以前当ブログにて、山梨県内に建設される第四南巨摩トンネル(8627m)について、トンネルの規模の割に発生土量が多すぎることから、大規模な地下空間を併設する計画ではなかろうか?という指摘を投げかけました。
2016年2月4日
「富士町 第四南巨摩トンネルの大量発生土量はどこから生み出されるの?」
http://rdsig.yahoo.co.jp/blog/article/titlelink/RV=1/RU=aHR0cDovL2Jsb2dzLnlhaG9vLmNvLmpwL2ppZ2l1YThldXJhbzQvMTQ1MzgxMDguaHRtbA--
「富士町 第四南巨摩トンネルの大量発生土量はどこから生み出されるの?」
http://rdsig.yahoo.co.jp/blog/article/titlelink/RV=1/RU=aHR0cDovL2Jsb2dzLnlhaG9vLmNvLmpwL2ppZ2l1YThldXJhbzQvMTQ1MzgxMDguaHRtbA--
かいつまんで説明すると
・第四南巨摩トンネルは山梨県富士川町高下と早川町青崖との間に計画されており、環境影響評価書と事業認可申請書類によれば本坑長さ8627m、斜坑(非常口)長さ1800mである。
・静岡県への説明では、本坑断面積は106㎡、斜坑断面積は68㎡、土量変化率は1.5程度と想定されている。これを用いれば発生土量は156万立米の程度となるはず。
・ところが評価書では、第四南巨摩トンネルからの発生土量は283.3万立米とされている。
・130万立方メートル分の土はどこから掘り出される?
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図1 第四南巨摩トンネルからの発生土量の検証
といった疑問です。トンネルの東側には保守基地が設けられるため、これと一体化した大規模な地下空間が設けられるのではないか、と結びました。
さて今月21日、この第四南巨摩トンネル西側(早川町側)2600m分について、施工業者が決定したというニュースが入ってきました。
ここにJR東海柘植社長のインタビューが載せられていましたが・・・。
「工事範囲に本線トンネルのほかに保守基地への連絡坑を含み、トンネル内に本線から保守基地への分岐装置を設ける必要があるため、トンネルの最大断面積が約300㎡以上と大きな断面積を必要とする区間がある」とし、「高度な施工技術を必要とする工事」
とあります。
おぉっ、予測が見事に的中!
当たったけど全然嬉しくない!!
最大断面積300㎡以上。
バカでっかいですねえ…。リニア本線のトンネル断面に比べ、約3倍の規模となります。仮に最大高さ10mの長方形とすると幅は30m。地下鉄駅のような規模です。
位置関係等は図2、図3をご覧ください。
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図2 第四南巨摩トンネルの位置
事業認可申請書類の形式に従い、トンネルではなく隧道と記した。
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図3 第四南巨摩トンネルの概要
国土地理院 地理院地図 電子国土Webより引用・加筆
赤点線が本線トンネル。紫の点線は保守基地への連絡路の予想位置。左上は同縮尺で示した東海道新幹線浜松工場の引込線。リニアの連絡路は異常に規模の大きいことが分かる。詳細は本文を参照頂きたい
で、例によって大きな疑問。
●環境影響評価結果は妥当だったのか?
今回の工事契約は早川町側のもの。その早川町内での事業計画について、環境影響評価書では本坑と斜坑とを設けるとしているものの、同町内にてトンネルが分岐するとは記していません。
いっぽう保守基地を併設するとしている富士川町についても、トンネルで通過する、保守基地を設けるとしているものの、トンネルが大規模になるとは書いてありません。
図3に保守基地の位置が記されています。
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図4 富士川町高下地区の詳細図
環境影響評価書関連図より複製・加筆。
中央付近の太点線は工事用道路予定ルートで図中東西に延びる青い線が小柳川。黒の破線がトンネル区間で実践が地上区間。
保守基地は第四南巨摩トンネル東口よりさらに600m北東に離れた場所に計画されています。けれども分岐地点はここより6~7㎞南西側。本線とは別に、第四南巨摩トンネルと保守基地とを結ぶ連絡路が長々と造られるはず(図3:紫の点線)なのに、その位置や構造は全く記されていません。
第四南巨摩トンネルを全体として超大断面にして連絡路を併設するのか、それとも連絡路専用にもう一本トンネルを掘るのか、それも分かりません。
ちょっと試算。
富士川町高下坑口での発生土量は181.9万㎥である。高下地区には北隣りの第三南巨摩トンネル南坑口も設けられるが、第三トンネルからの発生土は、さらに北の南アルプス市畦沢斜坑から出すとしている。したがって高下地区の181.9万㎥は、全て第四トンネルから掘り出される。
第四トンネル高下側工区は延長6000mであるから、発生土量から推察される平均断面積は181.9万㎥÷6000m÷1.5=202㎡となる。単純な半円形と仮定すると幅22m程度となる。
リニアは通常のレール式鉄道と異なり、ジョイントの構造が非常に大規模となる。普通のレール式なら、レールをちょっとずらすだけで切り替えが可能だけれども、リニアの場合、高さ2mもあるガイドウェイを出したり引っこめたりしなければならない。
保守基地は下り線の東側に設けられるので、上り線と基地をつなぐには、下り線をものすご~~~く複雑な構造で渡る必要がある。このために拡幅部分が6000m以上にも及ぶ必要が生じたのだろう。
ちなみに、東海道新幹線の浜松工場付近にも、分岐のために3線を設ける必要から敷地幅が拡幅している箇所がある。図上で拡幅部分の距離を調べると850~900m程度である。図3をご覧いただきたい。
単に分岐するだけでも新幹線よりずっと大きな施設が必要なのである。ガイドウェイ方式を採用することにより、構造物がむやみに大きくなってしまったことになる。
本題に戻ります。
そもそも評価書では存在自体が触れられていなかった大規模地下空間。ナゾだらけのトンネルですが、評価書の各種予測項目において、その存在や規模は考慮されていたのでしょうか?
トンネルの規模が大きくなれば、湧き出す水の量は多くなるだろうと思われます。
例えば環境影響評価の終了後に、1年半を経てようやく出された「巨摩山地における水収支解析」というもものがあります。第四南巨摩トンネルの掘削工事により、大柳川では河川流量が0.751㎥/sから0.728㎥/sに減ると試算していますが、この試算を行うにあたり、トンネルの規模や構造をどのような前提のもとに行ったのか、それは全く分かりません。
(参考 昨年12/27 当ブログ記事)
特に評価書によると、大柳川支流の清水沢が大柳川下流地区の水源になっているようですが、第四南巨摩トンネルがくぐり抜けるものの、試算すらしていない。試算すらしていないのに、さらに今頃になってトンネル規模の大きいことが判明したのだから、これでは信用しようという方がムリ。
また、本線と保守基地との連絡路が、高下地区側の坑口と保守基地との間にある小柳川を、橋梁で越えるのかトンネルでくぐるのか、これも不明です。
環境影響評価における騒音、動植物、地下水位・河川流量・景観といった項目については、工事が地上か地下かで影響の度合いは大きく異なります。けれども全く見当がつかないから、評価書に記された各種の予測結果や環境保全措置が妥当かどうかも分かりません。
●トンネル規模や構造について、どのように地元や行政に伝えられていたのか?
隣県の住民であるので軽々に言及できませんが、少なくとも公式文書のうえでは全く触れられてこなかった話です。
今後、地元向け説明会を開催したうえで着工する方針だそうですが、住民の合意が得られるのかなあ・・・?
特に環境影響評価準備書の審査過程において、山梨県行政が分岐トンネルの存在を把握していたのかどうかについては、ハッキリさせておく必要があると思います。
・・・そういえば保守基地には変電所も併設される計画。その変電所に向けて、どこかから送電線を引っ張ってくる必要が生じます。これも説明されているのでしょうか?
●南アルプスユネスコエコパークの外から中へ発生土を運び込む?
今回の工区は、早川町内の工事というタテマエですが、実際には富士川町側に400mほど入っています。そして保守基地の設けられるのはさらに6㎞先の富士川町内。早川町はユネスコエコパーク登録地域ですが富士川町は外。
ユネスコエコパーク登録地域外に設ける施設のために、登録地域内から迎え掘りし、発生土を登録地域内に運び込んで処分する構図となります。何だかおかしいのでは…?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
おおげさではなく正体不明なトンネルです。戦隊モノの秘密基地じゃあるまいに、なぜ計画している案を公表しないのだろう?