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大井川源流域での流量観測結果が初めて公開された

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このほどJR東海より、環境影響評価法に基づく事後調査結果が報告されました。
静岡県についてはこちらのページに掲載されています。

法に基づく事後調査とは、簡単に言えばモニタリングのことです。静岡県では水環境と猛きん類とが対象になっています。

さて、環境影響評価書では実際の河川における流量の調査はほとんど行われていませんでした。それでは困るとの県からの意見を受け、事後調査として機械による連続観測が行われています。このほど、河川流量の実測結果がはじめて公表されたことになります。

これをもとに2年前の評価書を読み返すと、「あの予測は妥当だったのか?」という疑問がふたたびよみがえってきました。

2014年8月確定の評価書では、トンネル工事により大井川の流量は次のように変化するとの予測結果が掲載されていました。
イメージ 2

イメージ 3

ここで「地点番号02 西俣」をご覧ください。これは年間平均流量らしいのですが、工事着手前の流量を3.56㎥/sとし、それがトンネル完成後には2.49㎥/sに減るとしています。

「工事着手前の流量」欄にある解析という言葉に留意してください。これはコンピュータ上ではじき出された現況の流量、つまり降水量や地形・地質条件を入力した結果、現在の「地点02 西俣」では3.56㎥/sの流量があるとしている理論上の数値というわけです。計算の値ですから(解析値)となっているわけです。

アセス終了後の事後調査では、評価書での「地点02 西俣」より約500m下流にて、水位計を設置して流量の連続観測が行われることになりました。その結果が次のグラフになります。なお、こちらの実測地点は地点番号05となっていますので、混乱せぬようご注意ください。

イメージ 1

ラフには評価書での解析値3.56㎥/sのラインを引いておきました。たった8カ月半のデータですが、これにより、解析値がこの付近の流量を適切に示していたかどうか、少しばかり検証することができます(注1)。

で、見比べてみると、実測データでは解析値3.56㎥/sを下回っている日のほうがはるかに多かったことが読み取れます。ざっとみたところ、240日間程度のうち、上回っていたのは30日程度に過ぎなかったようです。特に12月以降は1㎥/s前後で推移しています。

というわけで、少なくともこの240日間に限っては、解析値3.56㎥/sは、実際の西俣での流量を適切に反映していなかったのではないかと思われます。もしかすると単純に数字を合計して日数で割れば、3.56に近い値が出るかもしれませんが、変動の大きな減少に対し、そのようにして平均値を求めることは不適切です。

『頭の体操』
100人がいて、そのうち5人が年収1億円、25人が1000万円、70人が400万円だとする。100人の年収を合計すると10憶3000万円。単純に100人で割ると、100人の平均年収は1030万円となる。けれども1030万円が100人の実態を表しているわけがない。値ごとの頻度が大きく異なるものは、単純に平均値を求めても無意味という好例である。

同様に、河川流量というのは大きく変動する。大雨が降った直後はものすごく大量の水が流れるけど、あとはチョロチョロしか流れていない…日本の河川はそうした傾向がある(河況係数が大きいという)。そうした川の状況を知るためには、もうちょっと工夫することが必要である。

⇒流量観測とデータ処理については過去のブログ記事(2015/1/6)を参考していただきたい)http://blogs.yahoo.co.jp/jigiua8eurao4/13542475.html 


トンネル工事に伴う流量減少量の予測はは約1㎥/s。しかし実際の川では冬季に1㎥/s以下しか流れていないとする観測結果(注2)を考慮すると、流量が減少した場合の影響は、評価書で予測されていた以上に深刻なのかもしれません。

なお、ここの上流にある中部電力西俣取水堰では、別の支流東俣と合わせて常時1.15㎥/sを取水しています。西俣取水堰からの維持流量は0.12㎥/sに過ぎません。だから観測を行うことはもちろん大切なのですが、渇水期の予測値としてこの0.12㎥/sを前提とした試算も行うべきではないのでしょうか。

さて、JR東海による流量減少への保全措置は、具体的には導水路を造ってトンネル湧水を排水するというもの。

しかしその出口はこの観測地点より13~14㎞下流になります。したがって予想以上に流量減少が深刻になろうとも、有効な対策は物理的に不可能。発電用の取水を停止するなどせぬ限り、河川環境を維持できぬような気がするのですが…。



(注1)評価書での予測地点と、事後調査地点とは500mほど離れておりますが、2地点間には目立った支流は流入していません。地形図に名称が記載されている柳沢の流量は、事後調査報告書によると豊水期0.03㎥/s、渇水期は測定限界値未満であったとしており、影響は小さいと判断します(涸れていたということ?)。

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