全国新幹線鉄道整備法の冒頭部分です。
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、高速輸送体系の形成が国土の総合的かつ普遍的開発に果たす役割の重要性にかんがみ、新幹線鉄道による全国的な鉄道網の整備を図り、もつて国民経済の発展及び国民生活領域の拡大並びに地域の振興に資することを目的とする。
(目的)
第一条 この法律は、高速輸送体系の形成が国土の総合的かつ普遍的開発に果たす役割の重要性にかんがみ、新幹線鉄道による全国的な鉄道網の整備を図り、もつて国民経済の発展及び国民生活領域の拡大並びに地域の振興に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「新幹線鉄道」とは、その主たる区間を列車が二百キロメートル毎時以上の高速度で走行できる幹線鉄道をいう。
第二条 この法律において「新幹線鉄道」とは、その主たる区間を列車が二百キロメートル毎時以上の高速度で走行できる幹線鉄道をいう。
(新幹線鉄道の路線)
第三条 新幹線鉄道の路線は、全国的な幹線鉄道網を形成するに足るものであるとともに、全国の中核都市を有機的かつ効率的に連結するものであつて、第一条の目的を達成しうるものとする。
第三条 新幹線鉄道の路線は、全国的な幹線鉄道網を形成するに足るものであるとともに、全国の中核都市を有機的かつ効率的に連結するものであつて、第一条の目的を達成しうるものとする。
リニア中央新幹線もこの法律に基づいて計画が進められています。前回のブログではこれについて、大井川流域(静岡県)の地域振興を顧みずに大井川流域を通過するルートを決め、振興とは相反する自然破壊だけを残してゆくのは、第一条に適合していないのではないかという疑問を投げかけました。
しかしよく考えると、静岡県側への負担は自然破壊だけにとどまらないと思うのであります。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
南アルプスを横断する長さ25㎞の長大トンネルを完成させるにあたり、トンネル頭上の地上からも工期短縮用のトンネルを掘る計画となっています。南アルプストンネル全体では7本、そのうち静岡県区間には2本掘られ、西俣のものは長さ3100m、二軒小屋南のものは長さ3500mの計画です。
土木の世界では、こうした作業用に地上から掘り進めるトンネルのことを斜坑と呼ぶようです。
リニア計画においても、当初は一般的な概念になぞらえて「斜坑」と呼んでいました。図1は2011年9月に公布された環境影響評価方法書です。
図1 環境影響評価方法書での斜坑という表現
ところが2013年9月公布の準備書以降は、「非常口」という呼び方に変更しています。
図2 環境影響評価評価書における非常口という表現
なぜ変更したのかよく分かりませんが、非常口という扱いにするのなら、これを非常時に使う方針に切り替えたはずです。
わざわざこんなところ(注)を非常口とするのはきわめて異常な事態、つまり大地震や車両火災で南アルプス地下に緊急停止し、坑口の崩壊や煙の発生により長野・山梨側への避難が困難というケースを想定していることになります。
(注)文末参照
なお、そんな緊急事態が起きるのなら、リニアと東海道新幹線とが同時被災している可能性があることを示唆していることになる…?
さてさて、乗客1000人がゾロゾロと南アルプス山中に出てくる状況をお考えください(最悪の場合は2000人になるかも)。
1000人をJR東海一社で”下山”させられるのでしょうか?
安全確保と誘導、物資の搬送、受け入れ先の確保、当面の必需品の確保、そして”下界”への搬送…常識的に考えれば、どうしても静岡側の公的な救助が不可欠だと思います。なにしろこの「非常口」から静岡市街地までは90㎞くらいあるわけです。
JR東海もそのようなことを示唆しているようであり、静岡県での審議会要旨には次のようなやりとりがありました。
図3 公的な救助体制が前提?
第3回静岡県中央新幹線環境保全連絡会議(平成26年11月18日)資料より複製
でも、これって静岡県民は使えない鉄道に対して、静岡県に救助の要請というか義務が課せられるわけですよね…?
しかも大地震発生の場合、県内全域に大被害が生じることでしょう。しかしヘリコプターや救助隊や食料など、そこに向かうべき支援を「リニアの乗客下山」のために割かねばならない…?
これって、静岡側から見れば、余計な災害リスク・負担に他ならないと思うのです。
静岡県民は使うことが無いのに、その静岡県に自然破壊に加え、乗客の救助・支援といった余計な負担まで背負わせるのは、なにやらオカシイのではないでしょうか。
①西俣の斜坑に出てきても、宿泊施設のある二軒小屋ロッヂまではさらに4㎞程度ある。その二軒小屋ロッヂの定員は68名であり、雑魚寝しても1000人収容可能か疑わしい。11月から4月いっぱいは休業。そして大型バスの入れる畑薙第一ダムまでは約30㎞。
http://www.t-forest.com/alps/lodge.html
②二軒小屋は標高1350mの高地であり、冬場は氷点下20℃程度にまで冷え込む。
③大地震発生時を想定すると、二軒小屋から静岡の平地にまで移動する道路は寸断されている可能性が高い。
④したがって二軒小屋に出てきてしまったら逆に二次災害の可能性が出てくる。
http://www.t-forest.com/alps/lodge.html
②二軒小屋は標高1350mの高地であり、冬場は氷点下20℃程度にまで冷え込む。
③大地震発生時を想定すると、二軒小屋から静岡の平地にまで移動する道路は寸断されている可能性が高い。
④したがって二軒小屋に出てきてしまったら逆に二次災害の可能性が出てくる。
上記のような事情を踏まえると、山梨側へ7㎞歩かせた方がよっぽど迅速に非難できる。つまり静岡県内の斜坑は、常識的には、非常口として使えないはずである。それを使わざるを得ないのは、よほど異常な緊急事態である。
なお、昭和53年8月に台風で大井川沿いの橋が流出し、登山者564名が下山できなくなるという事態に陥った。救助のために県と自衛隊のヘリ8機が投入され、全員の搬送に2日かかった。。
http://rdsig.yahoo.co.jp/blog/article/titlelink/RV=1/RU=aHR0cDovL2Jsb2dzLnlhaG9vLmNvLmpwL2ppZ2l1YThldXJhbzQvMTM0NjMwOTkuaHRtbA--
http://rdsig.yahoo.co.jp/blog/article/titlelink/RV=1/RU=aHR0cDovL2Jsb2dzLnlhaG9vLmNvLmpwL2ppZ2l1YThldXJhbzQvMTM0NjMwOTkuaHRtbA--
もしかしたら、二軒小屋に近い山梨や長野の警察・消防が救助に向かうかもしれないけど、これとてヘリが使えなければどうしようもない。冬場なら南アとは言え天気は荒れる。2000m級の峠を徒歩で山梨・長野側へ連れてゆくのはきわめて困難であろう。武田信玄の軍勢が標高2000m級の所ノ沢という峠を越えて井川の金山に向かったという言い伝えがあるけど、リニアの乗客1000人が武田軍のような健脚であるはずもない。”雪中行軍”か”あゝ野麦峠”になってしまう。