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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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最高裁判決 大鹿村美しい村づくり条例 ユネスコエコパーク

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、「守るべき環境の姿」とはどういうものかを考えようと、環境問題について書かれた本を本を読んでいたら、次のような裁判判決文に遭遇しました。火力発電所建設をめぐって争われた裁判について、札幌地方裁判所が昭和55年10月14日に出した判決文です。次のような表現が用いられています。

環境は、…その認識および評価においては住民個々に差異があるのが普通であり、これを普遍的に一定の質をもったものとして、地域住民が共通の内容の排他的支配権を共有すると考えることは、困難である。

つまり、環境を守れといったって、守るべき環境の質や水準といったものは、一人一人異なるのが普通であるのだから住民の主張する基準に合わせねばならないとするのは難しいと言っているわけですね。

この場合は訴えを起こした住民の求める水準に合わせるのは難しいとしているわkで、もちろん環境を破壊する側にとっても同様です。したがって次のように結んでいます。

人の社会活動と環境保全の均衡点をどこに求めるか、環境汚染ないし破壊をいかにして阻止するかという環境管理の問題は、すぐれて、民主主義の機構を通して決定されるべき

守るべき水準を定めるのは容易でないから、民主主義つまり話し合いの機構を通じて決めるべし、つまり話し合えというわけです。

こうした見解が日本の裁判所における基本的な解釈となっているようでして、いっとき話題となった国立市でのマンション景観問題における最高裁判決でも、次のように述べられています。

「景観利益は、これが侵害された場合に被侵害者の生活妨害や健康被害を生じさせるという性質のものではないこと、景観の保護は、一方において当該地域における土地・建物の財産権に制限を加えることとなり、その範囲・内容等をめぐって周辺の住民相互間や財産権者との間で意見の対立が生ずることも予想されるのであるから、景観利益の保護とこれに伴う財産権等の規制は、第一次的には、民主的手続により定められた行政法規や当該地域の条例等によってなされることが予定されている。」

裁判の経緯
住民が高層マンションが景観を乱すとして、一部撤去を求めて訴訟を起こす。一審は住民の訴えを認めるが、高裁、最高裁は認めず敗訴が確定。
良好な景観に近接する地域内に居住する者が有するその景観の恵沢を享受する権利(景観利益)は、法律上保護に値するものと解するべきである。ある行為が「景観利益」に対する違法な侵害に当たるかどうかは、少なくとも刑罰法規や行政法規の規制に違反するものなど、社会的に容認された行為としての相当性を欠くことが求められる。
本件では、事業着手時点で条例による規制がなかったこと、公序良俗違反や権利の濫用に該当するなどの事情はうかがわれないことを理由に、景観利益を違法に侵害する行為には当たらないと解釈され、住民の訴えは棄却された。
(詳細)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=32819

この見解に従えば、JR東海の事業活動も、「民主的手続により定められた行政法規や当該地域の条例等に」従うべきでしょう(当たり前)。

リニア計画で揺れている長野県大鹿村には、「大鹿村美しい村づくり条例」があります。http://www3.e-reikinet.jp/ooshika/d1w_reiki/423901010005000000MH/423901010005000000MH/423901010005000000MH.html

(目的)
第1条 この条例は、雄大な南アルプスを背景とした、四季折々の美しい景観や生物が生き生きと活動する自然、中央構造線が刻んだV字谷を縫って流れる清冽な川の流れに沿って広がる田園や傾斜地に点在する集落、多くの史跡や寺院、先人より受け継がれてきた伝統文化によって、育まれた大鹿村の美しい景観を村民が一体となって守り育てるとともに、「日本で最も美しい村」を標榜とする大鹿村の地域特性を生かした美しい村づくりに必要な事項を定め、自然と人とが共生して大鹿村の原風景を次の時代へ継承していくことを目的とする。
第5条 事業者は、その事業活動の景観に与える影響が大きいことにかんがみ、その責任において景観形成を図るために必要な措置を講じなければならない
2 事業者は、村が実施する景観形成のための施策に協力しなければならない。
 

最高裁判決のいう、「民主的手続により定められた行政法規や当該地域の条例等」とは、まさにこれを指します。 

JR東海はこの条例に従う義務があるはずです。これまでの説明会で、同条例について問題提起があったのかは分かりませんが、住民から今一度、JR東海の見解を問いただしておくべきだと思います。

今のところ、環境影響準備書への意見で求められた橋梁の地下化はもとより、その後の説明会で求められた電線の地下化でさえ拒んでいるわけですが、・・・「必要な措置」なんてやってませんよね?

◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 

ところで上記の最高裁判決における「景観利益の保護とこれに伴う財産権等の規制は、第一次的には、民主的手続により定められた行政法規や当該地域の条例等によってなされる」という一文に、「第一義的には」という表現があります。

景観の保全には、必ずしも法や条令が万全ではないことを考慮しているのでしょう。

すなわちこの判決が取り扱っていた景観保全について考えても、高さや色などは規制可能であっても、元来は価値観に起因する事項であるから、細かく規制することは難しい。未解明の水循環、生態系といった複雑な事象になると基準を設けることはより困難ですし、南アルプスが有する「静けさ」「奥深さ」「豊かさ」などといった抽象的概念になると、そもそも規制すること事態が論理的に不可能です。

けれども規則がないからといって好き放題に開発することが許されるのなら、ユネスコエコパークに登録した意味がなくなってしまう。

それならば民主的手続き(話し合い)により保全すべき環境像を描くというプロセスが不可欠のはずです。それをないがしろにしているのがJR東海の進め方。

JR東海は「説明会」「ご理解」という言葉を用いていますが、こうした考え方が、一方的な立場を象徴しているといえるでしょう。説明とは、あらかじめ決まった事業者の意思を伝えるだけであり、一方通行です。でも住民としては理解はできても納得はできない。なぜ納得できないのかというと、それはムチャの多い事業計画を一方的に押し付ける進め方であるから。

つまり常識的に考えても、上記の裁判判決を忠実に解釈しても、あるいはユネスコエコパーク制度(前回ブログ参照)に従っても、

事業者案の提示⇒地元から対案の提示⇒代替案の提示⇒話し合い⇒合意⇒説明⇒納得⇒着工

という順序をとらなければならないのに、今のJR東海の進め方は

事業者案の提示⇒地元から対案の提示⇒代替案の提示⇒話し合い⇒合意⇒説明⇒納得着工

となっているわけですよ。必要な手順をすっぽかしているわけで、こんな進め方では納得できるはずがない。



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