新幹線が突っ切っている富士川河口断層帯だと思います。
イメージ 1
赤線が活断層と推定される部分  


断層群というように、1本の断層ではなく、入山断層、大宮断層、安居山断層など、南北にのびる複数の断層の総称です。東海道新幹線が突っ切っているのは2本で、富士川鉄橋で交差している入山瀬断層と、由比川付近で交差している入山断層になります。

この断層群、いわゆる内陸地震を引き起こすものとは異なり、どうもフィリピン海プレートと陸側プレートとの境界になっているらしい、というのが近年の定説。ただし全体像もはっきりしておらず、政府の地震調査研究推進本部では次のような評価をしております。
http://www.jishin.go.jp/main/yosokuchizu/katsudanso/f043_fujikawa.htm
●地形学的な証拠からだと隆起速度は国内でも最大級。活動については次の2ケースを想定。
a.150~300年に1度活動。西側の相対的隆起は1~3m。
地震発生確率⇒30年以内に、10%~18%
b.1300~1600年に一度活動。西側の相対的隆起は10m程度。
地震発生確率⇒30年以内に、2%~11% もしくはそれ以下
●どちらにせよ動いたらマグニチュード8クラス
●東海地震と連動する可能性が高い
●1854年の安政東海地震では南部が活動した可能性がある

東海道新幹線が貫く活断層としては丹那断層が有名ですけど、リスクとしてはこちらのほうがヤバいと思います。

断層を境にして、一瞬で1~3mも隆起するのなら、新幹線の鉄橋は壊れてしまうでしょう。落橋しなくとも、レールは脱線防止ガードもろとも、大幅に変形してしまうでしょう。そこに突っ込んでしまったら大変。

ちょっと試算。
①今後30年間に富士川河口断層が動く確率
0.14

②断層活動時、新幹線の列車が断層の手前3250m以内に存在している確率
0.11
(120㎞/hで脱線すると大事故になると想定。新幹線の急ブレーキは90秒で完全停止するらしい。すると285㎞/hから120㎞/hまで減速するには52秒かかり、その間に約3250m進む。この3250mを危険区間とする。断層の手前3250m以遠でブレーキをかければ大事故は免れるという設定である。換言すれば、断層の手前3250mは危険であり、ここを285㎞/hで通過するには41秒かかる。1日に通過する列車を150往復=300本とすると、1日86400秒のうち12311秒は、断層の手前に列車が存在していることになる。12311s÷86400s=0.11

というわけで、
③今後30年以内に、富士川河口断層が動いたところに列車が突っ込む確率
①×②=0.015

つまり1.5%

これって、かなり高い数字じゃないのかなあ・・・・?

なお、ここでは考慮してませんが、富士川河口断層は東海地震=南海トラフ大地震と連動する可能性が高いようです。その場合、複数の列車が同時に被災するために、事項に遭遇する確率は増します。

だからといって静岡~新富士間で徐行させたら、東京~大阪間の所要時間は大幅に伸びるわけで、社会的な損失が生じるのは確実。「300年に1度の地震?そんなもんリスクのうちに入るか?」などと苦情が殺到するのも目に見えています。

1%で大事故が起きるかもしれない確率…許容できるものなのでしょうか?

これはまあ、シロウトのあてずっぽうな試算ですけど、JR東海は後述のマニュアルに従って試算を行っているはず。断層変位についてのリスク試算結果を公表してもいいんじゃないのかなあ?

なお、リニア中央新幹線は富士川河口断層の迂回ルートとしては不十分である。同断層群は、これまで駿河トラフの大地震すなわち東海地震と連動して活動してきた可能性が高いとされている。駿河トラフの地震では、リニアルートとなる南アルプスから甲府盆地南部まで大幅な地殻変動や地震動が想定されており、東海道新幹線もろとも同時被災する可能性が高いからである。

◇   ◇   ◇   ◇   ◇

まあ、以上は遊びとして切り捨てても構いませんが、疑問に感じたのは次の話。

JR東海のホームページに次のようなQ&Aが紹介されていると、前回のブログで指摘しました。

Q. 活断層を横切ることが心配です。
A. 昭和49年から当時の国鉄が、また平成2年からは当社と鉄道建設公団が地形・地質調査を行っており、これまで長期間、広範囲にわたり綿密にボーリング調査等を実施し、関係地域の活断層の状況について十分把握しています。
日本の国土軸を形成する新幹線や高速道路といった幹線交通網は、広域に及ぶ長距離路線という性格から、すべての活断層を回避することは現実的ではありません
したがって、中央新幹線のルートの選定にあたっては、これまでの調査に基づき、活断層はなるべく回避する、通過する場合は活断層をできる限り短い距離で通過するようにし、さらに活断層の形状等を十分に調査したうえで、通過の態様に見合った適切な補強を行っていくなど、注意深く配慮して工事計画を策定していきます。



これはどういう根拠に基づくんだ?と思って調べていたのですが、どうやら【鉄道構造物等設計標準・同解説 耐震設計】というマニュアルの要約のようです。で、その実物を目にする機会があり、パラパラ眺めていたのですが、どうやら断層運動による変位によって構造物が被害を受ける事態は想定外であるらしいです。

このマニュアルは、阪神・淡路大震災での鉄道被害を受けて、旧運輸省やJR、私鉄の代表者、大学教授などにより編集されたようです。しかし活断層については、当然ながら詳細な調査を行うこととしているものの、その目的は基本的に耐震設計つまり揺れへの対策を設計するものとしており、地表断層が生じてトンネルや橋をちょん切るような事態については、どこを眺めても掲載されていないのです。

今のところ、国内では断層変位による顕著な被害は「ごくまれ」にしか起きていないため、想定しなくてもよいという判断なのかもしれません。実際、明治以降の地震で、断層変位で主要な道路や線路が大被害を受けたのは、1930年の北伊豆地震、1970年の伊豆大島近海地震ぐらいなものです。被害・リスクの大きさからみても、土砂災害や津波のほうがずっと危ないし、何より断層変位については現実的に対応する技術がない…そんな判断がなされているのでしょう。

しかし1999年には、台湾の集集地震、トルコのコジャエリ地震で、断層変位によって橋や堰がぶった切られる事態が相次ぎました。富士川河口断層が動くのはそう遠くない未来かもしれない…。

けっして対岸の火事ではないとも思うのですが。

◇   ◇   ◇   ◇   ◇

さて、現状では断層変位は「不可避のリスク」としてタブー視されているようですが、これは間違っているのではないでしょうか? 

例えば飛行機には常に墜落というリスクがつきまといます。さらに搭乗の際にシートベルトを着用したり救命胴衣のつけ方を教えられたりして、乗客は「事故のリスクがある」ことを意識せざるを得ない。

富士山に登る際には、常に噴火という”低い”リスクがあり、それに備えてヘルメットを携行することが求められています。それによって登山者は「富士山は活火山である」ことを意識することになる。

墜落にしろ噴火にしろ、どちらも実際に起きたら人命は危機に陥ります。利用者はそれを承知のうえで、飛行機に乗るなり富士山に登るわけです。大型施設の避難経路図、ハザードマップ、PL法…利用者・住民にリスクを知らせる試みは多方面で行われています。

けれども新幹線に乗る際に、「断層変位が起きたところに突っ込んだら助からない」ことを意識する人なんぞまずいないでしょうし、そもそもそんなリスクがあること自体、全く教えられない。

これでは「嫌なら乗るな」とも言えないし、万一の際の責任所在も不明になってしまうのでは・・・?

◇   ◇   ◇   ◇   ◇

最後にリニアの話になりますが、スピードが増している分、新幹線以上に、小さな事故が人命につながりうるのに、あいかわらず「リスクはない」という前提で事業が進められております。国土交通省の「超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会」の資料を見ても、速度が増すことによるリスク変化については全く議題にしていないんですよ。「

時速500キロでの衝突実験なんてやっていないません(たぶん)。木っ端みじんになることを前提にしてるんでしょうか?

このままリニアを実用化することは、人命を実験台にさらすような気がするわけなので、これは間違っていると思いますよ。


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