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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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熊本地震でトンネルが破壊してしまった

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4月に発生した熊本地震。家屋の倒壊や阿蘇大橋の崩落、熊本城の損傷、大規模な斜面崩壊など各方面に大きな被害が生じました。中には、直接、人的被害にはつながってはいないものの、トンネルが崩落したという、土木工学的に重大な被害も生じています。

被害を受けたのは西原村と南阿蘇村とをつなぐ俵山トンネル。阿蘇山の外輪山に設けられており、今回の地震を引き起こした布田川断層と交差しているようです。Wikipedeaによると完成は平成15年10月とのことで、比較的新しいトンネルになります。

なお、復旧工事が始まるそうです。1日も早い開通を願っています。
(国土交通省 6/28報道発表)


さて、俵山トンネルの被災状況については、これまで何度か土木工学や防災関係者の視察が行われ、その報告が写真とともにネット上にも掲載されています。

いくつかの報告についてリンクを掲載しておきます。


●覆工コンクリートのひび割れ・剥落
日本経済新聞4/28
地震ルポ 誰も報道しなかった「俵山トンネル崩落現場」
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO00148090X20C16A4000000/?df=3

●トンネルそのものが破断面を境に左方向へズレたらしい
(公共土木施設の被災状況と斜面崩壊 愛媛県の調査
PDFファイル 約9MB)
http://www.pref.ehime.jp/h40800/2643/hisaitakuti/documents/hisaityousa.pdf#search='%E6%96%AD%E5%B1%A4%E5%A4%89%E4%BD%8D+%E4%BF%B5%E5%B1%B1%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB'

これらの被害については、国土交通省など複数の機関において軸方向圧縮破壊とした見解が示されています。
http://www.mlit.go.jp/common/001136057.pdf#search='%E4%BF%B5%E5%B1%B1%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB+%E5%A4%89%E4%BD%8D'

軸方向圧縮破壊…トンネルの長軸方向、つまり出口と入口の双方から逆向きの力がかかり、トンネルがつぶれてしまったようなのです。ちょうどトイレットペーパーの芯を両側から押すような形になります。上記リンク先に掲載されている写真では、側溝のフタが浮き上がっている様子が写っていますが、まさにトンネルの長さが短くなってしまった証拠になります。

言い換えれば、トンネルを掘ってある地山そのものが変形することにより、地山と一体化しているトンネルも変形し、コンクリート構造物が壊れてしまったことになります。


俵山トンネルは熊本地震を引き起こした布田川断層と交差しています。熊本地震の発生メカニズムは正断層成分を含む右横ずれ断層型とされています。この場合、引っ張る力が働くことにより、観察者側から見て反対側の地盤が相対的に右へ動きます。このときトンネルが圧縮されて破壊されるのは下図のような原理となります。

イメージ 2
気象庁ホームページより複製・加筆
熊本地震は赤枠で囲ったタイプで正断層成分を含む型とされる 

青い線の部分を模式的に示すと以下の通り。スペースの都合上、トンネルを左右に描いているので留意していただきたい。 


イメージ 1
灰色部分が岩盤。山岳トンネルの壁は岩盤に固定してあるので、岩盤が動くと一緒にずれ動いてしまう。このため現在の工法では、原理的に変状を防ぐことは不可能。

そういえば、こんな報告もありました。

●副次的な断層変位が発生したとする報告
災害科学国際研究所 「布田川断層帯に正断層も確認:地下深部では斜めずれ,地表では横ずれ断層と正断層が並走」



なお、左側へずれたという報告もされていますが、これは右横ずれとする各種報告とは逆です。う~ん、、、よく分からん。


被害発生の詳細なメカニズムについては、シロウトには判断つきかねます。これから学術論文等に詳細な報告がなされることでしょう。しかし断層変位が起きてしまうと、コンクリート構造物の変状は免れないことが示されたことは確実だと思います



そんなことを考えると、何本もの活断層をトンネルで貫くリニア中央新幹線という構造物は、断層変位に対してのリスクが高いんじゃないのかなぁと思うのであります。

俵山トンネルでの路盤の変状箇所では、垂直方向に30㎝ほど、水平方向に15㎝ほど路面が食い違っているようです。超電導リニアは10㎝浮かんでいるわけですが、このぐらいのズレが突如起こり、そこへ高速で突っ込んだら、段差に衝突してしまいます。そうなったらどうなるのでしょうか。脱線しないとしても、シートベルトもつけていない乗客はどうなるでしょう。緊急ブレーキがかかったとしても、速度が大きいぶん、減速開始が破損個所まで6㎞以内だったらアウト

前にも書きましたけど、現在、鉄道建設時の地震対策マニュアルとなっている「鉄道構造物等設計標準・同解説 耐震設計」では、断層変位による構造物の破壊は想定していません。
(5/25ブログ記事)
http://rdsig.yahoo.co.jp/blog/article/titlelink/RV=1/RU=aHR0cDovL2Jsb2dzLnlhaG9vLmNvLmpwL2ppZ2l1YThldXJhbzQvMTQ3Njg1MzMuaHRtbA-- 

活断層に対する心配に対し、リニア住民向け説明会でJR東海が示している見解や、国会審議で国土交通省担当者による答弁は、このマニュアルに従って断層付近では構造物を強化するというものです。

詳細については
国会会議録検索システム
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/190/0064/main.html
参議院国土交通委員会 平成28年5月26日 第13号
で閲覧頂きたい
 

しかしいくら強固にしたところで、トンネルを掘った山ごと変位するのだから、物理的にはどうしようもない。


既存の新幹線以上に事故リスクの高い列車を走らせるのだから、これまでと同じマニュアルで事業を進めるのは大間違いじゃないのかと思うのです。遭遇率は低いけれども、万一起きてしまったら取り返しのつかない事故となるのだから、そのリスクを計算・公表したうえで社会的に受け入れ可能かどうか、検証する必要があるのではないでしょうか。

直下型地震だけでなく、マグニチュード8以上の東海地震/南海トラフ地震が起きた際、駿河トラフ近傍の南アルプスがどんな地殻変動を起こすかなんて誰にも分かりません。

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